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溶融スラグ
溶融スラグを混入したコンクリートの問題では、規格にあわない混入物ということで「違法」とされたものの、「溶融スラグ」というものは、すでに広く使われているようです。廃棄物の無害化の技術のみならず、リサイクルのための「製品」化の技術の改良が進んでおり、建築や建設のための材料として、大きな期待ができると思います。

この事件をきっかけに、溶融スラグへの警戒感や忌避感が生まれてしまったら残念です。様々な質の製品があり、それを一様に否定するような事は避けなくては行けないと思います。

JISなどの規格は、このような新しい素材については、「いち早く」検討し、基準を満たすものと満たさないものを明らかにするべきではないかと思います。それが、利用の促進にもつながり、技術改良の後押しになると思います。少なくとも、性能を検討し、どのような溶融スラグが適当であるのかを明らかにしておく必要があると思います。

現状では、充分な性能の製品がないのかもしれません。だとしたら、技術の開発のための投資が必要です。

もし、すでに充分な性能の製品があるのなら、今回の事件は、規格へのリストアップが遅れたことによって生じた問題という側面も出てきます。規格にあった製品が存在していたなら、問題の業者も、規格を満たした製品を利用したでしょうから。

「偽装」に対する一般的な「けしからん」という観念だけで対応してはいけない問題です。

将来的には、砂利よりも良好な溶融スラグが広く使われるようになるのではないかと想像します。それは、廃棄物の問題からみても、砂利という資源の問題からみても、望ましいのではないかと思います。

目下の問題は、この事件のような既存の性能不足にいかに対応するかですが、これを将来の問題と混同してはいけません。
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by gskay | 2008-07-13 00:35 | 安全と安心
公務員改革は、官僚バッシングではない
我が国の行政制度は、制度疲労に陥っています。もともとの理念が忘れ去られ、形骸化しているばかりか、問題を振りまくようになってしまっています。

確かに、この制度の中核にいる官僚は、これまでのやり方を反省しなくてはいけません。しかし、それが、官僚バッシングで終わってはいけません。

現在、公務員制度改革を進めるための道具立てが少しづつ整いつつあるように思います。しかし、この改革に取り組む姿勢や、その改革を見守る姿勢にも問題があるように思います。

改革がスタートするかしないかの段階で、すでに改革が形骸化してしまっているように思います。

これは、改革の対象になっている官僚の抵抗によって骨抜きになったということとは違うと思います。改革に取り組む側の姿勢が一面的にすぎることと、改革のゴールが不明確であるため、改革が始まるか始まらないかという段階から、改革の側にも、悪しき「官僚主義」がはびこっているのではないかと思います。


<公務員改革>推進本部が発足 事務局人事固まらず(毎日新聞) - Yahoo!ニュース


7月11日22時41分配信 毎日新聞

 政府の国家公務員制度改革推進本部(本部長・福田康夫首相)が11日発足し、東京・虎ノ門のビルで事務局開きが行われた。国家公務員制度改革基本法に基づいて各府省の幹部人事を一元化することになる内閣人事局の運用方法など、改革の制度設計を担当する。

 「公務員一人一人が、自分の仕事に誇りと責任を持って励むことができる体制作りに力を合わせてほしい」。首相はこの日、事務局長に就任した立花宏・日本経団連前専務理事らに訓示した。

 推進本部の看板の設置には、首相のほか渡辺喜美行革担当相、町村信孝官房長官らも出席した。基本法をめぐっては、町村、渡辺両氏の確執が取りざたされ、成立までに紆余(うよ)曲折を経た経緯があったが、3人は和やかな雰囲気で、木製の看板を入り口に立てかけた。

 同本部は、キャリア制度の廃止に伴って設置される「総合職」「一般職」「専門職」の各定員や、官僚が政治家と接触する際の基準の作成など、基本法の具体的な制度設計を行う。本部に設置される省庁幹部、労組代表、学識経験者からなる「労使関係制度検討委員会」は、国家公務員の労働基本権拡大について協議する。

 50〜60人規模を予定している事務局は、事務局長人事やメンバーの公募のあり方などで閣内の調整に手間取ったこともあり、次長以下の人事が固まっていない。推進本部の初会合も来週にずれ込むなど、やや不安を残す船出となった。【塙和也】


ところで、現在の行政には、「裁量」の余地がありすぎます。これは、明治あるいはそれ以前の仕組みが残っているのだと思います。本来、政治の場で決着すべき事柄まで、行政の官僚に委ねられてしまっている点をまず解消すべきです。

