カテゴリ:揺れる システム( 87 )
構造設計者による再計算(2)
第一次耐震偽装騒動の熊本での混乱について、前のエントリが誤解を与えかねないという指摘を頂戴しました。

熊本の件は、手続きも法律通りで、性能もOKでした。「経済設計」に対する誤解や偏見、思い込みによる濡れ衣でした。非の打ち所がなかったというのが実態で、当局や騒いだマスコミの誤認だったという事例です。

そのことが、前のエントリでは伝わりにくく、まるで、水落建築士のように、違法な手続きをしていても、再計算で性能が保たれれば良いという発想だったかのようにとられかねない文章になってしまっています。これは、不適切です。

うたい文句の性能どころか、適法な性能さえ確保していないにもかかわらず、札幌の物件を扱う大手の売り主は強気な主張をしています。また、構造に疑いをもたれた建物の設計資料を紛失してした上に、その後の計算もデタラメだった政府系の団体もあります。

そうした滅茶苦茶なことが通る仕組みの中、むしろ遵法であろうとした設計事務所が、当局に目をつけられてしまったばかりに、危うく大変なことになるところだったというのが熊本の事例です。

弁明の機会さえ奪われ、技術者として再検査者との議論の機会さえなかったそうです。混乱を招いた誤った再検査を検証するという作業もおざなりだそうです。

こういう騒ぎに巻き込まれないようにするには、目をつけられないようにするしかないのかもしれません。

私は、法にのっとらない手続きで建てられた事例に対し、再計算の機会を与えているということについては、第一次耐震偽装騒動と比べて大きな変化であると思っています。これは、平成18年5月11日の国住指第541号が根拠になっているのかもしれません。

ただ、この通達で、第一次耐震偽装騒動とアパのケースとに雲泥の差がついてしまっていることを納得するのは難しいと感じています。アパや水落建築士が、もっと酷い目にあうべきだという主張ではありません。

この通達によって、第一次耐震偽装騒動の「騒動」による被害を防ぐ事が出来るようになったように思えます。しかし、すでに起きてしまった第一次耐震偽装騒動の「騒動」の後始末が済まないどころか、「騒動」の経緯さえ明らかにはなっていません。

また、思い切った取り締まりを行うということについても、後退してしまっているのではないかと感じています。もともと、役所の能力では無理だったということで、せいぜい、第一次耐震偽装騒動と同じヘマをしないようにするのが、役所にとっての現実的な対処の限界なのではないかと思うと、残念です。
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by gskay | 2007-02-24 00:41 | 揺れる システム
構造設計者による再計算?
アパの耐震偽装に関連し、構造設計を担当した水落建築士は、再計算などに忙殺されていて、問題の全容が明らかになるのは、相当先になる見通しとのこと。

建築物を適法に保つ責務は、所有者や建築主、施工や設計、それに監理によって担われるもので、特定行政庁や検査機関の関わりは副次的です。適法であるかどうかは、本来的に責任を負うものが明らかにするべきことのようです。

しかし、違法の取り締まりという点では、特定行政庁が主体になって、断固として実施すべきことだと思われるので、水落建築士の再計算待ちという状況に違和感を感じます。

藤田さんも、姉歯元建築士の事件では、本当の計算は計算をした元建築士にしかわからないと指摘しています。それぞれが独自の設定をしてシュミレーションするという仕組みであり、その設定次第で、幅が出てしまうといます。これは、現在の構造計算の限界であり、それを、取り締まろうとするのは簡単なことではないと思います。

現状では、特定行政庁が問題を指摘しても、構造設計者が否定する限り、直ちに断定することはできません。そこで、構造計算した人の申し開きや反論のために、再計算の機会が与えられているようです。

特定行政庁が構造計算を検査する能力は、とても貧弱であるといわれています。手に負えない特定行政庁があってもおかしくないと思いますが、その場合は、外注してこなしているのではないかと想像します。中には、特定行政庁が、再計算に消極的で、当人の再計算の結果を待っているという役所もあるかもしれないと想像します。費用がかかることですから……。

