<   2007年 02月 ( 19 )   > この月の画像一覧
「規制緩和」がなかったら?
耐震偽装は、規制緩和の負の側面の象徴であるという通念があります。しかし、私は、そうではないと思います。

耐震偽装は、民間検査機関への建築確認や検査業務の開放より以前から行われており、特定行政庁の建築主事が見落としています。その見落としは、民間開放後に特定行政庁が行った建築確認や検査でも続いています。

通常の検査では、誰も耐震偽装を見抜く事はできませんでした。民間開放によって、業務の程度が下がったとは言えません。もともと、低く、それが開放後も、特定行政庁でも民間機関でも向上しなかっただけなのです。

これは、構造設計という業務や検査のシステムの根本に問題があって、どうしようもないことなので、特定行政庁や民間機関を責めるのは、あまり意味がないことですが……。

民間開放と言う規制緩和を悪玉視することは、耐震偽装に関する限り誤りです。むしろ、民間検査機関が果たした役割を積極的に評価すべきだと思います。検査で見逃したことだけを問題にすると、ポイントを見失います。発覚に至る経緯こそ重要です。

もし、「独立系」のイーホームズが、問題の重大さを認識し、対処のために行動をおこさなければ、耐震偽装が表に出ることはなかったと思います。

そもそも、問題については、誰も気付いていませんでした。問題に気付いた人から指摘があっても、その問題の重大さを認識できず、対処しようとしなかった機関もあります。

その一方で、イーホームズは、耐震偽装の公表に積極的な役割を果たしてます。また、再検査についても他の機関よりも積極的に実施していたとされています。

民間開放によって生まれた「独立系」のイーホームズがなければ、耐震偽装はそのまま続いていたり、見過ごされていたかもしれません。ことによっては、隠蔽されていたかもしれません。

民間開放と言う規制緩和は、耐震偽装に関する限り、積極的に評価されるべきです。
[PR]
by gskay | 2007-02-28 11:16 | 安全と安心
耐震偽装が騒動となるきっかけ
昨日のエントリで取り上げた福岡県篠栗町の分譲マンションの方が、姉歯元建築士の耐震偽装事件よりも早く問題になっていました。そればかりか、姉歯元建築士の建物の場合、指摘されてはじめてわかる程度の不都合しか無く、住民や所有者には寝耳に水だったのに対し、篠栗町の分譲マンションでは、いろいろと不都合があったようで、より深刻だったのではないかと思います。しかし、世間の注目は、姉歯元建築士の耐震偽装のようには高まらず、放置されてしまいました。

設計業者と施工業者の責任のなすり付け合いや、住民にとっては誠実とは感じられない売り主の対応に翻弄されていたのではないかと想像します。施工を主に問題視していたのかもしれません。また、民民の問題としてしか考えておらず、建築確認や検査は、眼中になかったのではないかと思います。

詳しいことはわかりませんが、違法な性能しか持たない建物が、建築確認や検査をパスして適法な手続きのもとに建てられ、分譲されてしまったという点では、姉歯元建築士の耐震偽装と変わらないのではないかと思います。ただ、施工の問題が、姉歯元建築士のケースに比べ比重が多いのかもしれません。設計レベルであれば、図面の上でチェックができますが、施工の問題について明らかにすることは、難しいのではないかと思います。

福岡県篠栗町の分譲マンションの場合も、第一次耐震偽装騒動に劣らぬ重大な事件であったと思います。しかし、問題が複合的で、単純ではなく、論点も争点も多岐にわたる点や、住民が立ち上がることで、はじめて問題が明るみに出たという経緯は、耐震偽装騒動とは大きく異なるところではないかと思います。

一方、姉歯元建築士の耐震偽装は、検査機関の指摘によって表面化しました。また、問題は、施工ではなく、単純に設計の問題であると認識されました。単純な問題として整理されていた上に、検査機関が関与したことで、耐震偽装があのような騒動に発展したのではないかと思います。

