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破産管財人の判断への国の対応
引用した記事は、破産管財人の判断が示されたときから心配していたものでした。もっと強硬な方針が示される可能性も考えられたので、国土交通省には、こじれさせる意図はないように思います。すでに除却や建て替えの方向に進んでいることに対し、水を差したり、覆したりするという判断ではないと思います。

これは、ヒューザーの破産管財人の判断を受けて、未確定だった部分が確定したということに過ぎません。すでに動き始めた公的な対応の縮小や撤退の方針ではなく、住民の「自己負担」が増加する訳でもないと思われます。

asahi.com住民支援の補助金を一律減額決定 耐震強度偽装で国など


2006年09月08日23時11分
 耐震強度偽装事件で、建て替え支援対象のヒューザーの分譲マンション11棟を支援する首都圏の10自治体と国土交通省は8日、同社の破産手続きに伴う住民への配当に応じ、助成金を一定割合減額する方針を決めた。破産管財人が配当を住民に一本化し、自治体の債権を全額認めない方針を示したため、本来の配当分を確保するのが狙いで、助成額は2割強減る見通し。自治体側は「当初方針通り」とするが、反発する住民もいる。

 自治体側が配当に固執せず、助成金の減額でまとまったのは、13日の債権者集会後も全額の認否を争った場合、住民への配当が遅れるためだ。

 今回の判断について、国交省住宅局の幹部は「自治体側には『助成分をヒューザーから回収しないと監査請求や住民訴訟で訴えられる』という懸念がある」と話す。



耐震偽装:行政、ヒューザー肩代わり支出住民に求める方針

 耐震データ偽造事件で、マンション開発会社「ヒューザー」(破産)が分譲し、強度不足で建て替えが必要なマンション住民に対し、解体費用などを同社に代わって支援した10自治体と国土交通省は8日、ヒューザーの破産管財人が負担を認めなかったとして、住民側に返還してもらう方針を決めた。ヒューザー側は住民への配当を優先するが、住民によっては配当金の半分以上を自治体などに返還する例もあるとみられ、反発が予想されそうだ。
 国と自治体は、耐震強度0.5未満で建て替えが必要な分譲マンションについて、住民の転居費用や仮住居の家賃、解体費用などを支援し、支出分はヒューザーに求めるとしていた。この方針に沿って管財人に約19億円を請求したが、行政側と争っている訴訟があることなどから、支払いを認めなかった。
 一方で管財人は、強度不足のマンション住民の債権を約169億円、建て替え支援対象マンションは約119億円とし、住民に配当することにしている。実際に受け取る額はこれより大幅に少なくなるとみられるが、自治体側は「本来は行政に返す金額も住民に引き渡される」として、住民から支援した費用を返してもらうことにした。【長谷川豊】
毎日新聞 2006年9月8日 22時58分

自治体ごと、物件ごとにヒューザーへの債権の届出のやり方さえ、統一されていませんでした。このため、住民がその分を届出ているところもあれば、自治体が届出ているところもあり、二重に届出ているところがあるという始末です。破産管財人の判断は、それをまとめたに過ぎません。

そもそも、国のスキームは、配当原資がほとんどゼロを想定していたもののと思われます。最悪の事態を想定していたのかも知れません。しかし、実際は、中途半端に配当原資ができてしまいました。想定外のことで混乱しているのだと思います。

住民の反発が指摘されていますが、内容をよく検討する必要があると思います。ヒューザーの配当が、住民に一本化されたことに対する対応が示されているに過ぎません。費用がどのように動くかが具体的に決まって来たということで、国土交通省はその考え方を示しただけだと思います。自治体は、「当初方針通り」としているので、債権届出前にあった説明の通りに処理され、大枠に変更はないものと思われます。

単純にヒューザーからの配当を「自己負担」に充当することが出来るのであれば、住民にとってはありがたいことです。しかし、公的な対応の中身は、住民が自ら実施しなければならない行為にかかる費用です。その費用は、住民が売り主に請求し、売り主が責任のある関係者に請求するというのが本来の姿でした。

