メディアの報道姿勢
情報を発信するメディアにとっては、見てもらうことが価値です。正しいことを伝えているだけではダメです。見てもらわなくてはなりません。見てもらったら、次もくり返し見てもらわなくてはなりません。そのように見てもらうことでメディアとしての価値があがり、企業としての収入をあげることができます。

これは、新聞でも放送でも同じことだと思います。

メディアは、自由な立場で、民主的な社会を精神的に支えているという建て前を持っています。しかし、同じような発想で、同じように反応する受け手が多ければ多い程、メディアにとっては有利になります。自由な立場や、民主的な思考は、送り手にとっては厄介です。むしろ、嗜好を揃えてしまう方向に努力した方が有利です。

ところで、近年のメディアによる報道は、結構手抜きだと思います。報道の骨格の部分は、通信社の記事の使いまわしにすぎません。様々なメディアの独自の視点によって事件の真相が明らかになるというシステムではないと思います。むしろ、誤った方向になだれをうって進みやすい仕組みになっているのではないかと思います。

メディアは、正義を標榜する以上、自らの誤りを認めるのは難しいものです。しかし、通信社の記事の使い回しなら、間違える時も、一斉に足並をそろえて間違えるので安心です。みんなが騙されているように見え、仕方がないように見えます。不可能であったとか、「巨悪」に騙されたことにすることができます。

みんなで、「力不足で、真相究明にいたりませんでした」といえば、不可能に対する充分な言い訳になるとともに、誤りに陥れた「巨悪」の存在をにおわせることができます。他人の不可能には厳しいくせに自らの不可能には甘く、責任回避のために、他人の責任転嫁。当事者の誰かのせいにしてしまえばいい。

そうした誤りの原因は、使い回しの元の記事の誤りを、無批判に取り上げた各メディアの姿勢にあると思います。元の記事の誤り自体は、あまり重要ではありません。ある程度の間違いは、仕方がないことです。しかし、それぞれのメディアが、その元の記事を無批判に受入れ、一斉に間違えることが問題です。それは、それぞれのメディアの不十分な取材によるものです。そして、知識不足による見込み違いや先入観も問題です。

中には、独自取材の成果で、騙されなかったメディアもでます。その時は、スクープとして賞賛されます。でも、スクープは、卓抜した取材力の成果というより、他のメディアの怠慢の裏返しが多いような気がします。

もちろん、個々のメディアは、他社との差別化も必要です。一応、スクープを狙って頑張っているというポーズも必要だと思います。メディアが動いているということも伝えなくては、受け手に信頼はされません。そこで、独自性を醸し出すための取材があり、編集が行われて発信されています。

肝心なところは通信社に頼る一方で、本質から離れたディテールで、「独自取材」がエスカレートしています。エスカレートした取材風景を自ら報じてみせる傾向があります。どうでもいいところに受け手の注意をそらしながら、「メディアの存在感」を出しているような気がします。

取材が殺到している場所に、スクープなんてあるのですか?これも、結局、足並を揃えているだけのような気がします。このエスカレートは、すでに異常なレベルに達し、「被害」を意識しなくてはいけなくなっているように思われます。(メディア側は、「自由」を盾に開き直っているようですが、自制をしないと……)

また、最終的には、独断と偏見で分かりやすさを追究する編集があります。高度に単純化され、複雑な事情は省かれます。面白い事実や本質に関わる事情があっても、複雑になると判断されたり、これまでの報道の経緯に都合が悪いと「表」には出ません。「表」には、勝手に作られたストーリーが流れます。

その「表」とは、画面であり、紙面。

それに受け手が飛びつき、その飛びつき具合を、広告主や、株主が評価する。何を流すかということや、受け手にどのような影響を与えるかと言うことではなく、いかに受け手に飛びつかせるかというのが、企業としてのメディアの課題です。

企業としてのメディアによる報道には、記事の使い回しによる横並び姿勢、核心から離れた部分でのエスカレートした「独自取材」というパフォーマンス、極度に単純化された編集という問題があると思います。足並を揃えて間違った方向に進んだり、真実から遠ざかる仕組みはこんなことではないかと思います。それぞれの問題が、それぞれに悪い影響を社会に与えていると感じます。そこでは、メディアの建て前は成り立たず、別の課題が優先されています。

メディアの正義に対し、疑いをもつ人と、信じる人に分化しているような気がします。私は、疑いを持っています。
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by gskay | 2006-04-11 12:10 | メディアの狂騒