カテゴリ:公的対応( 48 )
建築主事をおかない市の物件
稲城の建て替えが決まったという報道がありました。稲城市は、建築主事をおいていない市で、この物件の特定行政庁は東京都です。

耐震偽装に関連した公的な対応については、国、都および県、それに特定行政庁をおく市および区が費用負担をすることになっています。稲城市に関しては、市としての対応はなく、その分も都が負担しているのだと思います。

稲城市は、公的な対応への負担を拒否したという経緯があります。特定行政庁ではない以上、当然なのかもしれません。稲城市は、建築確認などの検査にはかかわっていないし、取り締まりの権限も持っていません。使用禁止命令などの処分を行うことができません。

稲城市が負担を拒否するという発言をした時、対応の是非の問題にからめて取り上げられたこともありました。そうした取り上げ方は誤りであり、稲城市の発言は、特定行政庁が負う責任とは関係ないという発言に過ぎないものでした。国土交通省が主導する公的な対応の是非とは関係ない話です。

現時点で、国土交通省が主導する公的対応に対して独自の路線を貫いているのは、横浜市です。また、Qu/Qun<0.5の姉歯による耐震偽装物件であるにもかかわらず、非ヒューザーであるためか、公的な対応の枠組みから外れている物件もあります。

その2物件を除く残りの10物件は、概ね、国土交通省の公的な対応の枠組みにそって、うまく進んでいると言えるのかも知れません。少なくとも、仮住まいへの退去は完了しています。さらに、多くが建て替えの方向に進んでいるように思われます。その点については、市に建築主事が置かれているかどうかは問題にはならないのかもしれません。

ただ、それぞれの事情に合わせた細かい対応を考えると、市や区が関わることのメリットがあるように思います。今後、市町村の合併で大規模の市が増えると、都道府県が直接関与する割合は減って行くのだろうと思われます。
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by gskay | 2006-11-27 19:09 | 公的対応
微妙な変化
建築確認を始めとする検査は、建築に口をはさむものの、責任は負わないというのが、当初の態度だったと思います。しかし、情勢が少しづつ変化していることを感じます。

朝のJ-WAVEの番組の中のニュースで、建築確認について「民間検査機関への求償権」を自治体に認めることを明記するという内容が放送されていました。その放送を聞いた時、「何だろう、キューショーケンって?」と思いました。もっと噛み砕いた表現は無いのでしょうか?

あいにく、その他のメディアで取り上げられたのかどうかはわかりませんが、大きな変化だと思います。

これまで、「確認だから、許可とか認可とかいう行政処分と同列には論じられない」とされてきました。違法を避けるのは最終的には建築主などの責任だとしているからと説明されていました。その説明を聞いて、「だったら、やめちゃえばいいのに」と私などは考えていました。口だけ出して余計なお世話です。

無謬であり、一旦適法とされたものは、いつまで適法であると言うことなら、その手続きに価値はあったと思います。しかし、結果として違法建築になってしまったものは、手続き的に適法であっても違法であるとされることになりました。もはや、無謬ではありません。

無謬は否定されたものの、適法として進められた手続きについては宙ぶらんでした。その責任は明確ではなく、誤りの場合でも損害賠償が請求できるかどうかも曖昧でした。事によると、その曖昧さがなくなり、損害賠償が請求できるという方向になるのかも知れません。

今後、特定行政庁は誤った建築確認についての責任を負うとともに、それにかかわった民間検査機関に、賠償のために生じた損害を請求するようになるのではないかと思います。

そうすると、これまでの公的な対応の意味が変わってきます。少し、私の考えに近くなると思います。

この他に、引用する次のような記事が目に入りました。

asahi.com国交相、「安心くださいまでいってない」 耐震偽装1年


2006年11月17日10時57分
 姉歯秀次・元1級建築士による耐震強度偽装を国土交通省が発表してから1年となる17日、冬柴国交相は閣議後の記者会見で、中高層建築物の耐震性について、まだ国民に対する「安全宣言」を出せない、という考えを示した。

 同省が姉歯物件以外の検証として、民間検査機関が確認した耐震強度が基準ぎりぎりの103件を調べたところ、15件に構造計算の不備が判明。一部は強度不足が濃厚だ。また、全国387の分譲マンションを抽出したサンプル調査でも、これまでに問題なしと判定されたのは74件。

