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建て替え組合
ヒューザーの管財人の配当についての判断が問題になっていた頃、引用したように、「マンション建て替え円滑化法に基づく建て替え組合」が設立されたとのことです。少し古い記事になってしまいました。


都が建て替え組合認可耐震強度偽装のGS池上 [CHUNICHI WEB PRESS]



 東京都は12日、姉歯秀次元建築士が構造計算書を偽造し、震度5強で倒壊の危険がある分譲マンション「グランドステージ池上」(東京都大田区、9階建て24戸)についてマンション建て替え円滑化法に基づく建て替え組合の設立を認可した。

 耐震強度偽装で、建て替えが必要なマンション計11棟のうち、同法による建て替えが決まったのは、川崎市高津区のグランドステージ溝の口に続き2例目。組合設立の手法を取ったのは今回が初めて。

 都によると、組合の設立認可により、(1)法人格を取得でき、組合主体で金融機関から資金の借り入れが可能(2)登記が一括処理できる−などのメリットがあるという。


(2006年9月12日)


スムーズな事業協力者の確保には、この制度の利用が適当なのかも知れません。事業協力者は、建て替え組合と一括契約ができるからです。建て替え事業に反対する区分所有者の権利の買い取りも容易になります。耐震偽装で仮住まいへの退去済みの場合は、あまりそういう人は出ないとは思いますが……。

また、権利変換手法とよばれる仕組みで再入居までの手続きが整備され、ローンの継続や担保の問題がスムーズも処理しやすく、その他の優遇も受けられる制度だということです。ただ、増設住居が可能なのかどうかで資金の問題が左右される点が問題になるのではないかと思います。

引用記事では、溝の口の物件も、この法律を用いてると報じているようですが、そうなのでしょうか?戸別に民間方式で行っているということだったので、別の枠組みではないかと思っていました。ちなみに、引用記事は、東京新聞のサイトからの引用ですが、共同通信の記事のようです。

ところで、うちの物件は、まだまだやらなくてはならないことがあり、それからです。
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by gskay | 2006-09-29 21:56 | 建て直し
行き過ぎたコストダウン
篠塚元支店長の裁判が結審したという記事です。問題は、不正な書類作成に実際に関与しているかどうかだと思います。本人が否認している点がポイントになると思います。共謀の事実が立証されているかどうかの問題です。

強度偽装・木村建設元東京支店長に懲役1年6月求刑


 耐震強度偽装事件で、偽装物件を多数施工していた木村建設(熊本県八代市、破産)が特定建設業の許可を受けられるよう不正書類を国に提出したとして、建設業法違反(虚偽申告)の罪に問われた同社元東京支店長・篠塚明被告(45)の論告求刑公判が27日、東京地裁であった。

 検察側は「債務超過に陥ったことを十分認識し、粉飾決算に積極的に加担した。この結果、行き過ぎたコストダウンに走り、姉歯秀次元1級建築士による一連の耐震偽装事件を誘発した側面もある」として、篠塚被告に懲役1年6月を求刑した。

 これに対し、弁護側は「債務超過の認識もなく、粉飾決算や虚偽の書類申請で共謀したことはない」と無罪を主張し、結審した。判決は11月1日に言い渡される。
(読売新聞) - 9月27日11時54分更新

行き過ぎたコストダウンと耐震偽装の関係を切り出せば、確かに社会的影響の大きさから問題視することはできるかもしれません。裁判官の心証に影響を与えることができるのかもしれません。

ただ、耐震偽装のきっかけは、元建築士単独の問題であるとされている手前、それ以上の真相を推定して語ることには疑問を感じます。また、元建築士は、免許をもった専門家であった以上、自らが判断したことについての責任は、自らが負うべきであり、今となっては、元支店長を責めるのは筋違いではないかと思われます。まして、設計事務所も関与していることです。

コストダウン圧力の有無についても、どこからが行き過ぎなのかは示されたのでしょうか?また、その圧力と、専門家の判断との関係についての責任関係は整理されているのでしょうか?

企業は、利益を出すための組織であり、コストダウンの努力自体は悪ではないはずです。

ところで、元建築士の構造設計によってコストダウンできたコストというのは微々たるものでした。強いていえば、設計料の安さがコストダウンだったのかしら?

