偽装防止以前
耐震偽装ではありませんが、建材の大臣認定制度の問題をめぐる議論が難しい状況にあるようです。技術的な問題や制度の問題ではないようです。「偽装は悪いこと」という以上の問題意識が提起されているようです。

建材偽装の再発防止策、「責任の所在をより明確に」 と国交省に注文|ケンプラッツ


 国土交通省は7月2日、一連の建材偽装問題を受けて社会資本整備審議会建築分科会基本制度部会に設置した防耐火認定小委員会(委員長:菅原進一東京理科大学教授)の第2回会合を開催。大臣認定制度の不正受験防止策や認定後の品質管理について検討した。国交省は、8月に開催予定の第3回会合で対策案を取りまとめたい考えだが、委員からは「このままでは従来とあまり変わらない」といった意見が出るなど、8月以降も議論を継続する可能性も出てきた。

 国交省は今回の会合で、前回の議論をふまえた新たな再発防止策として、指定性能評価機関による試験体製作を提示。評価機関が建材メーカーなどから試験体の提供を受けずに直接発注するため、公正な試験は可能になるが、既存の評価機関だけで対応するのは物理的に難しいとして、将来的に導入していく見方を示した。

 これについて清家剛委員は、「建材メーカー側から費用を取って試験をする以上、評価機関側で試験体を製作すべき。対応できるかどうかは次元の違う話だ」と指摘した。

 また、認定後の品質管理について国交省は、性能確保を目的としたサンプル調査の継続を示し、「調査を実施することで不正に対する一定の抑止効果が得られる」と述べた。調査は類似の構造方法をグループ化した上で、代表的な構造方法を抽出。市場から材料を調達し、試験体を製作して性能を確かめる手法だ。抽出の割合を1%程度とした場合、調査にかかる費用は、性能評価の手数料を一律2万円程度増額することで補えるとした。

 しかし、菅原進一委員長は「(費用以前に)先ずは国が何をどこまでやるのかを整理する必要がある」と発言。辻本誠委員は「現場での責任に関する議論はどうなっているのか」、仲谷一郎委員は「調査の対象は新製品であることが多く、市場から材料を調達するのは困難」などと指摘した。

 このほか、販売仕様と大臣認定仕様の不一致を防止するための対策として、建材が認定と適合しているかどうかを建築士が監理業務の中で確認する案を提示した。しかし、古阪秀三委員は「建材の仕様が認定と合っているかのチェックは言うは易しいが現実には難しい」と否定的な見方を示した。

 国交省も対策案を提示する一方で、「国があまり責任を担保しすぎるとモラルハザードが起こる。長期的には自主的なものにした方がいい」などと回答。次回会合までに不正防止策の前提となる、認定制度における責任の所在について、より明確にすることになった。

■防耐火認定小委員会のメンバー
委員長 菅原進一(東京理科大学・教授)
委員 辻本誠(東京理科大学・教授)
委員 古阪秀三(京都大学大学院・准教授)
委員 大滝厚(明治大学・教授)
委員 清家剛(東京大学・准教授)
委員 富田育男(日本建材・住宅設備産業協会・専務理事)
委員 仲谷一郎(建材試験センター 性能評価本部・副本部長)
※敬称略

片岡 友理=フリーライター

担当の官僚の発想に問題があるように思えますが、それは、引用の記事にあるように、「国が何をどこまでやるのかを整理」できていないからだと思います。「現場での責任に関する議論はどうなっているのか」というより、国の役割に限らず、関係者それぞれの、基本的な役割や責任などが曖昧であることが問題です。

建築には、建築主、設計、施工、監理、検査機関などが関わり、さらに材料のメーカーなどが関与します。それぞれの役割や責任が充分に明記されているとはいえません。そこに、国が何の限定もなく介入できる仕組みになっています。国は、その気になれば、何でもできます。

国も、建築における関係者の一つにすぎないと考えれば、国についても、役割や責任を明確にし、そこからの逸脱や、あやまちに対応する仕組みが必要です。

これは、「基本法」のような法律によって、国や関係者の役割を明確にすることからはじめなければならないと思います。

特に、建築の場合、技術を扱っています。我が国の場合、国が、最良の技術や知識を独占しているわけではありません。しかし、その程度の能力しかない国に、無制限ともいえる力があたえられています。しかも、無謬という前提付きで。

「国があまり責任を担保しすぎるとモラルハザードが起こる」という指摘は、民間の業者に対する戒めだけではないと思います。これは、国についてもいえることです。「長期的には自主的なものにした方がいい」という点については、建築基準法や建築士制度の原点にもどってみることが大切だと思います。

基準を守らせるための仕組みの検討や、違反についての分析だけで、答えがみつかると考えてはならないと思います。守ることは当然だと考えた上で、取り締まる能力を向上させたり、基準を満たしていない場合の対応をしっかりと考えておくべきだと思います。

基準を守らせるための仕組みがしっかりすれば、違反は起こらないという問題ではありません。必ずしも故意でなく、悪意がなくても、違反は起こります。想定外の違反もあります。そうした限界への配慮が足りないために、国は、関係者の曖昧な責任関係の泥沼にはまり、ますます、曖昧さに拍車をかけるような役割をしているように思います。

一見、厳格になっているように見えますが、それは、煩雑になり硬直化しただけです。抜本的な解決でもなければ、現実的な対応でもありません。

「大臣認定」という制度の枠組みでしか考えないのだとしたら、出口は見つからないのではないかと思います。
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by gskay | 2008-07-08 13:15 | 揺れる システム