 冬柴国交相は「今日までに結論を出して不信感を払拭(ふっしょく)したかったが、安心くださいと申し上げるところまでいっていない」と説明した。

 制度の不備に対する国の責任については、「非常に難しい法律判断を伴う」と明言を避け、「住民の立場で損害を軽くする方策を実行している。これが国の責任の履行ではないか」と述べた。

前半は、現実問題として深刻です。一方、最後の段落は、「明言を避け」ているものの、司法での判断が、国のこれまでの主張と異なるものになることに備えているのかもしれないと感じました。

ところで、然るべき配慮をしない限り、ほとんどの建物は、再検査を希望しないのではないかと思います。結果が悪かった時、我々のような負担を背負うことがわかっているなら、尻込みする人が多くても当然だと思います。どれだけ大変なのかだけが、メディアを通して広く伝えられています。それでは、安全確保への道は開かれません。
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by gskay | 2006-11-17 23:59 | 公的対応
既支出の自治体からの債権
自治体がすでに支出している分については、債権として認められることになったそうです。小嶋社長の初公判の陰で注目は低かったようですが、債権者説明会が開かれ、方針の変更が示されたそうです。


<ヒューザー破産管財人>自治体支出費用、債権として容認


 耐震データ偽造事件で元社長が詐欺罪に問われたマンション開発会社「ヒューザー」の破産管財人が、自治体が支出した住民の転居費や家賃費の一部計1億数千万円について、従来の方針を一転させ、債権として認める方針を決めたことが分かった。管財人の瀬戸英雄弁護士は「配当額は変わらない」と説明している。
(毎日新聞) - 10月7日0時16分更新


引用の記事は短く、最小限の言葉しか使われていないため、少々わかりにくくなっています。事情に通じた人にしかわからない記事になっているような気がします。この記事に注目する人は少数だと思うので、それでいいのかも知れません。

「自治体が支出した住民の転居費や家賃費の一部計1億数千万円」というのは、すでに支出されている費用のことのようです。「配当額は変わらない」というのは、配当できる原資が変わらないということで、新たに資産が増えたり、減ったりはしていないということだと思われます。

既支出分についての方針は、私のところの区のたてた方針に沿っているように思われます。

破産管財人から債権の認否についての判断が示されて以降、助成金額の考え方について混乱しました。破産管財人からも、公的な対応が動揺する事に対するコメントがあった程です。今回の方針は、その混乱を収拾するような判断ではないように思われますが、国土交通省の方針にも配慮しているのかもしれません。

引用した記事では、「一転」と表現していますが、限定的な変更と位置付けるべきだと思います。国土交通省から考え方は示されていますが、助成に関する最終的な判断は、自治体が独自で行うことになっています。今後は、自治体毎に異なった方向に進むものと思われます。

自治体毎の方針になってしまうため、助成についての報道は難しくなるだろうと想像します。大切な問題だとは思いますが、報道がないために、世間にはあまり知られることのない問題になってしまうように思います。
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by gskay | 2006-10-11 10:43 | 公的対応
債権についての考え方
国土交通省のページに、『今後の破産手続きの対応等について』という書類があります。9月8日付けの構造計算書偽装問題対策連絡協議会の書類です。ポイントが図解されていて、「求償の考え方」と「補助金による調整の考え方」が説明されています。居住者の最終的な自己負担については、変更がないことがわかります。

この考え方は、代位の手続きの時の区からの説明と変わりがなく、ヒューザーの破産管財人の判断の前後で、方針が変わったということはありません。状況がはっきりし、方針が確定しただけのように思われます。

おそらく住民に動揺があり、反発もあるものと思われます。冷静に考えるべきだと思います。破産管財人も憂慮しているようです。国や自治体の態度の表明について、意図がしっかりと伝わるような配慮も必要ではないかと思います。

ところで、この書類では、
「売主である事業者は、買主である居住者との関係で、第一義的に瑕疵担保責任という契約上の責任を負っているにもかかわらず、この責任が誠実に果たされて居住者の移転と建物の解体が円滑に進む見通しが全く立っていない状況」
であったことや、
「既存の「地域における多様な需要に応じた公的賃貸住宅等の整備等に関する特別措置法」に基づく地域住宅交付金を活用し、類似の財政措置との均衡にも配慮した上で、相談・移転から除却・建替えまでの総合的な公的支援措置のスキームを設けた」
ということへ言及し、正当性が論じられています。

