解散予告
 衆議院の解散を予告というのは、前例があるのでしょうか?

 現在は、もっぱら、天皇の国事行為に基づくという憲法第7条説によって衆議院は解散されています。しかし、これには議論もあって、第69条の内閣不信任決議の場合に限られるという立場や、もっと広く内閣の行政機能に属するという説もあるとのことです。

 これについては、最高裁判所が「高度に政治性のある国会行為」として判断をしないことにしています。このため、どういう意見があるにせよ、また、どういう根拠があるにせよ、手続きとしては、7条解散が実施されています。

 議院内閣制が制度として定められた日本国憲法下では、様々なパターンの解散が行われていますが、前回の郵政解散と並んで、今回の解散予告は、ユニークだと思います。

 前回の郵政解散は、参院での法案否決が引き金でした。与党からの反対者が法案否決の原因でしたが、衆議院が解散し、再可決が可能な3分の2を法案賛成派である連立与党が確保して、決着がつきました。衆参が異なる議決をした場合の手段として、解散して衆議院で圧倒的多数を確保するという道筋が確立したというユニークな解散でした。

 これに対し、今回の解散は、解散の必然性が乏しいと思われます。衆参のねじれがあるとはいえ、与党は衆議院の圧倒的多数を確保しています。政権運営につまづく心配は、ほとんどありません。

 加えて、直前に衆議院で内閣不信任案が否決されています。参議院での問責決議が可決されているとはいえ、制度上、与党が衆議院の圧倒的多数をおさえている限り、内閣総辞職は必要ありません。

 にもかかわらず、首相が、約1週間後の解散を予告するという事態になりました。これで、延長臨時国会の残りは、実質的な閉会状態になってしまったと言われています。

 衆議院議員については、1週間後には議員でなくなり「前議員」になってしまうので、実際上、議員として役割は終ってしまい、次の総選挙の準備に専念しなくてはいけない状況になります。

 ところで、野党が審議拒否をしているのものの、その気になれば、与党だけで、参議院は本会議を開くことができます。いくつかの重要法案に決着をつけることも可能だと思うのですが、与党にその気はないのでしょうか?これは、怠慢のように思われます。状況次第では、野党の審議拒否の問題にも転換できるように思います。

 今回の解散予告は、国会運営の行き詰まりというよりは、与党内の人事や主導権の問題のようです。自民党の両院議員総会という議決権のある会議が開けないようにするには、衆議院議員を前議員にしてしまえばいいわけですが、そこまでしなければならないものでしょうか?あるいは、そんな方法で会議を避けて、民主的な正当性や信頼感が生まれるのでしょうか?

 自民党内の権力争いの道具として何度も解散は用いられてきましたが、このような用いられ方は特殊だと思います。国会の議論を充実させ、利害を調整するために政党が発展して来たはずなのに、その地位が逆転してしまっているように思えます。

 もっとも、「衆議院解散と金利については嘘を言ってもいい」といわれていて、どうなるかわかりません。思惑や駆け引きの対象になっており、そういうものだからこそ意味がある仕組みです。事情は二転三転するかもしれません。
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by gskay | 2009-07-17 08:00 | 政治と役所と業界