訴訟検討
ヒューザーの破産整理が進行し、建て替えの議論が進みつつあります。並行して、訴訟を行うかどうかが検討課題になっています。

これについては、統一的な方針はありません。自治体ごとに取り組みが異なり、マンションごとに考えが異なっているのではないかと思います。条件がバラバラのため、訴訟に対する態度はマチマチになっていることと思います。

訴訟の相手の候補としては、いろいろと残されてはいますが、支払いの能力がないところを訴えても、得るものはありません。どうしても、相手は限定されると思います。早い話が、自治体を相手にするということになると思います。

民間検査機関による建築確認は、特定行政庁が行ったものとみなすとされていることに基づいて、自治体を相手にするというのが主な検討対象になっています。中には、国の監督責任も問えるという立場の人があるようですが、見込みについては議論が分かれます。

勝つ可能性が高いと根拠をあげてそそのかす人や煽動する人もいますが、自治体相手の訴訟を起こすかどうかは、勝ち負けの見通しだけでは決められません。

自治体を訴えることを、単純に損害賠償や慰謝料を求めるということにとどめて考える訳にはいきません。仮に勝つ公算が高いとしても、判決が出るまでの期間のことも考えなければならないし、判決が出た後のことも考えなくてはなりません。どのように維持して行くのかといく見通しが立たない限り、訴訟にはふみきれません。判決後に予想される生活は、希望的に思い描けるものでなくてはなりません。

現実問題として、自治体にとって訴訟対応は、公的な対応との二重の手間になる可能性があります。住民から訴訟が出た場合、既に進みつつある公的な対応から手を引くという選択肢もあります。自治体ごとの取り組みは異なるものであるために、自治体がどのような判断をするのかは、一定したものはないものと思われます。

訴訟と公的対応とは別の問題として対処するという自治体もあれば、訴訟は、公的な対応への不満の表示と捉える自治体が出るかもしれません。法廷で争う対立関係をどのように評価するのかは、自治体次第です。特に、この点は、現場の担当者のレベルで決まることではなく、首長とその近くにいる上層の意思が重要になると思われ、甘くみることはできないと思います。

少なくとも、「手を引くぞ」と匂わせることは、訴訟を躊躇させるのに、とても威力のあることです。それを、第三者的にどのように評価するかという問題とは別に、当事者には、当事者の事情が現実問題として存在します。

さらに、仮に勝って損害が金銭的に回復されたとしても、その後の生活が希望通りになるとは限りません。建て替えを実現し元に戻るという希望がなくなってしまうような条件でしか訴訟が成り立たないのなら、訴訟は難しいと思います。逆に、他所で暮らすことになってしまってもいいから損害を回復したいというなら、訴訟は徹底的に行う意義があると思います。しかし、大方は、建て替え推進決議が行われていることからわかるように、復帰を希望しています。

一方、自治体によっては、訴訟を歓迎する可能性もあります。国のスキームに基づく公的な対応は、行政的な判断にとどまる制度であって、法律的な根拠に問題があるのではないかという考えの自治体もあります。そのような自治体は、根拠となる法律を要求するか、判決を要求します。公的な対応を推進する根拠として、判決が必要だと言う判断の自治体もあるのではないかと思います。

中には、国のスキームとは異なる独自の対応をしつつ、国の立法を要求し、一方で、住民の訴訟の動きに対しては、独自の対応から手を引くという動きで牽制している自治体もあるそうです。この自治体の場合は、国に対する政治的な影響を意図した対応なのかもしれないと感じます。

自治体と住民の関係が良好であれば、基本的には訴訟はないと思います。例外的に、公的な対応の根拠を裁判に求めることがあるかもしれません。

しかし、自治体と住民の間がこじれていて、建て替えが頓挫している場合、訴訟の可能性が出ると思います。その時、公的対応が止まってしまうかどうかは、自治体次第だと思います。建て替えによる復帰実現の可能性も微妙になると思います。そもそも、頓挫が訴訟の引き金であり、希望通りは難しいでしょう。

建て替えを希望せず、他所で暮らす事になっても構わず、損害回復を優先するという判断も考えられます。その場合、訴訟は有力な手段になると思います。ただ、耐震偽装のマンションは、建て替え推進決議が行われており、その方向性が打ち出される可能性は低いと思います。

マンションごとの訴訟の方針の他に、各戸毎の考えもあると思います。各戸ごとの動きがどのような影響を及ぼすのかはわかりません。建て替えをめざす上で不利だと判断された場合、管理組合による買い取りのような手続きが取られることもあるかも知れないと思います。

ところで、耐震偽装は、全てが建て替えの対象になっている訳ではありません。Qu/Qunが0.5以上1.0未満で改修で対応することになっている物件も多数あります。しかし、注目度が低いばかりか、対応も遅れがちだと聞いています。自治体の対応に不満で、事態打開の道筋が見えないマンションでは、訴訟という手段がとられる可能性があると思います。連帯した行動は、放置され気味の改修物件の方で盛り上がる可能性があると思います。
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by gskay | 2006-09-05 15:18 | 損害と回復