そこに、二重に自治体が絡んで混乱しています。売り主の破綻を前提とした公的対応の主体として自治体は関わっています。一方で、この事件に建築確認の主体として関与しており、自治体は責任を追及されるべき関係者でもあります。

自治体が複数の立場を持っていることが複雑さの元凶です。公的な対応をしている自治体という立場が、行政でも、マスコミでも優先されているようですが、それは一面にすぎません。ヒューザーの訴訟の相手になっていたり、住民自身が訴える相手としての自治体という立場から逃れることはできません。

責任追及によって明らかになる自治体の負担を考え、自治体の内部で処理して欲しいというのが、ヒューザーの主張かもしれません。その前提で、ヒューザーが起こしている訴訟についても早々に処理したいと考えているのかもしれません。権利関係、責任関係をはっきりさせようとすると、費用と時間がかかります。とっとと、和解して欲しいということだと思います。

中途半端に多い配当原資を背景に、破産管財人の判断がクローズアップされる結果になりました。破産管財人は、単に自治体相手の訴訟を継承しただけではなく、自治体の債権や責任についての判断を下す役目が与えられてしまったことになります。その役目は、破産管財人という裁判所から与えられた立場によるものです。

ただ、案外、自治体としては、裁判は望むところかもしれません。立法されておらず、行政的な判断にとどまる措置を行っていて、根拠が希薄であることが問題視されています。これについては、判決があれば動き易くなります。

今回の公的対応の見直しの問題は、ヒューザーの資産がゼロであったら、あえて問題にはならなかっただろうと思われます。大きな見込み違いがあったのかもしれません。建て替えや除却の進行状況のばらつきからくるあせりも加わって、混乱が生じているのではないかと想像します。
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by gskay | 2006-09-11 08:38 | 公的対応
木村元社長の祈願書
粉飾決算およびそれに関連する建設業法違反容疑については、認めているようです。しかし、耐震偽装の発覚後に代金を受け取った件について、だますつもりはなかったという主張です。なお、耐震偽装が行われたことへの直接の関わりは否定されているようで、問題にすらなっていません。

引用した記事では、「祈願書」というものがとりあげらていますが、耐震偽装に関与していると思い込んでいる人が読むと、やましいところがあったに違いないと感じると思います。おそらく、そういう文脈ではないと思いますが……。

耐震偽装 木村被告、詐欺罪を否認 東京地裁初公判


  耐震データ偽造事件で、強度不足を知りながらホテル建設代金をだまし取ったとして詐欺罪などに問われた木村建設(熊本県八代市、破産手続き中)元社長、木村盛好被告(74)は7日、東京地裁(角田正紀裁判長)の初公判で「構造計算書の結果が虚偽であることは知りませんでした。金をだまし取ろうと企てたことは一切ありません」と詐欺罪について起訴事実を否認した。建設業法違反は認めた。
 検察側の冒頭陳述によると、木村被告は05年8月、元1級建築士の姉歯秀次被告(49)=公判中=が構造計算した同社受注のホテルについて、常務のホテル部長から「別の事務所が検証したところ、耐震強度が不足しているとの結果が出た」と報告された。しかし「建築確認も下りているし、続行するしかない」と工事の続行を指示した。
 また、同年11月7日に「ばれたらのがれる道がありません」「過去工事を調査されたならつぶれます。国土交通省の調査が木村建設に飛び火しないようお願い申し上げます」と記載した「祈願書」をファクスで信仰する神社に送っていた。
 起訴状によると、木村被告は奈良市の「サンホテル奈良」について、姉歯被告が構造計算書のデータを偽造し建物の耐震強度が不足していることを知りながら、同年11月7日、ホテル側から建設費の未払い残金2億2500万円をだまし取った(詐欺)。また、実際には債務超過だった同社の04年6月期決算を黒字と粉飾した決算書類を国土交通省に提出し、特定建設業の許可の更新を受けた(建設業法違反)。【佐藤敬一】
(毎日新聞) - 9月7日17時29分更新

「ばれたらのがれる道がありません」「過去工事を調査されたならつぶれます。国土交通省の調査が木村建設に飛び火しないようお願い申し上げます」という危惧は、現実のものになってしまいました。しかし、だからといって、木村建設が耐震偽装そのものに関与していたとは言えないと思います。

