「偽装とまで言えず、名誉棄損にあたる」
「構造計算書の偽装」というのは、大臣認定プログラムを用いた場合に起こります。

このプログラムを所定の手続き通りに利用した場合に、建築確認の特例的な手続きがあり、その特例的な手続きが、事実上の検査の省略だったため、いい加減に記入されていたり、不適切に書き換えられていた書類が素通りしていました。その極端なケースが耐震偽装事件です。このため、このプログラムの取り扱いに厳格さが要求されるようになりました。

このプログラムは、特別な手続きのためだけのプラグラムではなく、それ以外の計算にも用いてよいので、このプログラムの計算結果のプリントアウトは、他の計算にも用いられます。

特例的な手続きにおいて書き換えなどを行えば、偽装であり違法行為です。

しかし、プログラムから出力された結果を利用はするものの、他の方法によって計算を完成させる場合、プリントアウトを加工して用いてよいかどうかに関する規定は、明確ではなかったのだと想像します。

国土交通省としては、プリントアウトの加工を全面的に禁止したかったようですが、裁判所は、特別な手続きの場合に限って書き換えのような行為を禁止するのが妥当だと判断したものと思われます。


HPで「偽装」名指しは名誉棄損、国に削除命令 : 社会 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)


HPで「偽装」名指しは名誉棄損、国に削除命令

 構造計算書を偽装したとして国土交通省から4月、名指しで発表され、「名誉を傷つけられた」として、大阪市の建築士が同省のホームページからの記事削除を求める仮処分を申請し、東京地裁が「偽装とまで言えず、名誉棄損にあたる」として国に削除を命じたことがわかった。28日付。

 決定によると、大阪市の張武雄・1級建築士は昨年8月、京都府内の賃貸アパートの構造計算の際、コンピューターのプログラムにより警告が表示されたにもかかわらず、表示を削除して建築確認申請を行った。

 同省は警告削除を「偽装」としたが、田代雅彦裁判長は「警告が出ても、安全性が確保されていたことは構造計算書の数値から検証可能だった」と指摘した。
(2010年6月29日21時06分 読売新聞)


計算数値を利用するだけなら、警告には意味がありません。その警告を、プリントアウトから消してしまってよいかどうかについて、おそらく、取り扱いを決めていなかったのだろうと思います。

私は、大臣認定プログラムのような特別なプログラムの運用は厳密であるべきなので、警告が出た場合、その警告を無視するための書き込みなどを行えるようにして、なるべくプリントアウトを変更させないように運用するべきだと思います。

その一方で、「偽装」と名指ししたことに関しては、大臣認定プログラムの意義を拡大解釈しすぎているか、利用法を誤解しているのではないかと思います。

私は、裁判所の判断を適切だと思います。国土交通省は、この事例に対しては、指導の徹底などをすれば充分に目的を達成できたのに、不用意に、余計な損害を与えてしまったことになると思います。

できれば、大臣認定プログラムのようなものを汎用に使ってほしくはないものの、そのコストを考えると仕方がないようです。汎用に使われるということを前提に、運用のあり方を見直すべきであったのに、国土交通省がそれを怠っていたのが問題だと思います。
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# by gskay | 2010-07-01 12:21 | 揺れる システム
新党乱立下での参議院選挙
新党は、判で押したように、国会議員数削減を叫んでいます。もっとも、民主党も自民党もそうですが……。

日本の国会議員数は、必ずしも多い方ではありません。むしろ少ない方です。

しばしば比較に出されるアメリカは、連邦国家。州の役割が大きく、連邦の役割は限定されています。そういう国の国会議員数と比較しては判断を誤ると思います。

日本は、国の役割がとても大きく、生活の隅々まで国が所管しています。その権限を監視する国会議員の数が少なくなってしまえば、腐敗したり、暴走したりしてしまいます。

また、国の大きな権限を見直すにしても、現在の国会議員では人数不足。権限の整理の作業さえままなりません。

国権の最高機関と規定されているのに、パワー不足でやるべきことができない国会は、むしろ議員定数を増やすべきなのではないでしょうか?

