不正発覚はいつだったのか?(住民による提訴についての続き)
ケンプラッツの記事が、住民による提訴を詳しく取り上げています。欠陥住宅の裁判というよりも、行政の不適切な対応を追及する裁判になるようです。昨今の情勢を考えると適切な方針だと思います。


【構造計算書偽造事件】マンション住民57人、建て替え費用などを求めて国を初提訴|ケンプラッツ



「佐々木 大輔[日経アーキテクチュア]」の署名のあるこの記事は、欠陥住宅が蔓延していることを漫然と憂うような記事ではなく、ポイントを的確についているように思います。建築・建設が専門のはずですが、そのレベルをこえていると思います。

導入的な部分に続いて、「偽装が容易な構造計算プログラム」の問題点の発覚が、いつにさかのぼることができるかを明らかにしています。「2002年9月に別の指定確認検査機関に不正が発覚」というのを、その時期だとしています。

耐震偽装が発覚し公表されたのは、2005年11月ということになっていますが、それ以前に、すでに問題は指摘されていました。にもかかわらず、国は、それに対応しませんでした。もし、その時点で適切に対応していたなら、それ以後の耐震偽装は発生しなかったはずです。

また、事件をうけて、「『法改正を行うということは、その不備と自らの過失を認めたということではないかと思わざるを得ない』」と指摘する一方で、「『本件事件は、国交省が建築士による安全確保の仕組みが完全に機能していない実態を知りながら漫然とこれを傍観した』」ことを問題としてとりあげています。

これは、行政の不作為を指摘する論理であり、追及のポイントとして的確だと思います。

しかし、同時に、「『行政の確認・検査業務を民間に開放して自らに課せられた責務を放棄したところに最大の原因』」と主張しているところには、疑問を感じます。そこは、行政の不作為の舞台にすぎません。追及のポイントがぶれてしまうのではないかと思います。

耐震偽装の構造計算書偽造は、民間検査機関でだけで見逃されたわけではなく、もともとは特定行政庁で見逃されたの始まりです。その点にも反するので、不適切な主張だと思います。異なる思惑が混入してしまっているように思います。

国土交通省建築指導課長のコメントは、「『事件を巡っては、居住者の安全と生活安定のため、補助などの形で支援してきた。確認検査機関の監督など、法的責任を問われるような法の執行はしていないと考えている』」ということですが、従来なら、不適切な法の執行さえなければ、行政が責任を問われるようなことはなかったかもしれません。しかし、以前とは異なり、行政といえども、適切な対処をしてこなかったことが問題になり、責任を問われるようになっています。

耐震偽装については、様々な切り口があると思いますが、行政、とりわけ国を相手取った裁判では、最初の不正発覚にさかのぼって行政の責任を追及する方針は、適切だと思われます。

弁護団の発想には、違和感を感じる部分もありましたが、この記事を読む限り、なかなかだと見直しています。

ところで,昨日のエントリに引用した読売新聞の記事ですが、「『国土交通省は02年ごろには、他の検査機関に関する不正の情報をつかんでいたのに、イーホームズなどへの立ち入り検査を怠った』と国の過失を……」と報じて、他の一般紙に比べれば、深く掘り下げていると思うのですが、よくわからない内容になっているのが残念です。
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by gskay | 2008-10-08 12:30 | 損害と回復