国土交通省に対する期待
法律違反については、違法建築の規制を司る国土交通省こそ、違反を判明させる責任を果たさなければならず、捜査機関に下駄を預ける態度は許されないと思います。

<耐震偽造>危険な建物売却…詐欺被害の立件目指し捜査(http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060426-00000052-mai-soci)

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 ◇「厳正な処罰を」国交省幹部
 一斉逮捕を受け、国土交通省建築指導課幹部は「法律違反が捜査で判明したということ。厳正に処罰してほしい」と語った。1級建築士が「建設会社から鉄筋を減らすよう相当プレッシャーを掛けられた」と証言し、「審査が通りやすい」と指定確認検査機関を選んだ実態が浮かび上がった今回の事件。国交省は、建築基準法など関係法令や制度見直しを迫られた。
 この幹部は「国の調査に限界のあることが分かったが、強制捜査でさらに事件の全容を明らかにしてほしい」と話した。

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 ▽建築関連法の見直しを3年前から提唱している「建築基本法制定準備会」の水津秀夫事務局長(1級建築士)の話 つまらない名目での逮捕だと感じる。耐震性に疑問のあるマンションが販売され、その過程で不正があったことは間違いない。それなのに、ささいな別容疑でしか逮捕出来ないのは、現状のシステムに問題があるからではないか。建築基準法は戦後の廃虚を国を挙げて立て直す時代に作られた法律で、今回のような不正を犯したり、不正を見逃した人を厳しく処罰することを想定していない。国も含めて関係者が責任逃れをしているが、さまざまな立場で建築に関与する人や機関の役割や責任を明確にする法律を早急に作るべきだ。

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(毎日新聞) - 4月26日13時12分更新

内容豊富な記事なので、2カ所を部分引用しました。前半の引用で指摘する「浮かび上がった実態」は、当初かかれた構図とは異なりますが、幕引きの方向性を示すものだと思います。そこに、国土交通省の幹部の談話が書かれていますが、随分と呑気なコメントだと思います。それに対し、後半の引用の「建築基本法制定準備会」事務局長のコメントは、とても厳しいものだと思います。

記事としての取り上げ方の問題もあると思いますが、国土交通省の幹部については、二重に許されないと思います。違法建築を摘発し、法律違反の内容を解明することを専門的な立場から進めることができなかったことを他人事のように語っています。また、「建築自由」の仕組みの中核にいるはずなのに、警察の介入を歓迎しているかのような発言です。

法律の不備や不適切な業務によって、本来の務めを二重に果たすことができなかったことを悔しがってもいいのではないでしょうか?また、問題を予防できなかった上に、発覚から公表までの後始末や、公表後の対応について混乱してしまった事を、もっと重く捉えてもいいのではないかと思います。

建築の仕組みは、専門家による切磋琢磨による前進を前提として促進する仕組みであり、それが国民の利益につながるはずでした。工夫や研究によって、常に進歩する専門的で高度な領域であるからこそ、取り締まりや規制が、警察ではなく、国土交通省や特定行政庁に委ねられていたのだと思います。

専門家による判断を、結果を理由に取り締まることに慎重な警察の配慮は、評価すべきだと思います。国土交通省は、その配慮に応えた対応をしていることをもっとアピールして欲しいと思います。

また、「調査の限界」は、強制捜査に委ねるべきことではないものです。国土交通省が解決しなくてはいけない問題です。権限の限界ではなく、能力の限界や、意識の限界です。強制捜査が解明するのは、建築の中身や性能の問題には及ばないと思います。そうした点については、国土交通省が明らかにした問題を、警察が処理するべきものであったのに、それができていないと思います。

そもそも、専門性の中での判断や対応の適否と、その判断や対応が遅れたりデタラメであったり恣意的であったりすることとは分けて考えなくてはなりません。判断の適否については、いたずらに責めるべきことだとは思いません。誤った判断であったとしても、国民の信頼に応えてはいないものの、限界がある以上、仕方がないこともあると思います。しかし、遅れたりデタラメであったり恣意的であったりすることは、国民の利益を害していると思います。ここには、断固とした責めが必要だと思います。

建築の自由で民主的な仕組みの上にあぐらをかいていて、何もしていなかったばかりか、冒涜しているのではないかと思います。

戦後復興体制の後始末を先延ばしにしてしまったことで、システムが陳腐になっているという指摘は、もっともなことだと思います。責任や役割を法的に明確にする作業は必要なことだと思います。その作業は、これまでの理想を尊重し、節度をもって行われるべきだと思います。その法制化の前提として、理想を担うはずの国土交通省の意識を問わなくてはいけないと思います。

落胆させられることもありますが、それを乗り越えることを期待しています。その前に、「清算」が必要であるかも知れませんが……。
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by gskay | 2006-04-27 17:04 | 政治と役所と業界