「自分の判断」
郵便割引制度の不正事件は、当局が壮大な構図を描いて摘発し、厚労省の幹部を逮捕拘留に及ぶという大事件になったにもかかわらず、真相は、現場の担当者単独の不正ということになりそうです。

検察の取り調べのあり方が問題になっている時期なので、タイムリーだと思います。これをきっかけに取り調べの透明化が行われることになれば良いと思います。

真相が担当者の独断であったなら、共犯とされた元局長の被告は無実無罪ということになりますが、そうなると、それだけでは済まされないだろうと思います。元局長がどの程度がんばるかはわかりませんが、失われたものを回復しようとするのではないかと思います。そのエネルギーがどこに向かうかによっては、検察の担当者は、気が休まらないないのではないかと想像します。

ただ、完全な共犯とまではいかないが、上司としてして許されることではないというような理由をつけて、無理やり有罪にするということも、日本の司法ではありえることのように思われます。取り調べ段階の滅茶苦茶さを棚に上げ続けるためには、そういう方向に進むこともありえると思います。当局がこぶしを振り上げた場合、それがどんなに理不尽なことであっても、これまでは正当化される傾向にあり、それがすぐに改まるとは思えません。


asahi.com(朝日新聞社):郵便不正 元係長「自分の判断」証言、元局長の関与否定


厚生労働省から、自称障害者団体「凛(りん)の会」(現・白山会、東京)を郵便割引制度の適用団体と認めた偽の証明書が発行された事件で、虚偽有印 公文書作成・同行使の罪に問われ、無罪を主張する同省元局長村木厚子被告(54)の第8回公判が24日、大阪地裁であった。村木元局長の共犯として起訴されている当時の担当係長上村(かみむら)勉被告(40)が証人に立ち、担当課長だった元局長が上村元係長に不正発行を指示したとする検察側主張を否定し、「自分の判断でつくった」と述べた。

 大阪地検特捜部が摘発した事件の構図をめぐり、当時上司の元部長(58)や上村元係長の前任の元係長(48)が「虚構」「元局長は冤罪」などと法廷で証 言したのに続き、不正発行に直接かかわったとされる「重要証人」の上村元係長も元局長の関与を否定したことで、検察側の立証はさらに困難を強いられること になった。

 検察側の構図では、上村元係長は2004年4月の異動で担当係長になった際、前任の元係長から、凛の会への証明書発行は当時衆院議員の石井一参院議員の 「口添え」があった「議員案件」で、早急に証明書を発行するよう引き継ぎを受けたとされる。

 だが、上村元係長は検察側の質問に「この件の引き継ぎはなく、凛の会関係者からの督促の電話で知った。着任当時は予算の仕事で非常に忙しく、一刻も早く 消し去りたい話だった」と説明。偽の証明書は「自分で勝手に決めて作った。上司に相談や報告はしておらず、隠しておけばばれないと思った」と涙ながらに述 べた。

 さらに検察側主張では、上村元係長は04年6月上旬、村木元局長から指示されて偽の証明書を作成し、元局長に渡したとされている。元係長は尋問で、元局長とは「仕事の会話をしたこともない」と話した。

 元係長は昨年5月、うその決裁文書を作ったとする虚偽有印公文書作成・同行使の容疑で逮捕された。関係者によると、偽の証明書についても、逮捕当初は 「独断で作った」と説明。だが、その後の取り調べに元局長からの指示を認めたとされ、特捜部は偽の証明書をめぐる同容疑で元局長とともに元係長を再逮捕し た。



検察の失態ということになると思います。

耐震偽装事件では、元建築士が、発覚後に自分の責任をごまかすための発言をしていて、それに捜査当局も世の中も引っ掻き回されました。その結果、関係者が耐震偽装と直接の関係はない別件で有罪判決を受けていたりします。この別件での処罰というのは、その経緯を考えると適当ではないと思われる部分もありますが、出てきたしまった罪状であるには違いありません。

これに対し、今回は、本人が当初から否定しているにもかかわらず、検察が描いた構図を無理に本人に押し付け、検察が都合のいい調書を歪めて作ったということになります。

てっきり、元係長が、まわりに責任転嫁をしようとしていたのかと思っていました。しかし、そうではないようで、これは、失態という言葉では片付けられないような問題を検察につきつけることになるように思います。

ひょっとしたら、そういうことまで想定した壮大な企みなのかもしれませんが、検察のダメージは、とても大きいのではないかと思います。
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by gskay | 2010-02-28 03:52 | 政治と役所と業界