違法な採用?
大分県の教員採用の汚職は、汚職については徹底的な処分をするべきだと思います。しかし、採用された教員の処遇は別だと思います。

公務員採用は試験を行い、合格者を候補者として名簿に載せ、その名簿から最終的な採用が行われるのが通例だと思います。しかも、教員の場合、教員免許が必要なので、さらに一段階加わっています。「能力」については、解雇しなくてはいけない程のものなのか慎重に考えた方がいいと思います。

「解雇」根拠は何? 大分・不正採用教員 : 教員汚職 : 特集 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)


どこまで…見通し立たず

 教員採用試験を巡る汚職事件に絡み、16日、不正な手段で合格した教員全員の採用取り消しを決定した大分県教委。なぜ不正の全貌(ぜんぼう)が明らかにならない段階で、「過去に例を見ない」(文部科学省)という厳しい措置を打ち出したのか。その背景を探り、今後の課題を検証した。(社会部 村井正美、田中史生、大分支局 吉田均)

■「可能な限り」
 「どこまで確認が可能かはこれから調査する。可能なところまでさかのぼる」

 16日午前、記者会見に臨んだ大分県教委の小矢(こや)文則教育長はそう述べ、過去の教員採用試験についても調査したうえで、不正が判明すれば事実上の解雇となる採用取り消しをする方針を明らかにした。

 今回の事件を巡る捜査で不正採用が確認されているのは2007年度と08年度の小学校教員採用試験。

 収賄側の同県教委義務教育課参事・江藤勝由被告(52)(収賄罪で起訴)のパソコンには、両年度の受験生の得点一覧表とそのデータを改ざんした記録が残っており、不正合格者は両年度で40人近くに上る可能性がある。同県教委ではこのパソコンの記録を入手できれば、少なくとも両年度の不正合格者は特定できるとみている。

 ただ、同県の教員採用試験を巡っては、20年ほど前から県議が県教委幹部に採用の口利きをしていたと証言する元県議もいるなど、どこまでさかのぼって調査できるのか見通しは全く立っていない。

 同県教委が合格圏内にありながら不合格になった受験者は採用すると発表したことを巡っても、同県教委には、さっそく匿名の数人から「どのような基準で調査して採用されるのか」などという電話が寄せられたが、明確な回答はできなかったという。

(略)

 公務員の採用取り消しは奈良県中和広域消防組合の04年の採用試験で、不正合格した19人のうち自主退職の1人を除く18人を取り消したケースなどがあるだけ。

 「判断材料が乏しいのに県教委は公正な対応ができるか」。同市立小学校の男性教諭(47)はそう語り、教師の間に不安が広がっている現実を打ち明けた。

 文科省は、同県教委の決定を認める方針で、採用が取り消しになった教師が異議を申し立てた場合などに備え、法的な検討を進めることにしている。

法曹界に疑問の声も
「一律に合格取り消し」できるのか——

 公立校の教職員を含む地方公務員はいったん採用されれば、地方公務員法によって身分が保障され、解雇するには〈1〉綱紀違反や違法行為に対する懲戒免職〈2〉公務員としての適格性などを欠く場合の分限免職——の手続きを踏む必要がある。

 しかし今回の事件では、教員採用試験に合格した受験者本人の「不正の認識」が現時点でははっきりしないため、免職の手続きを取ることは困難。大分県教委は、採用試験の成績がそもそも基準に達していなかったとして、給与の返還は求めないものの、採用前にさかのぼって一律に合格を取り消すことにした。

 同県教委が根拠としているのが、地公法15条の「職員の任用は受験成績や能力に基づいて行う」との規定。地公法を所管する総務省も「受験成績の改ざんによる採用は、能力に基づいていないので違法な採用」との見解を示している。

 ただ、法曹界の中には、この判断を疑問視する声もある。

 あるベテラン民事裁判官は、地公法が「懲戒、分限の理由がなければ意に反して免職されない」との身分保障規定を明文化していることを挙げたうえで、「合格ラインに達しなかったからといって一律に取り消すのは難しいのではないか」と指摘。労働紛争に詳しい岩本充史弁護士も「不正な採用だから直ちに適格性を欠くとは言えず、懲戒免職も本人が不正を認識していたケースに限られるのではないか」と語った。

 県教委が採用の取り消しに踏み切った場合、その対象者は県に対し、教員としての地位の確認を求める裁判を起こすこともできる。日本労働弁護団の菊池紘弁護士は「県教委の組織的不正が原因なのだから、不正のつけを受験者だけに負わせるのはおかしい。取り消しが容認されるのは大幅に得点がかさ上げされるなど、極めて不公正なケースに限られるはず」と話した。
(2008年7月17日 読売新聞)


「全員」という極端な表現をしている一方で、「どこまで可能か」を、これから調査するということです。徹底的にやるという覚悟を示す目的の発言だと思います。実際の処分は、調査の限界によって、限られたものになるのだと思います。

記事が懸念するように、明確な基準を示すことから、すでに困難です。さらに、ここには、恣意性が入り込む余地もあります。きちんとけじめをつけず、長期間取り組むことになってしまうと、それが新たな問題の背景になりかねません。

仮に基準を作ることができても、問題となる事実を確定する作業が容易ではないと思われます。特定するために必要な資料が揃っているとは限りません。また、その資料の証拠としての妥当性を吟味してからでなければ、処分に用いることは出来ないでしょう。

そもそも、厳正な採用をできなかった団体が、そのことは棚にあげて対処しようとしているので、この組織の実力からして疑問です。徹底的に行うという宣言とは裏腹に、実際の調査や処分は、限られたものになることを念頭に置いているのかもしれません。

実際問題としては、今年度の採用については、対応できるかもしれないと思います。試用期間であると思われ、また、有効な候補の名簿があり、まだ採用されていない合格者もいると思うので、実施は難しくはないと思います。必要であれば、追加合格を出せば良いと思います。

しかし、昨年度以前のものは、試用期間をすぎているし、名簿の有効期限も過ぎているので、処分についても、不合格とされた人の採用についても難しいと思います。

この記事で取り上げられた採用取り消しや解雇への法的、制度的な問題点は重要で、手続きは難しいと思います。懲戒などは、その教師の今後の人生に影響するという点を軽視することも許されないと思います。違法行為を根拠にするなら、本人の違法行為を証明しなくてはいけないので、厄介です。また、連座は適用すべきではないと思います。

採用システムに問題があったという点に戻って考えると、この事件は教育委員会の問題であり、不正を行って採用を混乱させたのは、教育委員会の担当者です。誤って不合格となったとされる人たちへの対応は検討に値すると思いますが、教育委員会の過ちを、誤って採用されたとされる教師に押し付けるような方針には疑問を感じます。

加えて、能力を評価することも困難です。少なくとも免許を持っていることは確かです。また、試用期間が過ぎた人たちは、経験が加わっているし、研修などを受講しているので、能力は向上していると思われます。採用されなかった人たちで代替えができるとは思えません。

この方針が貫かれた場合、現場への影響は甚大であり、無用な混乱をおこす可能性があると思います。また、制度的にも逸脱があるように思います。

結局、やる気があるということを示すために、極端な表現をしただけである可能性が高いように思われます。だとしたら、無責任な発言で、対応に問題があるように思います。

耐震偽装発覚直後の、国のドタバタとした対応を思い出します。
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by gskay | 2008-07-17 22:19 | 政治と役所と業界