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公団への期待
公団は、新しい住環境の提供のリーダーの役目を果たしていました。成長の時代には、公団が提供する新しい住生活に大きな魅力があったと思われます。今は、別の観点から、公団住宅の末裔のURに注目しなくてはなりません。

公団マンションの値段は、決して安くありませんでした。むしろ、民間に比べ、高い場合が多く、高い価格とひきかえに、先進的な住環境と安心を手に入れたのだと思います。右肩上がりの成長を先取りするようなものだったのかもしれません。

公団住宅に住むには相当な収入が必要で、その審査も厳格なものであったそうです。公団住まいは、金持ちではないが、安定した豊かな生活の証のひとつであったのだと思います。加えて、公的なプロジェクトであり、先進性と安心感が魅力でした。

比較的収入が高い層に人気があり、価格に神経質になるより、先進的な企画が尊ばれる環境にあり、豊かな資金的環境で事業を進めることができたのではないかと思います。そのような状況では、厳しいコスト管理は要求されなかったのではないかと思います。

コストが多少かかっていても、先進的で魅力あるマンションであれば人気があり、最終価格で回収可能であるばかりか、その利益から次の事業のための資金の確保できるような情勢だったのではないかと思います。大胆に、次の事業へとすすめることができたのだと思います。

これまで、民間のマンション事業も、成長を前提とした体質を引き継いでいて、人気が出る企画を作れれば、多少、コストが余計にかかっても、価格に転嫁して解決できるという仕組みで進められてきたと思います。

社会が成長し、発展している時代には、そういう事業が歓迎されたのだと思います。

しかし、今は、成長の時代とは言いがたく、マンションや住まいについて、高いコストに見合うだけの魅力となる先進性というものを打ち出しにくくなっていると思います。競合相手となる供給業者も充実しました。

結局、公団の分譲マンションは、早々に、値段に見合う先進性が確保できなくなり、苦戦が強いられる事態となりました。公団による分譲の末期には目論み通りにいかない事業もだいぶあったようです。社会や経済の成長にともなって住生活が革新されている時代が終わり、成熟段階に入ったということではないかと思います。

これからの時代、成長を前提とした大胆で強気な分譲への人気が復活するとは思えません。にもかかわらず、今でも、業界には、先進性を理念とする高コスト体質が残っていて、そこに安住していると思います。成熟を遂げた今、先進性は期待できないにもかかわらず、コストへの意識は変わってこなかったと思います。

加えて、今回、公団でさえ、安心については厳しい見方をせざるを得ない状況が明らかになりました。先進性ばかりを重視し、次の事業を前提とした利益確保を優先し、高コストでも、安心は軽視される傾向があったのかもしれません。こうして作られてしまった建物が抱える問題の解消の目処は立っていないと思われます。今でも、作り続けられているのかもしれません。

ところで、個々の事業について言えば、安心に注目が集まり、品質を厳しく評価するようになっていくと思います。また、大きく需要を眺めれば、建て替えや再開発にシフトしていくと思います。

こうした変化は、先進的な魅力で新たな需要を掘り起こすことにしがみついた従来の高コスト体質では対応できないものです。目新しさは二次的なものになり、厳格な管理によって安心が確保されたマンションが安定して作られることが重視されるでしょう。

厳格な管理を行うなら、同じ性能なら低コストが要求されます。性能に厳しくなると同時に、コストの無駄に対しても厳しくなると思います。同じ費用であれば最大の性能を確保し、同じ性能であれば最小の費用で実現するという姿勢が求められていると思います。結果として、建物の寿命も延び、作り続けることを前提とした業界に変化が必要になると思います。

目新しいものを作り続け、新たな需要を掘り起こす仕組みには見切りをつけ、既存の建物の建て替えや、再開発という事業を充実させる必要があると思います。これは、同時に、より厳しい品質管理とコスト管理が要求されると思います。しかし、それに対応できる仕組みは未整備だと思います。

その未整備な部分をリードすることが、URに期待されているのではないかと思います。

あいにく、これまでの公団は、成長時代の住環境の改革のリーダーでしたが、杜撰な管理で、欠陥まで振りまいてしまったという点でもリーダーでした。その後始末として、いかに適切に建て替えを行うかが、成熟社会におけるURがリードしなくてはならないポイントだと思います。

URになって、「再開発」が強調されています。ピンとこない部分があり、イメージが掴みにくいと思っていました。

この状況になって、その「再開発」とは、成長の時代に作られ、中途半端に置き去りにされている建物の再開発ということではないかと、思うようになりました。欠陥住宅の建て替えや再開発をスタートにし、さらに既存の性能が不十分な建物へと事業を押し広げていくための絶好の機会は、今なのかもしれません。

今、URは、業界が大きく変身するためのリーダーとなることが期待されているように思われます。成長を前提として建物を作りまくる段階を終え、成熟したという前提で建物を作り直していく時代に入ったと思います。

成長が期待できない時代の再開発や建て替えは、厳しい意識を持った依頼になると思います。そのようにして、作り直された後の建物は優れた性能を持ち、寿命はとても長いものになると思います。それは、ある意味で、これまでの業界の利益に反します。当分の需要は高いものの、将来は、淘汰も必要になるのかもしれません。それでも、成熟を迎えた時代の変化として対応していくべきことだと思います。

変化に対し腰の重い業界をリードし、性能に優れ、寿命が長い建物を作る体制を確保してみせることが、当面のURの責務なのではないかと思います。かつて、成長を牽引するリーダーであったように、成熟の時代にも変革のリーダーとして活躍できるかどうかが試される時期に来ているように思います。

URには、これまでの先進性への挑戦から、どのような水準を求めるべきかという知識の蓄積があると思います。その性能を軸に、それを納得できるコストを実現する体制をいかに築くかが、URに求められていると思います。安全な街を作るために、URのような組織の活躍は欠かせないような気がします。

過去の不手際を非難することも大切かもしれませんが、これからの時代に対応するための変化に期待すべきではないかと思います。
by gskay | 2006-06-13 13:32 | 政治と役所と業界