緊急性の高い課題とじっくり考えるべき課題
都知事は、緊急性の高い移転費、家賃補助、解体費計26億円を予算に計上したものの、建て替え費用まで含めませんでした。

法の隙間への対応なので、差し当たって必要なことをしていくというのが妥当なのだろうと思います。

都は、建て替えをすすめるにあたり、国に特別措置法の制定を求めているとされています。退去が終了し、解体がすすめられるには時間がかかるので、その間に充分な議論をじっくりするべきだということだと思います。

国のスキームは、発表の当初から「足かせ」になる部分が多く厄介だと感じていました。既存の規定を準用しているだけで、抜本的な解決や、個別のケースへの対応に配慮が不十分だと思います。法の隙間への対応であり、行政だけで直ちにやれる範囲では、このくらいなのだろうと思います。だから、立法府での特別措置法などの議論が必要になっています。

国の対応は、どうしても杓子定規な面が表に出てしまい、自治体毎、物件毎の個別の対応に水をさすような傾向もあるような気がします。報道も、そこを、おもしろおかしく伝えています。

建て替えまでには、どうせ時間がかかります。解体だけでも数ヶ月はかかります。短期間にその場しのぎの仕組みを作って、それに固執するより、与えられた時間を有効に利用して考えていく必要があると思います。

この時間にこそ、法の隙間を埋めるような議論が必要です。

少なくとも、二つの議論が必要です。一つは、「安全確保」のための取り締まりを実際に可能にするような対応についての仕組み。もう一つは、建築確認の誤りに対する補償の仕組み。

今後、耐震検査が拡大して行く中で、Qu/Qunが0.5以下の物件が出て来るかもしれません。このとき、「安全確保」のための緊急の公費負担が、今回と同じように講じられるのかが、はっきりしていないように思います。とりあえず、「非姉歯」に「偽装」はないとされているので、「偽装」問題が終わったら、「耐震」や「安全確保」は終わりになってしまうのでしょうか?「偽装」がなくても「安全」に問題がある物件があるものと思われますが、それにどんな対応をするのか心配です。

「安全確保」という言葉は、今回の事態への対応の切り札になっていますが、今回の物件を特別扱いにする理由とはならないと思います。その辺りも、きちんと議論し、検査をして、薮から蛇が出ても慌てないようにする仕組みが必要だと思います。

また、安全確保や建築計画の前提になる建築確認制度の問題点は、特に重視すべき課題です。建て直しが個人の不当な資産の形成につながるという否定的見解だけでは、建築確認制度への反省が活かされないと思います。公的な建築確認制度の問題点が私有財産を処分することにつながったという点への議論が必要だと思います。偽造であろうが、単純ミスであろうが、「合法・適法」であると誤って出された建築確認の影響をどうするのかが問題です。

「安全」の問題と「合法・適法」な手続きの問題は、別の次元の話です。

公的な建築確認を無謬とみなし、それを実際の建築の前提としてきたのは、単なる幻想にすぎないのかもしれません。「建築確認が下りる」という言葉に振り回されていたのかもしれません。「建築確認が下りているから大丈夫」だと思っていましたが、そんなことはないようです。大丈夫でなかった時のことなど、少しも考えませんでした。そして、考えられていないようです。

現状のレベルで建築するだけなら、設計、施工、監理だけでいいのではないかと思います。その結果できてしまった建物を取り締まればいいわけです。厳しい取り締まりの方が、安全確保については効果が上がるような気がします。

危険な建物を未然に防ぐための建築確認や検査は、予防としての実効性をもっていない以上、今のままでは、必要ないような気がします。にもかかわらず、余計な幻想だけは、作ってしましました。そもそも、建築確認なんて、何の権威も意義もなく、公的な責任はないのかも知れません。どうせ、技術的に不可能な検査であり、責任を問うのは難しいのかも知れません。

それでも、予防の制度の確実性を高める仕組みを組み立てるべきです。現状は、ひどい状況かもしれませんが、理想の姿を模索すべきだと思います。そして、その前提として、いかに誤りに対応するかを「現実の問題」として論じておくべきです。特に、所有者と建築主が異なることになる前提で建築される分譲マンションや建て売り住宅には、買い手の立場への配慮が欲しいと思います。

建築の仕組みは、性善説に立っていることになっていますが、とても無責任な体制だと思います。設計も施工も監理も検査も、出来上がった建物に誰も責任を負わない体制になっています。これまで、取り締まりが緩かったのは、この体制のせいだと思います。取り締まりようがなかったのだと思います。

このうち少なくとも、設計および検査体制の一部である建築確認についての責任を、今回の事件を通して明らかにすることができれば、一歩前進ということになるような気がします。もし、それに成功したら、そこで終わりにせず、引き続き、施工段階の問題にもメスを入れて行くべきだと思います。
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by gskay | 2006-01-10 13:37 | 公的対応