しかし、使用禁止等の措置の根拠となる技術的な議論や安全性について議論、あるいは違法建築が作られてしまった経緯と責任、他の欠陥住宅や既存不適格への対処との整合性の部分などは端折られています。

求償についての考え方を示す文書であるため、言及する必要がないという考えだと思います。それに、とても微妙な問題ですから……。

ちなみに、まだ退去が行われていない物件があることが、別の書類から知る事ができます。ひとつは、横浜で、国のスキームを活用していない自治体です。もうひとつは、元建築士の最初の偽装物件とされるマンションで、遅れて明らかになった物件です。売り主は「健在」です。それはそうと、緊急だったんですよね、確か……。

「ヒューザーの破産管財人の査定方針についての記者発表等によれば」という表現には、びっくりです。伝聞なんだ……。

「助成額についての居住者間の公平性の確保を総合的に図ることとする」という文句があり、これで公平の確保についての検討は終わりになるのかもしれません。

書類の最後は、「届け出た債権が認められない場合において、破産手続きの査定申立ての実施の有無、査定申立ての対象とする債権の範囲については、各地方公共団体が判断することとする。」のだそうです。

いよいよ、自治体ごとに異なった方向に進んで行くことになるのではないかと思います。
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by gskay | 2006-09-14 17:40 | 公的対応
国のスキームに対する個々の努力
国のスキームといっても、実際には自治体が主体であり、国土交通省からは制度が示しされただけで、国の実際の関与は限定的です。このため、自治体の動きはバラバラです。中には、ほとんど、国のスキームに基づく対応をしていない自治体もあり、立法の要求もあります。

すでに、使用禁止命令の発令や国のスキームを活用するかどうかという時点で、自治体の態度が分かれてしまいました。除却や立て替えについても、バラバラ。ヒューザーへの債権届出のやり方も考え方も、バラバラ。ヒューザーの破産管財人の判断に対する国土交通省での「決定」を、自治体がどのように受け取るかによっては、バラバラにさらに拍車がかかりかねません。

中央の行政組織が力を持つべきだという立場から見れば、国土交通省の指導力が低下したと評価されかねない状況です。国土交通省としては、存在と影響力を改めて示し、引き締めたいところかもしれません。その方が、差をなくした均衡のとれた対応が可能かもしれません。

しかし、強制的な措置が立法化されていない以上、自治体の独自の判断が尊重されるべきです。「監査請求や住民訴訟で訴えられる」という懸念など、自治体自身が取り組まなくてはならない問題だと思います。すでに、その懸念を理由に、国のスキームに沿った対応に取り組んでいない自治体もあるのですから。

こうした状況は、「中央から地方へ」が進んだ結果であり、望ましいあり方だと私は思います。中央官庁は考え方を示し、それを取り入れるかどうかは自治体次第です。国の方針を有無をいわせず強制的に実施しようとするなら、そういう規定の立法をするべきだと思います。逆にいえば、国のスキームには、そういう強制力はないということだと思います。

それはそうと、ヒューザーの破産管財人の配当についての判断と、それに対して立てられた国の方針が、自治体の態度を後ろ向きにさせ、住民を追い込み、建て替え事業を頓挫させることにつながらないようにと、私は願っています。しかし、自治体が独自に動いている以上、自治体によっては頓挫してしまうような方向に進む可能性もあると思います。

もし、頓挫のような望ましくない結果を出来る限り確実に避けようとするなら、しかるべき立法が必要です。ただし、現状は立法への圧力は乏しいように思われ、立法に進むには、何らかの引き金が引かれる必要があります。

例えば、いよいよ頓挫するような物件が出たら、国土交通省の国のスキームでは不十分で、立法を必要とするという判断になるかもしれません。その場合、自治体に任せておくわけにはいかないという判断も加わって立法が進むかもしれません。

また、ひとりでも住民が破綻し、悲劇的な転帰を辿るようなケースが出たら、その生け贄の上で、一気に立法が進むのかもしれません。

幸い、まだ、いずれの事態も発生していません。そうした事態を未然に防止するため、立法が行われるべきだという発想も、この機会に、ひょっとすると出て来るかもしれません。現実に即しているなら、それはそれで歓迎したいと思います。