第一次耐震偽装の時は、熊本などでは、混乱がみられました。結局、設計者の主張が通りました。そうしたことへの反省があって、今回は、慎重なのかもしれないと思います。

水落建築士が実施している再計算は、適法であることを明らかにすることで、疑いに対する申し開きや反論をする目的であろうと思います。ただ、その計算に手間取っているとしたら、たとえ、耐震偽装の疑いがあっても、だらだらと再計算していると、逃げ切れてしまうという抜け道になってしまい、結局、白黒がはっきりししないばかりか、仮に性能不足の物件があったとしも、放置されてしまいかねないという問題のある措置ではないかと思います。

どの程度まで、建築士に申し開きや反論の機会を与えるべきかということが、適切にシステム化されていないと感じています。

ところで、札幌の元二級建築士の場合も、彼は、計算の手順はともかく、性能は保たれていると主張していました。サムシングのケースも同様に、性能が不足することはないと主張していたように記憶しています。

この辺が、姉歯元建築士を特殊な存在にしていると思います。彼は、唯一、自分の偽装の不適切さを認め、性能に問題があることを認めました。

もし、彼が、「性能は大丈夫であるはず」と主張していたら、展開が変わっていた可能性があると思います。組織的な構図を示唆するような発言などせず、「性能は大丈夫であるはず」と言い張っていれば、マスコミが追いつけないような高度な専門的知識が必要になるばかりか、時間もかかってマスコミが飽きてしまい、あのような国をあげての大パニックにはならなかったのではないかと思います。

他の建築士たちと比較してみると、彼は発覚後の混乱を引き起こした張本人だったといえると思います。

「大丈夫であるはず」と思い込める程の低い能力であったり、問題を認識できなかったりする程度の人物であったなら、「大丈夫であるはず」を言い続けられたと思います。「大丈夫」という計算を改めてひねり出す程の能力をもっていても、「大丈夫であるはず」を言い続けられたと思います。

そのどちらでもなかったために、構図が作られる種を撒いてしまったのだと思います。

彼は、計算を構造設計者自身が行って申し開きをしたり反論したりする機会を利用しようとは考えなかったわけですが、もし、それを利用していれば、だらだらと時間稼ぎをして切り抜けることも不可能ではなかったといえます。望ましい事ではありませんが……。

どうやら、彼は、この変な仕組みの弱点を熟知していたわけではなかったのだと思います。
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by gskay | 2007-02-22 17:09 | 揺れる システム
売り主が大手の場合の対応
耐震偽装で、ヒューザーが破綻してしまったことを教訓に、「簡単につぶれないような大手の売り主から買っておけば、問題があっても平気。だから大きい会社から、買うべきだ!」という説があります。

大手だから安心とか、値段が高いから安心というのは幻想です。大手から購入しようが中小や新興の売り主から購入しようが、安い物件であろうが高い物件であろうが、「ババ抜きのババ」を引く可能性があることには変わりません。

また、耐震偽装は、見抜く事ができるというのも幻想です。費用のかかる再検査をしない限り耐震性能は評価できませんが、その評価も主観的に設定を変更できる余地が多いためにバラついてしまうものです。図面をみれば、一目瞭然だというのは暴論です。

つまり、問題を回避するための努力に、確実なものはありません。

そこで、問題発覚後の後始末を問題にして、大手のアドバンテージを探そうとしているようですが、大手なら問題発生後の対応が適切だというのも幻想ではないかと思います。

耐震強度偽装: 住友不側が請求棄却求める 札幌の偽装マンション訴訟


2007年02月02日
 札幌市の浅沼良一・元2級建築士による耐震強度偽装問題で、強度不足が明らかになった同市北区の分譲マンションの住民2人が、販売した大手不動産会社住友不動産(東京)に購入契約の解除と、代金の返還など総額5760万円の支払いを求めた訴訟の第1回口頭弁論が2日、札幌地裁(坂本宗一裁判官)であり、同社は請求棄却を求めた。

