カテゴリ:揺れる システム( 87 )
「偽装とまで言えず、名誉棄損にあたる」
「構造計算書の偽装」というのは、大臣認定プログラムを用いた場合に起こります。

このプログラムを所定の手続き通りに利用した場合に、建築確認の特例的な手続きがあり、その特例的な手続きが、事実上の検査の省略だったため、いい加減に記入されていたり、不適切に書き換えられていた書類が素通りしていました。その極端なケースが耐震偽装事件です。このため、このプログラムの取り扱いに厳格さが要求されるようになりました。

このプログラムは、特別な手続きのためだけのプラグラムではなく、それ以外の計算にも用いてよいので、このプログラムの計算結果のプリントアウトは、他の計算にも用いられます。

特例的な手続きにおいて書き換えなどを行えば、偽装であり違法行為です。

しかし、プログラムから出力された結果を利用はするものの、他の方法によって計算を完成させる場合、プリントアウトを加工して用いてよいかどうかに関する規定は、明確ではなかったのだと想像します。

国土交通省としては、プリントアウトの加工を全面的に禁止したかったようですが、裁判所は、特別な手続きの場合に限って書き換えのような行為を禁止するのが妥当だと判断したものと思われます。


HPで「偽装」名指しは名誉棄損、国に削除命令 : 社会 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)


HPで「偽装」名指しは名誉棄損、国に削除命令

 構造計算書を偽装したとして国土交通省から4月、名指しで発表され、「名誉を傷つけられた」として、大阪市の建築士が同省のホームページからの記事削除を求める仮処分を申請し、東京地裁が「偽装とまで言えず、名誉棄損にあたる」として国に削除を命じたことがわかった。28日付。

 決定によると、大阪市の張武雄・1級建築士は昨年8月、京都府内の賃貸アパートの構造計算の際、コンピューターのプログラムにより警告が表示されたにもかかわらず、表示を削除して建築確認申請を行った。

 同省は警告削除を「偽装」としたが、田代雅彦裁判長は「警告が出ても、安全性が確保されていたことは構造計算書の数値から検証可能だった」と指摘した。
(2010年6月29日21時06分 読売新聞)


計算数値を利用するだけなら、警告には意味がありません。その警告を、プリントアウトから消してしまってよいかどうかについて、おそらく、取り扱いを決めていなかったのだろうと思います。

私は、大臣認定プログラムのような特別なプログラムの運用は厳密であるべきなので、警告が出た場合、その警告を無視するための書き込みなどを行えるようにして、なるべくプリントアウトを変更させないように運用するべきだと思います。

その一方で、「偽装」と名指ししたことに関しては、大臣認定プログラムの意義を拡大解釈しすぎているか、利用法を誤解しているのではないかと思います。

私は、裁判所の判断を適切だと思います。国土交通省は、この事例に対しては、指導の徹底などをすれば充分に目的を達成できたのに、不用意に、余計な損害を与えてしまったことになると思います。

できれば、大臣認定プログラムのようなものを汎用に使ってほしくはないものの、そのコストを考えると仕方がないようです。汎用に使われるということを前提に、運用のあり方を見直すべきであったのに、国土交通省がそれを怠っていたのが問題だと思います。
[PR]
by gskay | 2010-07-01 12:21 | 揺れる システム
建築確認の取り消し判決
大阪高裁で、地裁が下したマンションの建築確認取り消しの判決を覆す判決が出たとのことです。これは、完成済みの建物に関する判断で、「マンションの建築工事は完了しているので、建築確認の取り消しを求める法律上の利益はない」ということなのだそうです。

最近の建築確認をめぐる裁判の焦点は、建築基準法などの法律を解釈し適用する権限がどこにあるのかという点です。マンション建設では、周辺住民の反対が、建築確認取り消し訴訟に発展するようですが、行政の判断の妥当性が問われます。

裁判所が、建築に関する法律をどのように当てはめるのかという具体的な部分まで判断していますが、法律が、特例や但し書だらけであるため、行政の判断にも曖昧なところがあるように、司法の判断にも曖昧になっていて、恣意的になってしまうおそれを感じます。

建築確認の取り消しに関する裁判は、建築確認という行政の判断の位置付けに関わる微妙な問題だと思います。手続きの違法性などに関する裁判には妥当性があると思います。しかし、解釈にかかわる微妙な判断に及ぶことには違和感を感じます。

もし、微妙な判断について行政の判断がしばしば覆るようであれば、建築確認だけでなく、裁判に対する準備も、建築にあたっては必要になります。ならば、はじめから裁判に一本化した方がいいのではないかと思われます。そうでないなら、司法が判決として判断する部分と、行政の建築確認の棲み分けが必要で、それは、司法自らが行うという方法と、立法的に明確にするという方法があるように思います。私は、立法的に行うべきだと思いますが、司法の判断で、一線を引くことも適切だと考えています。