耐震偽装発覚の詳細な経緯には、いろいろなエピソードがあるようですが、それはともかく、最初に問題に対して立ち上がったのが、検査機関であったということを、あらためて評価すべきではないかと思います。しかも、「独立系」を旗印にする検査機関でした。

篠栗町の分譲マンションとは異なり、第一次耐震偽装では、建物を使用する分には、不都合らしい不都合がなかったので、おそらく、検査機関が動かなければ、放置されていたのではないかと思います。住民も所有者も、気付かなかったのではないかと思います。

ところが、検査機関が問題に気付き、動き出した。

検査機関が問題に気付いて動き出したということが、耐震偽装が重大事件に発展するきっかけになったと思います。

結局のところ、耐震偽装については、どの特定行政庁の建築主事も、見逃していました。他の民間検査機関も同様です。そして、業界最大手の機関にいたっては、告発があったのに、問題として取り上げるという判断を下せなかったと伝えられています。

これに比べ、イーホームズは、偽装を見逃したかもしれないが、問題に気付き、重大性も理解でき、実際の行動に移したという点で評価すべき点が多いと、今更ながら思います。

それにひきかえ、特定行政庁や他の検査機関、とりわけ最大手の機関は……。

福岡県篠栗町の分譲マンションの建築確認や検査をどこが行ったのかは知りませんが、特定行政庁も検査を行った機関も問題を指摘できず、住民に実際の不都合が出てから問題が明らかになっています。このケースで、特定行政庁や検査機関が動いていれば、展開は大きく変わっており、その後の耐震偽装騒動にも影響を与えていたのではないかと想像します。

あらためて、イーホームズを評価したいと思います。実際の不都合が生じる前に、検査機関が問題を指摘したという画期的なはじめての事例になっていると思います。

そうは言っても、このようなこじれ方になっていることを納得するわけにはいきません。もっと視野を拡げて、明らかにしていくべきことがたくさんあるように思います。
[PR]
by gskay | 2007-02-27 14:43 | 揺れる システム
耐震偽装騒動以前
これは、耐震偽装以前から問題になっていたケースについての報道ではないかと思います。


Yahoo!ニュース - 西日本新聞 - 篠栗建て替え訴訟 マンションの耐震強度半分 福岡地裁鑑定人調査


篠栗建て替え訴訟 マンションの耐震強度半分 福岡地裁鑑定人調査

2月23日10時8分配信 西日本新聞

 福岡県篠栗町の分譲マンション(11階建て)の管理組合が、設計ミスで建物の強度が確保されていないとして、福岡市の販売会社など3社に建て直しを求めている訴訟(請求総額約10億8000万円)で、福岡地裁が任命した鑑定人(一級建築士)が調べた結果、強度が建築基準法施行令で定める半分程度しかないことが22日、分かった。

 組合側が記者会見して明らかにしたもので、震度6強の横揺れに対する強度を示す保有水平耐力は、施行令基準値(1、0)の半分の0、5しかなく、販売会社側の「基準値を満たしている」とする主張を覆す内容になったという。

 国土交通省は一昨年11月、強度が1‐0、5の物件を補修対象、0、5未満のものは解体対象とする指標を提示した。今後の訴訟では、建て直しか一部補修か、基準値を満たすための手段が争点となりそうだ。


=2007/02/23付 西日本新聞朝刊=



耐震計算偽造:篠栗町・マンション建て替え訴訟 鑑定で原告主張を裏付け /福岡:MSN毎日インタラクティブ


耐震計算偽造:篠栗町・マンション建て替え訴訟 鑑定で原告主張を裏付け /福岡

 ◇「構造計算、不適切」

 篠栗町の分譲マンション「エイルヴィラツインコートシティ門松駅前イーストサイド」の管理組合が、販売主の作州商事(福岡市)などに建て替え費用支払いなどを求めた訴訟で22日、福岡地裁(須田啓之裁判長)による構造計算の鑑定結果が明らかになった。

