カテゴリ:公的対応( 48 )
東向島の建て替え最終案
7月30日には、他の物件でも動きがあったようです。引用の記事では、東向島が最終案に辿り着いたことを伝えています。すでに、いくつかの物件が、最終段階にあると伝えられています。

東向島は、HPを作ったり、『建築知識』誌に登場したり、積極的な活動をしていると思います。負担額についても、比較的シビアな検討をしているという印象を持っていました。伝えられている負担額の妥当性は何ともいえないものの、「負担割合の算出」の難しさは、最終的な建て替え決議の前に乗り越えなくてはならない問題だと思います。

asahi.com耐震偽装のGS東向島、建て替え最終案を提示



2006年07月30日20時54分
 耐震強度が偽装された東京都墨田区の分譲マンション「グランドステージ東向島」の建て替え最終案が、30日の住民集会で、住民代表からなる「建て替え検討委員会」から提示された。

 最終案では、全36世帯のうち1世帯が転出の意向を示したことから、部屋は従来案の92%より96%と広くなったが、1世帯あたりの負担額は、平均約2000万円となった。

 集会では住民から負担割合の算出方法について、購入時の販売価格に合わせて上下階で差が出る形にするか、面積の持ち分に基づく均等割りにするかなどで異論が出たという。

 委員会は、都市再生機構が作った素案(平均負担額約1800万円)をもとに、区などと検討を続けてきた。

この記事では、「1世帯が転出の意向」としています。そのような意向がマスコミに公にされたのは、これがはじめてかもしれないと思います。他にも同様のケースがあるかどうかは知りません。

この1世帯の動向が、建て替えを決議する上での影響は少ないと思います。建て替え決議は、5分の4の賛成によるからです。

建て替えに賛成しない場合、管理組合に買い取りを請求できるとのことです。その買い取りがどのように進むのか、そして買い取りの額がどのように決定されるのかが興味のあるところです。土地だけなのでしょうか?構造はゼロ?設備は?除却を考えると、マイナス?

国のスキームでは、大胆に「土地代だけで買い取り」と打ち出していますが、スムーズに進めば有効ですが、スキームから外れた個別の意向に対しては、難しい判断が必要になるような気がします。
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by gskay | 2006-08-02 09:50 | 公的対応
横浜は耐震改修へ
以前より、耐震改修の方針が示されていた物件が、本格的に耐震改修に進むことになりそうです。引用した記事では触れられていませんが、ここは、川崎の物件に続いて、早い時期に使用禁止命令が出された物件です。当初は、0.5以上の数値が出されたものの、後に0.5以下であると市の当局が発表した物件です。強度の数値の取り扱いの難しさを象徴するようなケースになって複雑でした。

加えて、横浜市の場合、国のスキームとは別の方針を貫いています。この物件は、建て替え相当とされる物件の中で、唯一、現時点でも入居者が居るという物件です。横浜市は、転居に関しても、国のスキームによらない対応をしていて、退去が完了には至っていないようです。

使用禁止命令の意義や、それを実効性のあるものとするための措置について、同じ法律に基づいているように見えて、ここだけは、異なった解釈をしているのだろうと思います。

私には、国のスキームに沿うのが良いのか、独自の判断を貫くのがいいのか、いずれがよいのかわかりません。

引用した朝日と読売では、大筋では差がありませんが、いずれも横浜市の対応が特殊であることには触れられていません。

asahi.com横浜の耐震偽装のマンション、補強の方針を決議


2006年07月31日11時31分
 耐震強度偽装事件で、強度が0.41とされた横浜市鶴見区のマンション「コンアルマーディオ横濱鶴見」(19戸、建築主ヒューザー)の管理組合は30日、建物を取り壊して建て替えるのではなく、耐震強度を満たすよう補強する方向で検討を進める方針を決めた。補強の実施が決まれば、国交省が建て替え支援の対象としたような強度0.5未満の建物では、初の例となる。