いずれにせよ、建築関連の法規が、グチャグチャであるので、それが整理されなくてはならないと思います。また、私は、建築にかかわる様々な主体の役割を明確にすることが必要だと感じています。建築主や、設計、施工、監理、検査、そして所有者が果たすべき役割はもちろん、国や行政の責務なども明確にしておくべきだと思います。逆にいえば、そういうものが全く整理されていない状況に放置されています。関係者の責務が明確になってくれば、司法の役割も明確になるものと思われます。

ところで、建築確認の取り消しは、後始末をどのようにつけるのかという問題と不可分だと思います。建築中であれば、建築確認の取り消しは、様々な修正を試みることで対応することも可能だと思います。しかし、完成してしまって、完了検査が済んでいるような場合に、建築確認の取り消しというのは適当ではないように思います。

ちなみに、うちのマンションは、建築確認は取り消されていません。誰も、取り消せという裁判を起こさなかったし、取り消したところで、すでに出来上がった建物があることには変わりがありません。

違法建築としての行政的な処理が行われてきましたが、うちの区では、行政の権限の発動は、強制というものではありませんでした。所有者である住民が、区の説明に納得し同意した上で、退去し、使用禁止し、除却するという流れでした。様々な措置に関する命令も、きちんと異議申し立ての手続きが明記されていました。また、出された命令も、住民による建物の使用などを制限することを目的とした命令というより、第三者が入りこんで占拠したりすることを防ぐ命令であったように思います。

この命令のあり方については、自治体ごとに判断が一定していなかったようですが、うちの区については、私有財産に関する権利が最大限に尊重されていたように思います。

建築確認という制度は、様々な意味で一人歩きしてしまっているように思いますが、原点に戻ってあり方を問い直す必要がある制度ではないかと思います。建築に関する制度の見直しの重要なポイントのひとつだと思います。
[PR]
by gskay | 2010-03-08 05:51 | 揺れる システム
建築確認の簡素化
建築確認は、耐震偽装をきっかけに「厳格化」されたというふれこみでした。しかし、内容が厳格になったというより、煩瑣になっただけでした。

煩瑣な手続きを経れば安全が確保できるかのような印象をうけますが、安全の確保のための画期的な手法が導入されたわけではありません。加えて、電算化への対応も著しく遅れた仕組みになっていて、非効率。

そうした制度を拙速に導入した結果、経済の根幹のひとつである住宅の建築に打撃をあたえ、我が国の経済に深刻な影響を与えました。住宅建築は、建てるという行為だけでなく、金融という点から考慮しなくてはいけない行為だという視点が足りなかったのではないかと思います。

政権交代は、方向をただすいい機会だったのだと思います。政権交代があろうとなかろうと、いずれは、改められたのではないかとおもいますが、いずれにせよ、今の制度には無理があったと思います。

耐震偽装で厳しくした建築確認、また簡素化 国交省、住宅着工激減で - MSN産経ニュース


2010.1.22 23:37

 国土交通省は22日、建築確認審査の迅速化を進めるため、6月から手続きの簡素化を柱とする運用改善に乗り出すことを明らかにした。耐震偽装事件後の審査の厳格化によって住宅の新規着工数が大幅に減ったことを受けた措置。

 改善策では、申請に必要なチェック項目を減らし審査の迅速化を進めるほか、構造計算概要書を廃止するなど建築業者が行政機関などに提出する書類も大幅に減らして申請手続きを簡素化する。現在は平均で70日程度かかっている建築確認審査期間の半減を目指す。一方で、違反設計への処分も徹底していくという。

 平成17年に発覚した耐震強度偽装事件を受け、国交省は19年に建築基準法などを改正し審査を厳格化。都道府県や第三者機関で強度の再計算をすることを義務づけ、建築士の罰則強化にも踏み切った。ただ申請のための書類が増え、審査期間が長くなったことで、新設住宅着工の大幅な落ち込みを招いたとの指摘も出ていた。

「違反設計への処分も徹底」としていますが、あらゆる違反建築に対し、厳しい対応をしていく必要があると思います。

民間検査機関制度は、建築主事による取り締まりの強化と同時に行われるべきでしたが、そうのようにはなっていませんでした。あらためて、取り締まりの仕組みを構築する必要があると思います。

また、耐震偽装では、建築確認の意義が問われました。それまでなら、建築確認は、業者にとっての最後の拠り所としての価値がありました。買い手も、信頼をおいていました。住宅ローンの前提になっていたように、金融からの信頼も絶大でした。しかし、それが実質的に否定されました。建築確認の効力は絶対ではなく、建築確認という検査の能力も高いものとは言い難い点です。