加えて、どの党も、公務員数を削減するとのこと。

公務員は、景気に影響されにくい消費者であるのに、公務員を減らしたら経済に悪影響をもたらすように思います。

仕事の無駄をなくし、しっかりと働いてもらうことが大切だと思いますが、仕事の効率化や見直しと、公務員削減は別のことのように思われます。

民間が不景気である時に、公務員を減らしたところで、民間の景気が改善するとは思えません。むしろ悪循環。民間の不景気は、民間の力で乗り越えなくてはいけないと思います。公務員に八つ当たりしたり、足を引っ張ることが、民間の活力につながるわけではありません。

非効率で、勉強不足で能力的にも高度ではないのに、裁量による権限ばかりが肥大化している官僚制度は、抜本的に改善するべきだとは思います。しかし、だからと言って官僚を追放すれば解決すると考えるのは浅はかだと思います。必要なのは、効率化であり、能力の向上であり、裁量の範囲を少なくするための規則の厳格化です。

せめて、官の役割を民に移すという議論なら了解できるのですが、それも小泉改革の負の側面とされる問題のために、議論になりにくい状況です。

では、一体、誰がその役割を負うの?

いかに国を弱体化するかを競っているような参議院選挙だと思われます。これでは、この国は生き残ってはいけないと、私は思います。
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# by gskay | 2010-06-15 11:47 | 政治と役所と業界
賃貸収益による負担軽減
藤沢の物件は、いろいろな意味で、耐震偽装の中で特異な物件だと思います。

引き渡し時期が耐震偽装が発覚する時期と重なっていたために、引き渡しをしたヒューザーの社長が詐欺に問われています。地裁、高裁とあまりはっきりしない有罪判決が出ています。偽装の発覚と、違法性の確定の時期が問題で、そこに時間差があります。その時間差の間に行われた引き渡しの違法性について、はっきりとした結論をつけるのは現状では難しいと思われます。この件の判決は、今後の同種の事例の判例になる可能性があり、重要な刑事事件だと思います。

この物件では、市の再計算によって著しく低い耐震強度とされ、緊急に上層階が除却されるという措置がとられました。これについては、市の計算がどれだけ妥当性があったのか問題です。設定した条件次第で、数値は変わってしまうものです。下手な計算では、強度が証明できないというものだからです。低い数値を算出されたとしても、それは条件次第。そういう曖昧な前提ではあるものの、行政の権限で毅然とした措置が講じられました。

また、この物件には、未販売のままヒューザーが所有している部屋が多くありました。このため、ヒューザー破産による影響や、再建時の区分所有の評価に微妙な影響があったのではないかと思います。

ところで、この物件から、ヒューザーが設立した子会社による販売に全面的になっていたようです。この子会社の破産にともなう債権の位置付けが微妙になりました。ヒューザーの破産と一体とみなせるかどうかが問題になりました。ヒューザーに対する債権がそのまま適用されれば、他の物件の住民である債権者へも配当されます。結局、ヒューザーとは一体とはみなされず、藤沢の物件の住民が主張するように決定されました。

分社による資産の取り扱いが問題ですが、これが問題になってしまった背景には、法律の不備があるように思われます。藤沢の物件と、その他が対立するような形になりました。法律に曖昧なところがあるため、それぞれが自分の立場を主張はしました。しかし、配当の原資を考えると、裁判で争って決着をつける価値があるような額ではなかったことと、他の物件でも藤沢の事情は理解されていたこともあり、裁判となる手前までは、異議の申し立てなどの手続きをしたものの、結局、決定に従っています。そこまでは、費用がかからず、書面の手間だけでした。他の物件の住民にとっては、公的な対応が行われている手前、やれることは全てやるということが必要だったからです。

藤沢の物件の建て直しでは、一戸を二つに分割し、一部を賃貸にするという手法がとられたという点が画期的なところだと思います。元々の部屋が広くなくてはできないワザですが、家族の変化などにも、柔軟に対応できるものになっているのではないかと思います。


