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「最悪でも……」
耐震強度は、計算の前提になる部分が、計算する人の主観に左右されます。計算の仕方によって数値が異なることは仕方がないことです。ただ、どのようなデータを利用して計算するのかということについては、実態に即した数値を利用するのが妥当だと思います。

Yahoo!ニュース - 毎日新聞 - 安全ショック:構造計算書偽造 グランドベイ横浜「最悪でも53%」と修正 /神奈川


6月17日12時0分配信 毎日新聞

 ◇耐震強度調査で市
 耐震偽装マンション「グランドベイ横浜」(横浜市鶴見区、10階建て)の耐震強度が横浜市の調査と住民の調査で大きく異なった問題で、強度が基準の63%と発表していた横浜市は16日、「最悪でも53%」と修正した。住民が調査を依頼した浜田幸慶1級建築士と同じく、窓やドア周辺の壁を「耐震壁」とみなさないなどの条件で再計算した結果という。
 横浜市建築企画課によると、同市は05年12月、マンション完成前の「建築確認変更図」をもとに業者に耐震強度を計算させ、63%と発表。しかし今年6月、住民側が依頼した浜田氏の再計算で21%となったことから再検証を進め、16日の住民説明会で「耐震強度は53〜63%」と修正した。
 また、同課は06年1月にマンションの竣工(しゅんこう)図を入手していたにもかかわらず、建築確認変更図をもとに計算させた耐震強度を再検証していなかった。担当者は「竣工図を入手後も検証しなかったのは適切であったとは言えない」と釈明している。【池田知広】
6月17日朝刊

主観に左右されること。計算のプロセスに仮定がたくさん含まれていること。解析が数学的に単純化されすぎていること。などなど。

絶対の数値のように扱われるには問題がある数値でしかないようです。一般的には、耐震性能を表す絶対の指標と考えられているようですが、実際のところ、どのように扱うべきか再検討すべきです。

実際の地震で何がおこるのかということを表す数値というより、規則が要求する数値という性格が強い数値になっています。今や、この数値を基準に考えるのは、技術の問題ではなく、制度の問題になっているようです。

欠陥のあるマンションの紛争でも、耐震強度を巡った争いが行われるようになっているようですが、民事の紛争では、この数値を巡って争うのは難しいのではないかと思います。計算によって異なってしまう数値で、いつまでも再計算を繰り返し、この数値を巡って議論が進展しない可能性があるからです。

費用と時間がかかる再計算は、拘泥しすぎてはいけないのかも知れません。

姉歯元建築士ほかの第一次の耐震偽装事件では、計算した本人が偽装を認めていることと、行政の判断による措置が講じられている点が重要です。

これに対し、アパほかの第二次では、計算した本人は偽装を認めておらず、強度については解釈の違いであると粘っています。行政は措置を講じているようですが、第一次の対応とは温度差があるようです。アパでは、確認や検査後の数値の差し替えの手続きの問題が発端で、結局、強度の低下が指摘されるにいたったという事件だったのではないかと思います。

耐震性能についての争いというより、妥当な図面を計算に選んだかどうかや、手続きが妥当であったかというような点が問題として重要視されるように変化してしまったような気がします。

とりあえず、建築確認の申請では、不適切な修正が認められない制度になったようですが、修正に限って言えば、融通がきかないため、負担が重い面倒な仕組みになってしまっているようです。

ところで、横浜については、建て替えや補修についての判断が柔軟であり、適切でない再計算については問題であるものの、今後の対応については、あまり数値に拘泥せずに最も適切な方向性を見いだしていくのではないかと期待されます。「0.5」という数値をクリアしているからといっても、ほかの条件も考慮した対応になるのではないかと想像します。
by gskay | 2007-06-25 00:31 | 安全と安心