『官僚とメディア』(魚住昭)
「耐震偽装の構図」を信じている人も信じていない人も、読んだ方がいいと思います。

耐震偽装では、何が起こっていたのかということさえ、普通にしていたら解らなかったと思います。私は、巻き込まれていて、実体験の中から考えて、「構図」を始めから信じていませんでした。同時に、自分が体験しているものと報道されているものの差に驚いていました。さらに、報道を信じて、実際の出来事を信じない人々に愕然としました。

報道を鵜呑みにする人を批判しようとは思いません。しかし、鵜呑みにして、操作されてしまっているということには、問題意識を感じます。耐震偽装事件をのぞけば、私も操作されて、報道を信じてしまっているという自覚があるので……。

別に近くにいたわけではないのに、きちんと取材をすると核心に辿り着くことができることがわかりました。状況の分析については、指摘の通りだと思います。報道の現場体験からの発言であるだけに、緻密でリアルだと思います。

ほかには、『「法令遵守」が日本を滅ぼす』(郷原信郎)も、イーホームズの藤田社長の著書と並んで、実態をとらえた本だと思います。ただ、これらは、ジャーナリストによる著作ではありません。『官僚とメディア』が、ジャーナリストの著作であるという点は、特筆に値すると思います。耐震偽装の捉え方は、メディア批判、官僚批判のための材料にすぎませんが、充分な描かれ方だと思います。

私は勉強不足であるのか、このくらいしか、耐震偽装の本質をとらえていると実感させてくれる書籍を知りません。他の耐震偽装関連書は、口当たりのよい一般論を言っているにすぎないと感じていました。極端に言えば、別に耐震偽装に触れる必要もないような書物ばかり。ただ、話題性で、耐震偽装を語っている本さえあるのではないかと思っています。「構図」を垂れ流しにしたメディアと変わらない存在だと思います。

真相については、三冊が指摘する通りだと思います。しかし、いずれも実態の把握や分析にとどまり、問題への処方箋としては充分なものではありません。断固とした方向性を見いださない限り、繰り返しになったり、状況が一層悪化してしまうのではないかと思います。

ところで、現在、海外に来ているため、新刊書をタイムリーに入手することができません。たまたま、日系の書店が複数ある街にいるため、どうにか、手に入れて読むことができました。国内で入手した場合の、約2倍の値段になってしまいましたが、帰国まで待たずに読んでよかったと思っています。
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by gskay | 2007-06-25 11:44 | メディアの狂騒