 住民側の弁護士によると、鑑定は裁判所が福岡市の一級建築士を選任して実施。耐震強度は「基準値1・0」に対し、住民側が主張する「0・85」より低い「0・5」だった。建築申請時の構造計算については「建物の加重が極端に少なく、適切な計算とは言い難い」と指摘した。住民側は「設計や施工のミスが裏付けられた。鑑定結果を基に補修案を検討していく」としている。

〔福岡都市圏版〕

毎日新聞 2007年2月23日


この件の耐震性能の不足の原因は、構造計算の「ミス」なのだそうです。「偽装」とは、違うらしい……。

さらに施工の問題が加わっているということのようです。

業者の間で、設計ミスか、施工ミスかというレベルで責任のなすり付け合いをしているケースとして、耐震偽装騒動以前から問題になっていたケースだったと記憶しています。

マンションごと建て替え事件(幸田雅弘)をみると、その経緯がわかります。

ここでは、建築確認制度の問題は取り上げていないようです。また、連帯責任のあり方を問うという方針でもないようです。どちらも、やりにくい裁判なので、それは目指さないのだと思います。

この「0.5」のインパクトをどのように受け止めて対処すべきか難しいと思います。設計だけで、0.5以下なら、うちと同じ扱い?処分があったり、対処が行われたりするのでしょうか?といっても、特定行政庁などの判断は、それぞれの物件毎に異なるので、直ちに退去、使用禁止ということも、もはや、無いだろうとは思いますが……。

ややこしいのは、設計段階で0.85で、施工の問題が加わって0.5という場合。誰が、どのような責任を負うのか、複雑すぎます。とりあえず、売り主の瑕疵担保責任はともかくとして、不法行為はあるものの、設計や施工がどのような割合で責任を負うべきか単純に割り出すことは困難でしょう。

耐震偽装が騒動に発展したのは、単純だったからなのかもしれません。

この篠栗のケースが適切に対処されていたり、少なくとも大きな問題だとして取り上げられていれば、第一次耐震偽装騒動は、大した騒動にならなかったかも知れないと思います。また、発覚直前まで、姉歯元建築士がおろかな行為を続けることも無かったのかも知れません。
[PR]
by gskay | 2007-02-26 16:39 | 揺れる システム
構造設計者による再計算(2)
第一次耐震偽装騒動の熊本での混乱について、前のエントリが誤解を与えかねないという指摘を頂戴しました。

熊本の件は、手続きも法律通りで、性能もOKでした。「経済設計」に対する誤解や偏見、思い込みによる濡れ衣でした。非の打ち所がなかったというのが実態で、当局や騒いだマスコミの誤認だったという事例です。

そのことが、前のエントリでは伝わりにくく、まるで、水落建築士のように、違法な手続きをしていても、再計算で性能が保たれれば良いという発想だったかのようにとられかねない文章になってしまっています。これは、不適切です。

うたい文句の性能どころか、適法な性能さえ確保していないにもかかわらず、札幌の物件を扱う大手の売り主は強気な主張をしています。また、構造に疑いをもたれた建物の設計資料を紛失してした上に、その後の計算もデタラメだった政府系の団体もあります。

そうした滅茶苦茶なことが通る仕組みの中、むしろ遵法であろうとした設計事務所が、当局に目をつけられてしまったばかりに、危うく大変なことになるところだったというのが熊本の事例です。

弁明の機会さえ奪われ、技術者として再検査者との議論の機会さえなかったそうです。混乱を招いた誤った再検査を検証するという作業もおざなりだそうです。

こういう騒ぎに巻き込まれないようにするには、目をつけられないようにするしかないのかもしれません。

私は、法にのっとらない手続きで建てられた事例に対し、再計算の機会を与えているということについては、第一次耐震偽装騒動と比べて大きな変化であると思っています。これは、平成18年5月11日の国住指第541号が根拠になっているのかもしれません。

ただ、この通達で、第一次耐震偽装騒動とアパのケースとに雲泥の差がついてしまっていることを納得するのは難しいと感じています。アパや水落建築士が、もっと酷い目にあうべきだという主張ではありません。

