地方分権
今後、国レベルの「小さな政府」が実現するかどうかには、「官から民へ」よりも、「中央から地方へ」という流れが大切だと思います。

地方自治体の地位や権限は向上します。その分、どうしても、財政面での負担や人材確保が問題になります。市町村合併も行われ、個々の自治体の底力が高められ、権限委譲の受け皿としての条件を整えつつあるようですが、準備不足や実力不足が多く、中には破綻している自治体もあります。

「中央から地方へ」に対する懸念は、権限の受け皿になるはずの自治体の実力不足に対する懸念ではないかと思います。おそらく「中央から地方へ」という流れに対する頭ごなしの抵抗は少ないのではないかと思います。しかし、財政や人材という現実問題への懸念は大きいと思われます。

これまでのような中央への権限の集中は、中央から新しい仕組みが提案され、それを効率よく普及するために必要だったと思います。今後も、全く新しい問題への取り組みが提案され、それを全国に普及しようという時は、中央集権的に実施するのがいいかも知れません。しかし、行政的な指示が中心になるのではなく、法によって指示をするべきだと思います。

地方分権は、今後の体制を考えるうえで、重要な問題です。中央については、既存の体制から脱皮が進み、国会レベルでも改革されました。選挙制度の整理が大きな変化につながりました。議院内閣制における政権安定を可能にする仕組みなっています。さらに、地方への行政的な権限の委譲により、中央官庁がスリム化されようとしています。国全体への影響は立法を通して行われるという前提に移行しつつあるとともに、立法が内閣の思い通りにできない仕組みにもなっています。

そうした中央の体制の変革という事情によって、地方に権限が一方的に押し付けられることは、地方にとっては、いい迷惑かもしれません。しかし、後戻りはできないのではないかと思います。「中央から地方へ」の流れは、止めてはならないと思います。

あいにく、地方の仕組みは、大して改革が進んでいないように思われます。積極的に権限の受け皿としての体制を整えているところはわずかで、ほとんどは、手をこまねいている状態ではないかと思います。地方自治体は、小さくスリムになるべきなのか、それとも、大きくなることを目指すべきなのかという見通しもバラバラではないかと思います。

この問題に対しては、いくつもの解決手段が用意されているように思います。「官から民へ」の移管を同時に進めることも、解決の手段になると思われます。また、一部事務組合の結成も、効率化に寄与すると思います。個々の業務を個々に見直して、個々の地域の事情に即して対応すべきであり、全国統一的な解決方法はふさわしくないように思います。

もしここで、全国統一的に対応してしまえば、分権の効果は乏しくなるのではないかと思います。中央が、財政的な支援や人材の派遣、出向等を行うことは最低限にすべきです。中央からの行政的な指示で体制を整えるのではなく、法に則って、地方の独自の判断で体制が整えられるべきだと思います。

今後、自治体の首長や地方議員の責務は、重大です。中央官庁からの指示は減り、法律を解釈して、現実に即した対応をして行かなくてはならなくなります。個々が手探りで進まなくてはなりません。個々の問題に対し、先頭をきって独自の対応をすることころもあれば、他所の真似をしながら慎重に対応するところもあると思います。中には、腰が重く、後手後手にまわるところもあると思います。それは、首長や地方議員の判断に委ねられることになると思います。

耐震偽装の問題では、自治体毎の対応に差があります。国のスキームにはほとんど従っておらず、独自に既存の法律を解釈して対応している自治体もあります。建築基準法の「使用禁止命令」の解釈の問題や、国のスキームへの対応等、国がそれぞれの自治体の行為に行政的な権限で強制的に及ぼす力は、すでに低下しているようです。また、国土交通省による国のスキームの実施にあたり、立法的対応を国に要求した自治体も一つではありませんでした。

国の中央からの影響力は、立法を通じてしか行使できない体制がはじまりつつあると思います。地方レベルでも、そのつもりでの意思決定が行われているということだと思います。

個々の混乱を、他との差異を取り上げて批判することは慎まなくては行けないのかも知れません。それぞれの地方が、それぞれの事情に合わせて、最善と思われる対応を取っているかどうかを論じるべきです。足並が揃っているかどうかを問題にするのは適切ではないと感じるようになりました。

これまで、横浜の態度は、よくわからないと感じていました。これは、私が、行政的な中央集権の仕組みの色眼鏡でしか、この事件や対応を見ることができなかったということだと思います。批判すべき点はあると思いますが、横浜が毅然として対処している点は、評価するべきではないかと考えるようになりました。

中央と地方の役割分担の整理はこれからです。耐震偽装の問題への対応では、国の行政的な中央集権の発想を乗り越えていくことも要求されているような気がします。
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by gskay | 2006-08-29 15:47 | 政治と役所と業界