 管理組合によると、6〜7月にコンクリートや鉄筋の状況を調査した。設計図通りに施工され、工事には手抜きがなかったと確認できた。技術的には、補強でも強度を満たすことが可能とみられるという。

 補強の場合、1戸当たりの追加負担は1200万円程度になる。建て替えだと最低でも2600万円が必要で、管理組合は「生活困窮を避けるための苦渋の選択」と話している。



耐震偽装「建て替え必要」横浜のマンション補強改修へ


 耐震強度が偽装され、強度が41%だった横浜市鶴見区の分譲マンション「コンアルマーディオ横濱鶴見」(10階建て)の管理組合は30日、建て替えではなく、補強による耐震改修の方針を決めた。

 国が「建て替えが必要」とした強度50%未満の耐震偽装物件で、改修方針を決めたのは初めて。

 同マンションは昨年12月、横浜市の使用禁止命令を受け、管理組合と市が国の支援策に基づく再建策を協議。

 しかし、現状と同規模の建て替えには、公的支援を受けても1世帯当たりの費用負担は3200万円に上り、住民が難色を示していた。

 同市は今年4月、柱とはりの外側に鉄筋コンクリート製の枠を取り付けて補強する改修案を提示。1世帯当たりの負担が1200万円程度に抑えられるため、住民からは「現実的には改修しかない」との意見が多数となっていた。

(2006年7月31日3時5分 読売新聞)


改修で対応できるということなので、敷地等の条件が良かったのだろうと思われます。

引用した記事は、住民にスポットを当てていますが、大胆な対応をしている市についても伝えて欲しい事がたくさんあります。問題の数値が出る経緯や使用禁止命令、公的な対応など、様々な点が特殊です。訴訟関係などについても、厳しい態度であるという話も聞きます。他の物件との均衡を考えると微妙な気持ちになります。

そこには、単に建築行政の問題に留まらず、地方自治の問題や政治の仕組み、住民と当局との関係など、示唆に富む出来事が含まれています。人気のある政治家という存在についても、いろいろと考えさせられます。
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by gskay | 2006-08-01 15:29 | 公的対応
土地の買い取りの取引費用
建て直しは、同じ建物を再建するというプランをベースに、国のスキームに則った場合の費用や、組合を作った場合の費用等が試算されています。

国のスキームは、自治体が土地代で建物もろとも買い取り、所有者となった自治体が除却を行うというものです。これが必ずしも費用を削減することにつながらないのではないかという試算もあります。

不動産取引の費用が無視できないとのことです。とりわけ、同じ建物を作り、元と同じように再入居するとした場合、取引の費用などが自己負担を上昇させてしまうそうです。

もともと国のスキームは、占有床面積を減らして再分譲の際、戸数を増やし、各住民の負担を軽減しようというものでした。その場合、不動産取引の費用は不可欠のものです。

しかし、同じ建物に同じ住民がもどるだけなら、取引は必要とはいえなくなるのではないかという考えもあるようです。買い取りの有無で、住民の負担も、区の出費も変わるそうです。

所有者が除却を行うという前提からみると、売買なしに所有者ではない区が除却費用を負担することに違和感がでるのではないかと思います。ただし、その除却費用については、それぞれの住民はヒューザーに債権として届出ていることに象徴されるように、費用が出るまでの立て替えという形で処理することも可能なのかと想像します。

あいにく、現状では、配当が2割程度の言われているので、土地の買い取りが行われない場合は、残りの8割を別に用立てる必要が出る模様です。必要があるなら、訴訟で対応すべきであろうと思います。その相手のひとつは、区です。

また、もともとの国のスキームの形で戸数を増やすメリットについては、疑問の声もあります。新築であるものの、中古と同じような価格にしかならないのではないかという意見があります。