この通達によって、第一次耐震偽装騒動の「騒動」による被害を防ぐ事が出来るようになったように思えます。しかし、すでに起きてしまった第一次耐震偽装騒動の「騒動」の後始末が済まないどころか、「騒動」の経緯さえ明らかにはなっていません。

また、思い切った取り締まりを行うということについても、後退してしまっているのではないかと感じています。もともと、役所の能力では無理だったということで、せいぜい、第一次耐震偽装騒動と同じヘマをしないようにするのが、役所にとっての現実的な対処の限界なのではないかと思うと、残念です。
[PR]
by gskay | 2007-02-24 00:41 | 揺れる システム
構造設計者による再計算?
アパの耐震偽装に関連し、構造設計を担当した水落建築士は、再計算などに忙殺されていて、問題の全容が明らかになるのは、相当先になる見通しとのこと。

建築物を適法に保つ責務は、所有者や建築主、施工や設計、それに監理によって担われるもので、特定行政庁や検査機関の関わりは副次的です。適法であるかどうかは、本来的に責任を負うものが明らかにするべきことのようです。

しかし、違法の取り締まりという点では、特定行政庁が主体になって、断固として実施すべきことだと思われるので、水落建築士の再計算待ちという状況に違和感を感じます。

藤田さんも、姉歯元建築士の事件では、本当の計算は計算をした元建築士にしかわからないと指摘しています。それぞれが独自の設定をしてシュミレーションするという仕組みであり、その設定次第で、幅が出てしまうといます。これは、現在の構造計算の限界であり、それを、取り締まろうとするのは簡単なことではないと思います。

現状では、特定行政庁が問題を指摘しても、構造設計者が否定する限り、直ちに断定することはできません。そこで、構造計算した人の申し開きや反論のために、再計算の機会が与えられているようです。

特定行政庁が構造計算を検査する能力は、とても貧弱であるといわれています。手に負えない特定行政庁があってもおかしくないと思いますが、その場合は、外注してこなしているのではないかと想像します。中には、特定行政庁が、再計算に消極的で、当人の再計算の結果を待っているという役所もあるかもしれないと想像します。費用がかかることですから……。

第一次耐震偽装の時は、熊本などでは、混乱がみられました。結局、設計者の主張が通りました。そうしたことへの反省があって、今回は、慎重なのかもしれないと思います。

水落建築士が実施している再計算は、適法であることを明らかにすることで、疑いに対する申し開きや反論をする目的であろうと思います。ただ、その計算に手間取っているとしたら、たとえ、耐震偽装の疑いがあっても、だらだらと再計算していると、逃げ切れてしまうという抜け道になってしまい、結局、白黒がはっきりししないばかりか、仮に性能不足の物件があったとしも、放置されてしまいかねないという問題のある措置ではないかと思います。

どの程度まで、建築士に申し開きや反論の機会を与えるべきかということが、適切にシステム化されていないと感じています。

ところで、札幌の元二級建築士の場合も、彼は、計算の手順はともかく、性能は保たれていると主張していました。サムシングのケースも同様に、性能が不足することはないと主張していたように記憶しています。

この辺が、姉歯元建築士を特殊な存在にしていると思います。彼は、唯一、自分の偽装の不適切さを認め、性能に問題があることを認めました。

もし、彼が、「性能は大丈夫であるはず」と主張していたら、展開が変わっていた可能性があると思います。組織的な構図を示唆するような発言などせず、「性能は大丈夫であるはず」と言い張っていれば、マスコミが追いつけないような高度な専門的知識が必要になるばかりか、時間もかかってマスコミが飽きてしまい、あのような国をあげての大パニックにはならなかったのではないかと思います。

他の建築士たちと比較してみると、彼は発覚後の混乱を引き起こした張本人だったといえると思います。

「大丈夫であるはず」と思い込める程の低い能力であったり、問題を認識できなかったりする程度の人物であったなら、「大丈夫であるはず」を言い続けられたと思います。「大丈夫」という計算を改めてひねり出す程の能力をもっていても、「大丈夫であるはず」を言い続けられたと思います。

