実測値
11月8日のエントリへの マンション さんのコメントに関連して。

中日新聞:新築マンション耐震強度不足は4%程度 国交省が抽出調査、下方修正:社会(CHUNICHI Web)


2007年10月27日 夕刊

 新築マンションをめぐり「一割に耐震強度不足の恐れがある」とされた国土交通省の抽出調査結果が、実際には最大でも4%程度にとどまることが分かった。現地で実測するなどした各自治体の裏付け調査で判明した。強度不足の新築マンションは単純計算で全国に約六百件と推計されていたが、大幅に下方修正される見込み。国交省は、各自治体の報告がまとまり次第、最終結果を公表する。

 抽出調査は、姉歯秀次・元一級建築士による耐震強度偽装事件を受け、新築マンションの耐震強度や偽装の実態を把握するのが目的。

 二〇〇〇−〇五年に建築確認された中層マンション約六千件から、無作為抽出した三百八十九件の耐震強度を試算した。

 その結果、今年三月の中間発表では、建築基準法が定めた最低強度を下回るマンションが、約一割の四十件に上った。

 これを受け、各自治体が現地調査などを実施したところ、▽建物の荷重の実測値が設計時の荷重より軽い▽現場の地盤が設計時の想定より強固▽構造計算書になかった耐震スリット(耐震壁と柱のすき間)が実際には施工されていた−などの理由で、耐震強度の実測値が計算値を上回っているケースが相次いだ。

 強度不足とされた四十件のうち実測値も強度不足だったのは、大分(基準の66%)、静岡(同68%)、新潟(同85%)の三県にある三件だけ。

 二十四件は、基準以上の強度があったといい、裏付け調査中の残る十三件が仮にすべてが強度不足でも、強度不足の建物は最大十六件(約4%)にとどまる見通しになった。

 強度不足が確定した三件も、国の建て替え基準(同50%未満)は上回っており、改修補強中。三件のうち大分県のケースは施工ミスが原因で、構造計算は問題なかった。静岡県のケースは、別の構造計算書が一部混入した単発的なミスという。一方、新潟県のケースは、耐震強度偽装問題で構造計算書の偽造を指摘された富山市の田村水落設計が構造計算を担当していた。

 同設計が関与した二百二十八件の建物すべてを対象にした調査では、十一件の強度不足を確認。国や富山県が一級建築士免許と事務所登録を取り消している。

「下方修正」は、単なる騒ぎの沈静化ではなく、また、中間発表も、大げさすぎたということではないと思います。

実測値というのが曲者ですが、設計のための図書に問題があっても、性能が確認されていれば、少なくとも出来上がっている建物については、違法を問題にしないということだと思います。実際の性能を問題にしている点で評価できると思います。

ただ、計算値と実測値が異なるということは、計算値で問題がなくても実測値に問題がある可能性も……。設計は正しくても、施工の欠陥は、この調査ではふるい分け段階で対象になっていないところが、問題ではあります。世の中の欠陥住宅や、欠陥建築は、おおかたは、施工の問題ですから。

ところで、建築確認が煩瑣になったことは、将来、大臣認定の仕組みで、仕様をコンピューターで参照しながら設計したり、検査したりする道につなげることができます。大臣認定などの制度を活用することで、設計も検査も容易にすることができます。そのように建築確認された物件については、設計上の違法はありえないことになります。

建築基準法の改正は、「切り貼り」対策ではないはず(?)で、前のエントリで批判した担当の企画調整官は、こうした点からの道筋こそ明らかにして欲しかったと思います。(記事にはライターの考えも入るので、複雑ですが)

施工での欠陥や、欠陥とはいえないものの変更が生じることは、別の問題として残ります。それは、中間検査や竣工検査の対象です。設計との差異が見られた場合、それを違法として扱うべきかどうかという問題については、「実測値」が許容範囲内であれば適法という評価になるものと思います。そして、そうでないと「欠陥」であり、違法。

特別な設計や、ユニークな試みを目指さないのなら、この仕組みは、大幅に作業効率を改善することができます。負担も減ることになると思います。ただし、オリジナリティーや創造性、先進性とは無縁であることは、充分に承知しておくべきです。

一方で、ユニークな建物では、性能に関して、いちいち証明しなくてはなりません。そのために建築確認の作業が時間がかかったり、費用がかかったりすることになるかもしれません。これについては、充分に納得できるような質の高い検査で対応するべきではないかと思います。それでも、違法な設計が建築確認を通過してしまう可能性がありますが、その時も、建物に対しては実測値で処分を検討すべきです。

冷静に考えれば、実測値が一番重要で、設計の数値を妄信することはできません。全ての実測値を明らかにするのが一番良いのですが、とりあえず、設計段階の計算値で代用するというのも合理的な判断です。そして、生じた疑義については、実測値で決着されるべきです。

そう考えると、「うちの物件は、どうだったのか?」という疑問がわいてきます。

さあ?

やはり、拙速だったのかもしれません。計算値というものが、設定次第で変わってしまうことと、それが、完成後の実測値になるとさらに変わるということが、あの時点では配慮されていなかったように思います。これについては、私たちに生じた負担や被害と直接関係することなので、混乱していたということだけで、有耶無耶のままで片付けて欲しくありません。

どのようなプロセスでどのような判断があったのかということを、たとえ刑事や民事での責任の追究を目的としなくても、事例として解明しておくことが、今後の、国のシステムや方向性を考える上で重要です。
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by gskay | 2007-11-12 02:18 | 揺れる システム