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違法なコンクリート
建築に使われるコンクリートについては、いろいろな噂があります。「違法」なものが混入されているということで、単に性能を劣るというだけではなく、わかりやすい証拠があるところが、問題になっている件のポイントだと思います。

建築については、国土交通省の大臣認定などによる規制だけでなく、経済産業省の日本工業規格(JIS)による規制も行われているのは当然といえば当然ですが、建築というもののあり方の難しさを感じました。


<生コン>神奈川の業者、溶融スラグを違法混入 2棟で確認(毎日新聞) - Yahoo!ニュース


<生コン>神奈川の業者、溶融スラグを違法混入 2棟で確認

7月8日22時31分配信 毎日新聞

 国土交通省は8日、神奈川県藤沢市の生コン製造会社「六会(むつあい)コンクリート」が日本工業規格(JIS)で認められていない「溶融スラグ」をコンクリートの材料に使っていたと発表した。この製品を柱などの主要部分に使うと耐久性能が弱まり、建築基準法違反になる。横浜市のマンションなど2棟で使用が確認されており、同省は8日、同じ製品が使われているおそれのある神奈川県内の約300の物件について、関係自治体に調査を指示した。

 国交省建築指導課によると、六会コンクリートは少なくとも昨年7月から原材料の砂と一緒に溶融スラグを混ぜていた。納入前の建築主による立ち会い検査では、正規のサンプルを示すなどして偽装していたという。

 同社の秋山広取締役営業部長は8日、取材に対し、混入の理由について「品質が良くなるうえ、リサイクルやエコ(環境保全)に協力できるのではないかと技術者が判断した」と釈明した。

 国交省などの調べでは、建設中の横浜市栄区の分譲マンション(鉄筋コンクリート6階建て、計73戸)と、藤沢市のいすゞ自動車工場の事務棟(鉄骨造り9階建て)の2棟で、柱やはりに使用する建築基準法違反が見つかった。いずれにもはく離があり、工事は中断している。マンションは半数が売約済みだが、500カ所以上のはく離があるという。同じ生コンを使ったとみられる約300物件の中には鎌倉市の「大仏トンネル」(約130メートル)も含まれている。

 国交省と経済産業省が所管する財団法人「日本建築総合試験所」は8日付で、六会コンクリートのJIS認証を取り消した。民間調査会社などによると、同社は70年設立。資本金1億円で、従業員は約40人。【高橋昌紀、五味香織、野口由紀】

 【ことば】溶融スラグ

 ごみなど廃棄物の焼却灰を溶かし、固化させた粒状のリサイクル資材。資源の再生利用という利点はあるが、生コンの原材料にした場合、内部で膨張するため、はく離現象を起こしやすい。JISの規格外で、柱などの主要構造部分に用いると建築基準法違反になる。1立方メートル当たりの原価は砂に比べ、100円ほど安い。


取締役営業部長という人のコメントは、研究機関のコメントであれば歓迎すべきものだと思います。しかし、現場で実験をして、実物で試してはいけません。「技術者の判断」というものがどこまで認められるのかが問題ですが、設計や施工と異なり、材料に関しては、現場が判断してよい部分は少ないと考えた方がいいように思います。

ただし、コンクリートをはじめ、工業製品ではありながら、供給方法も、使用方法も、臨機応変が求められるものがたくさんあるような気がします。この場合、「使用がみとめられていない」は、「使用が禁止されている」のか、リストアップされていないだけなのかで、事情が異なってくるように思います。

規格の趣旨としては、リストにないものを使用することはできないと考えるべきですが、規格を無視する事で,規格以上の性能が得られる場合、どのように考えるべきか難しいように思います。

加えて、建築については、施工や監理との関係もあります。施工や監理に託された判断をどのように位置付けるべきかという問題も考えて行くべきではないかと思います。

「『御上』が定めた通りなら、よろしい」という発想については、指摘できる課題がたくさんあるものの、了解可能です。そうでない場合、単純にダメだといえるのかどうかについて、疑問に感じています。仮に、「御定め」よりも優れていた場合、どうすればいいのでしょうか?

今回のケースは、性能に問題があるようで、そのようなややこしいことは考えなくてもいいようですが、取締役営業部長という人のコメントを読んで、規格や認定の意味や、現場がやるべきことをを改めて考える必要を感じました。


藤沢の違法生コン:市が調査開始 国交省リスト、使用の疑い1万件以上 /神奈川(毎日新聞) - Yahoo!ニュース


 藤沢市亀井野の「六会(むつあい)コンクリート」(小金井弘昭社長)が日本工業規格(JIS)で認められていない「溶融スラグ」を生コンの材料に使用していた問題で9日、この生コンを使った疑いのある物件リストが国土交通省から市に届いた。対象は1万件以上で、市は施工業者への聞き取りなどの調査を始めた。
 掲載されているのは、同社が建築基準法違反となる生コン使用を認めた昨年7月から今年6月にかけて施工された市内の全物件。リストには工事名、施工業者、出荷日しか書かれていないため、同市建築指導課は建築確認申請などを頼りに建築場所を特定、調査に着手した。小島良課長は「リストに載ってるものすべてが違反とは限らない。速やかに現場調査を進め、市民の不安を取り除きたい」と話している。
 一方、六会コンクリート本社や市役所などには「自分の建物は大丈夫か」などの問い合わせが、計約50件寄せられているという。【永尾洋史】

その続報は、「疑い」のひろがりです。これは、事件の拡大や深刻化というよりも、当然行われなくてはいけない網羅的な調査が始まったということです。耐震偽装では、こうした調査がうまく展開できなかったように思われます。適切に問題をピックアップし、適切な対応が行われるように望みます。

法律の基準に合うかどうかという視点も大切ですが、現実的な対応こそが必要です。

材料の問題ではありますが、所有者や建築主、売り主の責務できちんと対応することが第一だと思います。もちろん、施工や監理にも責任があります。材料の問題であるので、それを供給する業者に最終的な責任をとらせるにしても、やらねばならないことが多岐にわたり、それぞれの当事者が、それにきちんと取り組んでいくことが必要です。

あいにく、これまでは、そうした問題が起こることを防ごうという意識が強すぎて、問題発生という事態を極端に恐れるあまり、「ありえないこと」と考える傾向があったように思います。それに直面した時、見て見ぬ振りをしたり、誤摩化したりすることが少なくありません。

「ありえないこと」が目標ではなく、前提になってしまっていて、問題があったときの対応が充分に考えられていないなかったり、そんなことを検討すること自体がタブーであったりすることもあります。この件はどうかわかりませんが、対応にあたってのっとるべきシステムがないことに悩まされるたり、振り回されことがないよう、適切に対応して欲しいと願っています。
by gskay | 2008-07-11 11:54 | 揺れる システム