そのどちらでもなかったために、構図が作られる種を撒いてしまったのだと思います。

彼は、計算を構造設計者自身が行って申し開きをしたり反論したりする機会を利用しようとは考えなかったわけですが、もし、それを利用していれば、だらだらと時間稼ぎをして切り抜けることも不可能ではなかったといえます。望ましい事ではありませんが……。

どうやら、彼は、この変な仕組みの弱点を熟知していたわけではなかったのだと思います。
[PR]
by gskay | 2007-02-22 17:09 | 揺れる システム
刑事裁判の状況
最近は、第一次耐震偽装に関連した裁判についての報道は、さっぱりです。

元建築士が控訴しています。ヒューザーの小嶋社長は、口頭弁論が続いているようです。少し古い記事ですが、木村建設の木村社長については、引用の記事がありました。

耐震強度偽装: 木村元社長に懲役5年求刑 耐震偽装詐欺「良心ない」


2007年01月30日

 耐震強度偽装事件で、詐欺と建設業法違反(虚偽申請)罪に問われた木村建設(熊本県八代市、破産)の元社長木村盛好被告(74)の論告求刑公判が30日、東京地裁(角田正紀裁判長)で開かれ、検察側は懲役5年を求刑した。

 論告で検察側は「倒壊の恐れがある建物と知りながら、人命の危険を無視し、木村建設の資金繰りなどを優先させた。動機は利欲的で、良心のかけらもない。被害は極めて多額で回復の見込みは乏しく、反省も見られない」と指摘した。

 論告によると、木村被告は2005年11月、木村建設が施工したサンホテル奈良(奈良市)の耐震強度不足を知りながら告げず、オーナー側から工事代金の一部として2億2500万円をだまし取った。

元建築士を除けば、耐震偽装が起きて来た経緯に関する裁判ではありません。元建築士についても、罪として重かったのは、議員証言法違反と名義貸しでした。議員証言法違反は、「記憶」や「良心」の世界、「解釈」や「印象」を問題にしているので、争う余地があって控訴しているのだと思います。

木村社長については、当初、「建設業法違反(虚偽申請)」については認めているとされていました。税務などとの関連で、これは、木村建設にとって、“取り引き”のうちなのでしょう。それに対し、「詐欺」については否認しているということでしたが、現在もそうなのでしょうか?

詐欺については、前提となっている「倒壊の恐れ」の認識が、ホテルの引き渡しの時点であったかどうかという問題になると思います。公的な再検査の進行との関係について、前後関係を整理すると、詐欺と断定するのは苦しいのではないかと想像します。また、そもそも「倒壊の恐れ」というのは公表に至る過程で国土交通省が創造した概念のようで、罪を問う前提には、どうも……。

小嶋社長の裁判については、小太郎とカラスウリとという ひらりん さんのブログに報告があります。大変、参考になり、感謝します。

その報告をみると、藤田さんが問題にしている通りに展開しているような印象です。ここでも、検察は苦戦しているようです。

国土交通省やマスコミ、あるいは“世論”とか世間に義理立てするために、筋の悪い裁判をさせられている検察が気の毒になって来ます。
[PR]
by gskay | 2007-02-20 18:18 | 真相 構図 処分
売り主が大手の場合の対応
耐震偽装で、ヒューザーが破綻してしまったことを教訓に、「簡単につぶれないような大手の売り主から買っておけば、問題があっても平気。だから大きい会社から、買うべきだ!」という説があります。

大手だから安心とか、値段が高いから安心というのは幻想です。大手から購入しようが中小や新興の売り主から購入しようが、安い物件であろうが高い物件であろうが、「ババ抜きのババ」を引く可能性があることには変わりません。

また、耐震偽装は、見抜く事ができるというのも幻想です。費用のかかる再検査をしない限り耐震性能は評価できませんが、その評価も主観的に設定を変更できる余地が多いためにバラついてしまうものです。図面をみれば、一目瞭然だというのは暴論です。

