大臣認定プログラムと適法性
耐震偽装の鍵は、大臣認定プログラムのデタラメな運用だと思います。元建築士がしたことは、耐震性能が足りないかも知れないという建物を残しましたが、本人が「悪意は無く、設計についての発想の問題だ!」と言い張れば、全く展開は異なっていたと思います。

元建築士については、構造設計を熟知した上で偽装に手を染めた訳ではないと、私は考えています。まともに計算する能力はないが、プログラムを使う事で、何となく形になったものを出す事が出来たというレベルで、辻褄があわないところを、いい加減な数値で誤摩化していたというのが真相だと、私は思っています。

彼のしたこと全てが、耐震性能の不足に直結しているわけではありません。過剰性能もあるようです。単に能力に問題があっただけだと思います。

能力がなくても仕事ができてしまう仕組みを、現在の構造設計や大臣認定プログラムは孕んでいます。

彼は、あたかも構造設計の達人であるかのようにふるまい、ふるまい続けました。ふるまい続けることができたばかりか、多くの人が、そんな彼の話をまじめに聞いて取り上げています。そのくらい、構造設計や大臣認定プログラムは、肝心なところが隠されたブラックボックスの中にあるのだと思います。

構造設計やプログラムに詳しい人からみれば、実にバカバカしいことのようです。

少なくとも、大臣認定プログラムは、不正な数値を入れて計算できないように設計されるべきです。しかし、汎用性を高め利便性を高めると称して、不正な数値の入力が可能になっているとのこと。これは、日本と異なる基準の国の建物を設計する上で便利なのだそうです。専門家が問題視しているポイントです。

日本の建築基準への「適法性」を確保するためのプログラムだという前提が置き去りにされています。その問題には、誰も気付かなかったのでしょうか?

もし、そのような不正な手続きで認定プログラムを使うことができるとしたら、認定プログラム以外の方法と何ら変わらず、しかるべき審査が必要なはずでした。しかし、「認定」があるばかりに、その審査の対象外。適法性を保証するプログラムであるがために、その結果はすでに適法とみなされたようです。

プログラムの違いや、計算手法の違いで結果は異なるものの、このプログラムを使っている限り、「適法」なはずでした。実際は、不正な数値を入力できたけれど……。その不正な数値を入力できる所まで、適法だと考えるべきだったのかもしれません。不正な数値の入力も、「設計の発想」と言い張れば、言い張れるような仕組みだったのです。

元建築士は、「きちんと見ていればわかる」と主張していますが、元建築士は、構造計算に疎いばかりか、建築確認のプロセスや大臣認定プログラムの仕組みにも疎かったのだろうと思います。にもかかわらず、この件も、イーホームズをはじめとする検査側の主張より、元建築士の主張が広く受け入れられているように思います。

私も、大臣認定プログラムという制度設計のずさんさを知るまで、検査機関の怠慢が問題ではないかと考えていました。しかし、検査の担当者に責任をなすり付けることで解決するような、そんな浅薄な問題ではないようです。

なぜ、「適法」と判断する事ができるのかということを真剣に問わなくてはいけないと思います。それは、逆に「違法」を指摘する根拠にもなるように思われます。そこが、全く論じられずに、ここまで来てしまったようです。

大臣認定プログラムと検査の関係がいい加減で、どのような根拠で「適法」という確認がなされるのかということが曖昧です。その「適法」の効力がどのようなものであるのかも曖昧なままです。また、発覚した問題に対しても、しっかりとした検証なしでいい加減な対応が行われ混乱してしまいました。

その曖昧さやいい加減さの根幹には、官僚の裁量があり、「御上のお気持ちひとつ」という仕組みがあるのではないかと思います。

もし、その「御上」の対応が適切であったなら、悪影響は最小限に抑えられたと思います。そうであれば、それ自体は、歓迎すべき事かもしれません。

ただ、この耐震偽装での「御上」の対応が適切であったのかどうかはわかりません。悪いとも言えないし、もちろん良いとも言えません。なぜなら、そこも検証していないのですから。

聞けば、建築確認申請の現場は、法改正によって混乱しているとのこと。肝心の大臣認定プログラムについても、何だかわからない状況です。

そうだろうなと思います。きちんと検証せずに、小手先の対応をしているのですから。むしろ、きちんと検証することに背をむけているのではないかとさえ感じられます。
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by gskay | 2007-07-13 00:41 | 揺れる システム