そうした観点を含め、国のスキームを土台に、それぞれのマンションが工夫すべき段階に進んできました。どうも、国のスキームについては、その背景にある考えを尊重しつつも、そのままで活用するのは難しいようです。
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by gskay | 2006-07-26 23:55 | 公的対応
最初の耐震偽装物件
最初の耐震偽装物件は、木村でもなければ、ヒューザーでも、総研でもありませんでした。その結果、世の中の追及が腰砕けになってしまいました。

この物件の検査機関は、中央区で、建築確認段階の見落としと、問題の公表後の再計算への対応の2点から責任を追及されているようです。

建築確認の見落としについては、他の物件と共通する性質の問題だと思います。再計算への対応については、区が自らの責任を認め、区長、助役をはじめ、関係職員の処分が行われるそうです。

この出来事はともかく、中央区は、実力不足を認識していた様で、職員の研修のための予算を早々に組んだりと、前向きに対応しています。

他の区でも、ヒューザーの物件で再計算への対応等で混乱したケースがありました。そちらでは、どのようなことになっているのでしょうか?

ところで、このマンションを分譲した会社は強気です。瑕疵担保責任が及ばない古い物件ではあるものの建て替えの方針だそうです。売り主としての社会的責任を果たしている点で立派だと思います。その費用については、区の負担も求めていく考えとのこと。

区には、確認段階の一度目の見落としと、再計算段階の二度目の見落としの責任があります。二つは、性質が異なりますが、いずれも、難しい対応が必要だと思います。

一度目は、申請をした張本人である建築主も責任を問われるべき問題です。これまで、建築主に対し厳しい公的な対応が行われて来ました。その点を考えると、建築主は、楽観的にはなれないでしょう。

一方、二度目については、安全宣言が撤回されたという問題です。これは、違法建築が作られたこととは直接の関係はありません。

どのように責任が明確化されていくのか重要です。

また、ヒューザーが追いつめられた経緯や、この最初の物件の分譲会社が建て替えに対応するという方針を見る限り、瑕疵担保責任が及ばないような古い物件でも、建築確認段階の違法建築については、建て替えないし買い取りという対応が当然の対応として認識されつつあるように思われます。

現状では、発覚後にうまく対応できないと、建物の違法への取り締まりの手続きが始まります。そこで手をこまねくと、住民への公的な対応がはじまってしまいます。分譲会社は、速やかに対応しない限り、矢継ぎ早の責任追及から逃れることはできません。

この最初の物件の分譲会社は、現在までのところ、うまく乗り切っているように見えます。強気の妥当性はともかく、危機への対応は、ヒューザーのような過ちを繰り返さずに済むのではないかと思われます。
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by gskay | 2006-07-19 15:53 | 公的対応
自治体からヒューザーへの債権届出
連休前の記事です。引用したような動きに対して、物件毎、自治体毎に温度差があるようです。

耐震計算偽造:中央区、ヒューザーに対し公的資金返還請求 /東京


 耐震データ偽造事件で、中央区は27日、「グランドステージ(GS)茅場町」(36戸)の居住者に行政が支払った移転先の家賃など計約1960万円を返すよう売り主の「ヒューザー」(大田区、破産手続き中)の破産管財人に破産債権として届け出た。区は「本来ヒューザーが負うべきものだ。請求で責任を追及していく必要がある」としている。
 請求したのは仮住まいへの引っ越し代と3月分までの仮住居の家賃など国、都、区が居住者に支払った公的資金で、4月以降分の請求も検討している。 【益子香里】

4月28日朝刊
(毎日新聞) - 4月28日12時2分更新

私は、家賃にしても引越にしても、本来はヒューザーが負担すべきものなので、こうした請求は正当だと思います。今後の除却などの費用も同様だと思います。

ただし、この動きに批判的な考えも根強いようです。住民自身がヒューザーに請求すべきだという考えもあるようです。また、問題の発生に対する国や自治体の責任の重大さを考え、住民の債権の一部を代位するような請求には同意できないという考えもあるようです。