画期的に検査能力を高めるような技術ができたわけでもないのに、建築確認制度を煩瑣にして、「厳格化」したと称しても、買い手が、安心して購入したり、業者が自信をもって建築にあたるための材料を何も提供はできません。また、建築確認を受けていても、何の保障にもならず、手続きが目的の手続きになってしまいました。費用的にも時間的にも負担になるばかりで、単なる足かせにしかなりません。

それに対する反省として、建築確認を簡素化するという方針には、賛成です。

しかし、同時に、二つのことが必要だと思います。

一つは、事後の取り締まりを強化すること。そしてもう一つは、事後の取り締まりによってみつけられた違反について、きちんとした対応ができるように、技術的な面からも、権利や責任の面からも明確なルールを作ることです。

耐震偽装では、特に、後者がでたらめで、国のいきあたりばったりの対応が、事態を深刻化させてしまったと考えています。

まず、建築確認制度が無謬であるはずだという前提を捨てることが大切だと思います。無謬という前提にとらわれすぎていて、問題が発生した場合の対応を充分に準備できていませんでした。そこを反省した仕組みに改めるべきだと思います。

そうした改善には、国土交通省のレベルアップが必要だと思います。様々な意味で技術の進歩に取り残されてしまった役所が、絶大なる権限を持っています。そのいびつさを解消することを考えなくてはいけないと思います。
[PR]
by gskay | 2010-01-23 15:05 | 揺れる システム
建築確認番号偽造の責任
広島の積水ハウスの事件は、建築確認手続きを再考させられる事件だと思います。

耐震偽装は、少なくとも建築確認という手続き自体をないがしろにした訳ではなく、建築確認や構造設計の内容にかかわる問題でした。

広島の事件は、建築確認を申請しなかったどころか、確認番号を偽造していたという事件です。耐震偽装で問題になったような事柄とは全く異なっています。

私は、建築確認のあり方や技術的な限界に疑問を感じていて、抜本的に見直すべきところがたくさんあると思っています。しかし、現行の規則で建築を行う以上、法律を無視することは許せません。まして、確認番号を偽造するなど、言語道断だと思います。

建築には、公的な資格や公的な検査が要求されます。建物は、たとえ私的に利用される私有物であっても、周辺への影響があり、公共的な配慮を怠ってはなりません。工事に携わる事業者は、営利性だけで事業を行っているわけではなく、公共に影響を及ぼす事業を行っているということを忘れてはならないと思います。


積水ハウスに広島市が工事停止命令、建築確認申請せず|ケンプラッツ


2008/09/08
建築確認   個人住宅・集合住宅   建て主  

 積水ハウスが、建築確認を申請しないまま広島市安佐南区でアパートの建設工事を進め、広島市から工事停止命令を受けていたことがわかった。

 アパートは2棟あり、それぞれが軽量鉄骨2階建て、約260m2、4戸。積水ハウス広島東支店が個人の施主から仕事を受託した。ところが、設計を担当した同社の30歳代半ばの社員が確認申請を出さずに、架空の確認番号を現場に掲示して2008年5月、工事に着手した。

 この社員は、架空の確認番号と確認取得日などを社内のコンピューターに入力していた。同社のルールでは、ほかの社員が確認済み証などの書類と照合することになっていたが、守られていなかった。

 事件を起こした積水ハウスは事態を重く見て、完成間近だった建物を解体しているところだ。正規の確認申請手続きを行って、同じ設計でアパートを造り直す。9月4日には建築確認が下りている。

 積水ハウス広報部では、「許可を得ていない建物だったので、施主の了解を得ていったん取り壊すことにした。担当者が確認申請をしなかった理由は調査中だ。今後は、社内のルールを徹底したい」と話している。

 広島市によると、7月に付近で道路関係の調査をしていた安佐南区の職員によって不備が発覚した。市と広島県は8月に合同で、積水ハウスの広島東支店に立ち入り検査を実施。会社ぐるみの偽装ではないと判断した。

瀬川 滋[ケンプラッツ]


私は、この事件では、問題の社員だけでなく、企業自体を処罰の対象にするべきだと思います。たとえ、会社ぐるみの偽装でなかったとしても、建築という事業に携わる企業には、その責任があると考えるからです。

ところで、建物を解体してつくり直していることに疑問を感じます。建築主への誠意にはなるかもしれませんが、公共的には何の免罪符にもならないと思います。解体してつくり直すことは、資源の無駄であり、避けるべきだったと思います。工事の期間も長くなり、周辺環境や交通への悪影響も長引くことになると思います。