 浅沼元建築士がかかわったマンションの住民による初めての訴訟。同市中央区のマンション1棟の住民も住友不動産に購入代金の返還を求め提訴している。

 答弁書で住友不動産側は「住民には購入価格での買い取りという最大限の提案をした。契約解除と賠償請求は法的根拠がない」と反論した。

 原告2人は1人当たり2400万円の購入代金に加え、代金の20%の違約金をそれぞれ請求している。

あるいは、

Yahoo!ニュース - 毎日新聞 - <耐震強度不足>売り主の住友不動産、請求棄却求める 札幌


2月16日15時37分配信 毎日新聞

 札幌市の元2級建築士による耐震偽造が判明した中央区の分譲マンションの住民11世帯が「消費者契約法違反に当たる」として、売り主の住友不動産を相手取って総額約3億7000万円の返還を求めた訴訟の第1回口頭弁論が16日、札幌地裁であった。住友側は「強度不足は軽微で違反ではない」として請求棄却を求めた。

最終更新:2月16日15時37分

購入者が納得できるような解決の仕組みはなく、供給側に有利です。解決までに時間がかかれば、負担に耐えられなくなるのは、購入者ではないかと思います。

また、たとえ、購入者に有利な判決が出たとしても、誠実に迅速に業者が対応するとは限りません。

結局、不都合のツケは、購入者が背負うことになるようです。

安心できる確かなものは、何もありません。

マンションというのは、おそろしくリスクが高い買い物になってしまっています。

その原因は、関係者の役割分担や責任分担が明確でないまま放置されてきたからだと、私は考えています。逆にいえば、その欠点を解決すれば、安心してマンションを購入する事ができる仕組みができるということだと思います。
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by gskay | 2007-02-19 10:55 | 揺れる システム
官公庁等の耐震強度
長野県の庁舎の耐震診断の結果が公表されたようです。記事では、どの規準で算出されたものか明記していませんが、Qu/Qunだとすると、議会棟でさえ、うちのマンションと変わらない耐震強度のようです。

突然、この記事が出るとビックリするかも知れません。しかし、引用の記事は、以前から、ポツポツと公表されてきた一連の結果の一つに過ぎません。

信濃毎日新聞[信毎web] 県庁と7合庁、耐震基準大幅に下回る 長野合庁は0・12
2月2日(金)

 長野市の県庁や、県内の県合同庁舎のうち7カ所の耐震強度が、現行の建築基準法に基づく基準値1・0を大幅に下回っていることが1日、県が行った耐震診断で分かった。最低は長野合庁(長野市)の0・12で、0・16の上田合庁(上田市)、0・27の大町合庁(大町市)の計3棟は、震度6程度の地震で「倒壊・崩壊の危険性が高い」と診断されている。

 いずれも現基準が適用される1981年以前の建築で、法的に問題はないが、県は来年度当初予算案に3棟の耐震改修に向けた調査費1300万円余を計上、早期の改修を図る考えだ。県はこれまで、災害時の避難、救護などの拠点と位置付ける県有施設1367棟のうち473棟(34・6%)が現行の耐震基準を満たさないとしてきたが、個別の建物の診断結果を明らかにしたのは初めて。

 県によると3棟以外では、県庁(長野市)の本館が耐震強度0・38、議会棟が0・41。0・33の木曽合庁(木曽郡木曽町)、0・37の諏訪合庁(諏訪市)を合わせた4棟は震度6程度の地震で「防災拠点としての機能が損なわれる」と診断された。

 伊那合庁(伊那市)、飯田合庁(飯田市)はそれぞれ0・61、0・69で、同様の地震で「防災拠点としての機能が損なわれる恐れがある」だった。現行の耐震基準で建てた松本(松本市)、北信(中野市)、佐久(佐久市)の各合庁は1・0を満たした。

 今年1月に策定した県の耐震改修促進計画では、災害時に拠点とする県有施設について、15年度までに耐震診断や改修を終え、耐震化率100%を目指すとしている。

 また県は同日、来年度当初予算案に、東海地震防災対策強化地域に指定されている南信の16施設・42棟の耐震改修と、糸魚川静岡構造線断層帯地震の被害が想定される中信の23施設・121棟の耐震診断の費用として、計5億7300万円余を計上する方針を明らかにした。