また、「無謬」という前提があるため、誤りを認め、正すことができず、根本的な反省もおざなりになっています。目標と前提がごちゃごちゃになっていることがしばしばで、問題に直面しても、危機を感じるべきポイントがずれてしまっているように思います。なぜか、問題を解決するという方向には進まず、「あやまりはない」というこじつけが目指されます。同時に、取り締まりのしくみも、反省のしくみもいい加減です。

そうした問題に加えて、官僚となる人材が、今や、最優秀とはいえないことが問題です。登用された時点では、最優秀な人材が選ばれているかもしれませんが、高学歴化した現在、様々な点で見劣りしています。長寿国である日本で、そのような人材の集め方や養成の方法が適切とは思えません。もっと、歳を重ね、学歴を高めたり、社会経験をした人材を用いてもいいはずです。

しばしば、天下りが問題として取り上げられますが、それは枝葉です。行政の裁量が大きいために、天下りを受け入れるメリットがあります。そういう裁量を何とかしなくてはいけません。これは、政治によって調整されるべきです。

また、天下りは、せっかくの人材を放出してしまうことであり、大きな損失です。その損失を感じることができないという鈍さがあります。優秀な人材を放出しても平気でいられるのは、無謬という前提があるからではないかと思います。取り締まりや監視をしっかりとすることで、緊張感をもたせるべきです。あいにく、今のマスコミはその立場を全うすることはできないようです。

批判があるにもかかわらず天下る人たちも、実は大変です。長寿をよりよく過ごすためのあせりがあります。ただの再就職以上の意味が付加されて、人生設計の大切な要素になってしまっています。天下りに頼らざるを得ないという現実は、特権という側面よりも、長寿社会への対応を考えている国の当局の担当者でさえ、実は、自分の足下がおぼつかない状況であることが深刻です。

官僚組織を弱体化させたり、待遇を悪くすることを、公務員制度改革のゴールにしてはいけません。もっと強力な組織を構築するために、しっかりと取り組んで欲しいと思います。公務員改革は、我が国の社会の問題点が凝縮されています。
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by gskay | 2008-07-12 13:07 | 政治と役所と業界
違法なコンクリート
建築に使われるコンクリートについては、いろいろな噂があります。「違法」なものが混入されているということで、単に性能を劣るというだけではなく、わかりやすい証拠があるところが、問題になっている件のポイントだと思います。

建築については、国土交通省の大臣認定などによる規制だけでなく、経済産業省の日本工業規格(JIS)による規制も行われているのは当然といえば当然ですが、建築というもののあり方の難しさを感じました。


<生コン>神奈川の業者、溶融スラグを違法混入 2棟で確認(毎日新聞) - Yahoo!ニュース


<生コン>神奈川の業者、溶融スラグを違法混入 2棟で確認

7月8日22時31分配信 毎日新聞

 国土交通省は8日、神奈川県藤沢市の生コン製造会社「六会(むつあい)コンクリート」が日本工業規格(JIS)で認められていない「溶融スラグ」をコンクリートの材料に使っていたと発表した。この製品を柱などの主要部分に使うと耐久性能が弱まり、建築基準法違反になる。横浜市のマンションなど2棟で使用が確認されており、同省は8日、同じ製品が使われているおそれのある神奈川県内の約300の物件について、関係自治体に調査を指示した。

 国交省建築指導課によると、六会コンクリートは少なくとも昨年7月から原材料の砂と一緒に溶融スラグを混ぜていた。納入前の建築主による立ち会い検査では、正規のサンプルを示すなどして偽装していたという。

 同社の秋山広取締役営業部長は8日、取材に対し、混入の理由について「品質が良くなるうえ、リサイクルやエコ(環境保全)に協力できるのではないかと技術者が判断した」と釈明した。

 国交省などの調べでは、建設中の横浜市栄区の分譲マンション(鉄筋コンクリート6階建て、計73戸)と、藤沢市のいすゞ自動車工場の事務棟(鉄骨造り9階建て)の2棟で、柱やはりに使用する建築基準法違反が見つかった。いずれにもはく離があり、工事は中断している。マンションは半数が売約済みだが、500カ所以上のはく離があるという。同じ生コンを使ったとみられる約300物件の中には鎌倉市の「大仏トンネル」(約130メートル)も含まれている。