どうやら、同じものをつくるようですが、だったら、建物そのものが遵法であるということを明らかにするための特定行政庁の配慮があれば良かったのではないかと思います。

本末が転倒しています。手続きの問題と、本来の目的である性能などの規格への適合の問題とでは、そのいずれがより重要であるかを忘れています。

一方で、建物を遵法にすることとは別に、関係者には厳しい処分を行うべきだと思います。とりわけ企業に対しては、厳しい処分が必要だと思います。

建築関係では、関係者が複雑で入り組んだ関係をつくっています。その責任や役割は、曖昧な部分が少なくありません。問題があったとしても、誰が責任をとるべきなのか、誰を処分するべきなのか、よくわかりません。それを整理する必要があると思います。その整理については、建築基本法に期待しています。

建築という公共的影響の強い事業にかかわる企業については、このような姑息な対応で責任を有耶無耶にすることを許すべきではないと思います。
[PR]
by gskay | 2008-09-11 23:38 | 揺れる システム
建築基本法
これまで、行政を含めた建築の関係者の間の責任や役割が、明確に決められてはいませんでした。建築主、設計、施工、監理といった役割に加え、行政が建築では大きな役割を果たしています。

建築主や、設計、施工、監理といった関係者の間の責任や役割分担については、曖昧な部分があるものの、個々の事業ごとに調整すれば良いことでした。しかし、行政の役割は、曖昧にしておくことは許されないと思います。

行政の役割が曖昧であるために、行政はフリーハンドの裁量を手に入れ、行政に都合が良い仕組みを構築することができました。行き当たりばったりの施策や責任逃れ、明らかな失政や能力不足、不作為も、裁量と無謬という前提によって肯定されていました。この無謬という前提は、誤りを誤りと指摘する根拠がないというだけのことですが、無反省な施策が繰り返されてきました。

建築基本法は、建築における行政のあるべき姿や、責任、役割を明記し、誤りを誤りとして認め、それに対処する根拠を与えるようなものであるなら歓迎です。

ただし、建築の関係者に全てを押しつけるだけであったり、行政の裁量を無制限に許すようなものであったら、今よりも良くなるわけではないので否定すべきだと思います。


「建築基本法」制定へ=耐震偽装事件で責務規定−国交省(時事通信) - Yahoo!ニュース


「建築基本法」制定へ=耐震偽装事件で責務規定−国交省

8月29日14時34分配信 時事通信

 国土交通省は29日、建築行政の基本的な理念などを定める「建築基本法」制定に向けた検討を始める方針を固めた。安全で質の高い建築物を将来に残すよう、環境問題への配慮など新たな視点を取り入れるほか、耐震強度偽装事件の反省に立ち、行政や建築士などの役割・責務を法律で位置付ける見通しだ。2010年の法案提出を目指しており、社会資本整備審議会(国交相の諮問機関)で近く検討を始める。 



引用の記事は、小太郎とカラスウリと: 「建築基本法」制定へ〜耐震偽装事件で責務規定の ひらりん さんの指摘で知りました。

ひらりん さんは、どちらかというと、この動きに否定的であるようです。これまでの一連の対応に問題が多いため、新たなことに懐疑的にならざるを得ないのだと思います。

私も、現在の行政のありかたを肯定し固定化してしまうのではないかという懸念は感じます。

しかし、しっかりとした「建築基本法」を作ることができれば、無制限の行政の裁量を抑制することになると思います。また、責任や責任を果たすための対処の仕方も明確になると思います。さらに、行政として努力すべき能力の向上の方向性もはっきりすると思います。

根拠もなく、行政の裁量が放置されてきました。それが、悪い影響を出していない限りは、「建築基本法」などなくても何とかなったと思います。しかし、技術が高度化し、行政の裁量が悪影響を与えることが多くなって、もはや放置してはおけない状況ではないかと思います。一方で、介入が必要な部分への介入が行われておらず、いびつです。また、そもそもの能力も疑問です。

「建築基本法」なしに、行政の役割を制限したり、必要なところに行政を適切に介入させたり、能力向上の努力を促したりする方法はないように思います。

「官僚の自律」によって適切な施策が行われるというのは、望ましい姿かもしれませんが、現状を見る限り、幻想だと思います。

本来は優秀で志が高い人材を結集しているので、しかるべき方向に導く手だてさえあれば、事態は良くなると思います。

ただ、やはり、逆の方向に進む可能性が少なくないのが、この官僚システムの恐ろしいところなので、油断はできないと思いますが……。
[PR]
by gskay | 2008-08-31 05:28 | 揺れる システム
違反建築への対応
違法に第一に対応しなくてはいけないのは、建築主なのでしょうか?それとも現在の所有者なのでしょうか?