いずれにせよ、判決に注目したいと思っています。
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by gskay | 2006-09-28 18:06 | 真相 構図 処分
現場は見抜く事ができたか?
「耐震強度が不足していたことを、現場の関係者は見抜く事ができたはずだ。素人でもわかる程だ。」そのように言われ続けてきました。実際のところはどうなのでしょう?

常識的には、上層に行く程、鉄筋が少なく細くなるということで、そうなっていないことへの疑念はあったと報じられています。鉄筋の業者がそういうコメントをしているのを報道で見た事があります。しかも、通常の鉄筋よりも細いと指摘していました。

だったら、その業者は、しかるべき形で指摘すべきだったのではないでしょうか?そういう指摘を活かす仕組みがないという建築システムの欠陥があって、活かされなかったのかもしれません。

「うすうす思っていたが、指摘しなかった」というのであれば、とても破廉恥なことだと思います。指摘せずに、大変な違法建築を作ることに関与してしまったことに責任を感じるべきです。そういう責任を感じることなく居られるところが、現在の建築システムの歪んだところだと思います。

また、「当時はわからなかったが、発覚してからみるとおかしい」ということなら、それは、見抜いた事にはなりません。話題性を提供するための無責任な発言であり、センセーショナルに取り上げるのはおかしいなことです。

「素人でもわかる」というのは暴言です。現場の関係者が見抜いていたのではないかという指摘さえ、根拠が希薄で合理性が乏しいように思われます。

現場の関係者が耐震強度不足を見抜くのは厳しいと思います。同じコストでも、性能を極大化するための経済設計の高度な技術が存在し、簡単に強度不足を指摘できるような問題ではありません。また、一般的な設計であっても、わずかなコストの増減で、強度は大きく変わってしまいます。

そもそも、もし現場が見抜くことができるような簡単なことなら、建築確認もその他の検査も不要になると思います。また、難解な構造計算さえ余計と言うことになりかねません。強度不足を認識しながら施工を続けたとは言うことはないと思います。

この問題は、施工業者の責任にも関わります。木村建設が破産整理中であるので、私たちは取り立てて論じるには至らないように思いますが、施工業者には、設計の欠陥を見抜く責務があるのかどうかや、結果として出来てしまった違法建築に責任を負うべきかという点は厄介な問題です。現在の建築システムは、責任関係が不明瞭という問題を抱えています。
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by gskay | 2006-09-27 11:10 | 揺れる システム
『耐震建築の考え方』
耐震について、それほど多くの本に目を通してはいません。設計の技術論は、専門家に任せていていいと、こんな事態に巻き込まれていても、呑気に考えています。というより、そんなの理解できたら、自分で設計します。

それよりも、建築の合理性が気になります。その関心に応えてくれたのは、『耐震建築の考え方』という本です。一般人向けに考え方や心構えを説いた本です。このような本は少ないようです。

128ページしかない薄い本なのに、1200円という本で、巻き込まれていなかったら、手にはしなかっただろうという微妙な価格です。

この本の中身を理解した上で、報道が行われたり、対策がとられていたなら、別の方向性もあったように思います。技術的なことを不勉強のままトンチンカンに取り上げてしまったため、無邪気なバカ騒ぎになってしまったのではないかと思います。肝心なところは、別のところにあったということになると思います。

ところで、この本の17ページに、「設計用地震動強さとコスト上昇」というグラフが示されています。400ガルを1.0として相対的に建築費がどう変わるかを示しています。2倍の800ガルにするには、1.1。逆に2分の1の200ガルにするには、0.95。たったこれだけの変化で、劇的に強度が変わります。

マンションの価格にしめる建築費の割合を念頭におくと、この数値は、かつてNHKスペシャルが試算していた数値に似ていると思います。「たったそれだけ」で大きく変わることがわかります。

一方、82ページから「総費用最小化の原理」が書かれています。建設費と期待損失費の和が最小になるところがちょうどよいバランスだとしています。損失の評価が難しいところですが、その最適値以上のコストはかけておくべきだということになると思います。

この最適値の概念を用いると、元建築士の行った設計は、全く経済設計とはいえないということになると思います。削減できたコストが少なすぎます。その上、今回、地震の被害による期待損失以外に、違法が露見した場合の損失という別の損失が加味されました。結局、元建築士の設計は著しく不経済であったということになると思います。売り主にとっても、住民にとっても不経済でした。

そういう点で、「安物買いの銭失い」という評価には妥当性がないわけではありません。しかし、それは「たったそれだけ」。ヒューザーの「安くて広い」の「安い」に対する合理的な説明にはなっていないように思われます。(それに、世間で言う程、安くはないし……)