調査が入るだけで、企業には大きなダメージがあります。何の問題がなくても、調査の対象になっただけでピンチになります。全く関係ないのに名前が似ているということだけでも、ダメージがある程です。受注は減るし、キャンセルに対応しなくてはなりません。また、建設業の場合、決済までのタイムラグなど、資金的な悪条件もあります。祈願書は、そうしたことへの苦悩のあらわれだと思います。

逆に考えると、公表や調査、報道が適切に行われれば、被害は回避できたかもしれません。巻き込まれながら生き残れた会社は、会社自身の体力のよる部分もあると思いますが、調査や報道を適切にコントロールすることで、破綻が回避されているところもあるようです。

粉飾決算について認めていることについては、本人の反省以上に、会計上の意味があるようです。法人税還付との関係があるからです。

一方、代金受領が詐欺かどうかは、判断が難しいと思われます。公表に至るまでの公的な判断の経緯が重要です。木村建設側は事情を知っていたが、ホテル側は知らなかったという点が問題になるようですが、「違法」と公的に判断されておらず、公表もされていない時点でした。問題の深刻さについての評価も定まっていませんでした。これでは、取引を止めるべきだという前提条件が揃っていたとはいえないのではないかと思います。

もともと、建築確認や検査は、無謬であるという前提があり、誤りがあった場合の対処について明確な定めがありません。違法への対処の規定は、曖昧なものです。これが、混乱の元になっています。そうした条件では、判断が下される経緯を慎重に検討する必要があると思います。少なくとも、公的な判断を下した当局も重要な当事者とみなして、検討するべきだと思います。

これは、小嶋元社長の容疑についても同じだと思います。

ところで、ホテルは建築主であったと思われ、建築そのものに重要な責任を負う立場です。もし、ホテル側が何も知らなかったとしたら、なぜ、知らされなかったという点は重要なポイントではないかと思います。代金受領以上に、建築の体制を考える上で、重要な問題だと思います。

また、8月の時点で問題になっていたとされるケースと、10月以降の問題は区別して検証されなくてはならないと思います。8月の時点で疑いが生じた時点で、違法を追及する方向に進むことができなかったということは、建築を民主的に責任をもって管理することができなかったということだと思います。

下手に公的な建築確認や検査を行っていたために、形骸化して、無責任になってしまっていたということだと思います。悪意の有無以上に、深刻な問題として受け止めなくてはならないと思います。
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by gskay | 2006-09-08 11:31 | 真相 構図 処分
耐震偽装への刑事裁判開始
実質的には、唯一の耐震偽装での刑事裁判だと思います。経済設計を目的として偽装が行われたという「構図」が、広く信じられていると思います。しかし、偽装が先にあり、副次的に経済設計が加わったという構図も浮上しています。多くの記事が、広く信じられている構図に基づく中、引用した記事は、偽装が先にあったという立場からみているようです。


asahi.com冒頭陳述、「偽装の連鎖」の構図指摘 耐震偽装事件


冒頭陳述、「偽装の連鎖」の構図指摘 耐震偽装事件
2006年09月06日23時41分
 収入を増やすため、うそを重ねて強度の偽装を拡大させ、責任は他人に転嫁した——。姉歯被告の初公判で検察側は、冒頭陳述や、姉歯被告の捜査段階の供述を明らかにして「偽装の連鎖」を描き出した。

 「偽装で仕事が早く、より多く受注できた。金もうけに慣れ、人命を軽視していることが頭に浮かばなくなっていった」(捜査段階の供述から)

 姉歯被告は96年ごろ、元請け設計事務所にマンションの構造設計の変更を依頼され、強度に余裕があったためコストダウンに成功した。事務所側は「経済設計ができる建築士」と評価し、東京都中央区の8階建てマンション「ゼファー月島」の構造設計を依頼した。

 ところが、姉歯被告は高度な構造計算が必要な高さ20メートル以上の鉄筋コンクリート造りの構造設計は未経験で、能力もなかった。それでも受注を維持するには構造計算書を偽造するしかないと考え、96年12月ごろ実行。その後、木村建設などの物件でも偽装を続けた。