つまり、問題を回避するための努力に、確実なものはありません。

そこで、問題発覚後の後始末を問題にして、大手のアドバンテージを探そうとしているようですが、大手なら問題発生後の対応が適切だというのも幻想ではないかと思います。

耐震強度偽装: 住友不側が請求棄却求める 札幌の偽装マンション訴訟


2007年02月02日
 札幌市の浅沼良一・元2級建築士による耐震強度偽装問題で、強度不足が明らかになった同市北区の分譲マンションの住民2人が、販売した大手不動産会社住友不動産(東京)に購入契約の解除と、代金の返還など総額5760万円の支払いを求めた訴訟の第1回口頭弁論が2日、札幌地裁(坂本宗一裁判官)であり、同社は請求棄却を求めた。

 浅沼元建築士がかかわったマンションの住民による初めての訴訟。同市中央区のマンション1棟の住民も住友不動産に購入代金の返還を求め提訴している。

 答弁書で住友不動産側は「住民には購入価格での買い取りという最大限の提案をした。契約解除と賠償請求は法的根拠がない」と反論した。

 原告2人は1人当たり2400万円の購入代金に加え、代金の20%の違約金をそれぞれ請求している。

あるいは、

Yahoo!ニュース - 毎日新聞 - <耐震強度不足>売り主の住友不動産、請求棄却求める 札幌


2月16日15時37分配信 毎日新聞

 札幌市の元2級建築士による耐震偽造が判明した中央区の分譲マンションの住民11世帯が「消費者契約法違反に当たる」として、売り主の住友不動産を相手取って総額約3億7000万円の返還を求めた訴訟の第1回口頭弁論が16日、札幌地裁であった。住友側は「強度不足は軽微で違反ではない」として請求棄却を求めた。

最終更新:2月16日15時37分

購入者が納得できるような解決の仕組みはなく、供給側に有利です。解決までに時間がかかれば、負担に耐えられなくなるのは、購入者ではないかと思います。

また、たとえ、購入者に有利な判決が出たとしても、誠実に迅速に業者が対応するとは限りません。

結局、不都合のツケは、購入者が背負うことになるようです。

安心できる確かなものは、何もありません。

マンションというのは、おそろしくリスクが高い買い物になってしまっています。

その原因は、関係者の役割分担や責任分担が明確でないまま放置されてきたからだと、私は考えています。逆にいえば、その欠点を解決すれば、安心してマンションを購入する事ができる仕組みができるということだと思います。
[PR]
by gskay | 2007-02-19 10:55 | 揺れる システム
ヒューザーの破産に関わる裁判
約1週間前の記事です。藤沢の場合、てっきり、和解が済んでいて、取り壊しに進んでいるものと思っていました。

Yahoo!ニュース - 毎日新聞 - <耐震偽装>GS藤沢解体費の返却求め提訴へ 市が管財人に


2月9日20時25分配信 毎日新聞

 耐震データ偽造事件で、神奈川県藤沢市は9日、同市内の分譲マンション「グランドステージ藤沢」の解体費用約1億5500万円を支払うよう、販売主・ヒューザーの破産管財人に求める訴訟を東京地裁に起こすと発表した。16日からの市議会で提訴の議案が可決されれば、3月中にも訴訟を起こす。

引用の記事では、「約1億5500万円」の位置付けがわかりません。

売れ残っていてヒューザーの所有になっている部屋があったはずであり、その分の費用を、公的な対応に含めるかどうかと言う問題なのかも知れません。公的な対応は、住民に対する措置であり、区分所有者という立場は同じでも、売り主には適用されないということなのかと想像しています。

もし、債権が認められた場合の配当のされ方は、他の債権者と同様になると思います。しかし、認める判決が出るとは限らないように思います。また、認められても、その額が難しい問題になりそうです。藤沢市は、特定行政庁として建築に関わっており、その責任と、取り壊しの費用負担とで、ヒューザー側との和解が行われているのではないかと私は思っていました。

公的な対応とは、別の次元の話ではないかと想像しています。
[PR]
by gskay | 2007-02-17 00:28 | 公的対応
国土交通省の無謬性の否定
官僚組織は優秀で間違えることはないと素朴に考えている人が多いと思います。そして、官僚組織に頼っていれば、何とかなると。