それはそうと、適法を前提に、地震被害の期待損失を加味した購入はできていたと思います。その部分については、大きな疑問や不安を感じませんでした。おそらく、売り主である建築主のヒューザーも同様の判断だったと思います。

ところが、違法。これは、建築確認や検査の無謬を前提にしていただけに想定していませんでした。違法発覚後、どのような影響が生じるかは、誰も確固たるイメージを持っていなかったのではないかと思います。

少なくとも元建築士が設計した時点では、違法の露見がこのような損失を作り出すということはわかっていなかったと思われます。違法が大きな損失につながることが明らかになったのは、この事件が問題になってからのことです。

そもそも、違法という状況は想定されていなかったのです。『耐震建築の考え方』でも、その点への言及はありません。当然です。

ところで、「経済設計」というのは、同じコストなら性能を極大化したいという願望でもあります。それは、『耐震建築の考え方』が取り上げる経済性とは全く異なった次元の問題であり、純粋に技術の問題だと思います。それを混同してはならないと思います。
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by gskay | 2006-09-26 10:53 | 揺れる システム
住民の責務
「安物買いの銭失い」批判は、調べれば調べる程に、的外れだと感じます。業界の専門家からの批判も聞きますが、概ね、専門家すぎるためか全体が見えておらず、価格がどのように決まっているかという事までは、目が行き届いていないようです。早い話が、自分はそんなに儲けていないというレベルにとどまります。

ヒューザーが破綻した事を考えると、売り主の体力は考慮に入れるべきです。その部分への批判は、ごもっともです。しかし、破産財団の様子をみると、破産が不可避であったかどうかは微妙です。私は、消極的ながら、破産の申し立てに参加しているので、見立て違いということになるかも知れません。

結局、地裁でも高裁でも、破産と判断されているので、間違ってはいなかったと思いますが、唯一絶対の選択肢とまでは言えなかったと、今更ながら感じています。別の方法で解決する方法がなかったわけではないと、後知恵で夢想します。そう考えると、ますます「安物買いの銭失い」と決めつけられるかどうかはっきりしないと感じます。そのような感想を持ちつつ、どのように追い込まれていったのかという流れに、あらためて関心がわきます。様々な問題が、そこに象徴的に現れていると感じています。

ところで、「安物買いの銭失い」という批判や、「素人でもわかる」というような批判については、偏ったイメージだけを残してしまいました。その批判や風評によって、住民としては追いつめられた心境のままの人もいると思います。

私は、こういうものを書きながら、ああでもない、こうでもないと考える余裕があるので、平気です。家内も、似たようなものです。分析的に考え、状況が理解でき、方策がつきていない限り、楽観的で居られます。

しかし、そうではない人もいると思います。一連の流れで、傷ついて苦しんでいる人は少なくないと思います。せめて、住民には落ち度が無かったということを確認し、名誉の回復をはかりたいと考えている人がいることと思います。

残念ながら、それを実現する方法はないと思っています。裁判で適当な慰謝料を勝ち取ったところで、元に戻ることが出来る訳ではありません。報道、とりわけ放送で傷つけられたと感じている人が少なくありませんが、それについて関連機関に訴えるべき時期は過ぎています。仮に、訂正報道をしてもらったところで、そのインパクトはわずかです。事実が後から少しずつわかって来るという性質上、巻き込まれてしまったからには、マスコミのばか騒ぎも甘んじて受け止めなくてはならないということだと思います。

除却をしなくてはならないことと同様、そうした批判や風評を受け止めることも所有者の責務なのではないかと思います。そのように考えると、とにかく、批判や風評に耐えぬいて、除却や建て替えを成し遂げることが大切だと思います。

いまさら、あの批判は間違いだったと言われても、元に戻れる訳ではありません。事態は進行しています。進行にあわせ、いかに的確に克服してきたかということを示すことが大切だと思います。

少なくとも、批判や風評に耐えられずに破綻してしまった会社を目の前に見ています。そうならないように頑張らなくてはならないと思います。
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by gskay | 2006-09-25 10:03 | メディアの狂騒
ヒューザーの中間配当に向けて
ヒューザーの破産債権について、中間配当に向けた手続きが進んでいます。9月13日には、報道でも取り上げられた債権者への財産状況報告集会が開かれました。代理人を立てているマンションでは代理人が対応し、住民の代表が対応することになっているマンションでは、その代表が対応しました。

