三歩すすんで、二歩さがる
建築基準法が、耐震偽装を契機に改正されましたが、その弊害ばかりが目立っています。しかし、耐震偽装の有無にかかわらず、耐震偽装以前の体制が良かったとは言えず、旧態に戻った方がいいという考えは妥当ではないでしょう。かと言って、改正後の法律に固執するのも愚策といわざるをえません。

ところで、改正前は、供給サイドばかりに都合が良い偏ったシステムであると批判されていました。改正後に、それが改善されたかといえば、あまり高い評価はできないように思います。

ただ、改正前から、「住宅性能評価」という制度がありました。これは、品質の評価や欠陥に対する補償の面から買い手にもメリットがある制度だと期待されていました。しかし、業界にとっては負担であるし、建築確認制度がきちんと機能しているという前提にたてば、二度手間にすぎません。買い手に負担が転嫁されることにも抵抗感があったものと思われます。強いていうなら、高いレベルの品質を保証するという制度らしいのですが、あまり利用が進んでいませんでした。

ヒューザーは、この制度を利用していませんでした。このことも含め、補償が滞るという懸念が広がり、ヒューザーは破産に追い込まれることになりました。

一方で、ヒューザーの物件ではありませんが、この制度の認定を受けていたにもかかわらず耐震強度に問題がある物件が発覚しています。「評価」としての審査の能力には疑問符がつく制度でもありました。

補償制度と考えれば妥当な制度かもしれませんが、建築確認制度との併存や、検査の能力の限界からみると、中途半端な制度でした。

耐震偽装は、イーホームズが問題として取り上げたことから発覚しましたが、それがなければ、「違法建築」などというものを指摘する能力さえないのが実情でした。違法や欠陥が明らかにできないのなら、補償制度は機能しません。明らかにすることが難しいことでないなら、そもそも、欠陥も違法も生まれてきません。自己矛盾の制度です。

このため、補償制度にかこつけた集金のシステムとしてしか見なされていなかったのではないかと思います。補償制度を用意してはいたものの、まさか、それを活用することは想定していなかったのではないかとさえ思える中途半端な制度でした。

どうやら、この制度の定着や活用が、混乱収拾の到達点になるのかと思います。

最初の耐震偽装では、「住宅性能評価」による補償制度はともかく、その背景にある審査は無力であることが明らかになりました。しかし、今回の耐震偽装では、建築確認は無力のままでも、「住宅性能評価」の方は、それなりに改善していると評価できるような成果と位置づけることができます。

だったら、建築確認と重複した制度ではなく、「住宅性能評価」に一本化してしまえばいいのではないかという方向に進めたいのかもしれません。

「住宅性能評価」の理念自体は、買い手の側からみても評価すべきだと思います。ただ、その実力がともなっていなかったことが、広く受け入れられなかった原因だと思います。その実力を、今回、証明したということになります。

問題を発見した「住宅性能評価機関」が公表されていない点など、気にかかるところはたくさんあります。微妙な問題があるのかもしれません。本来は、より高い性能を評価するのが目的ですが、今回は、違法を発見してしまいました。その違法は、建築確認で見落とされたものであり、その機関との関係が問題になります。

たとえば、同じ検査機関が、建築確認で見落とし、「住宅性能評価」で発見したとなると、その機関の建築確認業務への態度が厳しく問われることになると思います。たとえ同じ検査機関でなかったとしても、やはり、建築確認の意義を疑問視せざるをえません。

そうした微妙な問題はあるものの、建築基準法改正という「三歩前進(前進が大きすぎて誰もついていけなかったというより、実質的には足踏みだけで前進してはおらず、負担と弊害ばかりが目立ったけれど)」から「二歩」さがり、「住宅性能評価」制度の定着させようというのかもしれません。これは、かつて果たせなかった「一歩前進」です。

もともと、阪神大震災以降の問題意識の中から登場し、買い手の保護も視点にいれた制度ではあったものの、業界の反対や能力の限界から広がらなかった制度です。今なら、補償の制度としても、審査の能力についても、歓迎できるのではないかと思います。

はじめからそのつもりだったとしたら、すごい高等戦術です。しかし、巻き込まれた側はたまりません。また、一国の経済に大きな影響を与えてしまった点で、大局を見誤っています。

とりあえず、改正された建築基準法による混乱からの出口はここなのかもしれないと、前のエントリを書いたあとから考えています。改正した法律をうまく軌道に乗せるのが第一でしょうが、失敗したとしても、ここに落ち着くことは簡単だと思います。
[PR]
by gskay | 2007-10-16 13:44 | 揺れる システム