 国交省と経済産業省が所管する財団法人「日本建築総合試験所」は8日付で、六会コンクリートのJIS認証を取り消した。民間調査会社などによると、同社は70年設立。資本金1億円で、従業員は約40人。【高橋昌紀、五味香織、野口由紀】

 【ことば】溶融スラグ

 ごみなど廃棄物の焼却灰を溶かし、固化させた粒状のリサイクル資材。資源の再生利用という利点はあるが、生コンの原材料にした場合、内部で膨張するため、はく離現象を起こしやすい。JISの規格外で、柱などの主要構造部分に用いると建築基準法違反になる。1立方メートル当たりの原価は砂に比べ、100円ほど安い。


取締役営業部長という人のコメントは、研究機関のコメントであれば歓迎すべきものだと思います。しかし、現場で実験をして、実物で試してはいけません。「技術者の判断」というものがどこまで認められるのかが問題ですが、設計や施工と異なり、材料に関しては、現場が判断してよい部分は少ないと考えた方がいいように思います。

ただし、コンクリートをはじめ、工業製品ではありながら、供給方法も、使用方法も、臨機応変が求められるものがたくさんあるような気がします。この場合、「使用がみとめられていない」は、「使用が禁止されている」のか、リストアップされていないだけなのかで、事情が異なってくるように思います。

規格の趣旨としては、リストにないものを使用することはできないと考えるべきですが、規格を無視する事で,規格以上の性能が得られる場合、どのように考えるべきか難しいように思います。

加えて、建築については、施工や監理との関係もあります。施工や監理に託された判断をどのように位置付けるべきかという問題も考えて行くべきではないかと思います。

「『御上』が定めた通りなら、よろしい」という発想については、指摘できる課題がたくさんあるものの、了解可能です。そうでない場合、単純にダメだといえるのかどうかについて、疑問に感じています。仮に、「御定め」よりも優れていた場合、どうすればいいのでしょうか?

今回のケースは、性能に問題があるようで、そのようなややこしいことは考えなくてもいいようですが、取締役営業部長という人のコメントを読んで、規格や認定の意味や、現場がやるべきことをを改めて考える必要を感じました。


藤沢の違法生コン:市が調査開始 国交省リスト、使用の疑い1万件以上 /神奈川(毎日新聞) - Yahoo!ニュース


 藤沢市亀井野の「六会(むつあい)コンクリート」(小金井弘昭社長)が日本工業規格(JIS)で認められていない「溶融スラグ」を生コンの材料に使用していた問題で9日、この生コンを使った疑いのある物件リストが国土交通省から市に届いた。対象は1万件以上で、市は施工業者への聞き取りなどの調査を始めた。
 掲載されているのは、同社が建築基準法違反となる生コン使用を認めた昨年7月から今年6月にかけて施工された市内の全物件。リストには工事名、施工業者、出荷日しか書かれていないため、同市建築指導課は建築確認申請などを頼りに建築場所を特定、調査に着手した。小島良課長は「リストに載ってるものすべてが違反とは限らない。速やかに現場調査を進め、市民の不安を取り除きたい」と話している。
 一方、六会コンクリート本社や市役所などには「自分の建物は大丈夫か」などの問い合わせが、計約50件寄せられているという。【永尾洋史】

その続報は、「疑い」のひろがりです。これは、事件の拡大や深刻化というよりも、当然行われなくてはいけない網羅的な調査が始まったということです。耐震偽装では、こうした調査がうまく展開できなかったように思われます。適切に問題をピックアップし、適切な対応が行われるように望みます。

法律の基準に合うかどうかという視点も大切ですが、現実的な対応こそが必要です。

材料の問題ではありますが、所有者や建築主、売り主の責務できちんと対応することが第一だと思います。もちろん、施工や監理にも責任があります。材料の問題であるので、それを供給する業者に最終的な責任をとらせるにしても、やらねばならないことが多岐にわたり、それぞれの当事者が、それにきちんと取り組んでいくことが必要です。

あいにく、これまでは、そうした問題が起こることを防ごうという意識が強すぎて、問題発生という事態を極端に恐れるあまり、「ありえないこと」と考える傾向があったように思います。それに直面した時、見て見ぬ振りをしたり、誤摩化したりすることが少なくありません。

