求償権の明確化
求償権の問題は、分譲マンションに限られる問題ではなく、ホテルからも訴えが起こっていることを考えるべきだと思います。住民はともかく、売り主や建築主にとって建築確認がどのような意味があったのかを考えなくてはなりません。求償権についての記事が東京新聞にあり、引用しました。

これまで、ホテルや賃貸マンションには公的な対応はなされていないものの、損害は多額です。公的対応が行われてきた分譲マンションだけの問題ではありません。求償権の明確化は、おそらく、住民への公的な対応と賠償との間のバランスを意識していると思いますが、そこに限定されない問題です。

『耐震偽装』発覚1年 自治体に『求償権』


 国土交通省の発表で耐震強度偽装が発覚してから十七日で一年。同省は、建築確認でミスした民間の指定確認検査機関に自治体が求償できることを明文化した新省令をつくることを決めた。来年六月までに制定する。強度不足のマンションを購入した住民らの損害賠償請求に対し、強度不足を見逃した検査機関が「建築確認の許可権者は自治体」と責任逃れを図るのを防ぐ狙い。検査機関の補償力担保のため、検査機関が加入する損害保険の最低保険額を現行基準の数十倍に高める。

 「民間の確認検査機関による建築確認は、地方公共団体の建築主事による確認と同様の事務」とした昨年六月の最高裁決定で、ミスした検査機関を監督する自治体にも住民側が責任を求められることが確定した。検査機関の過失のツケを負う自治体側は「検査機関への“求償権”の明文化」を国に求めていた。

 今回の耐震偽装事件でも、国指定の確認検査機関だったイーホームズ(指定取り消し・廃業)が建築確認し、耐震強度が基準の30%とされた川崎市のマンション住民が六月、同市などに損害賠償を求めて提訴した。

 新省令は「民間の確認検査機関による建築確認の過失で自治体に賠償責任が生じた時、自治体は検査機関に求償できる」とし、検査機関の責任と責任能力を明確にする。

 責任能力は主に検査機関が直接損賠請求されるケースと、損賠請求された自治体が検査機関に求償するケースを想定。検査機関の指定要件や五年ごとの更新要件に賠償額に見合う保険加入などを加える形で義務化する。

 検査機関の現行の指定要件は、三千万円以上の基本財産などを有するか、三千万円以上の損害保険加入としている。新省令では保険金額を一挙に十億円前後に引き上げ、建築確認の受注数が多い検査機関ほど保険金額を高くする方針。

一読すると、建築確認の誤りに対する「責任と責任能力」が整理されているように見えますが、特定行政庁と民間検査機関の間の関係を整理したにすぎません。最高裁の判例も、建築確認の個々の内容についての判決ではなく、特定行政庁と民間検査機関の関係を明確にする判例にすぎません。

個々の建築確認の問題については、どのように判断されるのかはっきりしておらず、今回の耐震偽装で、建築確認のミスが損害賠償になるとは限りません。しかし、すでに覚悟は決まっているのかも知れません。その覚悟の上で、このような対応が検討されているように思われます。

損害賠償を誰が負担するのかという問題も大切ですが、建築確認の「責任と責任能力」はそのままなのでしょうか?建築確認で適法とされた手続きを根拠に建てたられた建物が違法建築だった場合、どのように対応すればいいのかが少しも明確にはなっていないようです。

また、責任追及や損害賠償について考えるとき、耐震偽装が見落とされた原因の追及も問題になります。これについては、現場サイドからいわせれば、国土交通省が定めた杜撰な仕組みが根本原因ということになるのかもしれません。

こうした二つの大きな問題が放置されています。

むしろ、「求償権の明文化」は、根本的な責任追及が進む前に、特定行政庁の内部や民間検査機関との関係で処理しなくてはならない仕組みを増やしておいて、追及の関心が根本的な部分に及ぶまでの時間稼ぎや、根本的な責任を有耶無耶にする仕組みのような気がします。

ところで、自治体からは、民間検査機関の落ち度の尻拭いはできないというクレームに加え、国がデタラメな仕組みを押し付けておいて、不具合が出たら、その後始末まで自治体に押し付けるかというクレームもあったと思いますが、それは、どうなったのでしょうか?

ついでに言うなら、デタラメな仕組みの不具合に対する対応もドタバタでした。そのドタバタについての判断の責任や、ドタバタな公的な対応を行政の裁量による事実上の「制度」として押し付けてきたにもかかわらず、すでに辻褄が合わなくなっていたり、一貫性に欠ける点については、どうなるのでしょうか?

そもそも、一連の判断の工学的な合理性もあやしいし、法に則った手続きとしてもチグハグです。これで、大丈夫なのでしょうか?

困ったことが一杯です。

問題への抜本的な対策のつもりかも知れませんが、小手先の法改正をしたり、いろいろな機関をつくったり、新たな保険制度を作ったりという工夫が、問題の解決につながると思えません。むしろ、新たな負担の元凶になるだけのように思います。

根本的に作り替える必要があると思います。

まず、国の行政が無謬であるという前提にこだわらない仕組みが必要です。

その制度に意味があるのかどうかを問うところからはじめ、誤りに対する対応も的確に行える仕組みにして行かなければなりません。
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by gskay | 2006-11-20 08:40 | 政治と役所と業界