耐震偽装に巻き込まれて以来の疑問です。

耐震偽装では、所有者には「寝耳に水」でした。所有者は、かやの外でした。売り主であるヒューザーと、区からの通知があるまで、何も知らされませんでした。すでに、公的には「発覚」し、調査が行われていたにもかかわらず。

同様の違和感を感じる記事です。

神奈川県大和市のマンション地階に違法駐車場、建築主は埋め戻す方針


2008/07/11
違反建築   大和市   一休商事   防災   建築基準法   駐車場  

 神奈川県大和市内の分譲マンション2棟に、建築確認申請の図書に記されず、建築基準法違反の部位がある地階の駐車場がこのほど見つかった。建築主だったデベロッパーの一休商事(神奈川県大和市)は、地階を埋め戻して申請図書どおりの建物に直す方針を明らかにしている。

 マンションは、1994年に竣工した延べ面積697m2のファーストクラス南林間(大和市林間2丁目)と、95年に竣工した801m2のファーストクラス大和西(大和市深見西1丁目)だ。どちらも鉄骨造、地上3階建て、住戸数17で、確認申請図書に記されていなかった地階の駐車場がある。駐車場は防災設備の点で、建築基準法27条と大和市建築基準条例42条1項3号に適合していない。容積率などその他の点では適法だ。

 駐車場に避難階段などの防災設備を設けて適法にすることも可能だが、一休商事は撤去して地階を埋め戻す方針で、居住者に同意を求めていく。阿部英明・一休商事会長は、「建物は確認申請のとおりにつくるべきものという原則に従いたい。1棟につき1週間程度の工期で、150万〜200万円程度かければ埋め戻せるだろう」と話している。問題を解決した後で、代表権を返上し、取締役を辞任することを考えているという。

 一休商事の阿部会長は、2棟の地階に駐車場を造った経緯について、「駐車場を望むマンション購入者が確認申請前の予想よりも多かった。そこで市の完了検査を受けた後に、マンションの建築設計者と相談してつくることにした」と説明している。建基法に基づく手続きをとらなかった点に関しては、「2棟の建築設計と工事監理を担当した大和市内の設計事務所がすでに廃業しているので、はっきりした事情はわからない」と述べている。

 大和市建築指導課は現地調査に基づいて、一休商事が完了検査の後ではなく当初から地階の駐車場を施工し、完了検査時には仮設資材で隠ぺいしていた可能性があるとみている。こちらの真相も、すでに工事監理者が廃業しているため、明らかにするのは難しい状況だ。

 一休商事はこのほかに、1998年に竣工した神奈川県厚木市内のマンションで、1階の屋内駐輪場を駐車場に変更して厚木市建築基準条例に抵触した。市建築指導課によると、抵触したのは屋内駐車場の出口が道路の交差点から5m以内にあってはならないという条文(53条1項)だった。一休商事は駐輪場に戻したい考えを市に伝達済みだ。 安藤 剛 [ケンプラッツ]

建物は、必ず、誰かが所有しているはずです。建物への責任は、まず所有者が負うべきだと思います。問題は、所有者が主体になって解決すべきです。その上で、最終的な負担や損害などについて、売り主や建築主など、関連の業者に請求すべきではないかと思います。

売り主や建築主を第一の主体と考えてしまうと、「廃業」していた場合、是正されない可能性があります。

引用の記事については、基準に違反している点を是正するのは所有者であり、所有者が好ましいと思う方向で是正されるべきだと思います。その上で、そこで生じた費用が売り主に請求されるべきだと思います。売り主の都合で、是正の方向が決まるのはおかしいと思います。

おそらく、業者は、是正のための工事で、最も簡単で安価な方法を選択したいと思います。しかし、それが、所有者にとって都合がよいとは限りません。所有者は、きちんと交渉し、不都合については補償を求めるべきだと思います。

また、共同住宅についての意思の決定は、管理組合の場で行うべきではないかと思います。そうした手続きについての配慮もおざなりになっていると感じる記事です。

この業者に問題があるのか、この記事が書かれた視点に問題があるのかわかりませんが、耐震偽装で、所有者や居住者が不在でも、平気で手続きが進んでしまったことを考えると、単なる業者や記事の問題と考えることはできません。むしろ、役所や業界、そして多くの人々に、広く共通した発想なのかもしれません。

私は、こうした発想を適切だとは思いません。
[PR]
by gskay | 2008-07-14 10:54 | 揺れる システム
違法なコンクリート
建築に使われるコンクリートについては、いろいろな噂があります。「違法」なものが混入されているということで、単に性能を劣るというだけではなく、わかりやすい証拠があるところが、問題になっている件のポイントだと思います。

建築については、国土交通省の大臣認定などによる規制だけでなく、経済産業省の日本工業規格(JIS)による規制も行われているのは当然といえば当然ですが、建築というもののあり方の難しさを感じました。