「ありえないこと」が目標ではなく、前提になってしまっていて、問題があったときの対応が充分に考えられていないなかったり、そんなことを検討すること自体がタブーであったりすることもあります。この件はどうかわかりませんが、対応にあたってのっとるべきシステムがないことに悩まされるたり、振り回されことがないよう、適切に対応して欲しいと願っています。
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by gskay | 2008-07-11 11:54 | 揺れる システム
偽装防止以前
耐震偽装ではありませんが、建材の大臣認定制度の問題をめぐる議論が難しい状況にあるようです。技術的な問題や制度の問題ではないようです。「偽装は悪いこと」という以上の問題意識が提起されているようです。

建材偽装の再発防止策、「責任の所在をより明確に」 と国交省に注文|ケンプラッツ


 国土交通省は7月2日、一連の建材偽装問題を受けて社会資本整備審議会建築分科会基本制度部会に設置した防耐火認定小委員会(委員長:菅原進一東京理科大学教授)の第2回会合を開催。大臣認定制度の不正受験防止策や認定後の品質管理について検討した。国交省は、8月に開催予定の第3回会合で対策案を取りまとめたい考えだが、委員からは「このままでは従来とあまり変わらない」といった意見が出るなど、8月以降も議論を継続する可能性も出てきた。

 国交省は今回の会合で、前回の議論をふまえた新たな再発防止策として、指定性能評価機関による試験体製作を提示。評価機関が建材メーカーなどから試験体の提供を受けずに直接発注するため、公正な試験は可能になるが、既存の評価機関だけで対応するのは物理的に難しいとして、将来的に導入していく見方を示した。

 これについて清家剛委員は、「建材メーカー側から費用を取って試験をする以上、評価機関側で試験体を製作すべき。対応できるかどうかは次元の違う話だ」と指摘した。

 また、認定後の品質管理について国交省は、性能確保を目的としたサンプル調査の継続を示し、「調査を実施することで不正に対する一定の抑止効果が得られる」と述べた。調査は類似の構造方法をグループ化した上で、代表的な構造方法を抽出。市場から材料を調達し、試験体を製作して性能を確かめる手法だ。抽出の割合を1%程度とした場合、調査にかかる費用は、性能評価の手数料を一律2万円程度増額することで補えるとした。

 しかし、菅原進一委員長は「(費用以前に)先ずは国が何をどこまでやるのかを整理する必要がある」と発言。辻本誠委員は「現場での責任に関する議論はどうなっているのか」、仲谷一郎委員は「調査の対象は新製品であることが多く、市場から材料を調達するのは困難」などと指摘した。

 このほか、販売仕様と大臣認定仕様の不一致を防止するための対策として、建材が認定と適合しているかどうかを建築士が監理業務の中で確認する案を提示した。しかし、古阪秀三委員は「建材の仕様が認定と合っているかのチェックは言うは易しいが現実には難しい」と否定的な見方を示した。

 国交省も対策案を提示する一方で、「国があまり責任を担保しすぎるとモラルハザードが起こる。長期的には自主的なものにした方がいい」などと回答。次回会合までに不正防止策の前提となる、認定制度における責任の所在について、より明確にすることになった。

■防耐火認定小委員会のメンバー
委員長 菅原進一(東京理科大学・教授)
委員 辻本誠(東京理科大学・教授)
委員 古阪秀三(京都大学大学院・准教授)
委員 大滝厚(明治大学・教授)
委員 清家剛(東京大学・准教授)
委員 富田育男(日本建材・住宅設備産業協会・専務理事)
委員 仲谷一郎(建材試験センター 性能評価本部・副本部長)
※敬称略

片岡 友理=フリーライター

担当の官僚の発想に問題があるように思えますが、それは、引用の記事にあるように、「国が何をどこまでやるのかを整理」できていないからだと思います。「現場での責任に関する議論はどうなっているのか」というより、国の役割に限らず、関係者それぞれの、基本的な役割や責任などが曖昧であることが問題です。

建築には、建築主、設計、施工、監理、検査機関などが関わり、さらに材料のメーカーなどが関与します。それぞれの役割や責任が充分に明記されているとはいえません。そこに、国が何の限定もなく介入できる仕組みになっています。国は、その気になれば、何でもできます。

国も、建築における関係者の一つにすぎないと考えれば、国についても、役割や責任を明確にし、そこからの逸脱や、あやまちに対応する仕組みが必要です。

これは、「基本法」のような法律によって、国や関係者の役割を明確にすることからはじめなければならないと思います。

特に、建築の場合、技術を扱っています。我が国の場合、国が、最良の技術や知識を独占しているわけではありません。しかし、その程度の能力しかない国に、無制限ともいえる力があたえられています。しかも、無謬という前提付きで。

