効果的
マスコミが好んで使っていた「震度5強で倒壊のおそれ」の根拠も、閾となった「0.5」も、説明らしい説明はなく、要は、手続きとしての一次設計、二次設計と言う段階のうち、一次設計に注目したと言う事だったようです。『建築知識』6月号の特集の最初の記事、国土交通省の担当課長のインタビュー記事を読みました。

だったら、そっちを強調してくれれば良かったのに。

「200gal閾説」などの推測もありますが、必ずしもそういう問題ではないようです。

「性能」が問題だと断言していないことには、少しがっかりしました。確かに、今のところ、「性能」を根拠として強調しすぎると、既存不適格についてもしかるべき対応が必要になってしまい、大変なことになってしまします。そういう意味で、「性能」の方を強調できないのかもしれません。

とはいうものの、「震度5強で倒壊のおそれ」という「性能」に関する指標が、マスコミで過剰に報道され、国民の反応も加熱してしまいました。内容のよくわからない表現ではあるものの、「常識」のレベルとして定着してしまいました。

その表現の妥当性や、発表に至る経緯、取り上げる姿勢など、問題はたくさん指摘できます。翻弄された側にとっては、腑に落ちないところがあります。

しかし、すばらしい効果が上がったと思います。「震度5強で倒壊のおそれ」という表現は、建築物の「性能」こそが問題であるという意識を根付かせることになったと思います。実は、手続きや形式の問題であった問題を、質的に転換しました。

これまでは、入力された数値が妥当であるとか、計算の手続きが正しいかどうかとか、適法であることを検査に合格して証明されているというようなポイントだったのかもしれません。しかし、この事件を通し、「性能」こそが問題であるという意識を明確にしました。

今のところ、「震度」、「倒壊」、「おそれ」など、曖昧な用語でしか「性能」が表されていないものの、今後、より厳密なものに発展する可能性があります。

意図していたのかどうか伺い知ることはできません。さしあたっての取り締まりの根拠は、手続きや形式です。その部分を明確にしているとは言えない点は問題かもしれません。しかし、その先の目標として、「性能」を設定することに成功しています。

こうした形で、行政が新しい概念をセンセーショナルに世に投げかけるのが妥当かどうかわかりません。しかし、効果は絶大だったと思います。

『建築知識』の特集を読んで最初は迷走していると感じました。しかし、よく考えると戦略的な効果は絶大だったと思います。おそれいりました。
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by gskay | 2006-05-27 23:29 | 政治と役所と業界