そうした状況の進展に合わせて、代表によるヒューザーの債権者集会の報告や、区による自治体の債権についての取り扱いの説明のため、住民集会/管理組合総会が開かれました。

あいにく、出席できませんでした。家内も私も、どうにも日程の調整がつかず、はじめての欠席です(遅刻は、何度もしたけど……)。幸い、協力体制はバッチリなので、会議の内容等はすぐに教えてもらえました。取り残されてしまうのではないかという不安は全く感じませんでした。

その会議で、住民の代表から各戸のヒューザーの破産債権配当予定額の明細が出されたそうです。うちの分は、近くに仮住まいしている方が預かっていてくれて、先日、受け取りました。

認められた金額は、事前に示されていた方針通りでした。特に不満はないので、異議を申し立てたりしないつもりです。もし、異議を唱える場合、10月12日までに破産管財人に申し出るそうです。誤りがあった場合も同様だそうです。

区からの説明は、自治体の債権が認められなかった点についてです。既に支出してる分の取り扱いが問題になるようでした。納税者からの責任追及への批判があるとかないとか。その批判に対しては、民事訴訟における司法の判断に左右される問題なので、区もヒューザーも自らの立場を主張することしかできない状況にあるようです。

助成額減額についての説明は、国土交通省の方針通りのものだったようです。自治体が債権を届け出るにあたって受けた説明と異なる内容が含まれているようにも思いますが、出席していないのでわかりません。債権の届出についての代位の手続きは、国土交通省から具体的な方針が示されていた訳ではなく、各自治体が独自に対応した模様です。それについて、今さら国土交通省が慌てているというような状況のようです。

国の行政上の指導力とか裁量というのは、権限の上でも、能力の上でも、微妙なものだったのだと、しみじみ感じます。「中央から地方へ」という流れを、私は実感していませんでしたが、この件に巻き込まれて、ようやく実感できました。まだまだ過渡的な段階だと思います。実体をともなわないメンツも大切にされているようですし……。ただ、国が枠組みを示す能力は尊重してもいいと思います。また、それを、自治体が独自の判断でフォローしていくという姿勢も好ましいことだと思います。

助成についても、最終的な取り扱いは、自治体が独自に決定することになるように思われます。国土交通省は、いち早く(?)方針を示し、おおかたの自治体もそれを尊重する姿勢を示しており、これで、行政機構としては充分なのではないかと想像します。

(本当は、債権の届出の時に、考えておけばよかったことだけどね)
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by gskay | 2006-09-22 15:23 | 損害と回復
オプションの取り扱い
ヒューザーのマンションは、販売価格が安いとともに、ちょっとした設備はオプションであったり、自分で用意しなくてはなりません。間取りも変更には費用がかかりました。こうした費用の扱いが、今回のヒューザーへの破産債権の届出で一番悩んだ点であり、査定の残念なところです。

破産管財人は、消費税から計算される建物代金を債権と認定しました。ヒューザーと交わしたオプションなどの契約は、そこには含まれていないようです。強いていえば、諸費用に含まれているようです。その購入諸費用も、物件代金の一律5%という水準でした。さらに、取り壊し費用や、仮住まい費用、慰謝料が追加されていますが、渋い査定だと思います。

建物と一体になっている設備のオプションや、間取り変更の費用は、物件の代金に含めてはもらえませんでした。これは、今回の破産整理にだけ適用される考え方なのか、それとも一般的なものなのかわかりません。前例らしい前例がないように思われ、これが前例になるかもしれません。

余計なものを排除し、必要なものは自分で確保するという方針が気に入っていましたが、意外な落とし穴が明らかになったと思います。瑕疵担保は、物件代金までしか原則的におよばず、オプションは、別の扱いになる可能性があり、これは購入者にとってリスクになります。

オプションなどの取り扱いについて不満なら訴えを起こせばよいだけですが、それだけのメリットがあるかどうかはっきりしません。また、破産管財人にとっては、個別に査定する時間を省き、早期の配当を目指したものと思われます。かなり大胆にわりきった方針だとは思いますが、納得という方針に落ち着きそうです。

そもそも、こんな風に瑕疵担保が問われる事例は、決して多くないと思います。しかし、心配な時には、オプションまで物件の代金に入るのかどうかを確かめておく必要があるかも知れません。

