「偽装とまで言えず、名誉棄損にあたる」
「構造計算書の偽装」というのは、大臣認定プログラムを用いた場合に起こります。

このプログラムを所定の手続き通りに利用した場合に、建築確認の特例的な手続きがあり、その特例的な手続きが、事実上の検査の省略だったため、いい加減に記入されていたり、不適切に書き換えられていた書類が素通りしていました。その極端なケースが耐震偽装事件です。このため、このプログラムの取り扱いに厳格さが要求されるようになりました。

このプログラムは、特別な手続きのためだけのプラグラムではなく、それ以外の計算にも用いてよいので、このプログラムの計算結果のプリントアウトは、他の計算にも用いられます。

特例的な手続きにおいて書き換えなどを行えば、偽装であり違法行為です。

しかし、プログラムから出力された結果を利用はするものの、他の方法によって計算を完成させる場合、プリントアウトを加工して用いてよいかどうかに関する規定は、明確ではなかったのだと想像します。

国土交通省としては、プリントアウトの加工を全面的に禁止したかったようですが、裁判所は、特別な手続きの場合に限って書き換えのような行為を禁止するのが妥当だと判断したものと思われます。


HPで「偽装」名指しは名誉棄損、国に削除命令 : 社会 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)


HPで「偽装」名指しは名誉棄損、国に削除命令

 構造計算書を偽装したとして国土交通省から4月、名指しで発表され、「名誉を傷つけられた」として、大阪市の建築士が同省のホームページからの記事削除を求める仮処分を申請し、東京地裁が「偽装とまで言えず、名誉棄損にあたる」として国に削除を命じたことがわかった。28日付。

 決定によると、大阪市の張武雄・1級建築士は昨年8月、京都府内の賃貸アパートの構造計算の際、コンピューターのプログラムにより警告が表示されたにもかかわらず、表示を削除して建築確認申請を行った。

 同省は警告削除を「偽装」としたが、田代雅彦裁判長は「警告が出ても、安全性が確保されていたことは構造計算書の数値から検証可能だった」と指摘した。
(2010年6月29日21時06分 読売新聞)


計算数値を利用するだけなら、警告には意味がありません。その警告を、プリントアウトから消してしまってよいかどうかについて、おそらく、取り扱いを決めていなかったのだろうと思います。

私は、大臣認定プログラムのような特別なプログラムの運用は厳密であるべきなので、警告が出た場合、その警告を無視するための書き込みなどを行えるようにして、なるべくプリントアウトを変更させないように運用するべきだと思います。

その一方で、「偽装」と名指ししたことに関しては、大臣認定プログラムの意義を拡大解釈しすぎているか、利用法を誤解しているのではないかと思います。

私は、裁判所の判断を適切だと思います。国土交通省は、この事例に対しては、指導の徹底などをすれば充分に目的を達成できたのに、不用意に、余計な損害を与えてしまったことになると思います。

できれば、大臣認定プログラムのようなものを汎用に使ってほしくはないものの、そのコストを考えると仕方がないようです。汎用に使われるということを前提に、運用のあり方を見直すべきであったのに、国土交通省がそれを怠っていたのが問題だと思います。
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by gskay | 2010-07-01 12:21 | 揺れる システム