グランドステージ藤沢の建て替え完了|日経BP社 ケンプラッツ


資金面については、賃貸部分については、事業というくくりになるので、ローンの組み方や、所得税の計算など、いろいろな工夫の余地が生まれると思います。そういう意味で、デベロッパーに手数料を払っても、それにみあうだけの価値があるように思われます。耐震偽装の建て替えに限らず、マンションの建て替えの手法として、徐々に広がっていくのではないかと思います。

ところで、こういう事業について、URが、きちんとした提案をできなかったことが、残念に思われます。うちの物件でも、URの試算や提案は、ありきたりのものにすぎず、検討に値するようなものではありませんでした。

住宅供給において、URの前身の公団が果たしてきた役割は大きいと思います。今は、賃貸と再開発のための組織ですが、再開発の手法について、民間や他の団体に遅れをとっているように思われます。分譲住宅の供給のみならず、再開発についても、役割を終えてしまった組織なのかもしれません。
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# by gskay | 2010-05-31 04:30 | 建て直し
「新しい公共」
「新しい公共」円卓会議というものが内閣府にあって、地味ながら重要な問題を議論しているように思われます。「御上依存」への反省や、「「公共」は「官」だけが担うものではなかった」という明治維新以前の社会のあり方などが、議論の原点になっているようです。そのような問題意識には共感しますが、議論の方向性には疑問があります。

「官」や「御上」という存在と、議会という存在に、きちんとした区別がついていません。

また、「年貢」や「税」と、その使い道の決定方法がどういうものなのかということを意識することなく、寄付のありかたを論じています。

寄付によって支えられる組織が大きな役割を果たして行くという方向性を打ち出す上で、集まった寄付の使い道の決定方法が曖昧なままではいけません。

政府の予算は、議会で決められます。議会は、納入した税の多寡など関係なしに、1人1票の投票によって選ばれた議員によって構成され、多数決で意思を決定します。

一方、寄付による公的な組織を、政府とは別に作る意味は、寄付する人の意思を反映させられるところにあると思います。税として納めなくてはいけないお金の一部を、自分の意思で、自らが振り向けるというのが、「新しい公共」における寄付のあり方だと思います。

政府の指示や官庁の指示に従うという組織があってもいいと思いますが、そういう指示に距離をおき、自律を原則とする組織があってもいいと思います。

そのためには、組織の方針に賛成する人だけが寄付をするとか、寄付の多寡で発言権が異なるというような、様々な意思の決定方法を認めることからはじめなくてはいけないと思います。

そうしたことを抜きにしたまま、成功した事例やサービスをとりあげて、御上のお褒めをあたえているかのような議論をしているように思われます。欧米の仕組みなどを紹介してはいるものの、表面をなぞっているにすぎず、本質を見失っていると思います。

税や議会の決定、政府の決定ということから距離を置く仕組みを、公的に認めることが、「新しい公共」の第一歩だと思います。

現在の議論の方向では、「官」や「御上」による統制が強い組織ができるものの、その統制には責任が伴っていません。このままでは、責任を末端の組織に押し付けるような「公共」ができてしまうのではないかと思います。

これは、第二次世界大戦で懲りた悪夢の道筋だと思うのですが……。
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# by gskay | 2010-05-17 06:22 | 政治と役所と業界
札幌の判決
札幌のマンションの耐震偽装の問題で、販売した住友不動産を相手取って住民がおこした裁判の判決があったそうです。

強度不足という法令違反と、「高い耐震性能」といううたい文句が問題になっていたようです。

補修可能という住友側の主張は、技術的には正しいのかもしれません。しかし、それが、不適切な販売を許す根拠にはならなかったようです。

耐震強度不足マンション、分譲側に代金返還命令 : 社会 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)


札幌市の元2級建築士による耐震偽装問題を巡り、耐震強度不足が明らかになった同市中央区の分譲マンションを購入した11世帯14人が、分譲した住友不動産(東京)に、売買契約の取り消しや売買代金の返還を求め、計約4億1000万円を請求した訴訟の判決が22日、札幌地裁であった。

