建て替えの主体
耐震偽装の建て替え物件に対する国のスキームでは、誰が建て替えの主体になるのかということに問題があるようです。国のスキームでは補助をスムーズに行うという観点のためか、自治体やURを考えているようでした。この点について、権利関係や負担の観点からの見直しが行われています。

URや大抵の自治体は、再開発のノウハウを持っているはずです。これは、建て替えを推進する上では強力な存在です。

だとしても、URや自治体は、主体になることについては慎重にならざるをえません。もともと、再開発でも、建築主は組合であることが多いのではないかと思います。その上、品質の保証が、システムとして信頼を置けないことが明らかになっています。瑕疵担保の問題などを念頭におくと、公的な機関が、積極的にリスクをとって建築の主体になるというのは難しいと思います。

とりわけ、URの場合、違法建築を大量に作ってしまった旧住宅公団の後始末で大変なことになっています。この時期に、建築主になって頑張るのは難しいだろうと思います。

ちなみに、この問題も、建築確認などの検査制度の問題が関わっています。公的機関やURなどは、申請して審査を受けるのではなく、「通知」という手続きで、民間の業者とは扱いが違います。考えようによっては、この仕組みを利用できることは、都合がよいことです。しかし、瑕疵担保責任など権利関係の問題を乗り越える程のメリットにはならないような気がします。

さらに費用についても、土地代のみの買い取りによる除却と建て替えを前提にした再分譲プランには、難点が多く、むしろ様々な負担が、住民にも自治体や国にもかかってしまいかねないと指摘されています。具体化の前に、きちんと検討しなくてはなりません。

そうした検討をする上で、自治体やURのこれまでの経験は、やはり貴重です。良かった事例だけでなく、悪かった事例も参考にして進めて行くべきです。解体の費用の問題など、通常の再開発や建て替えとは異なる特殊な事情ですが、その特殊な事情より、参考になる共通点を重視するべきだと思います。

ところで、最初に建て替えに踏み出した川崎市の物件は、民間方式です。民間の方がスムーズで、無駄が少ないことが確実なら、流れが大きく修正されるような気がします。

公的な資金で対応するには、妥当性が必要で、その確保についての厳しい枠組みが、国のスキームといえるかもしれません。しかし、これは、権利関係を複雑にし、住民の負担も、公的な負担も増加させてしまいます。加えて、当初とは異なり、売り主などから回収する手だては絶たれています。後日、売り主に転嫁すればいいかと言う安易な発想は許されなくなりました。

具体化の前提として、権利関係を整理し、費用の無駄を減らすことが必要だと思います。川崎市の物件の進展の陰には、当局の思い切った判断と、その前提となる分析があったのではないかと想像します。そこを基盤に、住民自身やコンサルタント、業者の努力によって、最初の建て替えの具体化に辿り着いたのだと思います。

今一度、国のスキームにどういうメリットがあるのかよく考えてみる必要があると感じています。私は、もともと「自力でとっとと建て替える派」であったので、川崎市の民間方式は、好ましいと思っています。国のスキームの背景にある理念にそった建て替えができるように工夫しなくてはなりません。
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by gskay | 2006-08-14 11:04 | 公的対応