破産管財人の判断への国の対応
引用した記事は、破産管財人の判断が示されたときから心配していたものでした。もっと強硬な方針が示される可能性も考えられたので、国土交通省には、こじれさせる意図はないように思います。すでに除却や建て替えの方向に進んでいることに対し、水を差したり、覆したりするという判断ではないと思います。

これは、ヒューザーの破産管財人の判断を受けて、未確定だった部分が確定したということに過ぎません。すでに動き始めた公的な対応の縮小や撤退の方針ではなく、住民の「自己負担」が増加する訳でもないと思われます。

asahi.com住民支援の補助金を一律減額決定 耐震強度偽装で国など


2006年09月08日23時11分
 耐震強度偽装事件で、建て替え支援対象のヒューザーの分譲マンション11棟を支援する首都圏の10自治体と国土交通省は8日、同社の破産手続きに伴う住民への配当に応じ、助成金を一定割合減額する方針を決めた。破産管財人が配当を住民に一本化し、自治体の債権を全額認めない方針を示したため、本来の配当分を確保するのが狙いで、助成額は2割強減る見通し。自治体側は「当初方針通り」とするが、反発する住民もいる。

 自治体側が配当に固執せず、助成金の減額でまとまったのは、13日の債権者集会後も全額の認否を争った場合、住民への配当が遅れるためだ。

 今回の判断について、国交省住宅局の幹部は「自治体側には『助成分をヒューザーから回収しないと監査請求や住民訴訟で訴えられる』という懸念がある」と話す。



耐震偽装:行政、ヒューザー肩代わり支出住民に求める方針

 耐震データ偽造事件で、マンション開発会社「ヒューザー」(破産)が分譲し、強度不足で建て替えが必要なマンション住民に対し、解体費用などを同社に代わって支援した10自治体と国土交通省は8日、ヒューザーの破産管財人が負担を認めなかったとして、住民側に返還してもらう方針を決めた。ヒューザー側は住民への配当を優先するが、住民によっては配当金の半分以上を自治体などに返還する例もあるとみられ、反発が予想されそうだ。
 国と自治体は、耐震強度0.5未満で建て替えが必要な分譲マンションについて、住民の転居費用や仮住居の家賃、解体費用などを支援し、支出分はヒューザーに求めるとしていた。この方針に沿って管財人に約19億円を請求したが、行政側と争っている訴訟があることなどから、支払いを認めなかった。
 一方で管財人は、強度不足のマンション住民の債権を約169億円、建て替え支援対象マンションは約119億円とし、住民に配当することにしている。実際に受け取る額はこれより大幅に少なくなるとみられるが、自治体側は「本来は行政に返す金額も住民に引き渡される」として、住民から支援した費用を返してもらうことにした。【長谷川豊】
毎日新聞 2006年9月8日 22時58分

自治体ごと、物件ごとにヒューザーへの債権の届出のやり方さえ、統一されていませんでした。このため、住民がその分を届出ているところもあれば、自治体が届出ているところもあり、二重に届出ているところがあるという始末です。破産管財人の判断は、それをまとめたに過ぎません。

そもそも、国のスキームは、配当原資がほとんどゼロを想定していたもののと思われます。最悪の事態を想定していたのかも知れません。しかし、実際は、中途半端に配当原資ができてしまいました。想定外のことで混乱しているのだと思います。

住民の反発が指摘されていますが、内容をよく検討する必要があると思います。ヒューザーの配当が、住民に一本化されたことに対する対応が示されているに過ぎません。費用がどのように動くかが具体的に決まって来たということで、国土交通省はその考え方を示しただけだと思います。自治体は、「当初方針通り」としているので、債権届出前にあった説明の通りに処理され、大枠に変更はないものと思われます。

単純にヒューザーからの配当を「自己負担」に充当することが出来るのであれば、住民にとってはありがたいことです。しかし、公的な対応の中身は、住民が自ら実施しなければならない行為にかかる費用です。その費用は、住民が売り主に請求し、売り主が責任のある関係者に請求するというのが本来の姿でした。

そこに、二重に自治体が絡んで混乱しています。売り主の破綻を前提とした公的対応の主体として自治体は関わっています。一方で、この事件に建築確認の主体として関与しており、自治体は責任を追及されるべき関係者でもあります。

自治体が複数の立場を持っていることが複雑さの元凶です。公的な対応をしている自治体という立場が、行政でも、マスコミでも優先されているようですが、それは一面にすぎません。ヒューザーの訴訟の相手になっていたり、住民自身が訴える相手としての自治体という立場から逃れることはできません。

責任追及によって明らかになる自治体の負担を考え、自治体の内部で処理して欲しいというのが、ヒューザーの主張かもしれません。その前提で、ヒューザーが起こしている訴訟についても早々に処理したいと考えているのかもしれません。権利関係、責任関係をはっきりさせようとすると、費用と時間がかかります。とっとと、和解して欲しいということだと思います。

中途半端に多い配当原資を背景に、破産管財人の判断がクローズアップされる結果になりました。破産管財人は、単に自治体相手の訴訟を継承しただけではなく、自治体の債権や責任についての判断を下す役目が与えられてしまったことになります。その役目は、破産管財人という裁判所から与えられた立場によるものです。

ただ、案外、自治体としては、裁判は望むところかもしれません。立法されておらず、行政的な判断にとどまる措置を行っていて、根拠が希薄であることが問題視されています。これについては、判決があれば動き易くなります。

今回の公的対応の見直しの問題は、ヒューザーの資産がゼロであったら、あえて問題にはならなかっただろうと思われます。大きな見込み違いがあったのかもしれません。建て替えや除却の進行状況のばらつきからくるあせりも加わって、混乱が生じているのではないかと想像します。
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by gskay | 2006-09-11 08:38 | 公的対応