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再開発への経緯
再開発は、時間もかかり、費用負担も増えるプランです。元の建物と同じ規模での建て替えに比べて、何重にも負担になります。それでも、早い時期から、共同化が模索されていました。

耐震補強、単独建て替え、そして共同化による再開発という選択肢の中で、比較的早い時期に耐震補強が断念されました。「0.5以下は建て替え」というのは、横浜の物件が示すように、絶対ではなく、補強の可能性がなかった訳ではありません。しかし、物件の個別の条件に左右され、少なくともこの物件では現実的ではありませんでした。

単独建て替えについては、共同化と並行する形で検討されていました。資金的にも時間的にも、実は、単独建て替えの方が負担が軽く済みます。それにもかかわらず、ほとんど全くと言っていいほど、共同化に反対する声はなかったように思います。

これは、短いながらも実際に住んでみて、新参者ながら、街のあり方を真剣に考えた結果です。単に耐震性能を考えるだけでなく、土地利用の観点からも考えざるをえなくなりました。こうした意識の変化は、区の熱意の影響が大です。

asahi.com:夢再建ゴール見えた-マイタウン東京


 耐震偽装で「強度不足」と指摘された中央区のマンション「グランドステージ(GS)茅場町」の再開発による建て替えが30日、公表された。同区役所で開かれた記者会見では、GS茅場町管理組合と西隣のビルを実質所有する事務機器商社「内田洋行」が、合意までの経緯を説明した。偽装判明から1年半。ようやくゴールが見えてきた。
(小金丸毅志、大井田ひろみ)

 計画によると、GS茅場町と西側に隣接する「新川第2ビル」の敷地計986平方メートルに地下1階、地上20階建ての再開発ビルを建てる。8階以下がオフィスで9階から上にGS茅場町の住民が入居する。

 総事業費は約38億7千万円。国と区で十数億円程度の補助金が出る見込みだが、1戸あたりの追加負担は約2700万円になる見通し。来年2月にGS茅場町の取り壊しが始まり、新しいビルは11月着工し、10年11月に完成する予定だ。

 GS茅場町の東側には、内田洋行の本社ビルが建つ。会見で内田洋行の向井眞一社長(59)は「GS茅場町の両側に我が社の関係ビルがあり、社員とテナント従業員計約500人がいる。近隣の安全も重要と考え、合意した」と話した。新川第2ビルが建築後約35年たっており、いずれは建て替えを考える必要があったことも合意の一因だったという。

 GS茅場町にとっても、従来の広さが確保できる上に眺望が良くなるなど、居住環境が向上するメリットがある。

 管理組合の梅本賢一理事長(48)によると、再開発による建て替えについては、昨年3月ごろに住民側は一本化していたという。「元の生活を取り戻すまでに3年半ほど必要だが、今後は夢を持って生活していくことになる」と語った。

 GS茅場町と内田洋行側の調整を進めてきた中央区の矢田美英区長も「地域の安全と安心が守られ喜ばしい」と話した。

■住民「ローン増加は覚悟」

 会見に臨んだ住民たちは、ほっとした表情を見せながらも、新たに始まるローンへの不安も口にした。

 GS茅場町は建て替え対象11棟のうち、都内では唯一再建案が決まっていなかった。会社員の島川敏彦さん(40)は「周囲からずっと心配されていた。これでやっと『決まった』と報告できる」。会社経営の繁住敏郎さん(80)も「区の仲介で実現した。私たちだけでは、大きな企業と交渉できなかった」と語った。

 耐震強度の不足が発覚したのが05年11月。「仮住まい」での暮らしも1年以上になった。他の物件と違い、再開発事業という初めての再建案を選択した結果、合意までに時間がかかった。飲食店経営の士野楓(かえで)さん(49)は「36戸の結束は強い。焦りは感じなかった」と振り返る。

 しかし、多額の追加負担は残る。会社員の内藤洋(よう)さん(40)は「現在受けている家賃補助などもいつかはなくなる。ローンが増えるのは覚悟している」と話した。

■建て替え組合設立を都認可

 都は30日、耐震偽装で建て替え計画がまとまっているマンション「グランドステージ千歳烏山」(世田谷区)と「グランドステージ赤羽」(北区)の建て替え組合の設立を認可した。

引用の記事が指摘するように、建替え前に比べ居住環境は良くなります。しかし、資金的にも、時間的にも、それに見合う負担かどうかは、何ともいえません。また、役員や区からの共同化に向けての説明が芳しくないような時には、悲観的になることもありました。個々には少なからず動揺があったと思います。

それでも、結束は乱れませんでした。

再開発や総合設計の意義を尊重し、より的確な土地利用をめざすことには、公共的な意味があります。それを誰もが念頭に置いていたからだと思います。個々の居住環境が良くなるというメリットだけだったとしたら、損得勘定を計算し、途中で足並が乱れていたと思います。

内田洋行にとっても、悩みは少なからずあったと思います。いずれ建て替えが必要な建物とはいえ、建て替えは今でなくても良かったはずです。完成後の管理の問題など、課題もあります。それでも、土地の高度な利用の意義を承知し、かつ、企業の発展につながると判断したのだと思います。

理にかなった方向に進んでいると思います。国が想定したスキームからは、少し離れたユニークな計画になってしまいました。公的な資金が少なからず投入される以上、その効果が最大になるような工夫がそれぞれに必要であり、ここでは共同化による再開発という方向性が打ち出されました。

この場所についていえば、単なる建て替えでは、土地利用の観点から適当な事業とは言えません。細切れで形が悪く、高度な利用に問題がある土地を放置せず、再開発によって適切に活用しようと決意した区の意気込みが様々な障害を乗り越えさせたのだと思います。私的な判断だけでは、このような公的な発想の事業を組むのは難しかったと思います。