大抵、オプションは、自分で手配するより高いことが多く、こだわりというより、便利だからと、ついでに注文するものではないかと思います。その注文に、こんな落とし穴が隠れているとは思いませんでした。単に、便利だけど、ちょっと高い買い物としか思っていませんでした。
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by gskay | 2006-09-15 17:16 | 損害と回復
債権についての考え方
国土交通省のページに、『今後の破産手続きの対応等について』という書類があります。9月8日付けの構造計算書偽装問題対策連絡協議会の書類です。ポイントが図解されていて、「求償の考え方」と「補助金による調整の考え方」が説明されています。居住者の最終的な自己負担については、変更がないことがわかります。

この考え方は、代位の手続きの時の区からの説明と変わりがなく、ヒューザーの破産管財人の判断の前後で、方針が変わったということはありません。状況がはっきりし、方針が確定しただけのように思われます。

おそらく住民に動揺があり、反発もあるものと思われます。冷静に考えるべきだと思います。破産管財人も憂慮しているようです。国や自治体の態度の表明について、意図がしっかりと伝わるような配慮も必要ではないかと思います。

ところで、この書類では、
「売主である事業者は、買主である居住者との関係で、第一義的に瑕疵担保責任という契約上の責任を負っているにもかかわらず、この責任が誠実に果たされて居住者の移転と建物の解体が円滑に進む見通しが全く立っていない状況」
であったことや、
「既存の「地域における多様な需要に応じた公的賃貸住宅等の整備等に関する特別措置法」に基づく地域住宅交付金を活用し、類似の財政措置との均衡にも配慮した上で、相談・移転から除却・建替えまでの総合的な公的支援措置のスキームを設けた」
ということへ言及し、正当性が論じられています。

しかし、使用禁止等の措置の根拠となる技術的な議論や安全性について議論、あるいは違法建築が作られてしまった経緯と責任、他の欠陥住宅や既存不適格への対処との整合性の部分などは端折られています。

求償についての考え方を示す文書であるため、言及する必要がないという考えだと思います。それに、とても微妙な問題ですから……。

ちなみに、まだ退去が行われていない物件があることが、別の書類から知る事ができます。ひとつは、横浜で、国のスキームを活用していない自治体です。もうひとつは、元建築士の最初の偽装物件とされるマンションで、遅れて明らかになった物件です。売り主は「健在」です。それはそうと、緊急だったんですよね、確か……。

「ヒューザーの破産管財人の査定方針についての記者発表等によれば」という表現には、びっくりです。伝聞なんだ……。

「助成額についての居住者間の公平性の確保を総合的に図ることとする」という文句があり、これで公平の確保についての検討は終わりになるのかもしれません。

書類の最後は、「届け出た債権が認められない場合において、破産手続きの査定申立ての実施の有無、査定申立ての対象とする債権の範囲については、各地方公共団体が判断することとする。」のだそうです。

いよいよ、自治体ごとに異なった方向に進んで行くことになるのではないかと思います。
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by gskay | 2006-09-14 17:40 | 公的対応
川崎の住民による民事訴訟開始
住民による初の民事訴訟です。この裁判は、訴訟を検討したり、準備したりという段階にいる私たちにとって、推移がとても気になります。

この訴訟では、損害を回復するために責任の所在を明らかにするのであって、その逆ではありません。決して、責任追及のついでに損害を回復しようという行為ではありません。

現状では、損害が確定したとは言えない段階であり、今後、何らかの形で損害の回復が行われるようなことがあれば、訴訟を継続すべきかどうかの判断は変わって来ると思います。

asahi.com姉歯被告ら「賠償義務は争う」 GS川崎大師住民訴訟


2006年09月11日20時40分
 耐震強度が偽装されたヒューザーの分譲マンション「グランドステージ川崎大師」(川崎市、23戸)の区分所有者33人が、元1級建築士の姉歯秀次被告や川崎市、施工会社の太平工業などに総額約7億5000万円の損害賠償を求めた訴訟の第1回口頭弁論が11日、東京地裁で開かれた。被告側はそれぞれ請求棄却を求める答弁書を提出し、争う姿勢を見せた。

 姉歯被告は勾留(こうりゅう)中で出頭できず、「偽装の事実は認め、賠償する義務を負うとの主張は争う」などとする答弁書を提出。川崎市は「民間検査機関が行う構造計算の審査は特定行政庁の監督の守備範囲ではなく、川崎市が賠償責任を負うことはない」などと反論した。