私は、今でも、売り主との民民の関係に、公的な取り締まりが介入し、「立替払い」をしているという発想です。その「立替払い」の分が、ヒューザーに請求されるのは、「責任を追及していく必要」というより、取り締まりの仕組みを実効性あるものにするために必要だと思います。

どんなに、厳密な取り締まりを行い、厳しい命令を出しても、実際に、建物から住民を退去させ、除却するという流れを貫かねば意味はありません。その流れの最大の障害は、退去や除却の費用でした。今回は、瑕疵担保責任により当然ヒューザーが負担すべき費用です。それが、できない場合、住民負担になり、取り締まりは頓挫します。そこに、費用の「立替払い」が行われ、ことがスムーズに進んでいるのだと思います。

取り締まりを行う主体と、追及されるべき主体が、事実上同一であることが、話を複雑にしていると思います。ここで引用したような形でヒューザーに請求をする自治体の立場をよく見直してみる必要があります。建築確認などの本来の責任を果たさず、問題を引き起こすことに荷担した主体とは、別のものだと考えています。

また、公的な支援策では、ある手続きが別の手続きの前提や条件になるなど、様々な手続きが複雑にリンクしているために、状況を把握しにくくなっています。このため、不信感や不安が生まれ、公的な動きに冷ややかな見方が生まれて来るのではないかと思います。加えて、不当な抱き合わせのようなものがあるでのはないかと考え、公的な支援とは距離を置こうと言う立場も出ているようです。

物件ごと、あるいはそれぞれの住民毎に考え方は変わるかもしれません。また、自治体毎にも差があると思います。個々の条件は、それぞれなので、一概に判断すべきことではないと思いますが、自治体が立替払いをし、それを売り主に請求するというあり方は、有効な仕組みだと思います。
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by gskay | 2006-05-09 12:39 | 公的対応
支援の決定過程(2)
国土交通省は、ビジネスホテルも、賃貸マンションも、分譲マンションも、建築確認申請をした建築主については、同じ扱いをしているように思われます。買い手の居住を前提とした分譲マンションを扱っていたのはヒューザーだけで、別扱いをしているかのように見えますが、よく見ると、ヒューザー自体に対する対応らしい対応は発せられていません。

大きな事件が立て続けに起こり、議会も混乱している様ですが、もう一度、昨日のエントリについて考えています。

忘れられかけている建築確認の意義の再考すると、建築確認には、当然のことですが、申請する人がいます。その申請をした人は、正しい書類を作らなくてはなりません。

いくら、建築確認がいい加減であったと言っても、違法な書類を適法にするのは、申請者の仕事。確認は適法を確認するのみです。適法でないものを適法であると誤った点は、するべき事をしていないとみなさざるをえないものの、違法の書類で建物を作ってしまった責任は、建築主にあります。

誤った検査をしている点を申請した建築主が訴えています。代表的なのは、ヒューザーですが、ビジネスホテルも訴えを起こしています。しかし、違法の建築物を作ってしまったこと自体の責任は建築主にあります。けっして、「作らされた」という訳ではないわけではありません。

建築主は、売り主や事業主として損害を受けていますが、「作らされた」という訳ではなく、自分の意志で作ったもの。確認が適切でなかったことによる損害への補償は、全部とはいかず、積極的に取り組むべきものでもないのかもしれません。見殺しのように見えても……。

ところで、現在のシステムは、不適切な確認の影響が第三者に及ぶ事を充分に想定していないように思われます。特に、第三者に売却されるというような仕組みが想定されていません。第三者に売却されると、その第三者は、所有者としての責任を負う事になります。所有者は、適法に保つ義務を負うし、様々な措置にしたがう義務を負う事にもなります。

いい加減な確認や、違法な建築によって発生する問題への対応が、第三者である所有者の責務になる訳です。所有者が住居として使用している場合、生活が直ちに根本的に崩されます。そこに、介入が必要だと判断され、「公的支援」が決まったのではないかと思われます。

(もちろん、事業のために所有しているなら、その事業に影響します。しかし、その事業主と建築主が一致するなら、第三者とは言い難くなってしまうのではないかと思われます。)

