耐震偽装と改革の関係についてのデタラメ
耐震偽装事件やその後の混乱を考える時、前後関係が無視されがちです。前後関係を無視して、因果関係をこじつけたり、後知恵のルールを無理矢理あてはめることが当たり前になっていて、誤解や偏見だらけです。

どうも、私たちは、事実の順番よりも、発覚した順番にとらわれて、物事を考えてしまうようです。少ない情報だけを元にした暫定的な分析の不十分さや誤りから抜け出すことは難しく、思い込みにこだわり続けて、後から判明した事実を適切に組み込んで解釈することが妨げられてしまうようです。

また、断片からの理解は、断片という不完全なものであるため、無関係なものが挿入され易く、直接関係がない不満や不信の都合の良いはけ口にされててしまうことがあるようです。

それが硬直化し、修正不能になると、その事件そのものの実像を見失うだけでなく、不満や不信にもきちんと対処できなくなってしまいます。

例えば、耐震偽装事件に関連した根強い批判のパターンのひとつに、小泉改革の規制緩和との関係があります。

実際は、耐震偽装は、小泉政権よりも小泉改革よりも前にすでに発生していました。また、建築確認の民間解放も、小泉政権の前でした。

そもそも、耐震偽装の最初の見落としは、民間検査機関ではありませんでした。特定行政庁である自治体の建築主事によるものです。

また、やり玉にあがった代表的な民間検査機関であるイーホームズで問題となった件数が多かった理由は、規模が大きな検査機関で取り扱いの総件数が多かったからです。イーホームズは、ERIが業務停止になっている間に業績を伸ばしました。最初の耐震偽装事件の元建築士の物件も、ERIの業務停止にともなって、イーホームズに提出されるようになったにすぎません。

「イーホームズが甘いから」と元建築士が説明したことが、広く取り上げられました。これを、そのまま字句通りに理解してはいけません。これは、イーホームズをさしているのではなく、全建築確認をさしていたと考えるべきです。

さて、意図的かどうかは別として、目をそむけられ続けている事実があります。

民間解放によって、耐震偽装を指摘できる民間検査機関が登場したという肝心な事実です。イーホームズという民間検査機関が登場することによって、これがはじめて指摘されました。

耐震偽装は、小泉改革の負の部分で、民間解放の失敗だとされています。しかし、実際は、民間への積極的な解放により、やっと、問題を指摘できる検査機関が登場したというのが真相であり、もし、民間検査機関を育成しなければ、今でも、見落としが続いていた可能性があることに注意しなくてはいけません。

むしろ、小泉改革や民間開放が成し遂げた快挙であったと位置づけるべきではないかと思います。

小泉改革や、規制緩和、民間開放を批判するとき、耐震偽装を引き合いに出すことは、「デタラメ」です。

しかし、多くの人にとって、無理な関連付けの方が常識になっています。これは、残念なことです。

そんなデタラメにこだわらず、小泉改革や、規制緩和、民間解放の弊害は、その弊害そのものとして取り組むことが大切です。

(考えようによっては、放っておけばごまかして済むものを、表沙汰にしたというバカ正直な対応が、改革や民間解放の弊害と考えることができるのかも知れませんが……)

さて、新たな耐震偽装が発覚しましたが、これまでの常識にしばられたままです。抜け出ることは難しいことだと感じます。

また、新たな事実の微妙な前後関係や、その取り上げ方の曖昧さによって、誤解や偏見が、真相とは全く異なる方向で発展する危険を感じています。

この修正不能な方向性が、思わぬ不幸や狂気、絶望や破局へとつながるものでないことを願っています。
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by gskay | 2007-10-17 06:43 | 揺れる システム