<生コン>神奈川の業者、溶融スラグを違法混入 2棟で確認(毎日新聞) - Yahoo!ニュース


<生コン>神奈川の業者、溶融スラグを違法混入 2棟で確認

7月8日22時31分配信 毎日新聞

 国土交通省は8日、神奈川県藤沢市の生コン製造会社「六会(むつあい)コンクリート」が日本工業規格(JIS)で認められていない「溶融スラグ」をコンクリートの材料に使っていたと発表した。この製品を柱などの主要部分に使うと耐久性能が弱まり、建築基準法違反になる。横浜市のマンションなど2棟で使用が確認されており、同省は8日、同じ製品が使われているおそれのある神奈川県内の約300の物件について、関係自治体に調査を指示した。

 国交省建築指導課によると、六会コンクリートは少なくとも昨年7月から原材料の砂と一緒に溶融スラグを混ぜていた。納入前の建築主による立ち会い検査では、正規のサンプルを示すなどして偽装していたという。

 同社の秋山広取締役営業部長は8日、取材に対し、混入の理由について「品質が良くなるうえ、リサイクルやエコ(環境保全)に協力できるのではないかと技術者が判断した」と釈明した。

 国交省などの調べでは、建設中の横浜市栄区の分譲マンション(鉄筋コンクリート6階建て、計73戸)と、藤沢市のいすゞ自動車工場の事務棟(鉄骨造り9階建て)の2棟で、柱やはりに使用する建築基準法違反が見つかった。いずれにもはく離があり、工事は中断している。マンションは半数が売約済みだが、500カ所以上のはく離があるという。同じ生コンを使ったとみられる約300物件の中には鎌倉市の「大仏トンネル」(約130メートル)も含まれている。

 国交省と経済産業省が所管する財団法人「日本建築総合試験所」は8日付で、六会コンクリートのJIS認証を取り消した。民間調査会社などによると、同社は70年設立。資本金1億円で、従業員は約40人。【高橋昌紀、五味香織、野口由紀】

 【ことば】溶融スラグ

 ごみなど廃棄物の焼却灰を溶かし、固化させた粒状のリサイクル資材。資源の再生利用という利点はあるが、生コンの原材料にした場合、内部で膨張するため、はく離現象を起こしやすい。JISの規格外で、柱などの主要構造部分に用いると建築基準法違反になる。1立方メートル当たりの原価は砂に比べ、100円ほど安い。


取締役営業部長という人のコメントは、研究機関のコメントであれば歓迎すべきものだと思います。しかし、現場で実験をして、実物で試してはいけません。「技術者の判断」というものがどこまで認められるのかが問題ですが、設計や施工と異なり、材料に関しては、現場が判断してよい部分は少ないと考えた方がいいように思います。

ただし、コンクリートをはじめ、工業製品ではありながら、供給方法も、使用方法も、臨機応変が求められるものがたくさんあるような気がします。この場合、「使用がみとめられていない」は、「使用が禁止されている」のか、リストアップされていないだけなのかで、事情が異なってくるように思います。

規格の趣旨としては、リストにないものを使用することはできないと考えるべきですが、規格を無視する事で,規格以上の性能が得られる場合、どのように考えるべきか難しいように思います。

加えて、建築については、施工や監理との関係もあります。施工や監理に託された判断をどのように位置付けるべきかという問題も考えて行くべきではないかと思います。

「『御上』が定めた通りなら、よろしい」という発想については、指摘できる課題がたくさんあるものの、了解可能です。そうでない場合、単純にダメだといえるのかどうかについて、疑問に感じています。仮に、「御定め」よりも優れていた場合、どうすればいいのでしょうか?

今回のケースは、性能に問題があるようで、そのようなややこしいことは考えなくてもいいようですが、取締役営業部長という人のコメントを読んで、規格や認定の意味や、現場がやるべきことをを改めて考える必要を感じました。


藤沢の違法生コン:市が調査開始 国交省リスト、使用の疑い1万件以上 /神奈川(毎日新聞) - Yahoo!ニュース


 藤沢市亀井野の「六会(むつあい)コンクリート」(小金井弘昭社長)が日本工業規格(JIS)で認められていない「溶融スラグ」を生コンの材料に使用していた問題で9日、この生コンを使った疑いのある物件リストが国土交通省から市に届いた。対象は1万件以上で、市は施工業者への聞き取りなどの調査を始めた。
 掲載されているのは、同社が建築基準法違反となる生コン使用を認めた昨年7月から今年6月にかけて施工された市内の全物件。リストには工事名、施工業者、出荷日しか書かれていないため、同市建築指導課は建築確認申請などを頼りに建築場所を特定、調査に着手した。小島良課長は「リストに載ってるものすべてが違反とは限らない。速やかに現場調査を進め、市民の不安を取り除きたい」と話している。
 一方、六会コンクリート本社や市役所などには「自分の建物は大丈夫か」などの問い合わせが、計約50件寄せられているという。【永尾洋史】