私が知っている限りでは、大阪府の耐震強度不足問題が、昨年の1月に報道されています。

震度6強で崩壊の恐れ 大阪府庁、基準値下回る


 築80年を迎えた大阪府庁本館は、耐震改修促進法が求める基準値を大幅に下回り、震度6強か7程度で崩壊する危険性が高いと診断されていたことが30日、分かった。

 同法は耐震指標値を「0・6以上」とするよう求めているが、大阪府庁は「0・3未満」だった。府は調査結果を受け、近く本館の耐震補強工事に関する計画を策定する方針だ。

 耐震調査は昨年5月に着手。構造計算書や施工資料などが残されていなかったため、非破壊試験器を使って柱、壁など構造主要部分の鉄筋の本数などを調べ「構造耐震指標値」を算出した。

 耐震指標値は震度6強か7程度の揺れ・衝撃に対し「倒壊の危険が低い」(0・6以上)、「倒壊の危険がある」(0・3以上0・6未満)、「倒壊の危険が高い」(0・3未満)に3区分。府庁本館は「倒壊の危険が高い」と診断された。
(2006年01月30日 共同通信)


しかも、

知事公館も崩壊の恐れ 震度6強で、大阪府


 大阪府庁の庁舎が震度6強で倒壊する危険性が高いと指摘された問題で、太田房江知事が日常的に執務に使用している知事公館も耐震改修促進法が求める基準を大幅に下回り、崩壊の恐れがあることが30日、分かった。

 一戸建て住宅など小規模建築物の場合、同法は「構造耐震指標値」を0・8以上とするよう求めているが、知事公館は0・24だった。

 小規模建築物以外の建物の場合、同法は0・6以上とするよう求めているが、府は同日、知事室や議場がある府庁本館が0・15、近畿管区警察局がある本館西館北側が0・16、議会事務局がある同東側が0・26だったとする耐震診断結果を発表した。
(2006年01月30日 共同通信)


だそうです。

国の方も、8月に同様の公表を行っています。


耐震基準 国の拠点施設45%が不足 神戸など3庁舎倒壊も


2006/08/26 神戸新聞

 大規模地震時に国の対策の拠点となる中央官庁や出先機関など三百九十三施設のうち45%の百七十六施設が、一般の建物以上に求められている耐震基準を満たしていないことが二十五日、国土交通省が公表したリストで分かった。

 このうち百十四施設は一般の耐震基準すら満たさず、震度6強-7程度の大規模地震で倒壊の危険性があるとされており、政府の防災担当者が日常的に詰める内閣府や、地方気象台、警察機動隊も含まれていた。

 国交省は「今後十年間で少なくとも九割で基準を達成する」としているが、対応の遅れには批判が集まりそうだ。

 リストは、国交省官庁営繕部所管の建物で、災害時に情報の収集や指令、被災者支援の拠点となる施設や、日ごろから危険物を貯蔵、使用する施設のうち一定規模以上のものについて、これまでの耐震診断結果を集約した。防衛庁と自衛隊の施設などは含まれない。

 いずれも、震度5強程度の地震では、損傷の危険性はないという。

 地方整備局別では、近畿管内で大規模地震で倒壊の危険性がある施設が二十六施設と最も多く、次いで関東管内が二十三施設だった。

 国は、これらの施設について、災害時にも機能を維持するため、建築基準法の基準より一・二五-一・五倍高い耐震基準を設定している。

 兵庫県内では、神戸東労働基準監督署が入居する神戸第二地方合同庁舎別館(神戸市中央区)が大規模地震で倒壊や崩壊の危険性が高いことが判明。神戸地方合同庁舎(同)と県警察学校本館(芦屋市)は、倒壊の危険性があるとされた。

国土交通省では、官庁施設の耐震診断結果等の公表についてあるいは、官庁施設の耐震診断結果等についてで、詳しい内容を知る事ができます。

この他、病院などの耐震診断を進めるため、厚生労働省が取り組みを行っています。学校については、かなりの地域で対策が進んでいるものの、取り組みの足並は揃っていないという話もあります。

なぜ、この時期に、この記事が取り上げられるかと考える必要があるかもしれません。ようやく、既存不適格に対し、重い腰を上げたということなら歓迎です。予算関連ということでしょうか?