 橋詰均裁判長は同社に対し、原告1人当たり616万〜4740万円の支払いを命じた。

 同問題は2006年、札幌市の聞き取り調査に対し、元建築士がマンションの構造計算書の偽装を認めたことで発覚。耐震強度不足が21物件で確認され、元建築士は同年、建築士免許を取り消された。

 今回判決があったのは、強度不足だったマンションの一つで、地下1階、地上15階建て。原告らは03〜04年に売買契約を結んだが、市の調査では耐震強度が基準の86%だった。住友不動産は補強工事の準備を進めているという。

 原告側は「販売前のパンフレットに『新耐震基準に基づく安心設計』などと記載され、法令基準よりも余裕を持たせた耐震性能があると販売担当者から説明を受けた。消費者契約法違反(不実の告知)に当たり、契約は取り消せる」と主張。

 これに対し、同社は「構造瑕疵(かし)は軽微で、機能性を損ねることなく容易に補修が可能。消費者契約法の要件は満たさない」と請求棄却を求めていた。
(2010年4月22日15時41分 読売新聞)


私は、当然の判決だと思います。ただ、判決までに長い時間が……。

これだけの期間、裁判に関わっていた住民の方々は大変だっただろうと思います。

まだ判決が確定したわけではなく、住友側の控訴も考えられます。また、この判決が確定した場合でも、返還をうける権利が認められたにすぎず、実際の支払いまでには面倒なことも少なくないと思います。

このマンションでは、住友不動産という大きな会社が販売元でした。ヒューザーのように破産してしまうような心配はないかもしれませんが、だからといって、トラブルへの対応が住民にとって楽になるということはないように思います。大きな会社が相手の場合では、それに応じた苦労が必要になるものと思います。

大きな会社からの購入でも、トラブルがないとは言い切れず、大きな会社からの購入でも、対応がスムーズということもないというのが実情だと思います。結局、相手次第で、個別の対応が必要になり、それぞれ大きな苦労を背負うことになるのだと思います。

ところで、補修して住み続ける方がいいという住民もいるかもしれません。このような判決は、全ての事例に無理にあてはめるようなことは控えた方がいいだろうと思います。
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# by gskay | 2010-04-26 01:57 | 損害と回復
事業仕分け
建て直しの追加費用への融資を、住宅金融支援機構に申し込んでいます。住民への公的な対応の窓口のような役割となっているため、お世話になっています。

その住宅金融支援機構が、政府の行政刷新会議の「事業仕分け第2弾」の対象になっていました。といっても、どうやら、お世話になっている貸付は対象になっていないようでした。

民間の金融機関の使い勝手が向上しているため、一般的には、住宅金融支援機構が必要とは言えない状況だと思います。住宅金融支援機構があることで、住宅取得のための壁が低くなるとか、良質な住宅に手が届きやすくなるという時代は終わっていて、あえて、公的な事業として実施する必要はないと思います。

仕分けの対象になった「高齢者住宅などの建設への融資」は、高齢者対策として総合的に実施されていたら、事情は違っていたかもしれません。残念ながら、住宅建築の現実や、住宅利用の現実から乖離している一方で、新しい方向性も提示することも難しかったのだと思います。高齢者自身への貸付でなかったことも、ニーズを汲み取れていなかったのだと思います。

住宅金融支援機構には、災害などへの融資や、行政上のニーズに基づく融資の必要が残ります。そうしたことへの対応力が高度であるなら、公的な団体として存続する意義があると思います。住宅金融公庫が再編されて、住宅金融支援機構になった時に期待された大きな役割を今後とも担い続けることが期待します。

もし、そこに集中することができなければ、民間金融機関との差が明確でなくなってしまいます。公的な対応の窓口的な役割についても、住宅金融支援機構に限定されているわけではなく、民間金融機関でも差し支えはないことになっているようですが、民間以上の利便性があるようで、機構の利用が多いのではないかと思います。そのアドバンテージを維持できないなら、機構は不要ということになります。