そのように考えると、前のエントリでとりあげた民主党の質問は、ピントはずれではないかと思います。

ヒューザーの経営体力とは別のこととして「公的支援」と呼ばれる対応が始まったのだと思います。ヒューザーに対しては、きちんと対応するように指導することとセットになっていて、ヒューザーの懐具合は関係なかったように思われます。どんなにヒューザーがリッチな会社であったとしても、住民と交渉しながら、グズグズと時間稼ぎをして、きちんとした対応を取らない可能性があったわけです。

「公的支援」と呼ばれる対応の決定過程には、ヒューザーの関与はないように思われます。ヒューザーに好意的な対応も考えられていないと思います。ヒューザーが自力で解決してしまえば良かったものの、それができず、実際に「公的支援」が動き出すことになったのではないかと思います。それは、間接的にしろ、ヒューザーを追い込んだ結果になったと思います。
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by gskay | 2006-02-23 21:59 | 公的対応
支援の決定過程
「公的支援」と呼ばれる対応の決定過程については、良く知りません。公式には、区からの説明のみ。その他、住民と言う当事者でも、公表されている情報や、報道で知っているにすぎません。

ヒューザーの財務諸表見ず支援決定=国交省局長が答弁−「耐震偽装」集中審議


 衆院予算委員会は21日午後、耐震強度偽装事件に関する集中審議を行った。国土交通省の山本繁太郎住宅局長は、政府が公的支援策を決定した昨年12月6日にマンション開発会社ヒューザーの役員からヒアリングするまで、同社の財務諸表を確認していなかったことを明らかにした。原口一博氏(民主)への答弁。 
(時事通信) - 2月21日21時1分更新

あの時点で、デベロッパーには関心がなかったということなのでしょうか?ということは、対応は、ヒューザーであろうがなかろうが、関係ないということなのかもしれません。

国土交通省は、ビジネスホテルや賃貸マンションには、淡白な対応をしていますが、分譲マンションについても建築主には淡白な対応です。一貫していると思います。建築主には、建築そのものに直接の責任があるということなのでしょうか?

一方で、分譲されたマンションの所有者については、建築そのものには、直接には責任を取りようがないものの、違法建築を所有し、居住していることへの責任を果たすことが期待されているように思われます。

例えば、退去して安全についての心配をかけないようにすることや、その建物に変な人が入って不法に使用されたり占拠されたりしないような措置を講じたりすること、解体への手続きを迅速に進め街の危険を取り除くこと……。

共同住宅を区分所有して居住しているため、それらの実現の最大の障害は、居住者の足並の乱れではないかと思います。現在まで、その足並の乱れがあまり出ていないのは、公的な対応の効果ではないかと思います。

少なくとも、私には、対応が打ち出されたことによって、退去がすみやかに円滑に行われたように思えます。端から見ると、それでも遅いように見えるかもしれません。しかし、今でも退去の進んでいない物件があることを考えると、早かったといえるでしょう。政府の決定は、退去を促進していると評価できると思います。

時間のロスを最小にすることが、自分にとっての損害を最小におさえる条件になると思います。遅れてしまう事や、二度手間になったりすることは、自分の負担を増やすことにつながると思います。そこに関わる重要なポイントは、足並です。

直接的な効果とはいえないかもしれませんが、公的な対応は、足並を揃えることに、今のところ、プラスに作用していると思います。これが、建築主・売り主への対応による間接的な対応であったなら、このような効果は減少していたのではないかと思われます。
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by gskay | 2006-02-22 14:24 | 公的対応
住民の立場からの報道
毎日新聞は、「住民」あるいは「買い手」という立場からの問題の提起をしてきたように思われます。2月2日に掲載された『記者の目』は、必読ではないかと思います。この記事は、ヒューザーの訴訟と住民からの破産申し立ての時期に出たものです。下の二つは、同じ記事ですが、まいまいクラブの方には、読者のコメントも掲載されていました。