しかし、「意外に大丈夫かも?!」と、思わせるためならバツです。

今後、分譲済マンションで問題が見つかるようなことがあれば、いよいよ大変になってくると思われます。

(追記)
友人に、この話をしたら、「お宅のマンションが、『殺人マンション』なら、こっちは、『殺人庁舎』ってわけだね」とのコメントを頂戴しました。

(追記2)
上に書いた追記の延長で、『殺人病院』とか、『殺人学校』っていうのも……。今後、この話題は、封印とします。
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by gskay | 2007-02-02 20:53 | 揺れる システム
アパホテルの耐震偽装公表の経緯
このタイミングに公表されたことで憶測が飛び交っています。これまでは、メディアが沈黙している一方で、藤田さんが告発を続けていました。藤田さんの本が出てから1ヶ月。そして、政治情勢もいろいろあるようです。加えて、選挙も。そうした事情から、憶測が生まれているようです。

私は、どうような背後関係があるのかは知りません。私には、そんな陰謀めいたことや不正が行われているという証拠はみつけられません。私に見つけられるような陰謀じゃ、陰謀としては情けない限りですが……。

ところで、国土交通省の「構造計算書偽装問題とその対応について」のサイトの中の構造計算書偽装問題対策連絡協議会(第19回)議事概要には、『違反行為若しくはその疑義に関する情報を把握した場合の初動対応と公表のあり方について』国住指第541号があり、公表に至る流れを知る事ができます。とりあえず、私が把握している公表に関する指針となる書類は、これだけです。

その書類によると、公表には二つのパターンがあります。物件の所在する特定行政庁が疑義の判明や違反事実の確認した場合、所有者への通知をへて、「違反の態様に応じ、公表の公益性と所有者の財産権の保護等を比較考量した上で公表」するというのが一つ。

特定行政庁から地方整備局等への報告をへて、国土交通大臣が「著しく危険もしくは悪質であり、社会的影響が大きいと認められる場合」に公表するというのが、もう一つです。

アパのケースではどちらに当たるのでしょうか?京都市が主体のように思われるので、前者のような気がします。かといって、国土交通省も公表に関わっているようなので、後者でもあるような……。はっきりした判断の材料は、私は持っていません。

調査に時間がかかりすぎているのではないかという疑問があるようです。6月にわかって調査を開始したとしても半年かかっています。それに対する疑問のようです。

再計算するだけでも、時間がかかります。その知識や技術を持っている人も限られています。そうした人をかかりきりにさせるわけにもいきません。このため、時間がかかったと考えることができると思います。順番にこなして、やっと辿り着いたのではないかと思います。

さらに、すでに国土交通省が発表しているように、物件は多数有ります。


耐震強度偽装: マンション15件強度不足か 無作為調査で設計ミス判明


2006年12月27日
マンション15件強度不足か 無作為調査で設計ミス判明

 国交省は27日、耐震強度偽装問題を受け無作為に選んだ全国の10階建て前後のマンション389件の構造計算書を調査し、15件で不整合など強度不足の疑いが見つかったと発表した。いずれも偽装ではなく設計ミスの可能性が高いという。

 国交省は、関係自治体を通じて設計者らに事情を聴くなど精査し、強度不足が確認されれば改修を求める。

 調査は、姉歯秀次被告(49)以外の建築士が構造計算した物件で偽装が見つかったため、最近5年間に建築確認したマンション約6000件から389件を選び2月に着手。221件の調査が終わり、構造図と構造計算書の不整合などのミスが15件あった。

 また同省は、国指定の民間確認検査機関が建築確認した103件の別の抽出調査で、東京都大田区の14階建て分譲マンションの強度不足を確認したと発表。


共同通信


こうした物件の調査も進めなくてはならないとなると、作業量は膨大になり、時間がかかってしまうのではないかと考えることもできます。

また、マンションではなく、ホテルから公表されたのかという点については、ホテルの方が所有が単純だからという事情があると思います。マンションの場合、所有者が複雑です。おそらく、問題となるようなマンションがあったとしても、ホテルよりも、「財産権の保護等」への配慮が難しいのだと思います。

藤田さんの告発や出版との関係が気になるところではあります。

藤田さんは、春には問題を把握していたとのこと。それを受け、6月7日の国会の委員会で議論が行われたのではないかと思われます。ただ、この経緯は、『あり方について』が通達される平成18年5月11日よりも前のやりとりになるので、通達以降の6月の時点をスタート地点としているのかもしれません。