 「得意先を失って減った年間売り上げをバブル期の2000万円にしたかった。偽装しなければ多くても1000万円だが、2100万円を超えた」(同)。検察側は、姉歯被告が、欲しかった高級外車のベンツとBMW、ブルガリの70万円の時計を買ったほか、妻が長期入院する中、愛人に金銭やネックレスを貢いでいたことも明らかにした。

 しかし、偽装は発覚する。検察側は国会での偽証の動機について「能力不足や受注継続のためと正直に証言すれば、非難が一層激しくなる」と考えた姉歯被告が、03年ごろ、木村建設元東京支店長の篠塚明被告(45)=建設業法違反の罪で公判中=からコストダウンを要請されたのを思い出し、責任を転嫁しようとした、と指摘した。

 「ゼファー月島で始めたことははっきりと頭に浮かんだが、言う気になれなかった。責任を軽くしようと思った」。検察側は、偽証の経緯について語った姉歯被告の供述調書も明らかにした。


もともと、構造計算について誤った認識をしていたため、まともな計算はできていなかったのではないかと思います。いくら計算しても答えが出ないような誤った計算をしていたため、苦し紛れに偽装をしたのが真相ではないかと、私は思います。

偽装が通るなら、経済設計は簡単です。その結果、二次的に経済設計が売り物になったのだと考えています。偽装で、全ての物件で経済設計が達成されていたのなら、理解の上で経済設計を目的とした偽装を行っていたといえると思います。しかし、経済設計にもばらつきがあり、デタラメで、結果として過剰設計もあり、技術的な能力は低かったと思います。

高い能力を背景に経済性を追及していたというずるさより、低い能力をごまかすための偽装が、大事になったという事件ではないかと思います。専門家としては、謙虚に自分の技術を高める努力を怠っていたという恥ずべき行為だったのではないかと思います。
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by gskay | 2006-09-07 07:03 | 真相 構図 処分
訴訟の見通し
余裕をもって自力での建て替えが可能な状況だとしたら、損害回復のための訴訟の性格は変わっていたと思います。何も考えずに自治体を相手にできたと思います。公的な対応も気にかける必要はありません。しかし、そういう状況だったら、そもそも、住宅ローンなんて借りなかっただろうと思います。一部を除けば、ローンが残ったままで、権利関係が複雑です。

不真正連帯が問題になるらしいのですが、不真正連帯の法律実務や学説は複雑なようです。

住民の過失の有無が問われるようなことはない見込みですが、ことによると、過失相殺の否定について論じる必要が出るかもしれません。

自治体を相手にする場合、民間検査機関の建築確認を、特定行政庁が行ったものとみなすという判例に基づくとされていますが、単純ではないようです。

判例は、都市計画などの集団規定についての判断であり、自治体に権限がある問題でした。単体規定では判断が示されていない点は微妙で、単体規定については国の問題であるという立場を貫けば、自治体の責任を否定することが可能かもしれないという意見も聞きます。

また、イーホームズに過失がないことを証明すれば、自治体の責任は問えなくなります。

ヒューザーが起こした訴訟は破産管財人に継承されていますが、これは、破産債権の認否で示された判断と関連して、和解によって相殺する処理が目指されているのかもしれません。

その一方で、川崎大師の物件では、住民が提訴しており、その分のヒューザーの訴訟は取り下げられ、一本化されています。

川崎大師では、他に設計事務所、非木村物件なので施工業者、それに、偽装を行った元建築士を訴えているとのことです。その意図についてはくわしくわかりませんが、住民の訴訟の先陣をきっていて、その行く末が気になります。
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by gskay | 2006-09-06 15:54 | 損害と回復
訴訟検討
ヒューザーの破産整理が進行し、建て替えの議論が進みつつあります。並行して、訴訟を行うかどうかが検討課題になっています。

これについては、統一的な方針はありません。自治体ごとに取り組みが異なり、マンションごとに考えが異なっているのではないかと思います。条件がバラバラのため、訴訟に対する態度はマチマチになっていることと思います。

