川崎の住民による民事訴訟開始
住民による初の民事訴訟です。この裁判は、訴訟を検討したり、準備したりという段階にいる私たちにとって、推移がとても気になります。

この訴訟では、損害を回復するために責任の所在を明らかにするのであって、その逆ではありません。決して、責任追及のついでに損害を回復しようという行為ではありません。

現状では、損害が確定したとは言えない段階であり、今後、何らかの形で損害の回復が行われるようなことがあれば、訴訟を継続すべきかどうかの判断は変わって来ると思います。

asahi.com姉歯被告ら「賠償義務は争う」 GS川崎大師住民訴訟


2006年09月11日20時40分
 耐震強度が偽装されたヒューザーの分譲マンション「グランドステージ川崎大師」(川崎市、23戸)の区分所有者33人が、元1級建築士の姉歯秀次被告や川崎市、施工会社の太平工業などに総額約7億5000万円の損害賠償を求めた訴訟の第1回口頭弁論が11日、東京地裁で開かれた。被告側はそれぞれ請求棄却を求める答弁書を提出し、争う姿勢を見せた。

 姉歯被告は勾留(こうりゅう)中で出頭できず、「偽装の事実は認め、賠償する義務を負うとの主張は争う」などとする答弁書を提出。川崎市は「民間検査機関が行う構造計算の審査は特定行政庁の監督の守備範囲ではなく、川崎市が賠償責任を負うことはない」などと反論した。

 姉歯被告の偽装で被害を受けた住民による初の訴訟で、(1)民間確認検査機関イーホームズの偽装見逃しに対し、建築主事を置く特定行政庁の川崎市が賠償責任を負うか(2)偽装を見逃して施工したことに対し、施工会社は賠償責任を負うか(3)施工不良が耐震強度に影響しているか——などが争点となっている。

 住民代表の平貢秀さん(43)は法廷で「この問題は、建築のプロが一人でもまともなことをしていれば見抜け、事件を未然に防ぐことができた」などと意見を述べた。



耐震計算偽造:川崎市や業者側、住民と争う姿勢−−賠償訴訟



 耐震データ偽造事件で、強度が基準の30%と診断された川崎市川崎区のマンション「グランドステージ川崎大師」(23戸)の住民33人が、元1級建築士の姉歯秀次被告(49)や同市などに建て替え費用など約7億5000万円の賠償を求めた訴訟の第1回口頭弁論が11日、東京地裁(野山宏裁判長)であった。被告側は請求棄却を求める答弁書を提出し、争う姿勢を見せた。
 川崎市と施工業者「太平工業」(東京都中央区)は答弁書で、住民側に「どんな過失があったと主張するのか」と逆に尋ねた。【高倉友彰】
毎日新聞 2006年9月12日 東京朝刊



姉歯被告や川崎市争う 耐震偽装マンション訴訟[CHUNICHI WEB PRESS]


 耐震強度が偽装された川崎市川崎区の分譲マンション「グランドステージ川崎大師」を退去した全23世帯、計33人が元1級建築士姉歯秀次被告(49)=建築基準法違反罪などで公判中=や川崎市などに約7億5000万円の損害賠償を求めた訴訟の第1回口頭弁論が11日、東京地裁(野山宏裁判長)であり、被告側は請求棄却を求め、争う姿勢を示した。

 被告側はほかに施工した太平工業(東京)、設計したスペースワン建築研究所(同)など。

 答弁書で姉歯被告は「構造計算書の偽造は認めるが、賠償義務を負うとの原告の主張は争う」、川崎市は「指定確認検査機関イーホームズの審査に過誤があったとしても、イ社は独立した存在であり、市が賠償責任を負うことはない」とそれぞれ反論した。


(2006年9月11日)

報じている記事は、どれも断片的なので、3つを並べて引用しました。

元建築士が、賠償責任を否定して来たのは一理あると思います。設計の下請けに過ぎず、賠償は、違法な内容の設計をした設計事務所に求めるべきものだと考えることができるからです。設計事務所が賠償をすることになったら、その賠償によって生じた損害を、元建築士に賠償させることになります。

その場合でも、設計事務所には、違法を見落としたまま建築確認の申請をしたという責任があります。その分について、設計事務所と元建築士との間で相殺するような交渉が行われたり、訴訟が行われることになると思います。

ただ、元建築士に賠償能力があるかどうかは別問題で、現実的に考えて、訴えたところで得るものは少ないかもしれません。報じられている訴訟も、その問題を抱えています。

特定行政庁である川崎市の主張は、建築確認制度の根幹に関わる問題で、民間検査機関の位置づけを確認する重要な裁判になると思います。すでに、ヒューザーが起こしている裁判でも問われている問題です。

施工会社の責任は、施工不良はともかく、違法な設計図を元に建築した点が問われていると思います。適法な設計であると審査によって確認されているので、微妙ではないかと思います。ただし、世間で言われているように、施工中に「おかしいぞ」と思ったのであれば、そのことについて適切に対処する責任はあったと思われます。変だと全然思わなかったという場合にまで、不注意を咎めることができるのかがポイントになると思います。責任を問える可能性がないわけではないと思っています。

ちなみに、木村建設施工の場合、木村建設は整理中なので、住民の請求は、破産の手続きに含まれてしまいました。木村建設の場合、資産の回収に手こずっているようで、あまり期待はできません。また、住民が届けた債権を破産管財人が認めるとは限りません。

もし、木村建設の管財人が住民の債権を認めないという場合、訴訟もありうる話です。これは、川崎の訴訟の結末次第で、状況が変わります。ただ、資産の回収状況によっては、そんな議論は無駄という可能性もあります。まずは、破産管財人に頑張ってもらいたいと思います。少なくとも、破産の引き金を作った銀行の預金と、税の還付については頑張って欲しいところです。

引用した記事では触れられていませんが、不真正連帯も、話をややこしくしている点になってくると思います。建築は、曖昧な責任関係のままで、多くの人が関わりすぎているのだと思います。建築制度の最大の問題の一つだと思います。

ところで、引用した記事について思うのは、紙面の都合などもあると思いますが、不足のない報道の困難さです。民事訴訟について報じる場合、原告が誰で、被告が誰で、何を請求する裁判であるのかが明確でなくてはならないように思います。被告について網羅しているとはいえない記事ばかり。請求の内容も、金額だけしかわからない始末です。

争点についても明らかになるように報じる必要があると思います。裁判所が判断を下さなければいけない問題について報じて欲しいと思います。その上で、どのような主張がなされたのかを報じる必要があります。

見比べてみて、いずれの記事も断片的だと感じられます。

もっと知りたいなら、裁判所に行くなり、自分で調べろということでしょうが……。
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by gskay | 2006-09-13 15:46 | 損害と回復