特定行政庁による取り締まり業務の充実
建築確認や検査の民間開放は、同時に特定行政庁の機能を強化していくという方針がともなっていたはずです。違法建築の取り締まりや指導は、特定行政庁の重要な業務として位置付けられてはいましたが、建築確認や検査ばかりが業務が中心となり、軽視されがちでした。そこで、建築確認や検査の民間開放を行う一方で、特定行政庁を取り締まりや指導中心の機関にすることが意図されました。

それ以来、民間検査機関は、批判の対象になってはいるものの、かなり成長してきたといえるのではないかと思います。その一方で、特定行政庁の方は、いまだに取り締まり機関への移行は不十分なままです。

世間の議論では、特定行政庁の役割と民間検査機関の役割の区別が目指されているという点を見落としています。これは、民間開放への批判にみられる重大な問題点の一つです。

民間検査機関への開放を、「規制緩和とその弊害」というステレオタイプだけで批判するのは適当ではありません。むしろ、事前の規制と、事後の取り締まりの分離の不徹底という視点で捉えるべきです。

取り締まりの分離と強化という目標から考えると、特定行政庁の現状は、満足な状況とはいえません。取り締まりは、技術的な点も、透明性や責任性の点でも、改善すべき点や、取り組むべき点が多いと思います。

違法な建築物が指摘されても、結局、まともに対応できていないという実態が、耐震偽装を通して明らかになりました。問題を確認する手順も定まっておらず、その技術もありません。また、問題の建物への処分にも、明確な方針がありません。行き当たりばったりの対応しかありません。そうした問題にメスを入れるべきですが、取り組みは進んでいないようです。

「規制緩和とその弊害」と言うステレオタイプで捉え、事前の規制と取り締まりとを分離するという発想が乏しいまま、ピアチェックのような仕組みを反動のように強化したところで、現状のレベルをこえる仕組みを構築することはできないと思います。むしろ、無謀で無駄ではないかとさえ思います。

また、民間検査機関のあり方を批判する声も強いままですが、「独立系」検査機関であるイーホームズだけが、まともに耐震偽装に対処しようとしたことを評価すべきだと思います。たまたまイーホームズがその役割を担ったというわけではなく、必然的な背景があったように思われます。技術を含めた様々な点で特定行政庁には無理だったと思います。

建築確認や検査の民間開放は、一般世間からの批判や、改革の前提となった認識とは裏腹に、民間開放は所期の目標を達成しつつあり、充実しているのではないかと思います。それにひきかえ、特定行政庁の建築確認や検査は旧態依然のまま。ただし、将来的には縮小される業務なら、仕方がないことですが……。

問題は、建築確認や検査のかわりに充実するはずの特定行政庁による取り締まりが、あまりにも不十分な体制で放置されている点です。このことは、振り返られることさえ稀であるように思います。

完全無欠な建築確認や検査が実現できるというなら話は別ですが、それは不可能であろうと思います。そんな幻を前提にした方向性だけでは、解決は期待できません。

特定行政庁による取り締まりや指導を充実させることを急ぐべきだと思います。これは、法改正も何もなく、法の理念に沿っていくだけでいいことです。つまり、やる気の問題です。
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by gskay | 2007-03-01 18:22 | 政治と役所と業界