自治体の怠慢?
さすがに放置できなくなったようですが、本来、自治体の業務としているなら、技術的な判断を要する業務であるだけに、相当部分まで自治体の現場の専門家に任せる仕組みにすればよかったと思います。後から問題が出てきても、耐震偽装の騒動のようにならないように、充分な配慮をした取り締まりと対応を考えれば良かったこと。

耐震偽装の騒動で、能力不足と責任回避から辻褄のあわない対応をし、その延長でこのような大きな失政をしてしまったのだと思います。

自治体のせいにはできないことです。

国交省が方針 「怠慢自治体」指導強化 建築確認遅れ(産経新聞) - Yahoo!ニュース


10月11日8時0分配信 産経新聞

 耐震偽装問題を契機に検査を厳格化した改正建築基準法(6月施行)をめぐり、全国住宅着工戸数が大幅に落ち込んでいる問題で、国土交通省は10日、施行後の都道府県別建築確認件数を分析した結果、改善に消極的な自治体への指導を強化する方針を固めた。着工遅れには、煩雑な建築確認事務を自治体が嫌い、建築申請を受けつけないなどの怠慢で事務が滞っているとの指摘もある。国交省は怠慢な自治体をあぶり出し、今月中にもアドバイザーを派遣するなど対策を講じる考え。

 建築基準法では、建築主が、自治体か民間の確認検査機関に建築確認申請を出す決まりだ。改正後は「適合性判定機関」などの二重チェックが義務づけられたほか、申請書類が大量になり、自治体の負担は重くなった。

 建築確認件数に関して国交省は改正前、年度別の全国合計件数しか把握していなかった。しかし、改正後の影響の問題化を受け、建築確認事務の実態をつかむため、自治体と民間確認検査機関による確認件数の集計を、都道府県別や月別でも始めた。

 それによると、自治体と民間をあわせ、7月は全国計3万6355件で前年同月比39・3%減、8月が4万6071件で24・3%減と判明した。このうち、自治体分は7月38・6%減と8月32・9%減で、民間分の7月39・7%減と8月20・0%減に比べて状況の改善が進んでいなかった。

 同省は全国平均減少率などとも照合し、各自治体の取り組み状況を分析。「劣っている」とされる自治体に新設の建築基準法アドバイザーを派遣し、施行の円滑化に向けて指導を行う方針だ。

自治体には、「だったら、とりあえず建築確認を出してしまえ!」という判断も可能です。どっちみち、技術的な限界から、確実などということはありえないのですから。よくわからないが、とりあえずやってみる。問題を指摘されなければ、よし。これは、問題の元建築士の発想と変わらないレベルですが、このような対応をしても、多分、平気です。

取り締まりらしい取り締まりはありません。また、問題をみつけて何とかしようとしてしまうイーホームズは、すでに退場させてあるので大丈夫です。また、要は、一番最初に見つからなければいいというのは、耐震偽装の教訓に他ならないのですから……。

しかし、それではまずいので、国土交通省に、「本気で抗議する」というのが、もっともふさわしいやり方ではないかと思います。ただ、技術的には、都道府県レベルでも、国土交通省やその関連機関の文書をひな形にして、コピー・アンド・ペーストしか出来ないというのも、耐震偽装に関連して出された文書から明らかになっています。

技術的に議論で太刀打ちできないとなると、国と地方公共団体との関係を問う議論になります。地方公共団体は、国の出先機関ではなくなっています。このあたりに対する国土交通省の認識は、少し鈍いような気がします。おそらく、補助金などを握っているという点から強気になれるのではないかと思います。

抵抗しても損するだけかもしれません。だったら、建築主事をおく市では、地域経済の活性化のために、積極的に建築確認を出すという裏技も、今なら可能です。

何しろ、GDPを押し下げる効果があるほどの、完璧な失政。

多少大胆でも、しっかりと筋が通る形であれば、批判よりも歓迎がまさる可能性さえあります。

このような対応は、民間検査機関には許されないことだと思いますが、何しろ、耐震偽装においても、特定行政庁に対しては、国からもマスコミからも「世論とやら」からも、民間検査機関に向けられたような厳しい批判はおこらなかったので、大丈夫。

ところで、国土交通省は、焦っていると思います。大臣が連立する政党から出ていることもあってか、政府全体の対応は遠慮がちです。

しかし、GDPを下げるという事態に至っては、経済産業省はもとより、税収のそろばんをはじく財務省もだまっていないと思います。仕事に困った人が増えてしまうと、厚生労働省の負担が増えます。自治体を管轄する総務省も。

耐震偽装の初期の対応を間違えてしまったために、不適切な建築基準法の改正が行われましたが、いまや、耐震偽装をはなれ、この不適切な建築基準法は、一人歩きをして猛威を振るっています。

本来は、耐震偽装の初期には、安全に対するパニックをいかに沈静化するかということが必要でした。災害と違法建築を取り違えた対応が、災害への対応も任務としているはずの省庁とは思えないほど稚拙でした。

また、冷静に、関係者の責任関係を整理するべきでした。費用もかかり、金融機関などの強力も必要なので、他省庁や自治体の協力を受けながら検討すべきでした。

何にこだわったのか、それができなかったために、このような失政につながってしまったのだと思います。

せめて、もう少しましな法律になっていれば良かったのに……。それほどまでに、官僚のレベルが落ちてしまっているのだとしたら、恐ろしい事態です。

経済に深刻な影響を与えている今回の建築基準法を改正は、将来、様々な教科書に取り上げられることになるような興味深いケースを提供してくれていると思います。

この改正のきっかけは、耐震偽装だったかもしれませんが、もはや、「もとはといえば……」などと言っていられる状況ではありません。耐震偽装の詳細は忘れられても、この建築基準法の改正の影響については、歴史的な出来事として残るのではないかと思います。
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by gskay | 2007-10-11 13:39 | 揺れる システム