ただし、中央官庁の権限が過剰に強化されたり、中央官庁と地方自治体の権限や責任の分担を曖昧にするような法は、「小さな政府」「中央から地方へ」という流れに逆行するため、私は好ましくないと考えています。

国のスキームに従わない市があることを不審に思ったこともありましたが、今は、実際の対応の中身はともかく、独自に対応するという方針については肯定的に考えています。

ところで、これまでのところ、国のスキームに基づいた公的な対応が順調に進んできたという良い評価は少ないようです。実際には、着々と事が運んでいるのですが、そう言う捉え方は少ないようです。スキーム通りに進まないことや、時間がかかっていることに批判があるようで、動揺がおきています。その動揺が、ヒューザーの破産管財人による債権の認否によって顕在化してきたような気がします。

一種の閉塞状況と見なされていて、ヒューザーの破産管財人の判断や、住民の反発に責任を押しつけられかねない状況です。現状は、誰かがその気になれば、今までの努力が台無しになって、頓挫してもおかしくない不安定な状況です。

この閉塞感には、メディアの姿勢も大きな影響を与えていると思います。自治体ごとの対応がバラバラになっていることに、報道側がついていけていないと感じます。メディアの不勉強は、地方分権が進まない原因の一つかもしれません。

閉塞状況の打開策として、中央官庁が中心に座るような仕組みが立法される可能性があります。その結果、地方自治が尊重されず、自治体主体という枠組みが骨抜きになってしまう可能性もあります。

今回、自治体が主体になっていることは、国土交通省の責任逃れということではなく、自治体が責任を押し付けられたというような性質のものでもないように思います。特定行政庁による取り締まりの充実という方向性にそった健全なものだったのではないかと思います。背景となった理念は大切にされるべきではないかと思います。

どうしても、端で見ている人にとっては、展開が遅いと感じるようです。もちろん、住民にとっても、時間がかかりすぎるのは良い事ではありません。国のスキームが早々に示されたにもかかわらず、自治体ごとの公的対応の足並がそろわずに、この段階にいたっているのは確かです。

現状は袋小路に入り込んでいる状況ではなく、着々と事が運んでいます。あわてて抜本的に見直さなくてはならない状況ではありません。決して頓挫している訳ではなく、批判すべき遅れがあるわけではありません。どうしても必要な時間がかかっているだけです。

これについて、メディアの一部は、住民が追いつめられ、苦しんでいるという演出をしつつ、生け贄を期待しているのではないかと、ちょっと不信感をもって眺めています。

すでに建て替えの方針が示されたところもあり、それに準ずる段階に辿り着いているところもあると思います。そうした物件については、いたずらに話をこじらせるのではなく、自治体や住民の自主的な判断が尊重されるべきだと思います。

その一方で、建て替えの難しさが増しているところもあるかもしれません。もし、そこに不満や不都合があれば、しかるべきテコ入れや、発想の転換が必要かもしれません。その場合でも、自治体や住民の自主的な判断が尊重されるべきだと思います。

単に足並が揃わないことを、ことさら非難する必要はないと思います。自治体の主体性や、物件ごとの事情により、仕方がないこともあるからです。また、どうしても時間がかかるという実態を、軽視して考えてはいけないと思います。進み具合が遅いということを、杓子定規な机の上の空論に合わないからといって批判するのではなく、現実の問題として、個々に受け止めるべきだと思います。

国のスキームをめぐっては、これまでも混乱がありました。この問題には、自治体の主体性の問題や、国レベルの行政的な裁量による判断の是非といった根深い問題があります。しかも、判断の前提となったヒューザーに対する評価の妥当性や、耐震強度に対する認識も問われているように思われます。これついては、「構図」にもとづいたスキャンダルを追及している時に、もっと検討しておかなくてはいけないことだったと思います。

この国のスキームに関する限り、個々の努力を再評価すべきで、現実的に着実に前進していることをもっと評価すべきです。国のスキームは、不確定な条件で設定されたものです。このため、国のスキームの現実化にあたって、逸脱にみえるような大胆な修正を加えなくてはならない点も少なくありません。それを欠陥として非難するするべきだとは思いません。少なくとも、国のスキームは、動き出すきっかけをつくったことは確かだからです。