妥当かどうかは別として、そういう取り上げ方も出来るのかも知れません。

今回の公表に至る事情と、藤田さんの告発や出版、国土交通省の事情や、政治情勢、選挙、そしてメディアや広告会社の事情など、様々な問題をからめて考えることができないわけではありません。しかし、この件に関する限り、実際に起こっていることは、大きな陰謀のようなものではないと考えることもできます。

ただ、それぞれが、それなり波紋を作る問題であるばかりか、その波が偶然に重なり、干渉し合って、別の大きな問題に発展する可能性があります。必然的なものであろうがなかろうが、意図的なものであろうがなかろうが、受け止めていかねばなりません。
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by gskay | 2007-01-27 10:32 | 揺れる システム
アパの耐震偽装
アパの耐震偽装については、断片的に聞こえてくる情報を聞くかぎり、時間の問題で公表されるであろうと思っていました。私の周囲では、アパの耐震偽装についての隠蔽工作があったとみる雰囲気があります。藤田さんの著書もそれを扱っています。私には、わかりません。別の見方をすると、そんな大それたことではないかもしれません。

また、アパの耐震偽装の隠蔽のために、藤田さんの刑事告発が行われたかどうかについても、私にはわかりません。今のところ、アパの耐震偽装を担当していた官僚や、藤田さんの刑事告発を担当した捜査当局が、そのような意図をもっていたと断定する根拠はなく、もし、そのような意図があったとしても、その目的は達成されたとは言えないようです。

とりあえず、藤田さんの糾弾が実を結ぶ方向になっているように見えますが、「悪徳」業者を叩いたところで、問題の本質には迫れないし、対策も実現できない事と思います。

ところで、アパの耐震偽装については、偽装そのものについて、建築主がどの程度の影響力を持っていたかが問題になります。関与は、否定すると思いますが……。

姉歯や浅沼などは、構造設計の能力がないのに、誤摩化していたケースですが、アパの場合は、もっと深刻で、かつての「構図」に相当する背景が、ひょっとするとあるのかもしれません。

姉歯や浅沼のケースは、「ばれないといいな」という犯行で、こっそり行っていたものでした。浅沼のケースはともかく、姉歯のケースは、本人の思わせぶりな発言と状況や登場人物のキャラクターによって、「構図」が作られてしまいました。基本的に、建築主も施工も、元請けの設計事務所も、ヒューザーの小嶋社長の言うところの「玉突き衝突の被害者」だと、私は考えています。ただし、責任の有無は別です。

そのような「玉突き」であるかどうかは、微妙です。姉歯や浅沼は、元請けに書類を提出したところで、彼らの関与は終わりでした。しかし、アパのケースでは、確認申請後にも、どうやら関与の痕跡がみられるようです。

すでに、アパの問題は、建築中のマンションの問題が、6月の国会の委員会で取り上げられており、「隠蔽」と言えるかどうかはわかりません。少なくとも、確認申請に提出された書類が不適切に処理されていたというようなことが明らかにされています。それに関連した調査が続いていたと考えることもできます。今後、発覚後の経緯についても不整合のある部分が出て来るかもしれません。

偽装の経緯とともに、発覚や公表、処分の経緯についても、かなり慎重に真相を見る必要があると感じています。今までの経験からみて、公的な見解に対しても、メジャーなメディアに対しても、完璧にフェアであることを望むのは困難であろうと思います。彼らの能力や、彼らの意図、彼らの背景にある事情を差し引いて受け止めなくてはいけないと思います。

アパが、政治家を使って、問題を封じ込めようとしていたかどうかについては、解釈次第だと思います。政治家とともに問題に取り組むこと自体は不当ではないと思います。政治家に相談したり、政治家とともに問題に取り組むと、すぐに不当な圧力を行使したとか不当な介入だと騒ぎ立てますが、それには、疑問です。問題に対して、政治家が頑張ること自体は望ましいことでは?ただし、「不当」はダメです。
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by gskay | 2007-01-25 18:54 | 揺れる システム
瑕疵担保責任の果たし方
売り主が倒産しなくても、なかなか買い手を満足させるのは難しいようです。選択肢としては、補修、建て替え、買い戻しなどがあると思います。共同住宅では、住民ごとにそれぞれの意向があり、調整するのも大変ではないかと思います。

asahi.com購入代金返還求め、住友不動産を提訴へ 札幌の耐震偽装


2006年12月17日20時54分
 札幌市の浅沼良一・元2級建築士によるマンションの構造計算書の偽造問題で、耐震強度不足が分かった同市内の分譲マンションの住民が販売元の住友不動産(東京)を相手取り、年内に購入代金の返還などを求めた訴訟を札幌地裁に起こす。浅沼元建築士による耐震偽装での提訴は初めて。

