タクシー再規制
タクシーへの規制は、安全の問題と考えることができないわけではないと思います。また、地域の交通機関の確保と言う意味合いを強調することができると思います。

しかし、経営の問題や労使の問題に再規制によって介入しようと言う方向性は適切ではないと思います。

asahi.com(朝日新聞社):タクシー再規制 国交省「供給過剰解消のため」強調 - 経済を読む - ビジネス


 国土交通省は3日、タクシーの新規参入や増車に歯止めをかける方針を正式に表明した。02年の規制緩和から6年。「行き過ぎた緩和」が乗務員の収入減などを招いたとして、再び台数規制への道に戻る。ただ今後、しわ寄せが利用者にいく恐れがある。

 「非常に心強く感じている」。3日に開かれた交通政策審議会(国交相の諮問機関)のタクシー問題作業部会。国交省が規制強化方針を説明すると、委員を務める業界団体幹部はこう評価した。

 02年の新規参入や増車の自由化で、法人タクシーは01年の20万6千台から06年の22万2千台に急増した。国交省は作業部会で、多くの地域で供給過剰を招き、「乗務員の労働条件悪化などの問題を招いた」と指摘。「供給過剰の解消や防止に強力に取り組む必要がある」と「再規制」の必要性を強調した。

 その対策として打ち出したのが、悪質業者を排除するために新規参入や増車時の事前審査を強化することや、違反業者に対する「減車命令」を制度化することだ。台数が増えすぎた地域については、事前審査を特に厳格化。各社が協調して減車できるよう独占禁止法の適用を除外するよう調整することも盛り込んだ。需給調整は全国一律ではなく、地域の実情に応じて行うこととした。

 また、運賃については、競争が過度になっている地域があると説明。国交省が認可する上限運賃より10%以上安い運賃は、事前審査を強化するとした。

 作業部会での検討を経て、国交省は来年の通常国会に、こうした施策を盛り込んだ道路運送法改正案を提案する方針だ。

 ただ、台数規制が復活すれば、業者間の競争が緩む恐れがある。作業部会では利用者を代表して参加する委員が、台数の増加で待ち時間が減ったり、運賃やサービス面で競争が起きたりしたとし、「規制緩和には利点があった」と述べた。「良質な新規参入を閉ざすことは、業界や市場全体にとっても良くない」との声も上がった。

 それでも、国交省は「過当競争で悪化した乗務員の待遇改善のため、多くの地域で運賃が値上げされるなど現行制度は必ずしも十分利用者に利益をもたらしてはいない」と理解を求める考えだ。

 乗務員の待遇改善を目指すのであれば、台数の需給調整の前に、賃金体系を見直すべきだとの指摘もある。労働組合を代表する委員らは、「(それぞれの売り上げに応じて給与額が決まる)歩合制中心の給与体系が、需要減少のしわ寄せを乗務員に押しつけている」と訴えた。

 国交省も作業部会で、人件費が急減する中でも事業者の収支率が減っていない実態を示した。ただ、今回の方針では「事業所外労働が中心のタクシー事業では、歩合制にも一定の合理性がある」とし、原則として労使の問題とした。

 作業部会は昨年、東京都内のタクシー運賃値上げをめぐり、乗務員の賃金低下を理由に認めようとした国交省に対し、政府内で反対が起きたのをきっかけに、業界全体の問題を整理するため設置された。運賃がコストの積み上げで決まるため「事業者の経営努力を促さない」と大田経済財政相らから批判を受けた運賃査定方法については、引き続き検討するという。(大平要)


この引用の記事に加えて、「全国一律ではなく、地域の実情に応じて」という部分を詳しく報じている記事がありました。

NIKKEI NET(日経ネット):国交省、タクシー台数削減へ 供給過剰地域の判断に新制度


国交省、タクシー台数削減へ 供給過剰地域の判断に新制度

 国土交通省は3日、タクシーの供給過剰地域を判断する新しい制度を設け、タクシーの台数を削減する措置を盛り込んだ中間整理案を同省の作業部会に提示した。年内をメドに結論を得て、来年の通常国会に国交省が道路運送法の改正案を提出する方針。特定業種への再規制は規制緩和の流れに逆行するため、批判の声も出てきそうだ。

 今の「緊急調整地域」制度に替わる新しい地域指定制度は、新規参入や増車の禁止などの措置をより発動しやすくしたのが特徴。運転手の労働条件などで厳しい要件を設け新規参入や増車を抑制する。国交省が直接、規制を命じるのでなく、地域の関係者も加えた「総合的計画」を作って、地域のタクシー台数を削減するよう促す。

 中間整理案は全国を(1)仙台市など供給過剰が深刻な地域(2)供給過剰とみられる地域(3)運転手の営業収入が増えた愛知県豊橋市など問題ない地域ーーの3つに分けて対応すると指摘した。

今では、タクシー業界は、成長産業ではなく、戦略的に政策的に取り組んで育成し定着させなくてはいけないようなものでもないと思います。ただ、環境のことを考えて、マイカーを削減するというような方向なら、公的な権限が発動される意義はあるかもしれないと思いますが、そうではないようです。

経営の問題や、需要と供給の問題を、公的な権限が肩代わりしようとしているように思います。これは、経営の失敗などに対し、公的な機関が責任をとるわけではないので、無責任な制度だと思います。

民間の事業については、経営が失敗した場合、経営者や投資家が責任をとれば充分です。需要があり、供給が可能なら、新たな経営者や投資家が参入するだけのことだと思います。そして、事業としてはなりたたないが、ニーズが高いのなら、公的な事業として提供したり、補助金を出せば済む事です。

記事の中でとりあげられている労使の問題や、労働者の待遇の問題は、全く別の問題として公的な介入をしてもいいと思います。しかし、経営には介入してはなりません。また、これは労働行政の問題です。交通行政ではありません。

二つ目の記事では、「地域」が強調されています。これは、国土交通省に責任が及ばないようにする仕組みになると思います。単に責任が及ばないだけでなく、地域において、恣意的で杜撰な「総合的計画」を生みかねません。

ここが曲者です。地域という限定された空間であるがゆえに、様々なことが、不適切であっても、閉鎖的に決められてしまう仕組みを提供する事になりかねません。せめて、地方議会の権限にするなどの工夫が必要だと思います。

いずれにせよ、うまくいかない事業の責任をとる気がないのに、公的な権限が経営に介入するような仕組みは、よくないと思います。経営責任が、行政の「裁量」によって曖昧になってしまい、問題があっても解決が遅れます。さらに、「無謬性」の神話がある限り、失敗が誤摩化されたり、隠蔽されたりするという事例が増えるだけだと思います。
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by gskay | 2008-07-05 11:32 | 政治と役所と業界