 姉歯被告の偽装で被害を受けた住民による初の訴訟で、(1)民間確認検査機関イーホームズの偽装見逃しに対し、建築主事を置く特定行政庁の川崎市が賠償責任を負うか(2)偽装を見逃して施工したことに対し、施工会社は賠償責任を負うか(3)施工不良が耐震強度に影響しているか——などが争点となっている。

 住民代表の平貢秀さん(43)は法廷で「この問題は、建築のプロが一人でもまともなことをしていれば見抜け、事件を未然に防ぐことができた」などと意見を述べた。



耐震計算偽造:川崎市や業者側、住民と争う姿勢−−賠償訴訟



 耐震データ偽造事件で、強度が基準の30%と診断された川崎市川崎区のマンション「グランドステージ川崎大師」(23戸)の住民33人が、元1級建築士の姉歯秀次被告(49)や同市などに建て替え費用など約7億5000万円の賠償を求めた訴訟の第1回口頭弁論が11日、東京地裁(野山宏裁判長)であった。被告側は請求棄却を求める答弁書を提出し、争う姿勢を見せた。
 川崎市と施工業者「太平工業」(東京都中央区)は答弁書で、住民側に「どんな過失があったと主張するのか」と逆に尋ねた。【高倉友彰】
毎日新聞 2006年9月12日 東京朝刊



姉歯被告や川崎市争う 耐震偽装マンション訴訟[CHUNICHI WEB PRESS]


 耐震強度が偽装された川崎市川崎区の分譲マンション「グランドステージ川崎大師」を退去した全23世帯、計33人が元1級建築士姉歯秀次被告(49)=建築基準法違反罪などで公判中=や川崎市などに約7億5000万円の損害賠償を求めた訴訟の第1回口頭弁論が11日、東京地裁(野山宏裁判長)であり、被告側は請求棄却を求め、争う姿勢を示した。

 被告側はほかに施工した太平工業(東京)、設計したスペースワン建築研究所(同)など。

 答弁書で姉歯被告は「構造計算書の偽造は認めるが、賠償義務を負うとの原告の主張は争う」、川崎市は「指定確認検査機関イーホームズの審査に過誤があったとしても、イ社は独立した存在であり、市が賠償責任を負うことはない」とそれぞれ反論した。


(2006年9月11日)

報じている記事は、どれも断片的なので、3つを並べて引用しました。

元建築士が、賠償責任を否定して来たのは一理あると思います。設計の下請けに過ぎず、賠償は、違法な内容の設計をした設計事務所に求めるべきものだと考えることができるからです。設計事務所が賠償をすることになったら、その賠償によって生じた損害を、元建築士に賠償させることになります。

その場合でも、設計事務所には、違法を見落としたまま建築確認の申請をしたという責任があります。その分について、設計事務所と元建築士との間で相殺するような交渉が行われたり、訴訟が行われることになると思います。

ただ、元建築士に賠償能力があるかどうかは別問題で、現実的に考えて、訴えたところで得るものは少ないかもしれません。報じられている訴訟も、その問題を抱えています。

特定行政庁である川崎市の主張は、建築確認制度の根幹に関わる問題で、民間検査機関の位置づけを確認する重要な裁判になると思います。すでに、ヒューザーが起こしている裁判でも問われている問題です。

施工会社の責任は、施工不良はともかく、違法な設計図を元に建築した点が問われていると思います。適法な設計であると審査によって確認されているので、微妙ではないかと思います。ただし、世間で言われているように、施工中に「おかしいぞ」と思ったのであれば、そのことについて適切に対処する責任はあったと思われます。変だと全然思わなかったという場合にまで、不注意を咎めることができるのかがポイントになると思います。責任を問える可能性がないわけではないと思っています。

ちなみに、木村建設施工の場合、木村建設は整理中なので、住民の請求は、破産の手続きに含まれてしまいました。木村建設の場合、資産の回収に手こずっているようで、あまり期待はできません。また、住民が届けた債権を破産管財人が認めるとは限りません。

もし、木村建設の管財人が住民の債権を認めないという場合、訴訟もありうる話です。これは、川崎の訴訟の結末次第で、状況が変わります。ただ、資産の回収状況によっては、そんな議論は無駄という可能性もあります。まずは、破産管財人に頑張ってもらいたいと思います。少なくとも、破産の引き金を作った銀行の預金と、税の還付については頑張って欲しいところです。