ところで、住宅金融というのは、金融の大きな柱の一つです。その新しい展開を「高齢者住宅などの建設への融資」などの事業で試みているのかもしれませんが、そうした試み自体、もはや、必要なことではないのかもしれません。金融の現場で公的な主体が実行する必要はなく、法律などで制度として定めさえすれば、民間が動き出すことができます。
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# by gskay | 2010-04-25 03:39 | 公的対応
建築確認の取り消し判決
大阪高裁で、地裁が下したマンションの建築確認取り消しの判決を覆す判決が出たとのことです。これは、完成済みの建物に関する判断で、「マンションの建築工事は完了しているので、建築確認の取り消しを求める法律上の利益はない」ということなのだそうです。

最近の建築確認をめぐる裁判の焦点は、建築基準法などの法律を解釈し適用する権限がどこにあるのかという点です。マンション建設では、周辺住民の反対が、建築確認取り消し訴訟に発展するようですが、行政の判断の妥当性が問われます。

裁判所が、建築に関する法律をどのように当てはめるのかという具体的な部分まで判断していますが、法律が、特例や但し書だらけであるため、行政の判断にも曖昧なところがあるように、司法の判断にも曖昧になっていて、恣意的になってしまうおそれを感じます。

建築確認の取り消しに関する裁判は、建築確認という行政の判断の位置付けに関わる微妙な問題だと思います。手続きの違法性などに関する裁判には妥当性があると思います。しかし、解釈にかかわる微妙な判断に及ぶことには違和感を感じます。

もし、微妙な判断について行政の判断がしばしば覆るようであれば、建築確認だけでなく、裁判に対する準備も、建築にあたっては必要になります。ならば、はじめから裁判に一本化した方がいいのではないかと思われます。そうでないなら、司法が判決として判断する部分と、行政の建築確認の棲み分けが必要で、それは、司法自らが行うという方法と、立法的に明確にするという方法があるように思います。私は、立法的に行うべきだと思いますが、司法の判断で、一線を引くことも適切だと考えています。

いずれにせよ、建築関連の法規が、グチャグチャであるので、それが整理されなくてはならないと思います。また、私は、建築にかかわる様々な主体の役割を明確にすることが必要だと感じています。建築主や、設計、施工、監理、検査、そして所有者が果たすべき役割はもちろん、国や行政の責務なども明確にしておくべきだと思います。逆にいえば、そういうものが全く整理されていない状況に放置されています。関係者の責務が明確になってくれば、司法の役割も明確になるものと思われます。

ところで、建築確認の取り消しは、後始末をどのようにつけるのかという問題と不可分だと思います。建築中であれば、建築確認の取り消しは、様々な修正を試みることで対応することも可能だと思います。しかし、完成してしまって、完了検査が済んでいるような場合に、建築確認の取り消しというのは適当ではないように思います。

ちなみに、うちのマンションは、建築確認は取り消されていません。誰も、取り消せという裁判を起こさなかったし、取り消したところで、すでに出来上がった建物があることには変わりがありません。

違法建築としての行政的な処理が行われてきましたが、うちの区では、行政の権限の発動は、強制というものではありませんでした。所有者である住民が、区の説明に納得し同意した上で、退去し、使用禁止し、除却するという流れでした。様々な措置に関する命令も、きちんと異議申し立ての手続きが明記されていました。また、出された命令も、住民による建物の使用などを制限することを目的とした命令というより、第三者が入りこんで占拠したりすることを防ぐ命令であったように思います。

この命令のあり方については、自治体ごとに判断が一定していなかったようですが、うちの区については、私有財産に関する権利が最大限に尊重されていたように思います。

建築確認という制度は、様々な意味で一人歩きしてしまっているように思いますが、原点に戻ってあり方を問い直す必要がある制度ではないかと思います。建築に関する制度の見直しの重要なポイントのひとつだと思います。
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# by gskay | 2010-03-08 05:51 | 揺れる システム
「普通」の確定申告
耐震偽装による雑損控除の繰り越し期間が昨年までだったので、今年は、所得税の確定申告で雑損に頭を悩ませる必要がなくなりました。

昨年までは、税務署に出向いて、担当者と相談し、指導を受けながらでないと申告ができませんでしたが、今年は楽勝。国税庁のホームページで作成し、プリントアウトして、捺印して郵送。