訴訟の相手の候補としては、いろいろと残されてはいますが、支払いの能力がないところを訴えても、得るものはありません。どうしても、相手は限定されると思います。早い話が、自治体を相手にするということになると思います。

民間検査機関による建築確認は、特定行政庁が行ったものとみなすとされていることに基づいて、自治体を相手にするというのが主な検討対象になっています。中には、国の監督責任も問えるという立場の人があるようですが、見込みについては議論が分かれます。

勝つ可能性が高いと根拠をあげてそそのかす人や煽動する人もいますが、自治体相手の訴訟を起こすかどうかは、勝ち負けの見通しだけでは決められません。

自治体を訴えることを、単純に損害賠償や慰謝料を求めるということにとどめて考える訳にはいきません。仮に勝つ公算が高いとしても、判決が出るまでの期間のことも考えなければならないし、判決が出た後のことも考えなくてはなりません。どのように維持して行くのかといく見通しが立たない限り、訴訟にはふみきれません。判決後に予想される生活は、希望的に思い描けるものでなくてはなりません。

現実問題として、自治体にとって訴訟対応は、公的な対応との二重の手間になる可能性があります。住民から訴訟が出た場合、既に進みつつある公的な対応から手を引くという選択肢もあります。自治体ごとの取り組みは異なるものであるために、自治体がどのような判断をするのかは、一定したものはないものと思われます。

訴訟と公的対応とは別の問題として対処するという自治体もあれば、訴訟は、公的な対応への不満の表示と捉える自治体が出るかもしれません。法廷で争う対立関係をどのように評価するのかは、自治体次第です。特に、この点は、現場の担当者のレベルで決まることではなく、首長とその近くにいる上層の意思が重要になると思われ、甘くみることはできないと思います。

少なくとも、「手を引くぞ」と匂わせることは、訴訟を躊躇させるのに、とても威力のあることです。それを、第三者的にどのように評価するかという問題とは別に、当事者には、当事者の事情が現実問題として存在します。

さらに、仮に勝って損害が金銭的に回復されたとしても、その後の生活が希望通りになるとは限りません。建て替えを実現し元に戻るという希望がなくなってしまうような条件でしか訴訟が成り立たないのなら、訴訟は難しいと思います。逆に、他所で暮らすことになってしまってもいいから損害を回復したいというなら、訴訟は徹底的に行う意義があると思います。しかし、大方は、建て替え推進決議が行われていることからわかるように、復帰を希望しています。

一方、自治体によっては、訴訟を歓迎する可能性もあります。国のスキームに基づく公的な対応は、行政的な判断にとどまる制度であって、法律的な根拠に問題があるのではないかという考えの自治体もあります。そのような自治体は、根拠となる法律を要求するか、判決を要求します。公的な対応を推進する根拠として、判決が必要だと言う判断の自治体もあるのではないかと思います。

中には、国のスキームとは異なる独自の対応をしつつ、国の立法を要求し、一方で、住民の訴訟の動きに対しては、独自の対応から手を引くという動きで牽制している自治体もあるそうです。この自治体の場合は、国に対する政治的な影響を意図した対応なのかもしれないと感じます。

自治体と住民の関係が良好であれば、基本的には訴訟はないと思います。例外的に、公的な対応の根拠を裁判に求めることがあるかもしれません。

しかし、自治体と住民の間がこじれていて、建て替えが頓挫している場合、訴訟の可能性が出ると思います。その時、公的対応が止まってしまうかどうかは、自治体次第だと思います。建て替えによる復帰実現の可能性も微妙になると思います。そもそも、頓挫が訴訟の引き金であり、希望通りは難しいでしょう。

建て替えを希望せず、他所で暮らす事になっても構わず、損害回復を優先するという判断も考えられます。その場合、訴訟は有力な手段になると思います。ただ、耐震偽装のマンションは、建て替え推進決議が行われており、その方向性が打ち出される可能性は低いと思います。

マンションごとの訴訟の方針の他に、各戸毎の考えもあると思います。各戸ごとの動きがどのような影響を及ぼすのかはわかりません。建て替えをめざす上で不利だと判断された場合、管理組合による買い取りのような手続きが取られることもあるかも知れないと思います。

