緊急調査委員会報告書
『構造計算書偽装問題に関する緊急調査委員会最終報告(座長案)』という書類が、国土交通省のサイトにあります。まだ、他の委員の方々に異なる意見があるようで、その意見もダウンロードできます。「おわりに」が出来ていないようですが、ほぼまとまっているようです。全部で26ページの文書です。

とても勉強になります。特に、第2章の中で、建築確認制度の歴史的背景を分析しているところが、知らない内容ばかりで面白いと思いました。専門家には当然の内容かもしれません。

報告書では、1950年の「建築自由」の原則の確立と、建築士の業務独占、建築主事の確認という制度の成立を民主的と評価しています。それまでは、警察行政による建築規制であったそうです。

「判定ミスがあった場合、確認を受けたからといって、設計の内容が合法化されるわけではない」というのは、その通りだと思われます。

で、その判定ミスの責任は?責任への言及は不十分です。

「建築許可でなく建築確認としたのは、戦後復興に応える簡素な建築規制への要請に加え」、「民主主義の理念が込められている」とのこと。初期には「建築士の設計」と、「建築主事の法適合の確認」という「二重制度」として機能していたそうです。

「簡素」という要請が基盤にあり、それが今に至っているという点は、戦後復興を引きずっている制度だったわけです。「簡素」のまま、放置する必然はなかったように思われるし、その後の建築確認に期待された機能は別だったと思います。そして、「誤解」との乖離がはじまったようです。

当時は「民主的」でも、現状では「無責任」となってしまった建築確認の成立の経緯が、報告書から少し理解できます。このシステムが、その後の建築技術の高度化や、木造住宅から鉄筋コンクリート建築物へのシフトによって、いかに破綻して行ったかもよくわかります。さらに、マンションの分譲と言う方式が、想定されていなかったという重大な欠陥を指摘しています。

建築主は、「建物を建て、所有し、そこに住む」というのが前提になっており、「建築主のために働く建築士は、自動的に住宅所有者・利用者の利益に繋がる仕事をていた」としています。

ところが、分譲マンション。「真の建築物の利用者と建築士の距離」が遠くなってしまったと指摘しています。

さらに、建築基準法の建築確認に、「過大な期待」がよせられ、市場に「誤解」に固定されてしまったと指摘しています。「誤解」の内容の分析は、あまり深く行われていないと感じました。自分の「誤解」から経験したことに比べ、甘いと思います。

第3章の提言は、第2章に比べるとおとなしい印象です。ただ、建築士を医師と比較し、「医師が医師免許を有していれば全ての分野の業務が可能であるのと同様」としながら、「医師同様、建築士も、専門分野以外のことはほとんど理解できない」という点は、幾重にも疑問です。健康問題に対処する医師という仕事と、創造をする建築士の仕事は性質が異なっていると思います。専門分野の理解については、医師は、専門分野以外のことも理解しているが、自分の専門以外は、もっと優秀な専門家に任せるということのような気がするのですが……。

施工についての問題にも言及されているのは、耐震偽装への調査という目的からそれているように思いますが、無視出来ない問題を直視しているのだと思います。

「青田売りの課題」に対し、「スケルトン段階での販売」が提言されていました。期待します。

第4章に今回の対応について反省が記されています。これも、第3章同様で、目新しいものは少ないと思いました。

第2章がすばらしいと思います。もっと、詳しく知りたいと思いました。(といっても、今回の問題が解決するわけではなく、単なる知的好奇心ですが……)

また、建築について、「自由」が損なわれないように配慮しているとともに、これから専門家をめざして勉強する人のやる気ややりがいも重視していると感じました。
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by gskay | 2006-03-29 23:43 | 揺れる システム