「国があまり責任を担保しすぎるとモラルハザードが起こる」という指摘は、民間の業者に対する戒めだけではないと思います。これは、国についてもいえることです。「長期的には自主的なものにした方がいい」という点については、建築基準法や建築士制度の原点にもどってみることが大切だと思います。

基準を守らせるための仕組みの検討や、違反についての分析だけで、答えがみつかると考えてはならないと思います。守ることは当然だと考えた上で、取り締まる能力を向上させたり、基準を満たしていない場合の対応をしっかりと考えておくべきだと思います。

基準を守らせるための仕組みがしっかりすれば、違反は起こらないという問題ではありません。必ずしも故意でなく、悪意がなくても、違反は起こります。想定外の違反もあります。そうした限界への配慮が足りないために、国は、関係者の曖昧な責任関係の泥沼にはまり、ますます、曖昧さに拍車をかけるような役割をしているように思います。

一見、厳格になっているように見えますが、それは、煩雑になり硬直化しただけです。抜本的な解決でもなければ、現実的な対応でもありません。

「大臣認定」という制度の枠組みでしか考えないのだとしたら、出口は見つからないのではないかと思います。
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by gskay | 2008-07-08 13:15 | 揺れる システム
タクシー再規制
タクシーへの規制は、安全の問題と考えることができないわけではないと思います。また、地域の交通機関の確保と言う意味合いを強調することができると思います。

しかし、経営の問題や労使の問題に再規制によって介入しようと言う方向性は適切ではないと思います。

asahi.com(朝日新聞社):タクシー再規制 国交省「供給過剰解消のため」強調 - 経済を読む - ビジネス


 国土交通省は3日、タクシーの新規参入や増車に歯止めをかける方針を正式に表明した。02年の規制緩和から6年。「行き過ぎた緩和」が乗務員の収入減などを招いたとして、再び台数規制への道に戻る。ただ今後、しわ寄せが利用者にいく恐れがある。

 「非常に心強く感じている」。3日に開かれた交通政策審議会(国交相の諮問機関)のタクシー問題作業部会。国交省が規制強化方針を説明すると、委員を務める業界団体幹部はこう評価した。

 02年の新規参入や増車の自由化で、法人タクシーは01年の20万6千台から06年の22万2千台に急増した。国交省は作業部会で、多くの地域で供給過剰を招き、「乗務員の労働条件悪化などの問題を招いた」と指摘。「供給過剰の解消や防止に強力に取り組む必要がある」と「再規制」の必要性を強調した。

 その対策として打ち出したのが、悪質業者を排除するために新規参入や増車時の事前審査を強化することや、違反業者に対する「減車命令」を制度化することだ。台数が増えすぎた地域については、事前審査を特に厳格化。各社が協調して減車できるよう独占禁止法の適用を除外するよう調整することも盛り込んだ。需給調整は全国一律ではなく、地域の実情に応じて行うこととした。

 また、運賃については、競争が過度になっている地域があると説明。国交省が認可する上限運賃より10%以上安い運賃は、事前審査を強化するとした。

 作業部会での検討を経て、国交省は来年の通常国会に、こうした施策を盛り込んだ道路運送法改正案を提案する方針だ。

 ただ、台数規制が復活すれば、業者間の競争が緩む恐れがある。作業部会では利用者を代表して参加する委員が、台数の増加で待ち時間が減ったり、運賃やサービス面で競争が起きたりしたとし、「規制緩和には利点があった」と述べた。「良質な新規参入を閉ざすことは、業界や市場全体にとっても良くない」との声も上がった。

 それでも、国交省は「過当競争で悪化した乗務員の待遇改善のため、多くの地域で運賃が値上げされるなど現行制度は必ずしも十分利用者に利益をもたらしてはいない」と理解を求める考えだ。

 乗務員の待遇改善を目指すのであれば、台数の需給調整の前に、賃金体系を見直すべきだとの指摘もある。労働組合を代表する委員らは、「(それぞれの売り上げに応じて給与額が決まる)歩合制中心の給与体系が、需要減少のしわ寄せを乗務員に押しつけている」と訴えた。

 国交省も作業部会で、人件費が急減する中でも事業者の収支率が減っていない実態を示した。ただ、今回の方針では「事業所外労働が中心のタクシー事業では、歩合制にも一定の合理性がある」とし、原則として労使の問題とした。

