「震度7に耐える力」の証明?
安全や安心に気を配ることは大切です。しかし、「絶対」ということはあり得ないというのが前提です。「絶対」とはいえないからこそ、性能を向上させる努力が必要です。

その一方で、「絶対」でないからという理由で拒絶してしまうと、何もできなくなってしまいます。どこかで妥協し、納得しなくてはなりません。

建築基準法で定められた基準以上の性能を希望することはできると思いますが、私的な交渉だと思います。その場合、司法の場で決着を目指しても、制限する根拠がないのではないかと思います。

適法とされた建物の安全性の問題を、今にも壊れてしまいそうな危険な建物に対する処分や、日常的に迷惑な建物に対する判断、そして違法と判断された建物への処分などと混同して考えることには疑問を感じます。

浜松のマンション建設に住民が差し止め申請、建基法レベルの耐震性では東海地震に耐えないと主張|ケンプラッツ


2008/01/21

 静岡県浜松市中区で進行中の分譲マンション建築計画に対し、このほど近隣住民が建築差し止めの仮処分を裁判所に申請した。建築基準法を満たすだけの耐震性では、東海地震発生時に倒壊する恐れがあると主張している。

 計画地は浜松市中区城北2丁目にあり、近隣住民の団体「城北1・2丁目住民の命を守る会」(細野透代表)が仮処分を申請している。同会によると、マンションは発注者がセキスイハイム東海(浜松市)、設計者がNEXT ARCHITECT & ASSOCIATES(東京・渋谷)で、施工者は未定だ。鉄筋コンクリート造、地上5階・地下1階建て、延べ床面積5251m2、住戸数52で、建築基準法レベルの耐震性を確保する計画となっている。

 「城北1・2丁目住民の命を守る会」はこの計画に対し、建基法レベルの耐震性では東海地震で崩壊して、近隣住民だけでなくマンション住民の人命も危うくすると主張している。守る会の資料によると、敷地周辺は東海地震で震度7が想定される地域であり、敷地は斜面の上部にあって地盤が弱い。建物と地盤が震度7に耐える力を備えていることをセキスイハイム東海が証明しない限り、マンションを建ててはならないという仮処分を下すよう、静岡地方裁判所浜松支部に申請した。

 仮処分申請の根拠として、最高裁判所が07年7月6日に下した欠陥マンションに関する判決を挙げている。建物は発注者や購入者だけでなく、利用者、訪問者や近隣の通行人にとっても安全でなければならないと認定する判決だった。

 裁判所が仮処分の申請を退けた場合には、近隣住民はセキスイハイム東海を相手取って、マンションが地震で倒壊した際の補償を約束させる訴訟を起こす予定だ。

住民が、建築主に私的に要求するのは構わないと思います。しかし、司法の場に持ち込んでも、住民に有利に進めるのは難しいのではないかと思います。そのような要求を公的に認めるためには、根拠が必要であり、それには何らかの立法が必要だと思います。

また、地震で倒壊した際の補償については、事前に約束するような問題ではなく、損害が出た場合に請求するべきことではないかと思います。その請求の相手も、建築主や売り主ではなく、所有者なのではないかと思います。なぜなら、建物を安全に保つ責務は、まず第一に、その時点での所有者にあるからです。もちろん、売り主、建築主、施工や設計に責任はあると思いますが、所有者の責任を飛び越えて、近隣住民にまで及ぶものではないと思います。あくまで、所有者の責任だと思います。もちろん、個別に約束するのは構わないと思いますが……。

そして、この記事で最も気になった点は、建築主が「震度7に耐える力」を証明する必要性の有無です。建築差し止めの請求をする側こそが、問題があることを証明すべき立場なのではないかと思います。その上で、その証明の内容に沿って、建築基準法では適法でも、制限を加えることができるのかどうかが、はじめて問題になるのではないかと思います。

続報として、

地震力を2割強く見積もる“静岡基準”でも東海地震に耐えない、浜松・マンション問題で住民側主張|ケンプラッツ


2008/01/28

 静岡県浜松市内でマンション建設に反対している住民団体は、建築基準法を満たすだけの耐力では東海地震に耐えないと主張している。静岡県では、建基法レベルの耐震基準が県外よりもやや高いレベルに設定されている。住民側はそれでも、東海地震がもたらす震度7の揺れには対応できないという見方をとっている。

 静岡県は県内の建物の確認申請で、構造計算の際に地震力の数値(地震層せん断力係数)を一般的な数値の2割増しで入力するよう申請者に求めている。東海地震などに備えた県独自の建基法の運用だ。

 住民団体「城北1・2丁目住民の命を守る会」の細野透代表は、建基法が想定する地震力を、地震動の加速度(単位:ガル)に置き換えた。一般的な建基法レベルの耐震基準は加速度400ガル程度、静岡県の基準は2割増しとなる同480ガル程度の地震動に耐えるとみている。どちらの耐震基準も、850ガル以上になる震度7の地震動には対応できないという見解だ。

 一方、静岡県は、地震力の数値を2割増しで入力するよう定めた静岡県建築構造設計指針で、この数値を定めた理由を「震度いくつ」や「○○ガルの地震動」に耐えるためとは明記していない。理由として、「(東海地震などで)県内のほぼ全域において震度6弱以上が予想され、また、極めて広い範囲において震度6強以上に予想される」ことを挙げている。県建築確認検査室の担当者は、「そもそも建築基準法の耐震基準は、震度という物差しでは計りにくい。上乗せした静岡県の基準も、震度7に耐えるかと問われれば、大丈夫とも大丈夫でないとも言いがたい」と話している。

 「城北1・2丁目住民の命を守る会」は細野代表の見解に基づいて、マンション建設を差し止める仮処分を静岡地方裁判所浜松支部に申請した。建基法の耐震基準と震度との関係について、司法はどのような判断を下すかが、注目される。

 問題のマンションの建て主であるセキスイハイム東海では、池沼敏彦・マンション事業部長が、「当社としては、建築基準法などの法令を順守して業務を遂行しながら、裁判所がどのような決定をするかを見守る」とコメントした。池沼部長によると、同社はこのマンションの建築確認を1月25日時点でまだ申請しておらず、申請先になる予定の指定確認検査機関と事前相談を進めている。

その後の展開はわかりませんが、判断の内容によっては、今後、様々な事業に制限を加えることが可能になる前例になると思います。より良い性能が目指されるのであればいいのですが、「絶対」などというあり得ないものを追いかけると、何もできなくなってしまうと危惧します。

また、続報によれば、建築確認以前の段階だとのこと。その段階で、このような請求ができるのかどうかも興味深いと思います。「建てるのであれば、強い建物を!」というより、「とにかく、そういう規模の建物はダメ!」という請求の内容であるような気がします。

どうやら、技術的な議論以前の段階の問題のようです。「証明」とか、差し止めというような段階ではないように思われるのですが……。
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by gskay | 2008-02-07 14:31 | 安全と安心