 提訴するのは、04年に同市中央区に完成したマンション(15階建て、84戸)に住む11世帯14人。同社は販売の際、耐震基準を満たしていると説明していたが、5月の札幌市の調査で耐震強度が国の基準を下回る0.86と判明。これは消費者契約法違反(不実告知)にあたり、偽装した浅沼元建築士ではなく売り主の責任を問うことにしたという。1戸当たり2000万〜4000万円で、総額4億1000万円になる。

 さらに、同社が販売し、強度不足が判明した同市北区の別のマンション住民2人も、購入代金に加えて違約金の支払いも求めて提訴の準備を進めているという。

 中央区のマンションに住む男性(40)は、同社から強度が1.89との説明を受け、約3000万円で購入したという。「同社はマンションを補修して強度を1.0にするといっているが、当初の説明と実際の強度がこんなに違うのは詐欺だ」と訴えている。

住民にとって有利な条件を出して来るはずがないと思っていました。同時に、売り主ばかりに都合が良い対応が、すんなりとは通る訳がないだろうと思っていました。同意に漕ぎ着くのは、そもそも困難です。

これに加えて共同住宅の場合、管理組合としての対応があります。建て替えにしろ、補修にしろ、管理組合の決議ないし、全員の同意が必要になります。その手続きは、それなりの好条件でなければ進まないだろうと思われます。

売り主の名が通っていても、そんな建物が出来てしまうし、そんな対応をするというのが現実なのだろうと思います。
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by gskay | 2006-12-19 00:51 | 揺れる システム
29億円……。
中間配当があったことが、毎日新聞に出ていました。

耐震偽造:29億円を中間配当…ヒューザー破産管財人


 耐震データ偽造事件で元社長が詐欺罪に問われたマンション開発会社「ヒューザー」(東京都大田区)の破産管財人の瀬戸英雄弁護士は7日、耐震強度が不足しているマンションの購入者ら債権者に対し、約29億2200万円を中間配当した。
 配当額は、配当対象の破産債権約194億8200万円の15%。強度が基準以上のマンション購入者や、支援策を実施した神奈川県藤沢市が配当を求めており、係争中の金額が約26億円あることなどから最終配当の時期や額は決まっていない。【高倉友彰】
毎日新聞 2006年12月7日 21時52分

銀行のATMで偶然振り込まれていることを知りました。思い立って、普段は使わないオンラインバンキングで調べると、振り込み日は12月7日でした。一斉に振り込みが行われたのではないかと思います。

ところで、緊急に建て替えの必要があるとされた物件に対する緊急の対応には、さしあたっていくらを用意すればよかったのでしょうか?また、建て替えを可能にするために当面必要なのはいくらだったのでしょうか?それを考えると複雑な気持ちになります。

今から考えると、ヒューザーをつぶした原因のひとつとして、建て替えの手続きの困難さも加えることができるのではないかと思います。買い取りはともかく、建て替えとなった場合、様々な手続きが必要です。しかし、耐震偽装の問題が公表された時点で、共同住宅の建て替えについて全体を見通した対応は行われていませんでした。

もし、これだけの資産があったとなると、むしろ手続きについての明確な方向性が打ち出せなかったことが事態を悪化させたのではないかと思います。

違法建築の処分の問題も重大な要素ですが、仮に違法建築への対応が妥当だったとしても、共同住宅の建て替えに関する制度との間の大きなギャップを乗り越えることは難しかったのではないかと思います。
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by gskay | 2006-12-09 00:14 | 揺れる システム
1周年
昨年の11月17日に公表され、通知をもらい、耐震偽装に巻き込まれました。木曜日でした。日付でいえば、明日で1年になりますが、曜日の感覚からすると、勤労感謝の日の前の週の木曜日がその日であったと感じています。

