元建築士への論告求刑
耐震偽装で裁判が行われているのは、この裁判だけです。他は、別件であったり、発覚後の不適切な行為に対する裁判で、耐震偽装を直接裁くものではありません。

元建築士の論告求刑が行われたことは、イーホームズ社長への判決とその後の社長によるキャンペーンに比べれば、既存のマスコミも取り上げているような印象です。

ところで、建築確認においては、元請けの建築事務所から書類が出ており、この元建築士が直接書類を提出した訳ではないと思われます。実際に違法な建築が行われ、最終的に違法な建築が世に出る上で、決定的な原因はこの人の偽造ですが、この人は一部分を担ったに過ぎません。

下請けに過ぎない以上、この元建築士が設計への責任を負う筋合いは無いのかも知れません。設計の責任をとるのは、あくまで元請けとなっている設計事務所です。

設計事務所については、資格の取り消しのような行政処分がすでに行われていて、刑事的な責任追及の対象になっていません。元請け設計事務所への公的な処分としては行政処分で充分だろうとは思いますが、民事的な追及は別です。ただ、追及したところで損害が回復できるかどうかは別問題です。さらにいえば、この元建築士に民事的な請求をしたところで、私たちの損害の回復には寄与しないと思われます。

当初、この元建築士には、巧妙なエセ経済設計を行ったズルイが優秀な建築士という位置づけがあったように思います。今でも、そう思っている人がいるかもしれません。実際は、基礎的な能力の不足していたダメな建築士だったというのが真相だと思います。それを、たまたま経済設計と勘違いしたことで、問題が拡大しました。

勘違いについては、設計事務所と検査機関の実力不足が必要な条件です。大臣指定のプログラムであっても、完璧ではないということが、設計事務所と検査機関にはわかっていて、チェックの対象になっていたなら、こんなことにはならなかったのかも知れません。そこは、イーホームズの主張するポイントの一つだと思いますが、実際のところは、どうなのでしょう?そういう問題だったのでしょうか?

チェックしたところで、見落とされている可能性も否定はできないように思います。私は、設計事務所の能力も検査機関の能力も、この問題には無力であったのではないかと思います。

また、書類の不十分ささえチェックできない体制になっていたようです。中途半端で未完成な書類を出しておいて、後で修正するということがまかり通っていたようです。技術的に問題を見抜く能力ばかりか、手続きの厳格さにも問題があるようです。

私は、検査による適法という判断がどのような意義があるのかという点にも問題を感じています。結局、後で違法が発覚した時に、何の責任も負わないのなら、設計事務所や、施工、建築主、それに所有者の責任を明記し、公的な機関は取り締まりだけをしっかりやればいいのではないかと思います。

余計な仕組みを作るから、こんな人が悪事を働く余地を作ってしまったのだと思います。

この元建築士がデタラメな設計をし、それが違法建築として形になるプロセスにも問題があります。検査の実力と手続きの厳格さの不足の問題です。

それだけでなく、この元建築士が行ったデタラメな設計の背景には、建築確認という形ばかりで意味のない仕組みがあって、それに合格すれば適法になるとというみなの錯覚があったのではないかと思います。そんな仕組みさえなければ、こんな馬鹿馬鹿しい事件は起きなかったのではないかと思います。
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by gskay | 2006-11-01 16:18 | 揺れる システム