3分の1
国会の審議拒否は、戦術的には何の意味もありません。なぜなら、国会の本会議は、3分の1以上の出席で成立してしまうからです。

本会議を成立させないようにするためには、3分の2以上の勢力が欠席戦術をとらなくてなりません。3分の2の勢力なら与党側になるはずです。

会議の成立が3分の2以上ということであれば、半数に及ばなくても、3分の1以上の反対者が欠席する事で、議決を不能にすることができます。しかし、我が国の国会は、本会議では3分の1の出席で会議が成立し、委員会でも半数の出席で会議が成立してしまいます。欠席戦術で、野党が達成できることは、実質的には皆無です。

我が国の国会では、フィリバスターは不可能なようなので、議決に抵抗する戦術は、牛歩戦術や議場の入口での座り込みくらいしかないのでは?後は、会議を暴力的に混乱させる……。

厚生労働大臣の発言をめぐり、国会が野党の審議拒否により混乱しました。しかし、その影響はわずかです。日本の国会の仕組みは、どんどん会議を進めることをめざした仕組みになっていて、会議に出て来なければ、置いてきぼりになるだけです。

にもかかわらず、野党が審議拒否をしました。その意図は、国会運営だけを見ていたら理解しにくい出来事です。発言問題に真剣に取り組むなら、国会の会議の中で、厳しい批判を述べた方が良さそうですが……。

野党第一党の党首の意図は、別のところにあるのではないかと思います。

現時点で、与党第一党が一枚岩に団結しているとはいえません。現首相が、大きな支持のもとで選出されていますが、単純な状況ではありません。それは、国会議員のレベルの問題だけではありません。

選挙をするためには、地方組織が重要です。その地方組織が混乱しています。この前の総選挙のしこりもあり、与党第一党では、一つの小選挙区に同じ党を支持する二つの勢力ができて対立してしまう構図ができてしまいました。その勢力を結集するのは容易ではありません。容易ではないからこそ、一致団結の姿勢をアピールしたのが、総裁選挙だったのではないかと思います。

また、国と地方公共団体の役割の変化が進むことによって、中央の政党や国会議員、県連や県議会議員、そして市町村議員という系列化が、利益誘導の意味では無意味になりつつあります。国の問題は、国の問題。県の問題は県の問題。市町村の問題は、市町村の問題。……という具合に、それぞれが別のレベルの問題を扱っていて、お互いの影響が低下しています。

利害からは離れてしまい、選挙のための組織としてしか、系列化の意味がなくなってしまうと、政治団体としての求心力が低下しています。そうなると、選挙に対しても弱い組織になってしまうという組織弱体化のスパイラル現象が進んでいます。

また、組織に影響されない無党派や無関心の増加の影響が無視できなくなってしまいました。組織による選挙では、無党派や無関心という人の投票率が低下すれば、相対的に組織選挙の意義が高まります。組織選挙で勝とうと考えるなら、無党派や無関心には、無投票でいてほしいところです。ところが、無関心はともかく、少なくとも、無党派は、メディアの影響で動き、組織選挙の脅威になっています。加えて、組織自身が弱体化しており、ますます組織外の有権者が重大な存在になっています。

これまで通りの組織選挙を前提とすることは、困難です。議員や候補は、その困難な状況を乗り越えなくてはなりません。中央と、弱体化しつつある地方組織の意識とのギャップが大きくなっています。これは、党内の混乱にもつながっていると思われます。この状況は、従来の発想だけでは乗り越えることができなくなりつつあり、少なくとも、組織の再編成が切迫した問題になっています。

より強いつながりの組織をめざす動きもあれば、逆に緩いつながりの組織を目指す動きもあると思います。いずれにせよ、これからは、無党派からの好感を必要とします。もし、無関心が目覚めた場合には、味方になってもらわなくてはなりません。しかし、今の地方の政治団体の多くは、その逆の効果が強いようです。これが、一連の地方の首長の選挙で明らかになってきました。

従来の組織選挙が通用しないとなると、これは、今後の選挙がどうなるのかわからないという不安定な状況になります。その状況に対し、一石を投じたのが審議拒否であったと思います。きっかけとなる問題は大臣の問題発言でなくても、混乱の内容が審議拒否でなくても、何でも良かったと思います。要は、政治的な混乱を必要としていました。