記者の目:耐震偽造マンション被害住民=桐野耕一(社会部)

まいまいクラブ-耐震偽造マンション被害住民=桐野耕一(社会部)

記者の桐野さんは、他のメディアの取材陣からも一目おかれていて、マスコミの中でもっともこの出来事を良く知っている人のひとりではないかと思っています。私は、お目にかかったことはありません。

元ヒューザーの知り合いに言わせると、「毎日が一番ひどい!」のだそうです。買い手にとって迷惑な存在であったり、信頼に足らない存在であったヒューザーの実態を、熱心にあばいて来たからではないかと推察します。買い手である住民の立場に近いところから、独自に問題を掘り起こしてきたような気がします。

その知り合いが「ひどい!」と思う程、私は、ひどい報道姿勢とは思っていませんでしたが、しつこいとは思っていました。それでは、毎日が「ヒューザー黒幕説」に立脚しているかというと、必ずしもそうではないようです。ヒューザーの無能や不手際を報じていただけのような気がします。

ヒューザーへの処分が決まり、矛先は、変わったのかもしれません。

安全ショック:構造計算書偽造 募る不安、進まぬ転居−−鶴見区マンション /神奈川


 ◇横浜市独自の「融資」案—仮住まい家賃も“借金”−−「使用禁止」鶴見区のマンション
 ◇発令から2カ月、住民側強く反発
 耐震データ偽造問題で、建築基準法に基づく使用禁止命令の適用が最も早く表明された横浜市鶴見区の分譲マンション「コンアルマーディオ横浜鶴見」の引っ越しが遅れている。市が「法的根拠のない公金支出はできない」と原則論を主張し、国の支援案にある転居費用と仮住まい家賃の補助を実施せず、独自の対応をしているのも一因だ。発令から2カ月あまり。入居17世帯のうち転居は7世帯にとどまり、残り10世帯のめどは立たない。【内橋寿明】
 ◇入居17世帯のうち10世帯めど立たず
 耐震強度が国基準の1に対し0・5以下のマンション住民に対する国の移転支援案は(1)25万円を上限とする引っ越し費用の負担(2)最大2年間、移転先家賃の3分の2補助(上限10万〜12万円)——が柱。だが該当物件を抱える自治体のうち、横浜市だけは国に合わせた補助に難色を示し続ける。特別立法など法的根拠が明確になるまでは、2年据え置きの無利子融資とする独自案を住民側に通告した。市住宅計画課の寺岡洋志課長は「根拠さえあれば補助に切り替える」と強調するが、その時期は「未定」だ。
 一方、住民側はさらなる“借金”に反発し、融資拒否で意思統一。マンションに残る女性(41)は「ローンに加え、仮住まい家賃を考えると出るに出られない。融資は本当に補助になるのか。精神的にもこれ以上借金は負いたくない」と憤る。
 強度0・5以下のマンションのうち、計算が遅れた「グランドステージ池上」(東京都大田区)以外の10棟では、8割以上の世帯が転居。3戸どまりの「グランドステージ溝の口」(川崎市高津区)でも、海外出張中の1世帯を除く残り20世帯は4月中の退去を川崎市に伝えている。
 同市は国の案に沿った補助を約束しており、建築指導課の高成雅芳主幹は「使用禁止命令を出した以上、最低限の補助は必要。周辺住民の安全も含め緊急性が高い。補助は早期移転を決める理由の一つだ」と話す。このほか東京都墨田区は転居した一部住民に引っ越し費用を支払い済み。同江東区も15日、早期に移転した61世帯に支払った。