電子申告は、その準備が面倒くさそうなので、印刷して提出する方法を選びました。

このシステムができてからはじめての利用ですが、とても良く出来たシステムだと思いました。

電子申告だと入力した内容が税務署のデータベースに直接読み込まれるのだろうと想像します。これに対し、印刷して提出する申告では、もう一度入力しなおしているのでしょうか?どうせスキャンするだけだろうから簡単だと思いますが、印刷された書類に固有のIDやバーコードなどをつけ、それを読み込むことで内容が呼び出せる仕組みにすればいいのにと思います。その上で、手書きの修正などがあったなら、修正すればいい。

アメリカのビザを申請する時のシステムは、ホームページ上で申請書を作成し、それを印刷しサインをして提出します。バーコードが印刷され、それをスキャンすることで、内容を呼び出しているようです。領事との面談があり、手書きで訂正されていたり、必要な訂正が見つかった場合には、ここで手入力で訂正しているようでした。

日本では、なかなかコンピューター申請がなじまないことを残念に思っていましたが、実は、しっかりとやっているところではしっかりとしていることがわかり、安心しました。
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# by gskay | 2010-03-01 03:25 | 損害と回復
「自分の判断」
郵便割引制度の不正事件は、当局が壮大な構図を描いて摘発し、厚労省の幹部を逮捕拘留に及ぶという大事件になったにもかかわらず、真相は、現場の担当者単独の不正ということになりそうです。

検察の取り調べのあり方が問題になっている時期なので、タイムリーだと思います。これをきっかけに取り調べの透明化が行われることになれば良いと思います。

真相が担当者の独断であったなら、共犯とされた元局長の被告は無実無罪ということになりますが、そうなると、それだけでは済まされないだろうと思います。元局長がどの程度がんばるかはわかりませんが、失われたものを回復しようとするのではないかと思います。そのエネルギーがどこに向かうかによっては、検察の担当者は、気が休まらないないのではないかと想像します。

ただ、完全な共犯とまではいかないが、上司としてして許されることではないというような理由をつけて、無理やり有罪にするということも、日本の司法ではありえることのように思われます。取り調べ段階の滅茶苦茶さを棚に上げ続けるためには、そういう方向に進むこともありえると思います。当局がこぶしを振り上げた場合、それがどんなに理不尽なことであっても、これまでは正当化される傾向にあり、それがすぐに改まるとは思えません。


asahi.com(朝日新聞社):郵便不正 元係長「自分の判断」証言、元局長の関与否定


厚生労働省から、自称障害者団体「凛(りん)の会」(現・白山会、東京)を郵便割引制度の適用団体と認めた偽の証明書が発行された事件で、虚偽有印 公文書作成・同行使の罪に問われ、無罪を主張する同省元局長村木厚子被告(54)の第8回公判が24日、大阪地裁であった。村木元局長の共犯として起訴されている当時の担当係長上村(かみむら)勉被告(40)が証人に立ち、担当課長だった元局長が上村元係長に不正発行を指示したとする検察側主張を否定し、「自分の判断でつくった」と述べた。

 大阪地検特捜部が摘発した事件の構図をめぐり、当時上司の元部長(58)や上村元係長の前任の元係長(48)が「虚構」「元局長は冤罪」などと法廷で証 言したのに続き、不正発行に直接かかわったとされる「重要証人」の上村元係長も元局長の関与を否定したことで、検察側の立証はさらに困難を強いられること になった。

 検察側の構図では、上村元係長は2004年4月の異動で担当係長になった際、前任の元係長から、凛の会への証明書発行は当時衆院議員の石井一参院議員の 「口添え」があった「議員案件」で、早急に証明書を発行するよう引き継ぎを受けたとされる。

 だが、上村元係長は検察側の質問に「この件の引き継ぎはなく、凛の会関係者からの督促の電話で知った。着任当時は予算の仕事で非常に忙しく、一刻も早く 消し去りたい話だった」と説明。偽の証明書は「自分で勝手に決めて作った。上司に相談や報告はしておらず、隠しておけばばれないと思った」と涙ながらに述 べた。

