国政の混乱と地方選挙
失言に端を発する厚生労働大臣の進退について、地方選挙と絡めて複雑にして考えることに反対です。「地方選は、地方の将来のために誰がいいかの観点から、地域の方々が投票すると思う」(時事ドットコム)という首相のコメントを妥当なものと、私は考えます。
失言問題で、国会が異常な事態を迎えていることも適切でないと思います。具体的な事案が山積みであるにもかかわらず、そこに目をつぶっているのではないかと思います。アパの耐震偽装のみならず、放送のあり方、食品の安全など、取り上げるべきテーマが、ろくに論じられていないことを残念に思います。 結局、野党が議論を放棄している中で、補正とはいえ、予算が衆議院を通過。 様々な問題が噴き出している状況で、内閣や与党に対し、厳しい視線が注がれるべきでした。しかし、野党は、また、間違えてしまったのではないかと思います。それを見守る側も、この空転状況を、面白がって見ている場合なのでしょうか? ところで、地方選挙を、国政に結びつけて考えすぎてはいけないと思います。あくまで、地方の将来を決めるための選挙であるという意味で考えるべきです。地方分権により、従来の中央と地方の関係で考えることができなくなりつつあり、地方選挙の結果が住民にとってより重大さを増していることを見失ってはならないと思います。 もし、中央の大臣の失言が、地方選挙の決定的な争点になってしまうようでは、その地方選挙で打ち出された政策や争点は、あまり重要ではないということになるように思います。いっそ、中央集権的に、一元的にする方が効率的かも。大臣の失言を、地方選挙にからめて考えるのは、地方分権に水をさすような見方であると思います。 また、地方選挙は、中央政党の代理戦争ではないと思います。 中央から地方に広がる統制のとれた全国組織を構える思想や信条を強く共有する政党があるのは確かです。そういう政党のあり方も良いとは思います。そういう政党では、中央での構図を地方に反映させる一方、地方での結果で中央での情勢が変わるということもあり、代理戦争に重要性があると思います。 しかし、現在、大きな勢力をもつ政党は、いずれも、様々な繋がり方でできた個々の組織が、時の情勢に基づいて合従連衡している政党だと思います。ダイナミックな変化が常に内部で起きているような政党です。中央の枠組みを、地方に当てはめることはできません。逆に、地方の集約が中央でもありません。役割もあり方も別です。 地方分権の進行にともない、政治組織においても、中央と地方との間の乖離が強まっているように思います。組織としての歪みやねじれが生まれているように思います。今後、中央政界の事情のみならず、地方との関係という事情が加味されて、政党の再編成が行われる可能性が大きいと考えています。 その時、中央での再編成が地方に波及していくとは限らないと思います。中央の政界と地方の政界とは、縦の結びつきを弱め、全く異なるものとして、発展していく可能性があると想像しています。 もともと、国と地方では仕組みが異なります。議員内閣制プラス二院制と、首長プラス地方議会という体制では、選挙の進め方も、政治的意思を決定して行くプロセスも異なります。同じ発想で対応するのは困難です。 これまで、ほとんどの政党で、縦のつながりを維持し、その枠組みで政治を考えることが出来たのは、地方分権が進んでいなかったからではないかと、私は考えています。中央から地方に広がる統制のとれた全国組織を構える思想や信条を強く共有する政党を除けば、そうした枠組みで展開を考えて行くのが、一層難しくなると考えています。 地方分権が進んでいくと、地方の独自性が高まり、中央の枠組みが通用しない政治情勢が生まれてくると思います。地方の政治家が、中央の政治家の意向を気に懸ける程度が弱まり、独自の判断をして行く事になると思います。これは、地方毎にそれぞれの固有の取り組みを進めていくためには、あるべき姿だと思います。 中央の役割と地方の役割を、もっとしっかりと区別することが必要ではないかと思います。それを前提にしつつ、それでも全国的な組織の視点で考える政党があってもいいし、中央と地方の結びつきが緩やか政党があっても良いと思われます。地方限定の政党がもっと存在してもおかしくないと思います。 一方で、中央の混乱を、地方に投影して考えるのは、地方独自の問題をないがしろにすることだと思います。個々の時々の状況に応じ、是々非々で有権者が判断するべきです。あたかも天与の存在として中央政党が存在し、地方はそれに従うという観念があるとしたら、それは克服されて行かねばならないと思います。 蛇足ながら、すでに改革が進行しているにもかかわらず、旧来の考え方が克服され難くなっている原因は、旧来の枠組みで報道を続けようとするメディアの存在が大きいと思います。意図的に偏っているのか、それとも追いついて行けていないだけなのか、私にはわかりません。
by gskay
| 2007-02-02 10:48
| 政治と役所と業界
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耐震偽装発覚から、5年。建て替えが再開発事業としてすすめられています。
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