第三者機関よりも権限の分離
建築確認制度の充実のために、第三者機関のチェックが提案されています。第三者機関のチェックは、従来の建築確認に加えて行われるのか、それとも、従来の建築確認を第三者機関に行わせるのかで意義が少し異なって来るような気がします。しかし、いずれも、表面的な対応にとどまると思います。

従来の建築確認は、特定庁によるものにしても、民間機関によるものにしても杜撰だったという点がそもそもの問題だと思います。それを精密なものにすればいいはずです。精密さを高める仕組みとして、従来の建築確認に第三者機関の検査を加えようという発想が出ているのだと思います。

とはいうものの、すでに、建築確認自体が設計者ないし申請者と、検査という二重の体制になっています。それに三番目のチェックを加えたところで、精密さが上がるのかどうか疑問です。技術的・能力的な問題と、検査の責任が明確でない点が、杜撰な検査につながったと思われ、そこに第三者の検査を加えたところで、精密さは向上しないような気がします。誤りを見落とさないようにするためには、技術的・能力的な問題の克服と、責任の明確化が有効ではないかと思います。

ところで、第三者を新たに加えることで、別の視点が加わったり、別の方針を示したりすることが期待されるなら意味があるでしょう。例えば、医療におけるセカンドオピニオンのような。しかし、建築確認は、ミスが起きないように行われているダブルチェックにすぎません。これが、別のアイディアを検討するセカンドオピニオンや、科学研究などの妥当性を点検するピアレビューなどとごちゃ混ぜになって議論されていると思います。

建築確認自体が、本来ピアチェックとして機能するべきだったのに、能力不足と責任感の不足で機能しなかったことが問題です。要は、構造設計がわかる人が責任を持ってチェックしてさえいればよかったわけです。

一方、従来の検査を第三者に行わせるというのは、申請者と検査者がグルになって、お手盛りの手続きが行われないようにする効果はあるのかもしれません。しかし、そうした不正を防ぐのは、検査の責任を明確にするとともに、処罰を厳しくしつつ、摘発されなければ平気という無法状態を放置しないことが必要だと思います。

仮に、第三者が検査を行ったとしても、いい加減な検査で済ませることが可能であれば、何も解決しません。新たに割りあて作業の機関が出来て手間が増えるだけだし、検査機関の方も、割りあて機関の下請けのような存在になるだけのことだと思います。

必要なのは、第三者機関ではなく、誤摩化すのが困難な取り締まりのシステムだと思います。

ところで、建築確認は、ミスを予防し違法な建築物が作られないようにするシステムだと思いますが、その位置づけが曖昧です。申請者と対になってダブルチェックをする立場なのか、取り締まる立場なのか。

民間での検査が可能になった時から、特定庁の方には、取り締まりの任務が強く期待されるようになっていたはずです。現状では、その特定庁が、取り締まりに本腰を入れにくい事情があります。そのことを、2月27日の国土交通省の緊急調査委員会での横浜市の主張は鋭くついていると思います。

特定庁である自治体は、民間の確認に対しても責任を負うとされています。このため、取り締まりをすると自らの問題を自らの手で暴くことになってしまいます。そのことで発生する補償も用意しなくてはなりません。このため、特定庁が建築確認の問題を取り締まるのを難しくしています。

この構造的な問題は、第三者機関を入れることで解決するような問題ではありません。確認の責任と、取り締まりの責任とを明確に分離しなくてはならないと思います。現状では、イーホームズのように取り締まり側であるというポーズをとる民間機関がありますが、これも、最終的な取り締まりの前では、取り締まられる側に立つべきだと思います。

民間機関の独立性の強化という横浜市の主張は、取り締まりの強化と表裏の関係だと思います。確認・検査の権限と取り締まりの権限の分離が必要だと思います。
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by gskay | 2006-03-01 10:26 | 揺れる システム