再可決後
衆議院による再可決に批判的な声を多く聞きます。どうしても必要な再可決だったという意見も聞きます。法案自身に対する意見の他、衆議院による再可決という制度自体への疑問もあるようです。

制度については、3分の2という数字の意味を良く考える必要があるように思います。3分の1とか3分の2という数字は、2分の1という数字とは別の意味があります。3分の1とか3分の2という数字を使う事で、少数意見が尊重されやすい仕組みになっていると考えることができます。

ところで、議決のルールとともに、会議成立のルールは重要です。議員数の3分の1の出席で、我が国の国会の会議は成立します。このため、我が国の国会は、欠席戦術がとりにくい仕組みになっています。一方、その関連で考えると、その裏返しが、衆議院での再可決の規定ではないかと考えることができると思います。

仮に議員数の3分の2の出席がないと会議が成立しないという規定があったなら、状況は一変します。3分の1以上の勢力を有するグループが欠席してしまうと会議は成立しなくなってしまうからです。過半数を確保していないため多数決を制することはできないグループにも、「会議を成立させない」という武器が手に入ることになります。その武器は、与党の半分以上の勢力を持っていれば使えることになります。そのような会議では、欠席戦術に意味があり、交渉の余地が生まれます。しかし、これは、我が国の国会のルールではありません。

我が国の国会の場合、3分の1の出席で、その気になれば会議が開けるので、本来、野党からの議案も会議で審議されるはずです。与党に都合の悪い議案についても、与党は否決のために会議に出席しなくてはいけません。この仕組みは、ないがしろにされているわけではないものの、世間の注目は浴びておらず、時間稼ぎくらいにしかなっていないように見られています。

しかし、そのような会議が開かれるということは大切なことです。少なくとも、少数意見が多数決によって否決されるという手続きは、少数意見を無視することとは異なるからです。また、否決されてしまうなら意味がないという意見もあるようですが、否決したという事実が、次の選挙での争点にもなるポイントです。

そのような会議を野党だけで成立させることさえできないのが、3分の2を与党が占めた場合です。3分の2という勢力は巨大です。小選挙区に比重をかけた衆議院でなければ、このような勢力を確保するのは困難だと思います。

通常の場合、内閣=与党であり、衆議院の出席議員の3分の2による再可決は、与党または政府による法案です。再可決は、行政的な停滞への配慮で行われると考える事ができます。この仕組みは、二院がねじれて足踏みになってしまいかねない状況おいても、あくまで国会が主導権を握り、行政組織が隙間をついて暴走するような事態を防ぐ効果があると思います。再可決には賛否があると思いますが、手続きとしては国会の中の情勢だけでなく、三権のバランスや、国権の最高機関という位置づけから考えなくてはいけないと思います。

我が国の国会は、両院が異なる選挙方法によって選出されるます。これは少数意見を尊重しつつ、議院内閣制を安定させるという背反しがちな目的を両立させようという工夫ではあるものの、ねじれが生じやすい構造です。そのねじれの中でも、安定した国家運営ができるようにするために、衆議院に優越が認められるとともに、数の上で安定しやすい衆議院と内閣との間の密接な連携が要求されていると考えることができます。

この3分の2という勢力は、一見すると安定したものにみえますが、とても危うい状況でもあります。

3分の2の勢力が2つのグループに分裂したとしても、少なくとも1つは3分の1以上の勢力を占め、第一党となることができます。3分の2の勢力があるという状況は、分裂と政界再編の可能性を持っていることになります。

また、3分の2の勢力の中には、政党への追い風で当選し、次回の選挙が危ない議員がたくさんいます。そうした議員が、次回の選挙への対策としてとる行動は、単純なものではないと思います。この点も、分裂や政界再編につながりかねません。

ところで、与党が衆議院で3分の2を占めるのはまれなことです。通常の与党は、衆議院の過半数以上3分の2以下です。この状況で、与党が参議院で過半数に届いていない場合、法案審議は深刻な支障をきたします。このようなねじれの場合、どうしようもなくなったら、解散総選挙が必要です。それが、郵政解散だったと考えることができます。もし、郵政解散後の総選挙で、与党が3分の2を確保できていなかったら、郵政についても扱いが変わっていただろうと思われます。

3分の2による再可決について、様々な意見が出る状況というのは、安定多数ではあるものの、極めて不安定であると見ることができるように思います。郵政の問題に関しては、3分の2は団結することができましたが、その他の問題まで団結するというのは少々無理があると思います。
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by gskay | 2008-05-16 03:23 | 政治と役所と業界