しかし、耐震偽装問題に限って考えれば、それは幻想です。

公表に至るプロセスにおいては、国土交通大臣がそれまでの国土交通省の官僚の方針を覆しています。私は、官僚の判断を鵜呑みにしなかった大臣の判断を評価しています。大臣が大きな方向転換を指導したのはとても大きな意義があったと思います。

建築確認のトラブルについて、民民の問題で片付けようとした官僚の判断が、大臣によって覆されました。

建築基準法に準則でなくてはならず、それは、第一には建築主、それに施行や設計、監理の責務であるということには異存はありません。もし、準則である事だけを義務づけていて、登録だけをすればいい制度であったなら、民民の問題として、ビシビシと取り締まればいいだけのことです。

しかし、そこに、建築確認という検査をともなう適法を確認する公的手続きが関与してしまっているから厄介です。純粋な民民の問題とはいえないとした大臣の判断は、官僚の判断より妥当だと思います。

国土交通大臣が、公明党からの大臣ということで、難癖をつけたい人もいるようですが、公明党ということよりも、法律家出身ということの方が、この大臣の判断には影響しているのではないかと思います。たしかに、公明党は、ユニークな存在だと思います。私には、かなりの距離があると感じています……。

ところで、直前のエントリのコメントで、三介さんから、国土交通省の官僚のリーダーシップを期待するようなコメントを頂きました。そういうあり方も一つの考え方だとは思います。しかし、私は、現状にはふさわしくないし、官僚には無理ではないかと思っています。

もっと政治が主導すべきだと思います。政治は、間違いをしたなら、その政治家を排除すればいいだけのこと。間違いがタブーであるこれまでの官僚組織では、誰も責任を背負う事がありませんでした。

高度で複雑な社会にあって、官僚組織とて無謬ではいられません。誤りがあったら、直ちに改め、とるべき責任はとるということが必要です。しかし、官僚組織は、そういう仕組みにはなっていません。

官僚組織は優秀な人材を抱えていることと思いますが、無謬でなくてはならないという点にしがみついている限り、後手後手にまわったり、無責任に無作為のまま、いたずらに時が過ぎていくだけではないかと思います。また、過去を否定できないために、行うべき抜本的な対策を怠り、継続性にこだわりすぎて、小手先で済ませようとする……。

失敗を過度の恐れる官僚組織は、どの方向に進むべきかと言う決断ができない組織なってしまっています。どの方向に進むべきかと言う大きな決断を、任せるわけにはいきません。

もっと政治によって、しっかりと主導されていかなくてはならないと思います。

そのためには、しっかりとした政治家が選ばれなくてはならないわけですが、ここに不信がある点が困った点ではあります。ただ、これは、毎回の選挙をキチンとすればいいことです。

ダメな政治家がはびこっているからと言って、政治への期待を捨ててしまって、思い込みの中の有能で無謬の官僚に委ねて改善が期待できるとは思えません。
[PR]
by gskay | 2007-02-15 19:11 | 政治と役所と業界
追及の方向
国会におけるヒューザーを含めた第一次耐震偽装騒動への追及で評価が高かった野党の国会議員が、今回のアパの耐震偽装に関しては、おとなしいどころか、後ろ向きのコメントを出しているという話があります。

私は、その議員にも、耐震偽装の追及に積極的だった他の野党議員にも期待していないため、驚きはありません。

何か、裏の事情があるのではないかという話もあります。そういう事情があるのかも知れませんが、そういう事情がなかったとしても、期待はできなかったであろうと考えています。

裏の事情があるなら、それが違法であるかどうかは問題になるものの、然るべき方向への修正の余地が能力的には期待できる分、救われます。しかし、問題は、そんな裏の事情などではなく、単なる能力の問題であり、追及の方向や取り組みへの心構えが見当違いだということではないかと思います。救いようがありません。

そういう国会議員に様々な期待をかけなくてはならない現状は、とても憂うべき状況にあると思います。

あの時、野党は、初動から躓いていました。当時の党首の現場の視察は、分譲であるヒューザー物件をよけるかのように、ホテル物件と賃貸マンション物件が選ばれてしまいました。何らかの意図があったのかもしれませんが、私には、疑問が残ったままです。