今後、個々の方向性がさらにバラバラになってしまうことについては、なるべく肯定的に考えるべきではないかと思います。たとえ、建て替えを諦める物件が出たとしても、住民が満足できる決着であれば、構わないのではないかとさえ思います。この仕組みは、そういう仕組みなのだと思います。融通が利かない仕組みより、はるかにましです。

住民を追いつめ、生け贄を作り、それをきっかけに立法によるいびつな制度整備が進み、個々の責任感や自主性が損なわれると言うシナリオが、最悪のシナリオです。立法を行うのだとしたら、現在の公的な対応の実情を肯定的にとらえ、その延長上に立法を行うのが望ましいと、私は考えます。
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by gskay | 2006-09-12 08:52 | 公的対応
破産管財人の判断への国の対応
引用した記事は、破産管財人の判断が示されたときから心配していたものでした。もっと強硬な方針が示される可能性も考えられたので、国土交通省には、こじれさせる意図はないように思います。すでに除却や建て替えの方向に進んでいることに対し、水を差したり、覆したりするという判断ではないと思います。

これは、ヒューザーの破産管財人の判断を受けて、未確定だった部分が確定したということに過ぎません。すでに動き始めた公的な対応の縮小や撤退の方針ではなく、住民の「自己負担」が増加する訳でもないと思われます。

asahi.com住民支援の補助金を一律減額決定 耐震強度偽装で国など


2006年09月08日23時11分
 耐震強度偽装事件で、建て替え支援対象のヒューザーの分譲マンション11棟を支援する首都圏の10自治体と国土交通省は8日、同社の破産手続きに伴う住民への配当に応じ、助成金を一定割合減額する方針を決めた。破産管財人が配当を住民に一本化し、自治体の債権を全額認めない方針を示したため、本来の配当分を確保するのが狙いで、助成額は2割強減る見通し。自治体側は「当初方針通り」とするが、反発する住民もいる。

 自治体側が配当に固執せず、助成金の減額でまとまったのは、13日の債権者集会後も全額の認否を争った場合、住民への配当が遅れるためだ。

 今回の判断について、国交省住宅局の幹部は「自治体側には『助成分をヒューザーから回収しないと監査請求や住民訴訟で訴えられる』という懸念がある」と話す。



耐震偽装:行政、ヒューザー肩代わり支出住民に求める方針

 耐震データ偽造事件で、マンション開発会社「ヒューザー」(破産)が分譲し、強度不足で建て替えが必要なマンション住民に対し、解体費用などを同社に代わって支援した10自治体と国土交通省は8日、ヒューザーの破産管財人が負担を認めなかったとして、住民側に返還してもらう方針を決めた。ヒューザー側は住民への配当を優先するが、住民によっては配当金の半分以上を自治体などに返還する例もあるとみられ、反発が予想されそうだ。
 国と自治体は、耐震強度0.5未満で建て替えが必要な分譲マンションについて、住民の転居費用や仮住居の家賃、解体費用などを支援し、支出分はヒューザーに求めるとしていた。この方針に沿って管財人に約19億円を請求したが、行政側と争っている訴訟があることなどから、支払いを認めなかった。
 一方で管財人は、強度不足のマンション住民の債権を約169億円、建て替え支援対象マンションは約119億円とし、住民に配当することにしている。実際に受け取る額はこれより大幅に少なくなるとみられるが、自治体側は「本来は行政に返す金額も住民に引き渡される」として、住民から支援した費用を返してもらうことにした。【長谷川豊】
毎日新聞 2006年9月8日 22時58分

自治体ごと、物件ごとにヒューザーへの債権の届出のやり方さえ、統一されていませんでした。このため、住民がその分を届出ているところもあれば、自治体が届出ているところもあり、二重に届出ているところがあるという始末です。破産管財人の判断は、それをまとめたに過ぎません。

そもそも、国のスキームは、配当原資がほとんどゼロを想定していたもののと思われます。最悪の事態を想定していたのかも知れません。しかし、実際は、中途半端に配当原資ができてしまいました。想定外のことで混乱しているのだと思います。

住民の反発が指摘されていますが、内容をよく検討する必要があると思います。ヒューザーの配当が、住民に一本化されたことに対する対応が示されているに過ぎません。費用がどのように動くかが具体的に決まって来たということで、国土交通省はその考え方を示しただけだと思います。自治体は、「当初方針通り」としているので、債権届出前にあった説明の通りに処理され、大枠に変更はないものと思われます。