引用した記事では触れられていませんが、不真正連帯も、話をややこしくしている点になってくると思います。建築は、曖昧な責任関係のままで、多くの人が関わりすぎているのだと思います。建築制度の最大の問題の一つだと思います。

ところで、引用した記事について思うのは、紙面の都合などもあると思いますが、不足のない報道の困難さです。民事訴訟について報じる場合、原告が誰で、被告が誰で、何を請求する裁判であるのかが明確でなくてはならないように思います。被告について網羅しているとはいえない記事ばかり。請求の内容も、金額だけしかわからない始末です。

争点についても明らかになるように報じる必要があると思います。裁判所が判断を下さなければいけない問題について報じて欲しいと思います。その上で、どのような主張がなされたのかを報じる必要があります。

見比べてみて、いずれの記事も断片的だと感じられます。

もっと知りたいなら、裁判所に行くなり、自分で調べろということでしょうが……。
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by gskay | 2006-09-13 15:46 | 損害と回復
国のスキームに対する個々の努力
国のスキームといっても、実際には自治体が主体であり、国土交通省からは制度が示しされただけで、国の実際の関与は限定的です。このため、自治体の動きはバラバラです。中には、ほとんど、国のスキームに基づく対応をしていない自治体もあり、立法の要求もあります。

すでに、使用禁止命令の発令や国のスキームを活用するかどうかという時点で、自治体の態度が分かれてしまいました。除却や立て替えについても、バラバラ。ヒューザーへの債権届出のやり方も考え方も、バラバラ。ヒューザーの破産管財人の判断に対する国土交通省での「決定」を、自治体がどのように受け取るかによっては、バラバラにさらに拍車がかかりかねません。

中央の行政組織が力を持つべきだという立場から見れば、国土交通省の指導力が低下したと評価されかねない状況です。国土交通省としては、存在と影響力を改めて示し、引き締めたいところかもしれません。その方が、差をなくした均衡のとれた対応が可能かもしれません。

しかし、強制的な措置が立法化されていない以上、自治体の独自の判断が尊重されるべきです。「監査請求や住民訴訟で訴えられる」という懸念など、自治体自身が取り組まなくてはならない問題だと思います。すでに、その懸念を理由に、国のスキームに沿った対応に取り組んでいない自治体もあるのですから。

こうした状況は、「中央から地方へ」が進んだ結果であり、望ましいあり方だと私は思います。中央官庁は考え方を示し、それを取り入れるかどうかは自治体次第です。国の方針を有無をいわせず強制的に実施しようとするなら、そういう規定の立法をするべきだと思います。逆にいえば、国のスキームには、そういう強制力はないということだと思います。

それはそうと、ヒューザーの破産管財人の配当についての判断と、それに対して立てられた国の方針が、自治体の態度を後ろ向きにさせ、住民を追い込み、建て替え事業を頓挫させることにつながらないようにと、私は願っています。しかし、自治体が独自に動いている以上、自治体によっては頓挫してしまうような方向に進む可能性もあると思います。

もし、頓挫のような望ましくない結果を出来る限り確実に避けようとするなら、しかるべき立法が必要です。ただし、現状は立法への圧力は乏しいように思われ、立法に進むには、何らかの引き金が引かれる必要があります。

例えば、いよいよ頓挫するような物件が出たら、国土交通省の国のスキームでは不十分で、立法を必要とするという判断になるかもしれません。その場合、自治体に任せておくわけにはいかないという判断も加わって立法が進むかもしれません。

また、ひとりでも住民が破綻し、悲劇的な転帰を辿るようなケースが出たら、その生け贄の上で、一気に立法が進むのかもしれません。

幸い、まだ、いずれの事態も発生していません。そうした事態を未然に防止するため、立法が行われるべきだという発想も、この機会に、ひょっとすると出て来るかもしれません。現実に即しているなら、それはそれで歓迎したいと思います。

ただし、中央官庁の権限が過剰に強化されたり、中央官庁と地方自治体の権限や責任の分担を曖昧にするような法は、「小さな政府」「中央から地方へ」という流れに逆行するため、私は好ましくないと考えています。

国のスキームに従わない市があることを不審に思ったこともありましたが、今は、実際の対応の中身はともかく、独自に対応するという方針については肯定的に考えています。

ところで、これまでのところ、国のスキームに基づいた公的な対応が順調に進んできたという良い評価は少ないようです。実際には、着々と事が運んでいるのですが、そう言う捉え方は少ないようです。スキーム通りに進まないことや、時間がかかっていることに批判があるようで、動揺がおきています。その動揺が、ヒューザーの破産管財人による債権の認否によって顕在化してきたような気がします。