木曜日は、毎週、通常とは別の仕事をしています。そのため、早く帰宅することができます。帰宅したら、そういう通知が来ていました。そして、記者も……。

そうした曜日感覚まで意識したのか、今日の朝日新聞の東京地方面は、大々的に耐震偽装を扱っていました。他紙は、概ね国土交通省の助成期間延長だけが話題でしたが、朝日は、1周年を前倒しにして掲載したのかもしれません。

他の都内物件の現状は、
 asahi.com生活再建歩み重く マイタウン東京

また、加藤記者、小金丸記者による連載が再開されていました。
 asahi.com耐震偽装 グランドステージ 記事一覧 マイタウン東京

これまでも、朝日新聞は、他の新聞とは少し異なった取り上げ方をしてきたと思います。

他には、毎日新聞が、千葉県に関連して特集を組んでいるようですが、何かスクープを意識しているようでしょうか?

また、なぜかメディアでは取り上げられないネット上のメッセージや情報については、スポーツ報知がそれなりに取り上げていてユニークです。
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by gskay | 2006-11-16 17:23 | 揺れる システム
最初の耐震偽装物件への対応
耐震偽装の居住用の分譲マンションといえば、まるでヒューザーだけであったかのような扱いですが、それだけではありません。まして、最初の耐震偽装物件はヒューザーではありません。

ヒューザーは混乱を乗り越えることができませんでしたが、冷静な対応が許されている物件では、引用の記事のように対応が進んでいるようです。混乱に巻き込まれている様子もありません。しかし、こちらこそ、「最初」です。

asahi.com東京の「ゼファー月島」、建て替えへ 耐震強度偽装事件


2006年11月07日20時08分
 耐震強度偽装事件で、分譲会社「ゼファー」(東京都中央区)が販売した区内の分譲マンション「ゼファー月島」の住民管理組合は7日、1を基準にした耐震強度が最も弱い部分で0.44と発表した。建て替え案の設計を依頼中で、年内に建て替え決議ができれば、約2年後に完成する予定。引っ越しなどの諸費用は住民に負担がないよう「ゼファー」が支援し、建築確認した同区にも応分の負担を求めて協議を進める。

 元建築士の姉歯秀次被告が最初に構造計算書を偽造したと供述した物件。同区はいったんは「再計算で改ざんなし」と国に報告したが、実際は再計算していないことが判明した。同区は7月に耐震強度の最低値を0.43と発表し、区長の減給など関係者を処分している。

国土交通省の資料をみると、補強で対応する方針であるヒューザーの横浜の物件をのぞけば、Qu/Qunが0.5未満の建て替え相当物件の中で、今でも居住している物件はここだけです。自主退去の勧告などは、行われていないようです。使用禁止命令も出されていません。

どういうことなのでしょう?

再計算の過程の役所の問題が、こうした穏便な対応の理由になるのでしょうか?

建築主・売り主が残っていることが理由なのでしょうか?

ヒューザーの破綻は、住民の退去が進んでから、住民が申し立てたことによるものです。ヒューザーが破綻していたから、公的な対応が始まったわけではありません。

ヒューザー自身は対応を模索していましたが、その時間的な猶予は、最初の耐震偽装物件を作ってしまった企業のようには与えられませんでした。この最初の耐震偽装物件のような対応が許されるなら、展開は異なっていただろうと思います。

住民が公的な対応に追い立てられることもなかったでしょう。企業としての活動を続けることもできたでしょう。耐震偽装に関連しない物件の価値まで不当に下がることもなかったでしょう。

一体、ヒューザーと最初の耐震偽装物件を作ってしまった企業との違いは何なのでしょうか?

ヒューザーが「最初の発覚」だったからということなのでしょうか?

これは、問題の深刻さとは別の問題のような気がします。対応の違いを説明する合理的な理由にはなりません。

「最初の発覚」に、みんなが騒ぎ、混乱してしまいました。そして、のど元を過ぎて、熱さが忘れさられてしまいました。

あの「騒ぎの正体」にこそ問題があると感じています。
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by gskay | 2006-11-14 17:08 | 揺れる システム