 作業部会は昨年、東京都内のタクシー運賃値上げをめぐり、乗務員の賃金低下を理由に認めようとした国交省に対し、政府内で反対が起きたのをきっかけに、業界全体の問題を整理するため設置された。運賃がコストの積み上げで決まるため「事業者の経営努力を促さない」と大田経済財政相らから批判を受けた運賃査定方法については、引き続き検討するという。(大平要)


この引用の記事に加えて、「全国一律ではなく、地域の実情に応じて」という部分を詳しく報じている記事がありました。

NIKKEI NET(日経ネット):国交省、タクシー台数削減へ 供給過剰地域の判断に新制度


国交省、タクシー台数削減へ 供給過剰地域の判断に新制度

 国土交通省は3日、タクシーの供給過剰地域を判断する新しい制度を設け、タクシーの台数を削減する措置を盛り込んだ中間整理案を同省の作業部会に提示した。年内をメドに結論を得て、来年の通常国会に国交省が道路運送法の改正案を提出する方針。特定業種への再規制は規制緩和の流れに逆行するため、批判の声も出てきそうだ。

 今の「緊急調整地域」制度に替わる新しい地域指定制度は、新規参入や増車の禁止などの措置をより発動しやすくしたのが特徴。運転手の労働条件などで厳しい要件を設け新規参入や増車を抑制する。国交省が直接、規制を命じるのでなく、地域の関係者も加えた「総合的計画」を作って、地域のタクシー台数を削減するよう促す。

 中間整理案は全国を(1)仙台市など供給過剰が深刻な地域(2)供給過剰とみられる地域(3)運転手の営業収入が増えた愛知県豊橋市など問題ない地域ーーの3つに分けて対応すると指摘した。

今では、タクシー業界は、成長産業ではなく、戦略的に政策的に取り組んで育成し定着させなくてはいけないようなものでもないと思います。ただ、環境のことを考えて、マイカーを削減するというような方向なら、公的な権限が発動される意義はあるかもしれないと思いますが、そうではないようです。

経営の問題や、需要と供給の問題を、公的な権限が肩代わりしようとしているように思います。これは、経営の失敗などに対し、公的な機関が責任をとるわけではないので、無責任な制度だと思います。

民間の事業については、経営が失敗した場合、経営者や投資家が責任をとれば充分です。需要があり、供給が可能なら、新たな経営者や投資家が参入するだけのことだと思います。そして、事業としてはなりたたないが、ニーズが高いのなら、公的な事業として提供したり、補助金を出せば済む事です。

記事の中でとりあげられている労使の問題や、労働者の待遇の問題は、全く別の問題として公的な介入をしてもいいと思います。しかし、経営には介入してはなりません。また、これは労働行政の問題です。交通行政ではありません。

二つ目の記事では、「地域」が強調されています。これは、国土交通省に責任が及ばないようにする仕組みになると思います。単に責任が及ばないだけでなく、地域において、恣意的で杜撰な「総合的計画」を生みかねません。

ここが曲者です。地域という限定された空間であるがゆえに、様々なことが、不適切であっても、閉鎖的に決められてしまう仕組みを提供する事になりかねません。せめて、地方議会の権限にするなどの工夫が必要だと思います。

いずれにせよ、うまくいかない事業の責任をとる気がないのに、公的な権限が経営に介入するような仕組みは、よくないと思います。経営責任が、行政の「裁量」によって曖昧になってしまい、問題があっても解決が遅れます。さらに、「無謬性」の神話がある限り、失敗が誤摩化されたり、隠蔽されたりするという事例が増えるだけだと思います。
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by gskay | 2008-07-05 11:32 | 政治と役所と業界
「居酒屋タクシー」問題批判
官僚たちが夜中まで役所で働いていなければいけないことが異常なのだと思います。タクシーの中で出されたビールよりも、異常な働き方を問題にするべきだと思います。

