建築基本法
これまで、行政を含めた建築の関係者の間の責任や役割が、明確に決められてはいませんでした。建築主、設計、施工、監理といった役割に加え、行政が建築では大きな役割を果たしています。

建築主や、設計、施工、監理といった関係者の間の責任や役割分担については、曖昧な部分があるものの、個々の事業ごとに調整すれば良いことでした。しかし、行政の役割は、曖昧にしておくことは許されないと思います。

行政の役割が曖昧であるために、行政はフリーハンドの裁量を手に入れ、行政に都合が良い仕組みを構築することができました。行き当たりばったりの施策や責任逃れ、明らかな失政や能力不足、不作為も、裁量と無謬という前提によって肯定されていました。この無謬という前提は、誤りを誤りと指摘する根拠がないというだけのことですが、無反省な施策が繰り返されてきました。

建築基本法は、建築における行政のあるべき姿や、責任、役割を明記し、誤りを誤りとして認め、それに対処する根拠を与えるようなものであるなら歓迎です。

ただし、建築の関係者に全てを押しつけるだけであったり、行政の裁量を無制限に許すようなものであったら、今よりも良くなるわけではないので否定すべきだと思います。


「建築基本法」制定へ=耐震偽装事件で責務規定−国交省(時事通信) - Yahoo!ニュース


「建築基本法」制定へ=耐震偽装事件で責務規定−国交省

8月29日14時34分配信 時事通信

 国土交通省は29日、建築行政の基本的な理念などを定める「建築基本法」制定に向けた検討を始める方針を固めた。安全で質の高い建築物を将来に残すよう、環境問題への配慮など新たな視点を取り入れるほか、耐震強度偽装事件の反省に立ち、行政や建築士などの役割・責務を法律で位置付ける見通しだ。2010年の法案提出を目指しており、社会資本整備審議会(国交相の諮問機関)で近く検討を始める。 



引用の記事は、小太郎とカラスウリと: 「建築基本法」制定へ〜耐震偽装事件で責務規定の ひらりん さんの指摘で知りました。

ひらりん さんは、どちらかというと、この動きに否定的であるようです。これまでの一連の対応に問題が多いため、新たなことに懐疑的にならざるを得ないのだと思います。

私も、現在の行政のありかたを肯定し固定化してしまうのではないかという懸念は感じます。

しかし、しっかりとした「建築基本法」を作ることができれば、無制限の行政の裁量を抑制することになると思います。また、責任や責任を果たすための対処の仕方も明確になると思います。さらに、行政として努力すべき能力の向上の方向性もはっきりすると思います。

根拠もなく、行政の裁量が放置されてきました。それが、悪い影響を出していない限りは、「建築基本法」などなくても何とかなったと思います。しかし、技術が高度化し、行政の裁量が悪影響を与えることが多くなって、もはや放置してはおけない状況ではないかと思います。一方で、介入が必要な部分への介入が行われておらず、いびつです。また、そもそもの能力も疑問です。

「建築基本法」なしに、行政の役割を制限したり、必要なところに行政を適切に介入させたり、能力向上の努力を促したりする方法はないように思います。

「官僚の自律」によって適切な施策が行われるというのは、望ましい姿かもしれませんが、現状を見る限り、幻想だと思います。

本来は優秀で志が高い人材を結集しているので、しかるべき方向に導く手だてさえあれば、事態は良くなると思います。

ただ、やはり、逆の方向に進む可能性が少なくないのが、この官僚システムの恐ろしいところなので、油断はできないと思いますが……。
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by gskay | 2008-08-31 05:28 | 揺れる システム