2月18日朝刊
(毎日新聞) - 2月18日13時2分更新

そこに、からめて考えてははいけないのかも知れませんが、

選挙:横浜市長選 「無投票で追認、よくない」 共産推薦、松川氏が出馬へ /神奈川

この市は、東横インのことといい、頑張っていると思います。構造計算「ミス」による耐震強度不足の物件の発見もお手柄だと思います。

ただ、極端だと思います。

正当なことをしているとは思います。耐震検査の促進キャンペーンにも熱心です。しかし、今の発想のままでは、きっと破綻すると思います。

下手に検査をして、結果が悪ければ、悲劇が待っていますから。こんな目に遭うくらいなら、検査をしないで、放って置いた方がましだと考える人が出てしまうでしょう。そう考える人が出た時点で、失敗です。

そんな風に考える人を、説得できる手だてを考えなくてはいけません。

それとも、権力による「強制力」に頼るべきでしょうか?

ところで、構造計算「ミス」が原因で、Qu/Qunが0.5を割っていた場合は、どのように対処されるのでしょうか?これも、建築確認レベルの問題ですが……。横浜式で考えるのではなく、国のスキーム式で考えた場合、偽装物件と同じように扱われると考えていいのでしょうか?
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by gskay | 2006-02-18 15:12 | 公的対応
転居の促進
この問題に関する国土交通省のページから、転居状況に関する資料をダウンロードすることができます。2月13日現在の資料をみると、最初に発覚した物件のうち、都内の物件からの退去は終了したようです。ほとんど足並が一緒です。

退去が本格的に開始したのは、12月末です。ほぼ一斉の退去には、5ないし6週間を要したことになります。当事者としては、「円滑」であったと思います。

転居先については、民間への退去が、半分以上を占めている様です。公営ないし公的住宅とURをあわせても、民間には及びません。私自身は、URへの転居組で、周りも区が確保した住宅への転居が多く、このため、公的に確保された受け入れ住宅が、主な転居先かと思っていました。

本格的な退去は、公的な住宅の確保と割り振りが終わってから始まりました。退去を促進した要因は、公的住宅確保ではないかと想像しています。しかし、民間への転居が多いのは意外でした。

民間への転居には、二つのパターンがあると思います。

早期の退去に意欲的で個別に民間の住宅を探した人は、早期に退去を済ませていると想像できます。ただ、それほどの数にはならないように思います。

早期の退去とは別に、事実上の「一斉退去」の時期にも、民間への退去があったものと思われます。早期に退去しなかった人が、「一斉退去」に該当しました。この時期の民間への退去は、確保された公的住宅には条件が合わないというような事情によるものと思われます。

このような事実上の「一斉退去」が、円滑な退去のポイントであったと思います。円滑な退去を可能にする条件として、私は、公的住宅の確保の意義は大きかったと考えています。これは、実際に公的な住宅に転居するかどうかという問題ではないと思われます。

ところで、神奈川県内物件で、退去の状況が良くないものがあります。とりわけ、横浜での退去が進んでいません。個々の特殊な難しい問題を抱えているのではないかと思います。特に、この物件は、部屋が広いと言う特徴があり、転居先の確保が難しいのではないかと早い時期から言われていました。

ただ、早い時期に対策を発表し、退去勧告を飛び越えて使用禁止命令を出すという処置をとっているわりには、芳しい状況ではないように思います。加えて、首長からは、勇ましい発言が出ています。この状況を、よくよく考えておく必要があります。

使用禁止命令を出した経緯や転居先の確保への取り組みなど、他に先駆けた点について、適切であったかどうかの検証が必要です。残念ながら、他と比べて、良好であったという評価を下すことはできません。

あせって、いきなり使用禁止命令を出したのは不適切だったと思います。まず、退去勧告により、退去を促すべきでした。

さらに、公的住宅の確保についても、退去の動向にあわせて提示すべきものだったと思われます。結果としては、諸々の条件で、民間への退去が多くなるかもしれません。しかし、公的住宅の確保という手だてを不適切な時期に行使してしまったために、一斉退去を促すための打つ手を失ってしまったようです。