仕事がこなせなくて夜中まで役所にいなくていけないとしたら、その人の能力の問題か、仕事の配分に間違いがあります。

能力が足りないのなら、高める努力をしなくてはいけないと思います。高い能力を持つ人を登用するか、人材を養成しなくてはいけません。

仕事の配分の問題なら、人員の配置を変更したり、増員したりする必要があります。また、必要がない仕事をしているのだとしたら、その仕事をなくさなくてはいけません。

「予算編成で忙しい……」という話をききますが、こなしきれない分量が割り当てられているのではないかと想像します。

「国会のための待機で……」という場合、国会の勝手気まま(?)なスケジュールの方に問題があり、「迷惑」を多方面にかけていると反省するべきではないかと思います。

官僚の深夜帰宅がなくなったら、タクシー業界の売り上げが減るかもしれませんが、官僚が深夜帰宅しなくてはならないことの異常さを認める理由にはならないと思います。

どうしても深夜帰宅をさけられないなら、タクシーで帰宅しなくても済むような官舎を用意するべきです。

そもそも、深夜登庁や深夜帰宅が避けられないのは、緊急事態への対応を担当していたり、時差がある外国とのやりとりに従事している場合くらいに思われるのですが……。

官僚制度の今のあり方には疑問を感じていますが、官僚を目の敵にしているつもりはありません。あるべき姿は、今の形ではないと感じていて、いかに充実させるかが重要です。

無駄な仕事をなくすことや、陳腐になった制度や権限を見直すことが必要です。その上で増員が必要なら増員をすべきです。人材確保のためには、魅力がある待遇も必要です。

問題に取り組む発想が歪んでいるように思われます。一部の若手政治家や、マスコミでは、「あらさがし」と「削減」が業績と見なされるようですが、それが極端になりすぎています。問題への取り組みの原点を忘れ、逸脱しています。それは、「居酒屋タクシー」や「タクシー券の過剰な使用」で非難される公務員が、制度の原点を見失ってしまっているのと大差がないと思います。
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by gskay | 2008-07-01 23:48 | 政治と役所と業界
格安航空券
格安航空券だけしかなかったら、飛行機は、赤字で飛べません。

航空会社をぬるま湯につけておくべきではないとは思いますが、経営を圧迫するような方向性を政府が打ち出すのは良くないと思います。

とりわけ、国際線については、日本航空についても、全日空についても、国策や国益を担って飛んでいると考えるべきだと思います。安全保障上の意味もあると思います。航空路を確実なものにしておくためには、ケチってはいけません。

国会議員の海外出張 若手議員がファーストクラスに「待った」(J-CASTニュース) - Yahoo!ニュース


 国家公務員の「居酒屋タクシー」利用やマイレージの私的利用が問題化するなか、国会議員の国外出張にもスポットライトが当たりつつある。若手議員が、「ファーストクラスをやめてビジネスクラスにすれば経費が削減できる」との呼びかけを行ったのだ。もっとも、地方議会や中央官庁の官僚のレベルでは、ファーストクラスを使える層は、かなり絞られてきており、国会でもこの流れに追随することになるのか、注目が集まりそうだ。

■ビジネスに落とせば年間5000万円浮く

 国会議員は、国会の派遣で海外出張する際には、「最上級の運賃」が支払われることになっており、ファーストクラスの利用が認められている。

 航空運賃は、もちろん会社によって異なるが、正規運賃で比較した場合、ビジネスクラスはエコノミークラスに比べて2〜3割高く、ファーストクラスは約2 倍かかる。もっとも、これは正規運賃を基準に比較した場合なので、民間で一般的に使われている格安航空券と比較した場合は、その「格差」は、さらに広がることになる。こんな現状に、若手議員が異議を唱えているのだ。

 自民党の若手国会議員でつくる「税金の無駄遣いを一円たりとも許さない若手の会」は08年6月13日、「無駄の徹底的排除」を行うための中間提言を発表した。提言の中では、議員定数の削減、特別会計の廃止、天下りの禁止、「無駄遣い取締官」の創設、などが盛り込まれたが、ファーストクラスの利用についても検討対象とされた。

 「若手の会」メンバーの牧原秀樹衆院議員は、記者会見で

  「現在、国会の委員会出張はファーストクラス正規料金で行っているんですけれども、それを仮に、仮にですけれども、ビジネス(クラス)に落としただけで、(衆参あわせて)年間5000万円ぐらいの割り引きになる、と」

と、改革の意義を強調した。

 「国会議員はファーストクラスが当たり前」というのは、一般的な感覚からはかけ離れているとの声も上がりそうだ。一方、「居酒屋タクシー」が問題化した中央官庁職員や、地方議会レベルでは、若干事情が異なるようなのだ。

■国家公務員でファーストクラス利用は次官級

 例えば、国家公務員が海外出張する際は、ファーストクラスが利用できるのは次官級に限られる。ビジネスクラスを利用できるのも、課長級以上か、8時間以上搭乗する課長補佐のみだ。00年の法律改正以前は、全職員にビジネスクラスの使用が認められていたほか、本省の部長級以上であれば、ファーストクラスの利用ができた。