その続報は、「疑い」のひろがりです。これは、事件の拡大や深刻化というよりも、当然行われなくてはいけない網羅的な調査が始まったということです。耐震偽装では、こうした調査がうまく展開できなかったように思われます。適切に問題をピックアップし、適切な対応が行われるように望みます。

法律の基準に合うかどうかという視点も大切ですが、現実的な対応こそが必要です。

材料の問題ではありますが、所有者や建築主、売り主の責務できちんと対応することが第一だと思います。もちろん、施工や監理にも責任があります。材料の問題であるので、それを供給する業者に最終的な責任をとらせるにしても、やらねばならないことが多岐にわたり、それぞれの当事者が、それにきちんと取り組んでいくことが必要です。

あいにく、これまでは、そうした問題が起こることを防ごうという意識が強すぎて、問題発生という事態を極端に恐れるあまり、「ありえないこと」と考える傾向があったように思います。それに直面した時、見て見ぬ振りをしたり、誤摩化したりすることが少なくありません。

「ありえないこと」が目標ではなく、前提になってしまっていて、問題があったときの対応が充分に考えられていないなかったり、そんなことを検討すること自体がタブーであったりすることもあります。この件はどうかわかりませんが、対応にあたってのっとるべきシステムがないことに悩まされるたり、振り回されことがないよう、適切に対応して欲しいと願っています。
[PR]
by gskay | 2008-07-11 11:54 | 揺れる システム
偽装防止以前
耐震偽装ではありませんが、建材の大臣認定制度の問題をめぐる議論が難しい状況にあるようです。技術的な問題や制度の問題ではないようです。「偽装は悪いこと」という以上の問題意識が提起されているようです。

建材偽装の再発防止策、「責任の所在をより明確に」 と国交省に注文|ケンプラッツ


 国土交通省は7月2日、一連の建材偽装問題を受けて社会資本整備審議会建築分科会基本制度部会に設置した防耐火認定小委員会(委員長:菅原進一東京理科大学教授)の第2回会合を開催。大臣認定制度の不正受験防止策や認定後の品質管理について検討した。国交省は、8月に開催予定の第3回会合で対策案を取りまとめたい考えだが、委員からは「このままでは従来とあまり変わらない」といった意見が出るなど、8月以降も議論を継続する可能性も出てきた。

 国交省は今回の会合で、前回の議論をふまえた新たな再発防止策として、指定性能評価機関による試験体製作を提示。評価機関が建材メーカーなどから試験体の提供を受けずに直接発注するため、公正な試験は可能になるが、既存の評価機関だけで対応するのは物理的に難しいとして、将来的に導入していく見方を示した。

 これについて清家剛委員は、「建材メーカー側から費用を取って試験をする以上、評価機関側で試験体を製作すべき。対応できるかどうかは次元の違う話だ」と指摘した。

 また、認定後の品質管理について国交省は、性能確保を目的としたサンプル調査の継続を示し、「調査を実施することで不正に対する一定の抑止効果が得られる」と述べた。調査は類似の構造方法をグループ化した上で、代表的な構造方法を抽出。市場から材料を調達し、試験体を製作して性能を確かめる手法だ。抽出の割合を1%程度とした場合、調査にかかる費用は、性能評価の手数料を一律2万円程度増額することで補えるとした。

 しかし、菅原進一委員長は「(費用以前に)先ずは国が何をどこまでやるのかを整理する必要がある」と発言。辻本誠委員は「現場での責任に関する議論はどうなっているのか」、仲谷一郎委員は「調査の対象は新製品であることが多く、市場から材料を調達するのは困難」などと指摘した。

 このほか、販売仕様と大臣認定仕様の不一致を防止するための対策として、建材が認定と適合しているかどうかを建築士が監理業務の中で確認する案を提示した。しかし、古阪秀三委員は「建材の仕様が認定と合っているかのチェックは言うは易しいが現実には難しい」と否定的な見方を示した。

 国交省も対策案を提示する一方で、「国があまり責任を担保しすぎるとモラルハザードが起こる。長期的には自主的なものにした方がいい」などと回答。次回会合までに不正防止策の前提となる、認定制度における責任の所在について、より明確にすることになった。

■防耐火認定小委員会のメンバー
委員長 菅原進一(東京理科大学・教授)
委員 辻本誠(東京理科大学・教授)
委員 古阪秀三(京都大学大学院・准教授)
委員 大滝厚(明治大学・教授)
委員 清家剛(東京大学・准教授)
委員 富田育男(日本建材・住宅設備産業協会・専務理事)
委員 仲谷一郎(建材試験センター 性能評価本部・副本部長)
※敬称略

