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違法建築への処分としての妥当性(イーホームズ答弁書の論点2)
イーホームズの答弁書では、耐震偽装による除却という処分に妥当性がないため、除却や建て替えによって生じた損害は、特定行政庁による「不必要な措置」によるものだとしています。

この視点に、賛同します。

ただ、原告である住民がすでに処分に異議を申し立てずに受け入れているため、不適切な措置であったかどうかが論点にはなりにくいのではないかとも思います。原告の主張に取り入れて展開していくのは難しいと思います。

しかし、藤田社長が、被告としてイーホームズへの請求を棄却させるための主張として展開するのは良いと思います。

構造計算は、「危険度」を計算するテクニックというよりも、いかに「安全」かを示すために行われる数学的モデルを用いたテクニックだと思います。上手にモデルを作って計算をすれば、「安全」が高まる一方で、下手に計算すれば、どんなに優れた建物でも、「安全」を証明できません。また、「危険」を説明する論理構造にはなっていないため、一つの構造計算で基準をクリアしていなかったとしても、「危険」を証明したことにはなりません。

もちろん、構造計算で基準をクリアすることを法が求めている以上、そのように設計されなくてはいけませんが、このテクニックは、既に存在する建物の「危険度の測定」には使えないものだと考えるべきだと思います。

耐震偽装においては、可能なら再計算で、「安全」をクリアしていることを示せば良く、それが無理でも、補強によって「安全」が確保されることを示せば良いと考えるべきだったと思います。

この点については、横浜での物件は、当初は除却・建て替えに相当するとされていたのに、補強で対応しました。しかるべき方法があれば、しかるべき手続きを経て、判断を覆すことができるということを示しています。

よく考えれば当たり前のことのようですが、当時も今も、この物件は例外的な扱いになっているように思います。

ところで、イーホームズが提案した方法を国交省が取り入れず、国交省の当初の方針がごり押しされていたとしたら、国交省には、対応方法をいたずらに制限することによって、損害を増やしたという責任があります。

薬害関連で示されているように、官僚が判断や対処の遅れで被害が拡大した場合、不作為が追及される方向です。同じように、必要なテクノロジーに背をむけたり、とりあおうとしなかったことを追及できるように思います。

違法建築への行政の処分が適切に行われてなかったために生じた損害については、瑕疵のある物件への責任とは、きちんと区別して議論する必要があるように思います。

これは、原告である住民にとっての必要な議論ではありません。被告の中に様々な立場がいるからこそ、被告同士が立場を鮮明にするために必要な議論だと思います。
by gskay | 2009-03-11 10:19 | 真相 構図 処分