レンジとレンジフードの離隔距離
建て直し中のマンションは、様々なところに自由がききます。分譲とは異なるメリットだと思いますが、おかげで、いろいろな規制があることを思い知らされます。

つい先日、設計を担当する建築士さんからメールが来ました。希望したキッチンの高さを確保すると、法的に必要なレンジとレンジフードの間の「離隔距離」がわずかに取れないとのこと。そこで、キッチンを低くするか、レンジフードを別のものに変更するかの判断が必要とのこと。別のレンジフードにすると追加料金がかかるそうです。

設計というのは、とても細かい仕事であると、あらためて感心しています。

私は、今まで、建築士には、技術者としての裁量が広く与えられていると考えていましたが、現実は、むしろ逆。まるで細かい規制に適応させることが建築士の仕事のようであり、国家資格は、その規制に適応させる能力についての資格であるように思います。

技術は、日進月歩であり、それに追い付いていくために、プロフェッショナルは常に努力しなくてはいけません。その努力の先には、先進的な技術の創造も期待されていると思います。国家資格を持つことによって生じる裁量の余地が、進歩の原動力になりうると思います。

しかし、そういう能力が必ずしも国家資格として認定されているわけではないようです。

現実には、国家資格を持つ事によって、規制にあわせることに拘泥してしまうことになります。これでは、技術の本質を忘れてしまう人が出てもおかしくないのではないかと思います。法令にあわせる努力ばかりになってしまって、技術の正しさの検証の重要性が二の次になってしまうおそれを感じます。

そうした本質を忘れたところに、耐震偽装が生まれる余地があったのではないかと思います。

基準や規制、規格は、技術の進歩によって変更されるものです。その変更の細かい内容だけでなく、その内容の背景にある技術の進歩についても思いを巡らせることができ、自分なりの見解をもったプロフェッショナルであってほしいと思います。

わたしは、技術的な妥当性を建築士が立証することができるのであれば、法令の基準を外れる設計であっても構わないという仕組みを作ってもいいという考えです。逆にいうと、技術的な妥当性を立証できる能力がない建築士は、基準を遵守しなくてはなりません。

法令の基準に外れた設計などを、技術的に評価する仕組みが、現状ではしっかりしていないように思います。建築士同士の議論でも良いし、公的な建築主事や検査機関との議論でも良いと思いますが、そうした議論が必要ではないかと思います。プロフェッショナル同士の、そうした厳しさの中で、優秀な建築士は育つのではないかと思います。

今回のレンジとレンジフードと離隔距離のようなものは、そんな煩わしいことをする必要がある問題だとは思えません。ただ、担当の建築士さんの苦労は、技術者やプロフェッショナルの喜びのような形では報われるような苦労ではないだろうと気の毒に思っています。
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by gskay | 2010-09-16 13:15 | 建て直し