「非難されるべきは……」
ヒューザーの小嶋社長の刑事裁判が結審だそうです。この裁判は、耐震偽装そのものが裁かれているわけではありません。問題が発覚してから、公表されるにいたるまでの微妙な期間に行われた引き渡しが、詐欺かどうかが問題になっています。

個人的には、引き渡しをやめておくべきだったと思います。しかし、公判でも問題になったように、代金の流れは、金融機関を介していて単純なものではありませんでした。それでも、決断さえできたなら、様々な障害はあるものの、引き渡しをやめられた可能性は有るようです。そういう意味で、肝心な決断ができなかった経営者であり、被害を拡大させてしまいました。

ただ、引き渡しを期日に行うという契約の履行に対する責任もあります。その上、問題となった耐震性能の問題は、発覚の時点で確定したものではなかったし、その重大さも明らかになっていませんでした。そうした事情を、よく検証する必要があると思います。

ところで、仮に、あの時点で、引き渡しを中止できたら、問題に正面から取り組もうとしたイーホームズに近い立場から問題に取り組む事ができた可能性があります。耐震偽装は、全く異なる事件となっていたことでしょう。しかし、公表までの水面下の努力は実を結ぶ事はなく、イーホームズとは独自に建築確認の問題点を追及するという方針は裏目に出てしまいました。

少なくとも、小嶋社長の努力で、国土交通省のデタラメさを明らかにすることはできなかったと思います。懇意にする政治家をまきこんだスキャンダル騒動へと矮小化され、肝心の問題から目をそむけるための格好の材料を提供しただけになってしまいました。

<耐震偽造>ヒューザー、小嶋被告の公判結審 来年3月判決(毎日新聞) - Yahoo!ニュース


12月17日20時41分配信 毎日新聞

 耐震データ偽造事件で詐欺罪に問われたマンション販売会社「ヒューザー」元社長、小嶋進被告(54)は17日、東京地裁(毛利晴光裁判長)の最終意見陳述で「完全に無罪です。そのことだけは証明しないと死んでも死にきれません」と改めて無罪を主張した。検察側は懲役5年を求刑しており、公判は結審。判決は来年3月25日。

 小嶋被告は「信頼してマンションを購入したお客様におわび申し上げます」と冒頭で謝罪しつつ「恥ずべき犯罪行為は一切ない」と述べた。弁護側も最終弁論で「非難されるべきは姉歯秀次元1級建築士であり、耐震偽装を容易にできる仕組みを作った国土交通省だ」と主張した。

 起訴状によると、小嶋被告は05年10月、神奈川県藤沢市のマンション「グランドステージ藤沢」の耐震強度が不十分と知りながら、売買契約していた住民11人に伝えず、購入代金計約4億1410万円をだまし取った。検察側は論告で「業者としての最低限のモラルを欠いた卑劣な行為」と指摘している。【銭場裕司】

引用した記事では、「耐震偽装を容易にできる仕組みを作った国土交通省だ」という主張を取り上げています。私は、国土交通省について非難すべきポイントは、別だと考えています。

たとえ容易に偽装できるような仕組みであったとしても、違法を許すべきではありません。たとえ国土交通省が脆弱な仕組みしか提供していなかったとしても、違法行為について国土交通省を非難することは適当ではありません。

問題は、10月末に発覚してから、11月17日の公表に至るまでの過程で、国土交通省も、担当する特定行政庁も、しかるべき判断をしていないという点にあります。11月17日までは、この問題が引き渡しを中止するにふさわしい欠陥や違法状態であるとは考えられてはいませんでした。ようやく一部の再計算が終わり、それが重大な事態であると公的に判断されて公表されたのは、あくまで、11月17日です。

11月17日の公表からさかのぼって、10月末の発覚直後の引き渡しの問題を問うことができるかどうかが、私は、この裁判のポイントの一つだったと考えています。

違法な建物だという点は前提だと考えられているようですが、ここに疑問を感じています。あくまで適法という手続きのもとで行われた引き渡しであり、公的な判断や処分はありませんでした。

そのような、後からの公的な判断や処分が、このような「詐欺」を問う根拠になるのかどうかがポイントになるのではないかと思っていました。しかし、どうも、この裁判では、そうした方向では争われなかったように感じています。

引き渡しにいたるプロセスだけが問題になっていて、前提となる「違法」という判断がどのように行われたかは問われていません。

検察は、「業者としての最低限のモラルを欠いた卑劣な行為」と指摘したと記事は言っていますが、違法の取り扱いが曖昧なだけでなく、公的な判断や処分に時間がかかったことが、藤沢の物件の引き渡しが行われてしまったことの最大の背景だと思います。

イーホームズには、建築確認などの検査をし、適法であることの証明書を発行することはできますが、それを取り消したり、違法を指摘する権限はありません。あくまで、特定行政庁が違法を指摘し処分を決定することが要求されているはずです。

そうした点を、国土交通省も、検察も、マスコミも誤摩化しています。それに、世論は流されています。

違法の深刻さは、その時点では明らかではなく、再計算を行うことによってはじめて確定した問題です。それが、引き渡しの契約を果たすというヒューザーの責任を否定できるのでしょうか?これは、刑事裁判より、民事裁判で争うべき内容だと思いますが、この「詐欺」を考える上で、重要な要素だと思います。

また、公的な判断がなくても、このような引き渡しの違法性を問う事ができるとしたら、どのような問題が発覚した場合、「詐欺」になるのかという基準も必要になるのではないかと思います。程度の問題があるからです。加えて、後から公的な判断や処分が行われたり、変更された場合、「詐欺」がどう取り扱われるべきなのかという点にも関心があります。

無罪となったら、検察が控訴することになると思いますが、有罪なら小嶋社長のやる気次第です。今の弁護団は人権については積極的ですが、少し、追求のポイントを変更する工夫も必要ではないかと思います。

もし、最高裁まで争うことになったなら、行政の「後だしじゃんけん」の正当性について判断してもらいたいと思います。
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by gskay | 2007-12-18 13:35 | 真相 構図 処分