単純にヒューザーからの配当を「自己負担」に充当することが出来るのであれば、住民にとってはありがたいことです。しかし、公的な対応の中身は、住民が自ら実施しなければならない行為にかかる費用です。その費用は、住民が売り主に請求し、売り主が責任のある関係者に請求するというのが本来の姿でした。

そこに、二重に自治体が絡んで混乱しています。売り主の破綻を前提とした公的対応の主体として自治体は関わっています。一方で、この事件に建築確認の主体として関与しており、自治体は責任を追及されるべき関係者でもあります。

自治体が複数の立場を持っていることが複雑さの元凶です。公的な対応をしている自治体という立場が、行政でも、マスコミでも優先されているようですが、それは一面にすぎません。ヒューザーの訴訟の相手になっていたり、住民自身が訴える相手としての自治体という立場から逃れることはできません。

責任追及によって明らかになる自治体の負担を考え、自治体の内部で処理して欲しいというのが、ヒューザーの主張かもしれません。その前提で、ヒューザーが起こしている訴訟についても早々に処理したいと考えているのかもしれません。権利関係、責任関係をはっきりさせようとすると、費用と時間がかかります。とっとと、和解して欲しいということだと思います。

中途半端に多い配当原資を背景に、破産管財人の判断がクローズアップされる結果になりました。破産管財人は、単に自治体相手の訴訟を継承しただけではなく、自治体の債権や責任についての判断を下す役目が与えられてしまったことになります。その役目は、破産管財人という裁判所から与えられた立場によるものです。

ただ、案外、自治体としては、裁判は望むところかもしれません。立法されておらず、行政的な判断にとどまる措置を行っていて、根拠が希薄であることが問題視されています。これについては、判決があれば動き易くなります。

今回の公的対応の見直しの問題は、ヒューザーの資産がゼロであったら、あえて問題にはならなかっただろうと思われます。大きな見込み違いがあったのかもしれません。建て替えや除却の進行状況のばらつきからくるあせりも加わって、混乱が生じているのではないかと想像します。
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by gskay | 2006-09-11 08:38 | 公的対応
御代官様の御気持ち次第の御沙汰
国レベルでも、地方レベルでも、これまでの仕組みは、計画から実施、その監督や取り締まりまでが一元的で、「御代官様の御気持ち次第」という傾向があったと思います。許認可や確認、届出に関することも、「御気持ち次第」で行われていたことが、耐震偽装の温床の一つだったと思います。

問題の耐震偽装を見逃したために、それを適法として位置づけることになり、建物は適法な手続きのもとで出来上がってしまいました。「御気持ち次第」だったと思います。「御上」も「下々」もそれを当然として建物を建てていました。

違法が明らかになってからの処分についても、技術的な合理性や、私有財産の処分、既に実施された登記や課税のための評価などの公的な処分を飛び越えた大胆な方針が示されました。これも、「御気持ち次第の御沙汰」であったのかもしれません。

こうした「御沙汰」を受入れる上で、既存不適格物件の安全の確保との整合性が、私にとっての最大の懸念です。

そういう点では、冬頃から報道されていた公的施設や病院、学校等の既存不適格の問題や、旧住宅公団の強度不足の問題等、積極的な対応の必要性が強調されて来ました。今回、国の施設でも同様の発表がありました。


防災拠点の官公庁、45%が耐震不足…国交省が初公表


 国土交通省は25日、同省が所管する全国の防災上重要な官公庁施設393棟について、耐震強度の診断結果を初めて発表した。

 耐震基準を満たしていない建物は全体の45%にあたる176棟に上り、うち36棟は耐震強度が基準の50%に満たなかった。いずれも震災時に災害復旧の拠点となる施設だけに、国交省では危機感を強めており、今後10年以内に改修実施率の9割達成をめざす。

 東京・霞が関の中央省庁で耐震強度が50%未満と診断されたのは、農水省が入る中央合同庁舎1号館北別館(26%)、防災を所管する内閣府の本府庁舎(37%)、経済産業省別館(32%)など5棟。全国で強度が最低だったのは、第4管区海上保安本部などが入る名古屋港湾合同庁舎別館(名古屋市)で、耐震基準のわずか16%だった。
(読売新聞) - 8月25日22時14分更新