与党第一党が一枚岩でなく、党内での議員同士の競争が熾烈であるばかりか、弱体化への危機感をもつ地方組織とのねじれも深刻になっています。事と次第によっては、分裂もあり得る混乱状況です。そこに、野党第一党の党首は、審議拒否を通して、一石を投じることに「成功」したと思います。

審議拒否の前後に何も変わっておらず、野党にとって何のメリットもなかったように表面的には見えます。しかし、与党第一党は、分裂を回避するための防戦を強いられるという政治的闘争の争点が明瞭になってきたと思います。

野党第一党の党首は、政界再編の必要性を説き続けてきました。その実現のための布石ではないかと思います。政権交替というのは目先のかけ声で、彼のゴールではないと思います。

もともと、野党第一党の方は、支持組織の志向が入り乱れていて、いつバラバラになってもおかしくない状況だと思います。ただ、“反”与党第一党というのが絆になっているのではないかと思います。与党第一党次第で、その絆も意味を失います。

野党第一党には、昔からの反与党第一党もいれば、与党第一党を離れた人もいるし、本当は、与党第一党に入りたかったけれど入れなかったから野党に属している人まで、事情が様々です。

与党第一党が分裂すれば、野党第一党もバラバラになって、合従連衡し、ようやく次の政治の枠組みができるという可能性が出て来ると思います。

現状では、野党第一党の党首にさえ、現在の枠組みでの政権交替への期待は少ないのではないかと想像します。そのかわりに、与党第一党も野党第一党も分裂し、再編成されるという流れを想像しているのではないかと思います。

もし、衆議院の解散がなければ、参議院選挙の結果だけで、政権が交替するということはあり得ません。たしかに、与党第一党の分裂による衆議院での勢力に移動があれば、その限りではありません。また、現在の政党の枠組みの延長で政権交替が行われるべきだという制約もありません。

与党も野党も、表向きには既存の体制を尊重しているというポーズをとらなくてはならないものの、地方組織や支持組織にまで目をむけると、単純に既存の体制の強化で解決できない問題があります。どちらも、今の体制で安定して選挙を闘い抜く事はできないことと思います。

国会の進行だけを考えるなら、審議拒否は、戦術としての価値はありません。議員にも、組織にも動揺があるからこそ、今回の審議拒否に意味があったと思います。

「ひょっとして、与党の国会議員の一部が離反せざるをえないかもしれない」と、地方組織にまで動揺が走っただけで、充分だったと思います。参院選を切り抜けるにしても、その後を構想するにしても、今回の審議拒否には大きなインパクトがあったと思います。

これが序章なのでしょう。今後、与党第一党にも、野党第一党にも内部の混乱が生じると、予想します。国政選挙に混乱なしで取り組むには、選挙区である地方の事情が複雑だからです。

地方の首長選挙で、与野党相乗りをしている限り、この状況は顕在化しなかったと思います。その点で、ここまでは、野党第一党の党首の方針は、狙い通りになっているのではないかと想像します。

そういう変化を望まない人も大勢いると思いますが、流れを止めようと抵抗する力が、積極的なものであるかどうかが問題です。与党においても、野党においても。

(追記)
引用の記事の発言は、ちゃんと考えての発言なのでしょうか?それとも、マスコミ得意の断片?(でも、時事だし……)

相手の手のうちに入って勝算があるのだろうか?すでに、対策は万全ということ?

Yahoo!ニュース - 時事通信 - 民主は「店じまい」宣言か=小沢氏をけん制−中川自民幹事長


2月12日19時1分配信 時事通信

 自民党の中川秀直幹事長は12日午後、静岡県浜松市で講演し、民主党の小沢一郎代表が夏の参院選に関し「野党で過半数を握り、政界再編に持っていきたい」と述べたことに触れ、「今の民主党では2大政党にならないと宣言したに等しい。見方によっては民主党は店じまいを宣言した」と指摘。小沢氏の姿勢をけん制した。
この幹事長が、この時点で、政界再編を争点にしてしまって、与党第一党の組織を維持できるの?消極的に逃げ切るという戦法は難しくなって、古い二つの政党同士の対決ではなく、新しい政治体制と旧い政治体制の対決になってしまいそうな気がします。

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by gskay | 2007-02-13 12:58 | 政治と役所と業界