二重に判断を誤っています。

もとはといえば、「違法建築」からの「退去」と、「災害」からの「避難」とを混同していたことが発端だと思います。

後は、「強制的」な措置くらいしか残っていないかもしれません。

過去の事例があるわけでもなく、想定マニュアルがあるわけでもないので、失敗は仕方がないことかもしれません。しかし、大胆な政治的判断によって実施されていることを考えると、失政として責められても仕方ないような気がします。

そういえば、あの時点では、マスコミもこの方針を歓迎し、他の自治体の出遅れを非難していたのを思い出します。

結局、大げさで目立つパフォーマンスに、マスコミが飛びついただけだったような気がします。

たった2ヶ月のことであり、他の自治体はさりげなくこなしています。しかし、そのパフォーマンスをやり抜く力さえなく、結果がともなわず、他との水があいてしまっています。

そのやり抜く力の欠如を検証できないマスコミにも疑問を感じます。

うまくこなしている都内の自治体が「後出しじゃんけん」をしたのではないと思います。軽率なフライイングが手こずっている原因だと思います。結果論になりますが、あれは、歓迎すべき迅速な対応ではありませんでした。

現状では、国のスキームにさえ、置いてきぼりにされているような気がします。とはいえ、他も一歩進んでいるとはいえ、まだ解決に向けて入口を通過したにすぎません。早く、挽回して欲しいと願います。

(追記)2006.02.20
置いてきぼりどころか、確信のもとのことだったのですね(2006.02.18のエントリ)。それは、それで、えらいことになっていると思います。「ここだけ」の説明がつかないし、始めの勢いは何だったんだ!と思います。ここが、早期に過激な行動をとったことは、安全パニックに拍車をかけた要素のひとつであると考えています。
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by gskay | 2006-02-16 18:29 | 公的対応
自治体からのヒューザーへの請求
ヒューザーが、住民による破産申し立ての棄却を求める答弁書を提出したということです。このニュースのためにかすんでしまいしたが、住民への財政支出分を、自治体がヒューザーにどのように請求すべきかということも確認されているようです。


ヒューザーに移転費支出など請求へ=国と関係自治体が確認−耐震強度偽装問題


 耐震強度偽装問題で国土交通省と関係自治体は15日、対策連絡協議会を開き、震度5強程度の地震で倒壊する恐れのある分譲マンションへの公的支援の財政支出について、自治体が売り主であるヒューザーに請求する方針を確認した。
 当面、仮住居への移転費と家賃に対する助成分を対象とする。同省は「第一義的に瑕疵(かし)担保責任を負う売り主である事業者に対して徹底した責任追及を行うことが必要」と判断。実際に財政支出した自治体に請求を行うよう要請した。 
(時事通信) - 2月15日19時1分更新


すでに、この件は、区からの説明がありました。それによると、ヒューザーの破産手続きが開始される前でであれば、第三者弁済による不当利得に対する請求ということだそうです。この場合、住民の承諾の有無にかかわらず請求が出来るそうです。ところが、破産手続きが開始された後では、第三者弁済は任意代位ということになって、請求にあたり、住民の承諾の元での請求になるのだそうです。(何のこっちゃ。聞いた通りに書いているつもり……。)

肝心なのは、破産開始前であろうが後であろうが、自治体では、請求の手続きの道筋がすでにはっきりしていることです。

ヒューザーが破産してしまうと、立て替え支出分を自治体がヒューザーに請求できなくなると心配して来ました。しかし、その必要はないようです。

ところで、注目されているヒューザーの答弁書については、裁判所の判断待ちです。住民としては、ヒューザーの主張が認められるのが理想的な展開だと思いますが、さすがに、どうなることか……。

一部の新聞に、住民のコメントらしきものが載っていましたが、歯切れの悪いコメントでした。一連の流れは、住民とヒューザーとの対立というステレオタイプだけで理解するのは難しいと思います。また、その記事も、対立の構図は鮮明にできてはいないようです。

変な色眼鏡で見てしまうと、理解が難しくなると思います。
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by gskay | 2006-02-15 22:14 | 公的対応