ところで、耐震偽装は、全てが建て替えの対象になっている訳ではありません。Qu/Qunが0.5以上1.0未満で改修で対応することになっている物件も多数あります。しかし、注目度が低いばかりか、対応も遅れがちだと聞いています。自治体の対応に不満で、事態打開の道筋が見えないマンションでは、訴訟という手段がとられる可能性があると思います。連帯した行動は、放置され気味の改修物件の方で盛り上がる可能性があると思います。
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by gskay | 2006-09-05 15:18 | 損害と回復
債権認否方針
ヒューザーの破産管財人から、中間配当にむけての説明がありました。マンションの代表が出席し、その報告を受けました。債権の認否方針が示されたとのことです。今後は、財産状況報告集会を経て、中間配当に至る予定だそうです。

ヒューザー、債権者に中間配当実施へ…管財人が見通し


 耐震強度偽装事件で、破産手続き中の開発会社「ヒューザー」(東京都大田区)の瀬戸英雄破産管財人は31日、11月末までにマンション住民ら債権者への中間配当を実施できるとの見通しを示した。

 同管財人によると、債権の大半を占めるマンション住民と金融機関などの債権総額は約558億円で、このうち約191億円を債権として認定する方針だが、最終的に確保できる配当資金は約45億円にとどまるという。

(2006年8月31日23時42分 読売新聞)

引用した記事では触れられていませんが、債権認否は、6つのカテゴリーに分けて行われました。

住民については、 Qu/Qunで、
 0.5未満の建て替え物件
 0.5以上1.0未満の補修物件
 1.0以上
の3つに分類されていいます。

その他の債権者としては、
 一般債権
 金融機関
 地方自治体
の3つが分類されています。

このうち、建て替え物件については、建物代金、購入諸費用、解体・取壊費用、仮住まい費用、慰謝料が認められる方針とのことです。建物代金は、売買契約によるとのことで、消費税から計算する方式をとるようです。居住利益として1年あたり2%を控除するそうです。また、諸費用は、物件全体の代金の5%とするとのことで、購入にあたり、いろいろとオプション等があり、各戸ごとにバラバラになる心配がありましたが、細かいことはカットのようです。

補修物件については、補修工事代金、工事に伴う諸費用、慰謝料が認められる方針で、工事代金は建物代金の50%、諸費用は建物代金の20%とするそうです。

1.0以上物件については、瑕疵担保責任を理由とする損害賠償請求権は、破産債権として認めないとのことで、一部のみが認められているようです。

一般債権、金融機関の債権についての認否の詳しい事はよくわかりません。

注目すべき点は、地方自治体からの債権を認めていない点です。住民に対する公的対応に必要な費用は関係者に請求することになっていました。それを、ヒューザーが認めないという方針が示されたことになります。これは、ヒューザーが起こしている訴訟との関係も念頭において考えなくてはならない点ではないかと思います。

今後、ヒューザーの破産管財人の判断が、自治体の態度に、どのように影響するのかわかりません。自治体の立場は混乱しています。訴訟の当事者や、公的対応の当事者など、自治体の立場は複数あり、それらが入り乱れています。

現時点で、関係する全ての自治体が同じように対応しているわけではありません。それぞれ独自です。今後、中途半端に多い配当原資を巡り、駆け引きがあるのかもしれません。その駆け引きにおいて、公的対応を取引の材料にするような自治体が出ないことを願っています。

管財人の判断のポイントは、自治体と住民の二重の届出については、住民一本に絞ったという点だと思います。そうした中身を吟味しない拙速な反発がないように願っています。
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by gskay | 2006-09-04 16:49 | 損害と回復
住宅建築のルールの見直し
耐震偽装に巻き込まれ、法律や仕組みが陳腐になっているのを目の当たりにしました。法律が想定していない部分を、行政による細かいつぎはぎでしのいできたという印象です。よくやっていると思いますが、場当たり的です。今後も、このやり方を続けていいとは思いません。