一種の閉塞状況と見なされていて、ヒューザーの破産管財人の判断や、住民の反発に責任を押しつけられかねない状況です。現状は、誰かがその気になれば、今までの努力が台無しになって、頓挫してもおかしくない不安定な状況です。

この閉塞感には、メディアの姿勢も大きな影響を与えていると思います。自治体ごとの対応がバラバラになっていることに、報道側がついていけていないと感じます。メディアの不勉強は、地方分権が進まない原因の一つかもしれません。

閉塞状況の打開策として、中央官庁が中心に座るような仕組みが立法される可能性があります。その結果、地方自治が尊重されず、自治体主体という枠組みが骨抜きになってしまう可能性もあります。

今回、自治体が主体になっていることは、国土交通省の責任逃れということではなく、自治体が責任を押し付けられたというような性質のものでもないように思います。特定行政庁による取り締まりの充実という方向性にそった健全なものだったのではないかと思います。背景となった理念は大切にされるべきではないかと思います。

どうしても、端で見ている人にとっては、展開が遅いと感じるようです。もちろん、住民にとっても、時間がかかりすぎるのは良い事ではありません。国のスキームが早々に示されたにもかかわらず、自治体ごとの公的対応の足並がそろわずに、この段階にいたっているのは確かです。

現状は袋小路に入り込んでいる状況ではなく、着々と事が運んでいます。あわてて抜本的に見直さなくてはならない状況ではありません。決して頓挫している訳ではなく、批判すべき遅れがあるわけではありません。どうしても必要な時間がかかっているだけです。

これについて、メディアの一部は、住民が追いつめられ、苦しんでいるという演出をしつつ、生け贄を期待しているのではないかと、ちょっと不信感をもって眺めています。

すでに建て替えの方針が示されたところもあり、それに準ずる段階に辿り着いているところもあると思います。そうした物件については、いたずらに話をこじらせるのではなく、自治体や住民の自主的な判断が尊重されるべきだと思います。

その一方で、建て替えの難しさが増しているところもあるかもしれません。もし、そこに不満や不都合があれば、しかるべきテコ入れや、発想の転換が必要かもしれません。その場合でも、自治体や住民の自主的な判断が尊重されるべきだと思います。

単に足並が揃わないことを、ことさら非難する必要はないと思います。自治体の主体性や、物件ごとの事情により、仕方がないこともあるからです。また、どうしても時間がかかるという実態を、軽視して考えてはいけないと思います。進み具合が遅いということを、杓子定規な机の上の空論に合わないからといって批判するのではなく、現実の問題として、個々に受け止めるべきだと思います。

国のスキームをめぐっては、これまでも混乱がありました。この問題には、自治体の主体性の問題や、国レベルの行政的な裁量による判断の是非といった根深い問題があります。しかも、判断の前提となったヒューザーに対する評価の妥当性や、耐震強度に対する認識も問われているように思われます。これついては、「構図」にもとづいたスキャンダルを追及している時に、もっと検討しておかなくてはいけないことだったと思います。

この国のスキームに関する限り、個々の努力を再評価すべきで、現実的に着実に前進していることをもっと評価すべきです。国のスキームは、不確定な条件で設定されたものです。このため、国のスキームの現実化にあたって、逸脱にみえるような大胆な修正を加えなくてはならない点も少なくありません。それを欠陥として非難するするべきだとは思いません。少なくとも、国のスキームは、動き出すきっかけをつくったことは確かだからです。

今後、個々の方向性がさらにバラバラになってしまうことについては、なるべく肯定的に考えるべきではないかと思います。たとえ、建て替えを諦める物件が出たとしても、住民が満足できる決着であれば、構わないのではないかとさえ思います。この仕組みは、そういう仕組みなのだと思います。融通が利かない仕組みより、はるかにましです。

住民を追いつめ、生け贄を作り、それをきっかけに立法によるいびつな制度整備が進み、個々の責任感や自主性が損なわれると言うシナリオが、最悪のシナリオです。立法を行うのだとしたら、現在の公的な対応の実情を肯定的にとらえ、その延長上に立法を行うのが望ましいと、私は考えます。
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by gskay | 2006-09-12 08:52 | 公的対応