既存不適格については、随分強度が低くても、のんびりと対応してよいものなのだということに、少々疑問がわきます。財政的な妥当性を考慮して対応するのが当然ということなのかも知れません。

だとすると、どうして、ヒューザーについては破綻をする以前から、あのような対応をしたのでしょうか?住民による破産の申し立てによる破産手続きの開始のはるか以前の12月6日には、国のスキームが出ていました。あの時点で、ヒューザーは、事後に費用を請求する相手になっていました。ヒューザーを抜きにして、それほど急ぐ理由があったのでしょうか?

ヒューザーの破産財団から配当となる資産の残り具合と、公的な施設での悠長な対応を見ると、なぜあのように急いだのか疑問です。これも、「お気持ち次第」ということでしょうか?

ところで、「御上」は、建築確認や検査を適正に実施する責任と、違法を取り締まる追及する立場や、それに対処する立場がごちゃ混ぜになっています。責任を追及される立場と、責任を追及する立場や対策を行う立場が分離しておらず、それが、公的な対応と責任追及との関係を複雑にしてしまっています。そして、「御代官様の御気持ち次第」プラス「トカゲの尻尾きり」を可能にしているのではないかと思います。

この問題への対応は、行政の担当者が臨機応変に対応していいようなレベルの問題ではなかったと思います。しかるべき対応は、立法を介するべきだったと思います。

ただ、今回については、対応が始まってしまい、うちの区の担当の人からは、「制度」という位置付けだと聞いていることから、手続きの問題は、あまりつべこべ言っても仕方がないと思っています。ただ、行政先行の措置は、今後は通用しにくくなると思います。

今後、このような「御代官様の御気持ち次第の御沙汰」がないよう、しかるべき立法体制が必要だと思います。その前提として、中央官庁の権限を地方に移したりする必要もあると思っています。
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by gskay | 2006-08-30 09:42 | 公的対応
建て替えの主体
耐震偽装の建て替え物件に対する国のスキームでは、誰が建て替えの主体になるのかということに問題があるようです。国のスキームでは補助をスムーズに行うという観点のためか、自治体やURを考えているようでした。この点について、権利関係や負担の観点からの見直しが行われています。

URや大抵の自治体は、再開発のノウハウを持っているはずです。これは、建て替えを推進する上では強力な存在です。

だとしても、URや自治体は、主体になることについては慎重にならざるをえません。もともと、再開発でも、建築主は組合であることが多いのではないかと思います。その上、品質の保証が、システムとして信頼を置けないことが明らかになっています。瑕疵担保の問題などを念頭におくと、公的な機関が、積極的にリスクをとって建築の主体になるというのは難しいと思います。

とりわけ、URの場合、違法建築を大量に作ってしまった旧住宅公団の後始末で大変なことになっています。この時期に、建築主になって頑張るのは難しいだろうと思います。

ちなみに、この問題も、建築確認などの検査制度の問題が関わっています。公的機関やURなどは、申請して審査を受けるのではなく、「通知」という手続きで、民間の業者とは扱いが違います。考えようによっては、この仕組みを利用できることは、都合がよいことです。しかし、瑕疵担保責任など権利関係の問題を乗り越える程のメリットにはならないような気がします。

さらに費用についても、土地代のみの買い取りによる除却と建て替えを前提にした再分譲プランには、難点が多く、むしろ様々な負担が、住民にも自治体や国にもかかってしまいかねないと指摘されています。具体化の前に、きちんと検討しなくてはなりません。

そうした検討をする上で、自治体やURのこれまでの経験は、やはり貴重です。良かった事例だけでなく、悪かった事例も参考にして進めて行くべきです。解体の費用の問題など、通常の再開発や建て替えとは異なる特殊な事情ですが、その特殊な事情より、参考になる共通点を重視するべきだと思います。

ところで、最初に建て替えに踏み出した川崎市の物件は、民間方式です。民間の方がスムーズで、無駄が少ないことが確実なら、流れが大きく修正されるような気がします。

公的な資金で対応するには、妥当性が必要で、その確保についての厳しい枠組みが、国のスキームといえるかもしれません。しかし、これは、権利関係を複雑にし、住民の負担も、公的な負担も増加させてしまいます。加えて、当初とは異なり、売り主などから回収する手だては絶たれています。後日、売り主に転嫁すればいいかと言う安易な発想は許されなくなりました。

