証人喚問
小嶋社長以来の証人喚問だそうで。耐震偽装に巻き込まれるまで、参考人招致や証人喚問というものがどういうものか、正直なところ、考えたことがありませんでした。

国会は、裁判官への弾劾裁判はあるにしても、そもそも、検察でも裁判所でもありません。

参考人招致も含め、証人喚問については、国の権限や意思決定のシステムの不備を明らかにするのが目的なのだろうと思います。不正が生じる余地や、適切な決定を妨げる要素を洗い出すために行われるのだろうと思います。

耐震偽装の小嶋社長の証人喚問については、元国土庁長官の伊藤議員とともに国土交通省に対する不当なはたきかけや介入をしたかどうかや、安倍前首相の周辺との関係が耐震偽装の対応をねじ曲げることになったかが明らかになれば良かったのかもしれません。

しかし、実際のところ、政治家と支援者という関係以上のものはなかったようで、しかも、それによって耐震偽装の対応が不適切になったと思われる部分は見つけられなかったというのが実態で、「空振り」だったと思います。

私は、個人的には、こういう時に、さっと対処するために立ち上がってくれる政治家でなければ、政治家の存在意義などないと思っています。行政の判断や対応が鈍すぎて、事態を悪化させたと思っています。こうした状況は、政治家が活躍すべきタイミングです。もちろん、そこに、不当な利益が絡んでいるというなら、それは許されないことです。(とはいうものの、耐震偽装では、行政のみならず、伊藤議員も活躍できたとはいえず、マイナスポイントを背負うことになってしまったようですが……)

そもそも、耐震偽装の部分と、後始末の部分に混同があって、とんちんかんな喚問になっていました。建築や不動産取引のあり方の曖昧さも放置されたままになってしまいました。「刑事訴追のおそれ」というのは、困った発言ですが、司直が扱うべき問題と、国会が論ずる問題との関係が整理されているとはいえないようです。

今回の前防衛次官の証人喚問は、甘い汁をすする官僚へのお仕置きや見せしめの意味があるのかもしれません。そういうお仕置きや見せしめを恐れて、今後、このような官僚が登場しなくなるかもしれませんが、それでは、「のど元すぎれば……」というレベル。

官僚の裁量による意思決定システムが温床になっているはずで、それを明らかにしてシステムを抜本的に改善しなくてはならないと思います。そういう方向性は、イマイチ感じられませんが……。

また、情報の隠蔽。防衛上の問題は、秘密にすべきことが少なからずあると思います。それを、隠蔽と混同してはなりません。

隠蔽については、耐震偽装でもささやかれていることです。例えば公団。あるいは「0.5」をめぐる問題。

現在の中央官庁に共通する病弊で、文書主義が歪んでいることを懸念します。

オリジナルの情報を大切にしなくてはいけません。しかし、なぜか、その情報を解釈した結果ばかりが一人歩きし、本来の意味以上の意味を持ってしまたり、ねじ曲がってしまったりするようです。そこに不都合があったとき、オリジナルの情報を検証できないというのは、大問題です。その情報管理や、その責任を明確にしなくてはなりません。

紛失したり破棄したり破損させてしまった当事者や保管の担当者が、決して表に出ないのが不思議です。

ところで、耐震偽装では、国土交通省がシステムのレベルから国会で追及されることはありませんでした。不正がなかったからということなのでしょうか?まあ、許しがたい所行が表沙汰にはなっていませんから、関心が向かなかったのかもしれません。放ったらかしにした挙げ句が、建築基準法の改正とそれにともなう混乱ではないかと思うのですが……。

一方、防衛次官の問題は、所行が問題であることが注目を浴びるきっかけかもしれませんが、防衛を巡るシステムの問題へと発展させて考えなくてはいけません。

とりわけ、シビリアンコントロールというものを再検討しなくてはいけないと思います。「背広組」とやらは、シビリアンなのでしょうか?戦前の軍官僚から制服を脱がし、階級の束縛を取り払っただけではないかと思います。だとしたら、それはシビリアンコントロールとはいえないかもしれません。

また、秘密が不可避な組織であるだけに、官僚制度の問題点が、もっとも強烈に現れやすいところなのかもしれません。

国際貢献や米国との関係という対外的な問題とは別に、防衛をになうシステム自体が信頼にこたえていない状況にあるように思います。

疑惑というものは、そうした状況の象徴にすぎず、改善のためのきっかけにすぎないはずです。しかし、耐震偽装と同じように、あたかも従前の仕組みにとっての「みそぎ」になってしまって、大失敗につながってしまうことを恐れています。
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by gskay | 2007-10-30 01:07 | 政治と役所と業界