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「新1級建築士」?
「試験をする」とか、「降格」とか、センセーショナルな部分ばかりが報道されています。肝心なところに触れていると私が思ったのは、朝日新聞です。

asahi.com構造・設備設計に専門資格創設へ 建築士改革で国交省


2006年06月26日23時30分

(略)

構造と設備の新設2資格は、新1級建築士の指示を受けて高さ20メートル超の建物の構造設計、設備設計をする際に必要。無資格者に対する両設計業務の委託は禁じられる。

引用で省略した部分については、他と大差ないと思います。

そもそも、能力不足の1級建築士の存在が、問題が表に出る発端でした。このため、建築士の能力の向上に注目が集まっているようです。しかし、そのような能力のない専門家については、厳しく追及し、処分する仕組みをつくれば済む事です。

より深刻な問題は、有資格者のもとなら、無資格でも業務についてしまうことが常態になっている点ではないかと思います。しかも、これまで、それを許した有資格者の責任も、業務に従事した無資格者の責任も曖昧でした。その問題を、明確にすることが「資格制度」の第一歩です。

逆にいえば、そんなことも実現できていないということです。そんな状態で、資格制度をいじったところで、良い効果はでないと思います。朝日新聞が報じた「無資格者への業務委託禁止」は、とても重要です。

ところで、建築士の資格制度を考える上で、医師の資格と比較されることが多いように思います。しかし、医師と建築士では性格が違います。

強いて言うなら、パイロットの資格に倣うべきではないかと思います。パイロットの事業用免許は機種別です。安全の確保が優先なら、医師に倣うより、パイロットに倣うべきです。そもそも、今や、「国土交通省」なのだから、その辺はお手の物でしょうに。

現在の医師の仕組みで最も重要なポイントは「応召義務」ではないかと思います。困っている人に頼まれたら、相当の理由がない限り、自分の都合で断ってはいけないというルールです。最善をつくすことが求められています。その最善には、応急処置だけして、他の医師に任せるということもふくまれてはいますが……。

医師は、何でも診なくてはいけないので、何でも診てよい資格になっています。

一方で、建築士に「応召義務」はありません。イヤなら断れる。無理なら断るべきです。

ならば、医師のような「何でも」という資格を用意する必要はないと思います。「新1級建築士」というオールマイティーなスーパー免許を用意する必要はありません。むしろ、高度化し専門化している点を重視し、一定以上の難易度については、個別の免許を用意し、厳格に審査していくべきだと思います。

朝日新聞が注目した「無資格者への業務委託禁止」は歓迎です。それは、責任を明確にするからです。しかし、新たなスーパー免許導入は感心できません。技術の高度化や専門化への対応は、きめ細かく行われるべきだからです。
by gskay | 2006-06-27 16:19 | 揺れる システム