その後、国会での追及では、悪者探しが行われ、構図が作られ、そのシロクロをつけることや、関わりのあった政治家へのバッシングへと発展して行きました。そうした展開の中で、見事に肝心な部分が抜け落ちてしまったと思います。政治的な駆け引きの材料になってしまいました。

国会の場では、司法の場とは異なり、立法のための調査や議論が行われるべきでした。ところが、捜査ごっこや裁判ごっこが行われ、いくつもの重大な問題が放置されることになってしまいました。その一方で、メディアとともにヒートアップして、誤った方向性を作り、捜査に対し悪影響を与えたのではないかとさえ思えます。

そんなことをしていないで、問題の本質を見抜く努力をし、立法に活かすべきでした。

衆議院の国土交通委員会の参考人質疑での藤田さんの主張は、今から考えると、驚くべきものです。当時は、彼の態度の問題や表現の問題もあってか、なかなか理解されませんでした。参考人質疑で同席していた人たちも、画面や紙面を通して主張を聞いた人たちも、ほとんど理解できなかったのではないかと思います。

私も、当時はチンプンカンプンでした。しかし、今では、彼の主張の重みを理解することができます。

彼は、大臣認定プログラムで印字されるヘッダーの不整合の見落としがあったという国土交通省が主張する発生の原因を否定しました。それだけでなく、国土交通省の認識や追及の方向性が間違っており、その方針で追及しても正しい原因には辿り着けないということも主張していました。

これは、すごい指摘です。原因分析の結果が間違っているだけでなく、原因分析の進み方自体が根本的に間違っているということを指摘していたのですから。このままでは、決して問題の解決に近付く事はできないということを主張していたのです。

もし、藤田さんの主張が理解されていたなら、その後の展開は変わっていたかもしれないと思います。少なくとも、国土交通省のトンチンカンな対応を放置することはなかったのではないかと思います。

これまで評価が高かった野党議員のことは、見直したこともあります。昨年6月にアパの件で、設計変更に関わる手続きの違法性について、国土交通省の見解を引き出しています。そこに注目すると、ひょっとして追及すべきポイントを理解していたのかと思ってしまいます。

しかし、やはり、わかっていなかったのだと思います。6月の鋭い追及は、まぐれだったのか、藤田さんの発想に由来するものだったのか……。

たしかに、一部のヒューザー物件の住民からも評価が高く、期待されていることは、知ってはいます。しかし、この人は、問題の核心をついてはいないと思います。

かと言って、余人をもって替えられるわけではありませんが……。

少なくとも、アパの追及にあたって、大臣認定プログラムがどのように使われ、結果としてどのような不都合を引き起こしているのかという追及に進んでいないところを見ると、どのように問題が生じているのか見通せていないのではないかと思います。

さらに、問題の追及についての国土交通省の方針も見当はずれである点を指摘し、改めさせようという方向にも向いてはいないようです。

設計変更に関わる手続きの違法性を指摘したのは手柄に違いありませんが、ここに満足してしまってはいけないように思います。

隠蔽への思惑を問題にしなくても、取り組まなくてはいけない重大な問題があります。少なくとも、藤田さんの著書の中で指摘されているポイントくらいは、解決しようという方向性を示していいのではないかと思います。

このまま国土交通省が、とんでもない追及方針で足踏みを続けたり、あまり意味があるとも思えない小手先の法律改正を目指しているという愚を放置していていいのかという点に、あらためて疑問を感じます。これは野党に限らず、与党も不十分であると思います。

国会がもっとしっかりとしてれば、事情は変わるのかもしれません。しかし、第一人者と目される議員でさえ、その程度では、現状では仕方が無い事なのかも知れません。

こういうことがあるからこそ、適切な人材を国会にもっと送る努力が必要なのだと、しみじみ思います。
[PR]
by gskay | 2007-02-14 02:53 | 政治と役所と業界