片岡 友理=フリーライター

担当の官僚の発想に問題があるように思えますが、それは、引用の記事にあるように、「国が何をどこまでやるのかを整理」できていないからだと思います。「現場での責任に関する議論はどうなっているのか」というより、国の役割に限らず、関係者それぞれの、基本的な役割や責任などが曖昧であることが問題です。

建築には、建築主、設計、施工、監理、検査機関などが関わり、さらに材料のメーカーなどが関与します。それぞれの役割や責任が充分に明記されているとはいえません。そこに、国が何の限定もなく介入できる仕組みになっています。国は、その気になれば、何でもできます。

国も、建築における関係者の一つにすぎないと考えれば、国についても、役割や責任を明確にし、そこからの逸脱や、あやまちに対応する仕組みが必要です。

これは、「基本法」のような法律によって、国や関係者の役割を明確にすることからはじめなければならないと思います。

特に、建築の場合、技術を扱っています。我が国の場合、国が、最良の技術や知識を独占しているわけではありません。しかし、その程度の能力しかない国に、無制限ともいえる力があたえられています。しかも、無謬という前提付きで。

「国があまり責任を担保しすぎるとモラルハザードが起こる」という指摘は、民間の業者に対する戒めだけではないと思います。これは、国についてもいえることです。「長期的には自主的なものにした方がいい」という点については、建築基準法や建築士制度の原点にもどってみることが大切だと思います。

基準を守らせるための仕組みの検討や、違反についての分析だけで、答えがみつかると考えてはならないと思います。守ることは当然だと考えた上で、取り締まる能力を向上させたり、基準を満たしていない場合の対応をしっかりと考えておくべきだと思います。

基準を守らせるための仕組みがしっかりすれば、違反は起こらないという問題ではありません。必ずしも故意でなく、悪意がなくても、違反は起こります。想定外の違反もあります。そうした限界への配慮が足りないために、国は、関係者の曖昧な責任関係の泥沼にはまり、ますます、曖昧さに拍車をかけるような役割をしているように思います。

一見、厳格になっているように見えますが、それは、煩雑になり硬直化しただけです。抜本的な解決でもなければ、現実的な対応でもありません。

「大臣認定」という制度の枠組みでしか考えないのだとしたら、出口は見つからないのではないかと思います。
[PR]
by gskay | 2008-07-08 13:15 | 揺れる システム
悪い事をしていたのだから、仕方がない?
建築基準法の改正による混乱によって、建築に関連した業界は大変なようです。建築基準法の改正によって、悪徳な業者は淘汰されるという前評判だったような気がします。実際は、どうなのでしょうか?

建築基準法の改正によって経営に行き詰まるのは、土地などを仕入れたものの手続きが遅れて着工できないことに、資金的に耐えられないからです。あるいは、受注しても、着工や完成がおくれるために収入が途絶えて、支払いができないからです。

建築に関して悪徳なことやいい加減なことをしていたかどうかは関係ありません。

手続きの期間延長に、業界のこれまでのシステムや金融機関が対応できないことが原因で資金がショートしてしまうことが、業者を行き詰まらせます。

優良業者であろうが、悪徳業者であろうが、関係がないことだと思います。今、経営に行き詰まってしまっている建築関係者がいたとしても、それは、悪徳な商売への報いではありません。
[PR]
by gskay | 2008-05-21 22:52 | 揺れる システム
手続き状況の把握
混雑を避けるためには有効な方法かもしれません。しかし、必須の手続きと位置付けられている以上、もっと踏み込んだ仕組みにしてもいいのではないかと思います。

構造計算適合性判定機関の受付状況をウェブで公開、ICBA|ケンプラッツ

2008/02/19

 建築行政情報センター(ICBA)はこのほど、構造計算適合性判定機関の受付状況をウェブサイトで公開した。3都県(東京、神奈川、埼玉)それぞれの機関数の状況を、3通りの混雑度で表示する。
 
 全体的な状況を把握してもらうことが目的だ。機関名の表示については今後、検討する。混雑度の更新は各機関の申告によるが、遅くても週1回は更新する。

 表示内容は以下の通り。
・すいている状態の機関:遅くても来週には審査着手可能
・通常の状態の機関:再来週には審査着手可能
・混雑している機関:それ以降

赤間 澄子=フリーライター

混雑状況だけでなく、個々の審査の進行状況が追跡できるような仕組みにして、どこで躓いているのかがわかるような仕組みでなければいけないと思います。引用した記事のレベルの仕組みでは不十分だと思います。

また、構造計算適合性の判定が必要な建物は、それなりの規模の建物です。公共性をともなうと思われるので、第三者がそれを見ることができるようになっていてもいいのではないかとさえ思います。
[PR]
by gskay | 2008-02-26 13:56 | 揺れる システム