仮に共同化がダメでも、単独建て替えは出来るだろうと言う見通しは立っていました。そうした見通しは、役員からも伝えられていたし、区からも説明されていました。だからこそ、公共的な意義を追及する余裕があったのかもしれません。

随分と時間がかかったようにも思われます。しかし、通常の再開発や共同化に比べ、著しく早い展開だそうです。この早い展開については、耐震偽装という特殊な事情が関係していると思います。すでに住民が退去済みで、建て替えが不可避という事情があるために、展開が加速したものと思われます。そうでなければ、住民の足並を揃えることは不可能だったと思います。

他の物件の計画が次々と伝えられる中、焦りも多少はあったと思います。しかし、自分達のおかれた事情をよく理解した上で、固有の問題に正面から取り組むことこそ、適切な解決につながるという確信によって、ここまで進んできたように思います。

ところで、私は、役員の皆さんに迷惑をかけないようにするのが精一杯でした。ここに漕ぎ着くまでの役員の方々の献身には、本当に頭が下がります。リーダーシップについても分析や判断についても、とても素晴らしいと思います。
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by gskay | 2007-06-11 04:29 | 建て直し
再開発へ
耐震偽装の都内のヒューザー物件で建替えが必要なマンションでは、最後になってしまいました。

姉歯物件は、最初の耐震偽装物件とされる別のマンションが中央区内にもう一つありますが、これはヒューザーでなかったためか狂騒にはまきこまれず、売り主も健在で、売り主、住民、それに区が協力しながら建替えにすすむのだと想像しています。

ところで、これまでの建替えについては、住民主体で迅速な建替えを進めるという方針と、自治体と綿密に調整をするという方針がありました。住民主体の迅速な建替えは、仮住まい期間が延びることによる損失の増加をおさえることができます。一方、自治体と綿密な調整をした上での建替えでは、資金面をふくめた様々な問題を解決してからの建替えなので、安心して取り組むことができるのではないかと思います。

手法には差があるものの、いずれも、建替えであり、同じ土地に、同じような建物が建つことが前提にあると思います。

一方、茅場町では、建替えではなく、再開発という方向が打ち出されました。

asahi.com:姉歯物件、再開発で高層ビルに GS茅場町 - 社会


姉歯物件、再開発で高層ビルに GS茅場町

2007年05月30日08時03分

 姉歯秀次元建築士による構造計算書の偽造で、耐震強度が「0.41」とされた東京都中央区のマンション「グランドステージ(GS)茅場町」(13階建て、36戸)が、再開発事業として隣接のテナントビル(8階)と共同で高層ビルに建て替えられることになった。住民、テナントビル、区が合意したもので、これまでと同じ広さが確保でき、居住環境も良くなる。建て替え対象11マンションで、再開発事業による再建は初めて。
 計画では、GS茅場町とテナントビルの敷地計約1000平方メートルに20階建ての再開発ビルを建てる。下層階はオフィスなどにあて、9階以上がマンション部分で、各階に3戸ずつ入居する。

 1戸当たりの追加負担は3000万円前後になる見通しだが、広さはこれまでと同じ約100平方メートルが確保できる。単独での建て替えに比べて、高層階になるために見晴らしが良くなるなど住環境面でのメリットがある。

 個人の施工による第1種再開発事業で、総事業費20億〜30億円のうち2〜3割が国などの補助対象となる見通し。空き地などを設ける総合設計制度を活用することで、ビルの高さや容積率が緩和され、大型の建物の建設が可能になる。再開発事業のため、転売には一定の制約がある。

 震度5強の揺れで倒壊の恐れがあるとされる耐震強度「0.5」を下回ったGS茅場町は、敷地が560平方メートルと狭いうえにL字形で、三方をビルに囲まれている。現在の敷地で建て替えると、高さ制限や容積率などから現在よりも、各戸の広さは約2割程度減る。このため、昨夏から住民、隣接ビル、中央区が調整を進めてきた。

 今後は建設業者を決め、本格設計に入る。順調に進めば来年中に解体し、3年後に完成の予定だ。

 住民のひとりは「追加負担は高額で二重ローンが大変。しかし、中途半端な建て替えをするより、安全で夢の持てる建物をというのが全住民の希望だ」と話している。

 姉歯元建築士の耐震偽装で、国が建て替え支援の対象としたマンションは11棟。「GS茅場町」と「GS藤沢」(神奈川県)を除く9棟で再建案がまとまっている。

区が注目したポイントは、記事にもあるように「L字形」という変形した土地ではないかと思います。土地が充分に広かったり、利用しやすい形であったなら、ヒューザーが取得してマンションにすることはなかったのではないかと思われる土地です。

特に、「形」に問題があったと思います。ヒューザーが展開する100平方メートルの部屋を組み合わせるとうまくおさまりますが、逆に言えば、あのプラン以外は考えにくいような土地でした。

ところで、土地は様々な理由で細切れになっています。その利用や所有に関し、野放しにしていると、このマンションの土地のような中途半端な土地が生まれ、都市開発に差し障りがでてしまいます。

今回は、隣接する古くなったビルとの共同化によって、細切れ状態を解消でき、問題のL字形も解決することができそうです。また、総合開発による空き地の確保など、街の環境に貢献することができるとのことです。

中央区は、土地を高度に活用する必要性が高い場所ですが、高度な活用が難しい状況もあります。古い危険な建物が、細切れになった土地に立ち並んでいるような場所も少なくありません。そうした街の再開発を手がけてきた中央区ならでは手法が用いられ、再開発に進むことになりました。

このマンションのある一画については、共同化により、土地を高度に利用できる方向性ができたということになると思います。
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by gskay | 2007-06-05 23:29 | 建て直し