具体化の前提として、権利関係を整理し、費用の無駄を減らすことが必要だと思います。川崎市の物件の進展の陰には、当局の思い切った判断と、その前提となる分析があったのではないかと想像します。そこを基盤に、住民自身やコンサルタント、業者の努力によって、最初の建て替えの具体化に辿り着いたのだと思います。

今一度、国のスキームにどういうメリットがあるのかよく考えてみる必要があると感じています。私は、もともと「自力でとっとと建て替える派」であったので、川崎市の民間方式は、好ましいと思っています。国のスキームの背景にある理念にそった建て替えができるように工夫しなくてはなりません。
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by gskay | 2006-08-14 11:04 | 公的対応
途中階までの除却
耐震偽装のヒューザー物件のうち、建て替え計画の具体化をうけて除却命令へとすすみつつあるのは、川崎市の物件です。しかし、すでに取り壊し中の物件があります。藤沢です。

藤沢の物件は、もっとも深刻な強度不足の物件とされていますが、すでに自治体による除却がスタートしています。11階のうちの5階以上の取り壊しが進められているそうです。この取り壊しは、安全確保が目的とのことで、4階以下を残して一旦終わるそうです。4階までなら危険ではないということのようです。

藤沢の物件の取り壊しは、建て替えのための準備として更地にするという工事ではありません。中途半端な措置ですが、安全確保の観点からすれば、合理的かもしれません。

建て替えへの流れを前提に考えると、やはり、川崎市の物件が一番早かったといえると思います。

藤沢の物件は、小嶋社長の詐欺容疑の舞台になった物件で、強度不足も深刻であるという点で、耐震偽装物件のシンボルのような存在です。しかし、同時に、ヒューザー所有の未売却の部屋が多く残っていたという点で特異な存在だと思います。

藤沢の物件では、ヒューザー所有があるために、管理組合の議事を進めるのも難しいのではないかと想像します。また、ヒューザーが起こしている訴訟でも、ヒューザー所有の区分と除却の費用などとのバランスを考え、市とは和解し、訴訟から除かれているという報道がありました。

どのように解決していくべきなのか、藤沢も、単純に国のスキームに従うのは難しいものと思われます。
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by gskay | 2006-08-11 11:37 | 公的対応
初の除却命令報道
耐震偽装事件の建て替え物件で、はじめての除却命令が出るようです。川崎市は、使用禁止命令も素早く出し、除却命令でも先陣を切るようです。

引用の記事は、私が知る限り、除却に具体的に言及した最初の記事ではないかと思います。

asahi.com川崎市、GS溝の口の除却命令へ 耐震偽装


2006年08月09日22時57分
 耐震強度が基準の0.39とされ、建て替え対象の川崎市高津区のマンション「グランドステージ(GS)溝の口」(24戸)に対し、川崎市は近く、建築基準法に基づき、建物の解体を求める除却命令を出す方針を決めた。除却命令は国や市が建て替えを支援する前提となり、GS溝の口の再建が具体化することになる。

 今年3月、GS溝の口の住民らは、建て替え対象のマンションの中でいち早く、民間業者を活用する建て替え計画をまとめた。居室が100平方メートルの世帯の追加負担を2000万円以下に抑えるのを念頭に、再建計画の具体化を目指していた。

 関係者によると、金融機関から、各世帯が建て替え費用の融資を受けるめどが立ち、大手建設会社が施工することで合意しているという。

除却命令は、建て替え計画の具体化を見極めて出されることになっているようです。この物件の計画の特徴は、「民間業者を活用する建て替え計画」だということです。早くから、その方針で動き出していたようです。国のスキームから離れている点が多く、すぐに他の物件がこれに続くという訳にはいかないように思います。この物件の固有の方針なのだと思います。

横浜では、補修方針が示されました。川崎のこの物件では、「民間」の計画です。個別に適切な対応が目指されています。国のスキームからそれぞれに離れた対応が進められていますが、それぞれが、それぞれの固有の条件を抱えており、それぞれに最善の方針を模索する事で進展していくのだろうと考えています。
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by gskay | 2006-08-10 23:05 | 公的対応