 一方、地方議会に目を向けると、97年には、東京都や神奈川県議会で、ファーストクラスの運賃を受け取っておきながら、実際にはビジネスクラスやエコノミークラスにしか乗らず、その差額を通訳料などに流用していたケースが問題化。神奈川県では、利用できる航空運賃の額が、ファーストクラスからビジネスクラスに改められた。

 それ以外にも、神戸市では02年にファーストクラスでの海外出張が市民オンブズマンに問題視され、利用する運賃をエコノミークラスに改めるよう申し入れが行われている。特に利用する航空券の種類を定めない場合でも、出張費用の上限が決まっているケースが多く、実際上は「ビジネスまたはエコノミークラス」というのが、地方議会では一般的なようだ。

 そうは言っても、民間では、上場企業であっても「部課長はエコノミーが当たり前、役員でも基本的にはビジネスクラス」との声も多い。そう考えると、「官民格差」は依然として残っているともいえ、今回国会で上がった「物言い」への「追い風」が、今後強くなる可能性もありそうだ。

国の場合、目先の経費の削減よりも重視されなければいけないことがあると思います。また、機内での待遇や快適さを基準に「贅沢だ」と言いたいのかもしれませんが、そういう問題ではないと思います。

格安航空券が、「格安」で入手できる理由は、正規料金での利用が一定以上あるからです。それが減れば、「格安」の格安度は減ってしまうと思われます。

確かにビジネスクラスの快適さが向上していて、ファーストクラスを廃止する航空会社が増えているので、ファーストクラスについての見直しは妥当かもしれません。我が国の航空会社もその辺を意識してもいいと思います。しかし、引用の記事のように、格安航空券を比較に出すのはおろかです。格安航空券が出回る理由を考えるべきです。

国がこのような経費の削減に血眼になると、自国の航空会社の経営を圧迫します。自国の航空会社を、もっと大切にしなくてはいけないと思います。経費だけを考えたら、外国のキャリアの利用も考えられるかもしれませんが、日本の航空会社を大切にした方がいいと思います。

国会議員をはじめとする公務員を運ぶのは、必ず届けなければいけない荷物を運ぶようなものです。そのための手だてを確保するための経費であるという視点で考えるべきです。

公務員の海外出張で公費で利用する場合、日本の航空会社が就航しているところでは、日本の航空会社を「正規料金」で利用することが原則であるべきだと思います。

たとえファーストクラスの正規運賃でも、普通の出張なら、政府が独自に航空機を確保するよりもはるかに安上がりで合理的だと思います。

そうした前提の上で、航空会社と運賃についての条件を交渉してもらいたいと思います。

引用の記事で取り上げている論調は、私費での利用や、個人での利用と、ゴチャゴチャです。変な公私混同になっていると思います。「そんな贅沢はけしからん」という問題意識で考えてはいけないと思います。

(ついでに言うと、引用記事中のエコノミークラスとビジネスクラス、ファーストクラスの正規の料金の値段差は、私が知っている差と全然ちがっていて、随分と少ないような気がします。)

ところで、私の場合、出張の種類によりますが、私費負担の一部しか支給してもらえないことがほとんです。もし、チケットが支給されるのであれば、つべこべ言わず支給された通りの便の決められた席に座ると思います。しかし、チケットは自分で手配することになっているので、出費は覚悟の上で、長時間フライトの場合、ビジネスクラスやプレミアムエコノミーに乗るようにしています。

疲れ方が違います。ただし、サービスについては、ビジネスクラスでも値段の違いに見合うような差はないと思っています。食べ物も、飲み物も、地上だったら、もっといいものが簡単に入手できそうなものばかりなので、贅沢という気はしません。ガソリン代に直結したスペース代だと割り切っています。疲れ方が変わらないなら、わざわざ、そんな出費はしないと思います。

それはそうと、自腹である以上、値段には敏感です。日本の航空会社のプレミアムエコノミーも、かなり快適ですが、ソウルや台北経由のビジネスクラスの格安航空券の方が安い事が多いので、インチョン空港を経由する機会が少なくありません。(ちなみに、日本からソウルまでのビジネスクラスは、大抵がらがらです。あっという間に着いてしまいますから……。)

インチョンで感じるのは、日本の航空政策とは全く違う方向性がとられているのではないかということです。シンガポールのチャンギ空港でも似たような感想を持ちました。航空政策について、日本はかなり鈍感かもしれないと感じています。その鈍感さが、このような動きにもにじみ出ているように思いました。
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by gskay | 2008-07-01 13:22 | いろいろ