建築関係の法令は、建築の規模が大きくなっている事や、住宅が分譲と言う形で供給されているという点に目が届いていないと思います。また、使用者が建築主であるという想定にしばられ、売り主が建築主になるという仕組みへ対応が不十分で、結局、真の使用者には、何も積極的な対応が出来ないような仕組みになってしまっています。

現状では、住むだけであれば、分譲であるか、賃貸であるかという差には、形式の違いがあるにすぎないのではないかと感じることがあります。住宅の買い手は、ちょっと余計にお金を出しているだけです。賃貸住宅を借りていることにくらべ、有利な点は少ないかもしれません。所有という観点から、責任や税金に縛られ、むしろ不利な点を看過できないと思います。

注文住宅が中心であり続けるなら、現在の仕組みも悪くはないと思います。しかし、現状はそうではありません。とりわけ、共同住宅の場合、住む人自身の注文による建築はまずありえません。戸建てでさえ、新規に取得する場合、分譲が多いのではないかと思います。そうしたことへの配慮が充分ではありません。

一連の法律は、制定された戦後の復興の促進という目標と、当時の習慣や技術レベルにはふさわしい仕組みであったかもしれません。しかし、従来の仕組みは、今の時代の必要性に適応できていないと思います。

制度の設計が古くなり、建築の大規模化にも対応が不十分で、無駄が多いと思います。複雑な業界構造が肥大化し、中間マージンの積み重ねが儲けを圧迫する一方で、責任が曖昧になっています。また、儲けが大きい訳ではないとわかっていても、新しく建物を作り続けなくてはならない仕組みになっています。

新しく建てることに偏った従来の仕組みは、復興を前提とした発想であり、仕方がないことです。しかし、今は、新規の建築への偏重を改めなくてはならない時期だと思います。修繕や補修に切り替える必要があります。それに伴った新築のあり方の変化まで、期待するべきです。

住宅などの建物に限らず、これまでの公共事業も、新しく作るところにしか配慮が届いていませんでした。今、公共事業でメンテナンスの充実を目指すことに転換できれば、業界の体制を一新するような効果が期待できるのではないかと思います。

一方で、買い手側については、注文主や建築主とは限らないにもかかわらず、注文主や建築主と大差のない扱いです。そういう意味では、耐震偽装に巻き込まれた分譲マンションの住民と賃貸マンションやビジネスホテルのオーナーとで、同じ所有者であるものの、行政上の扱いに大きな差が設けられたのは、新しい方向性を示すものなのかもしれません。

原点にもどって、住宅の買い手が建築主として注文するという形で住宅建築への関与の機会を増やす方向に規制するのは一つの方策だとは思います。しかし、共同住宅では、再開発や建て替えの時くらいにしかありえないことです。戸建てでも、分譲のための開発では非現実的です。

住宅の取得については、住む人の注文でない建築である場合にもふさわしい仕組みが、別に必要です。分譲と注文の場合と区別する必要があると思います。これは、行政的な対応には限界があり、立法で対応しなくてはならないと思います。注文には注文のメリットがあり、分譲には分譲のメリットがあるという形を作らねばならないと思います。

現在のシステムは、建築の現状を統制するのも不十分であり、建築の発展への対応も出来てはいないと思います。将来への見通しも明快ではないと感じています。供給側も、買い手側も、そして、行政に携わる人でさえ、我慢しているだけのルールで、満足や安心には程遠いのではないかと思います。行政だけで対応できる限界を超えていて、立法的な大きな改訂の必要性を感じているのではないかと思います。

耐震偽装事件についての一連の経緯を機に、住宅建築は、行政をベースにしたルールから、立法をペースにしつつ、建築の専門家による民主的な取り組みを尊重したルールにいち早く乗り換えて行く可能性がある分野だと思います。

たしかに、行政主体の柔軟な運営も魅力的ですが、必要以上に行政組織に負担をかけるべきではないと思います。重い負担が、重層化した官僚機構を生み、結局、柔軟ではなくなります。柔軟性は、現場に限定して欲しいと思います。専門家の民主的な取り組みを期待しています。
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by gskay | 2006-09-01 12:01 | 揺れる システム