 さらに検察側主張では、上村元係長は04年6月上旬、村木元局長から指示されて偽の証明書を作成し、元局長に渡したとされている。元係長は尋問で、元局長とは「仕事の会話をしたこともない」と話した。

 元係長は昨年5月、うその決裁文書を作ったとする虚偽有印公文書作成・同行使の容疑で逮捕された。関係者によると、偽の証明書についても、逮捕当初は 「独断で作った」と説明。だが、その後の取り調べに元局長からの指示を認めたとされ、特捜部は偽の証明書をめぐる同容疑で元局長とともに元係長を再逮捕し た。



検察の失態ということになると思います。

耐震偽装事件では、元建築士が、発覚後に自分の責任をごまかすための発言をしていて、それに捜査当局も世の中も引っ掻き回されました。その結果、関係者が耐震偽装と直接の関係はない別件で有罪判決を受けていたりします。この別件での処罰というのは、その経緯を考えると適当ではないと思われる部分もありますが、出てきたしまった罪状であるには違いありません。

これに対し、今回は、本人が当初から否定しているにもかかわらず、検察が描いた構図を無理に本人に押し付け、検察が都合のいい調書を歪めて作ったということになります。

てっきり、元係長が、まわりに責任転嫁をしようとしていたのかと思っていました。しかし、そうではないようで、これは、失態という言葉では片付けられないような問題を検察につきつけることになるように思います。

ひょっとしたら、そういうことまで想定した壮大な企みなのかもしれませんが、検察のダメージは、とても大きいのではないかと思います。
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# by gskay | 2010-02-28 03:52 | 政治と役所と業界
性能試験の杜撰さ
2007年の秋には、建材の性能試験に問題があったと指摘されました。今度は、航空機の座席の性能の試験の問題が指摘されました。

およそ、国土交通省が所管している性能などの検査や試験で、まともに行われているものはあるのでしょうか?民間の不正だけでなく、公的な機関でも、相当に杜撰なことが行われてきたようです。

国土交通省が担当しているのは、安全や安心にかかわる技術です。その技術は日進月歩。その進歩に、きちんと役所が追いついていて、しかるべき任務を果たしていたなら、このような問題が、あちらこちらで起こることはないと思います。

航空機の座席の性能検査データの改ざんは、03年頃には行われていることが確かで、90年代の半ばにさかのぼるともいわれています。耐震偽装でもそうでしたが、随分と長い間、放置されてしまったものです。役所は、ナメられてしまっているのだと思います。

何らかの不都合は、役所の前任者の責任に波及するということで、余程の問題にならない限り、有耶無耶にされてきたとしたら、問題です。むしろ、有耶無耶にするのが当然だという空気があるのだとしたら、深刻です。

単に、私企業の杜撰な体制や倫理性の欠如だとは言い切れない根深いものがあり、その源は、役所にあると思います。

ところで、この座席の性能試験のせいで、全日空の新しい座席の導入が遅れるそうです。国際線の長距離で、プレミアムエコノミー席がないというのは、苦しい……。幸い、私は、しばらく長距離国際線に乗る必要はないのですが、うちの家内が文句を言っています。ビジネスクラスに乗ること(アップグレードサービスだけど)もあるのですが、家内はプレミアムエコノミーが気に入っていました。

これまでの全日空のビジネスは、完全に水平になってくれないので、だったら、プレミアムエコノミーくらいのリクライニングの方が快適だと主張しています。実は、私もそう思っていて、アシアナ航空や大韓航空で、たまに古いタイプのビジネスクラスの座席に座ることがありますが、意外に快適です。もっとも、今度の全日空の新しいシートのことはわかりませんが……。

航空機の座席は、航空会社にとってとても大きなポイントだと思います。新型のシートの導入競争になってしまっているため、メーカーの検査が追いつかないのではないかと思います。この競争は、少々加熱してしまっているようですが、目新しさを競うのは、ほどほどにしなくてはいけないのかもしれません。逆に、もし、このようなモデルチェンジを続けるというのなら、それに適した検査制度を構築しなくてはいけないと思います。
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# by gskay | 2010-02-15 13:13 | 安全と安心